Cardanoの次期アップグレード「van Rossem(Protocol Version 11)」のハードフォーク起動アクションが、2026年7月13日のエポック境界で批准(ratified)されました。ただし、メインネットで実際に有効化(発効・enacted)されるのは1エポック後、7月18日21時44分51秒UTC(Epoch 644の開始)です。つまり本日7月16日は、批准を終えて発効を待つ段階にあります。
投票結果は明確でした。憲法委員会は7名中6名が承認し、1名は投票しませんでした。DRepは77.63%(必要60%)、ステークプールは52.7%(必要51%)で、いずれも閾値を上回っています。発効に向けたノードの準備も9割を超えました。批准と発効を分けて見ること、そして「準備が進んでいる」と「もう動いている」を混同しないことが、今日の読み方の要になります。
van Rossemという名称は、Cardanoコミュニティに貢献した開発者Max van Rossem氏にちなみます。技術的には、現行のConway era内で行われるintra-eraアップグレードです。新しい暗号機能やコストモデルの変更を含み、その先には高スループット化を目指すLeiosの計画がありますが、性能の数値は目標段階のものです。単発のイベントとしてではなく、性能、コスト、暗号機能、ガバナンスを実装へつなぐ流れとして整理します。
📎 直近24時間の動き
- van Rossem(Protocol v11)のハードフォークが7月13日のエポック境界で批准されました。憲法委員会は6名が承認・1名は未投票、DRepは77.63%(必要60%)、SPOは52.7%(必要51%)で成立しています。発効はEpoch 644の開始、7月18日21時44分51秒UTCです。現時点は批准済み・発効待ちの状態です。
Cardano Foundation / Intersect — van Rossem - Midnight Hackathon(MLH主催)が7月17日から19日までの48時間で開催されます。スキルレベルを問わず、Midnightメインネット上でプライバシー特化のdAppを制作する内容で、オンライン開催のため日本からも参加できます。
Midnight Japan / Midnight Hackathon - IOGは、AIが信頼の確立を難しくするほど、プライバシー基盤の重要性が増すという論点を発信しました。Midnightはゼロ知識証明を用いたレイヤー1で、公開インフラ上でのプライベートな計算を目指しています。
IOG - Cardano Foundationは、AIが本人に代わって行動したとき誰が責任を負うのか、というAI説明責任の論点を提起しました。Cardano上のMasumi Networkは、AIエージェントの行動をオンチェーンに記録し、透明性を担保する仕組みとして言及されています。
Cardano Foundation - MidnightのFireside Dev Hangが開催され、NightpassとMidnight Skillsが紹介されました。開発者向けの学習と技術支援の場です。
Midnight Network - Intersectは、国庫引き出し提案や活動についての質問を受け付けるセッションを案内しました。オンチェーンでは27件のガバナンスアクション(ハードフォーク起動1・情報2・国庫引き出し24)が動いています。
Intersect
🧭 今日の焦点 3件
【1】批准と発効は違う。7月18日に何が変わるか
ハードフォークは、批准(ratified)された時点ではまだ有効化されていません。van Rossemの場合、7月13日に批准が完了し、実際にプロトコルが切り替わるのは7月18日21時44分51秒UTC(Epoch 644開始時)です。この数日は、ノードやサービスが最終的な準備を整える猶予期間にあたります。
見るべき証拠は、日付そのものより準備状況です。ブロック生成の9割超がv11対応ノードで行われているという数字は「もう動いている」ではなく「発効に向けた準備が進んでいる」という意味です。憲法委員会が6名承認・1名未投票、DRepが77.63%、SPOが52.7%で成立した事実と合わせ、発効後に実際のトランザクションで新機能が問題なく機能するかを確認していくことになります。
【2】v11の技術。効率化と、コスト上昇の両面を見る
van Rossemは、Plutusに5つの新しいビルトイン関数を追加します。なかでもCIP-133は、BLS12-381曲線上のマルチスカラー乗算(MSM)をネイティブに実装するものです。これにより、Groth16やKZGベースのPLONKといったペアリングベースのゼロ知識証明を、より現実的なコストでオンチェーン検証できるようになります。
一方で、注意すべき点があります。このアップグレードは、一部の既存プリミティブのコストモデルを引き上げます。変更は発効と同時に反映されるため、DAppや開発者は事前に設定を調整しておく必要があります。「新機能が加わってすべてが安くなる」という一律の理解は誤りで、効率化される部分と、コストが上がる部分を分けて見ることが正確です。
【3】ガバナンスとエコシステムは、並行して進む
同じ時期に、Intersectのオンチェーン・ガバナンス(27件のアクション、うち国庫引き出し24件)、Midnight Hackathon(7月17〜19日・日本参加可)、Midnightの開発者向けセッションが動いています。プロトコルの更新と、それを運営・拡張する仕組みは、別々の工程として並行して進みます。
AI説明責任の議論も、その一つです。Cardano Foundationが提起する「AIエージェントの行動を誰が担保するか」という問いと、Masumiのようなオンチェーン記録の試み、そしてMidnightのプライバシー基盤は、技術とガバナンスの接点にあります。van Rossemの暗号機能強化も、この文脈と地続きです。発表をまとめて期待に変えるのではなく、批准・発効・実装を、それぞれの成果物で追うことが大切です。
📊 数値スナップショット
基準時刻: 2026-07-16朝JST。Intersect等の公表情報を整理。
- van Rossem: 批准 7月13日(Epoch 643境界)/発効 7月18日21:44:51 UTC(Epoch 644開始・Slot 192,844,800)。
- 投票: 憲法委員会 6承認/1未投票(必要5)/DRep 77.63%(必要60%)/SPO 52.7%(必要51%)。
- Plutus: 新ビルトイン5種(CIP-133 BLS12-381 MSM ほか)/一部の既存プリミティブはコストが上昇(発効時に反映・DApp要調整)。
- ガバナンス: オンチェーン27アクション(HF起動1/情報2/国庫引出24)。
⚡ 先行指標 Watch(48-72h)
- 7月18日の発効後、実トランザクションでv11の新機能が問題なく動くか。
- 一部プリミティブのコスト上昇に、DAppや開発者が発効前に対応できるか。
- CIP-133のマルチスカラー乗算が、Groth16やPLONKの実用的なオンチェーン検証にどうつながるか。
- Intersectの国庫引き出し24件の審議と、承認・実行の進み方。
- Midnight Hackathon(7月17〜19日)から生まれるプライバシーdAppの実例。
- AI説明責任をめぐる議論とMasumiのオンチェーン記録が、具体的な実装へ進むか。
- 高スループット化を目指すLeiosの、次のテストネット指標(目標値の検証)。
🔄 48-72h 分岐(観察軸)
- Base: van Rossemは7月18日に予定どおり発効し、ノードとサービスは新プロトコルへ移行します。効率化された部分とコストが上がった部分の両方を確認しながら、ガバナンスはアクション審議を並行して進めます。
- Risk: 発効前後の準備や互換性で想定外の調整が生じ、一部サービスが対応に時間を要します。コスト上昇への準備が間に合わない、あるいは技術強化が「ZKをまるごと可能にした」と過大に受け取られ、期待が実装の進度を先行します。
- Alt: 発効後にCIP-133を活用したゼロ知識証明の実装が具体化し、効率化がDeFiやステーブルコインの新しい設計を後押しします。Midnightのプライバシー基盤やAI説明責任の枠組みと合わせ、Cardano/Midnightへの開発者流入が進みます。
🔗 一次ソース / 関連リンク
- Intersect — van Rossemハードフォーク(批准・発効)
- Intersect — Weekly Update #119(7/10・批准前スナップショット)
- CIP-0133 — BLS12-381 マルチスカラー乗算
- Cardano — ハードフォーク履歴(era)
- Cardano Foundation — van Rossem批准
- Midnight — Hackathon(7/17〜19)
- IOG — プライバシー基盤とAI
- Cardano Foundation — AI説明責任 / Masumi
- Midnight — Fireside Dev Hang
- Intersect — 国庫引き出し / ガバナンス
