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SEC のステーキング FAQ、Cardano の委任者が押さえたい3点

2026-09-26SIPO

米証券取引委員会(SEC)の企業金融局スタッフが9月25日、暗号資産への証券法の当てはめ方をまとめた FAQ を公表し、リキッドステーキングで受け取る預かり証トークンを「デジタルツール」または「デジタルコモディティ」に分類する見解を示しました。どちらも証券ではない区分で、「ステーキングトークンは証券ではない」という見出しで広く伝わっています。

ただし、FAQ が直接扱ったのは預かり証トークンの分類であり、ADA を手元に置いたままプールへ委任する Cardano の標準的なステーキングは、3月に委員会が示した解釈のほうで整理されています。何が新しく、何が以前から決まっていて、日本の委任者にとって何が変わるのか。3つに分けて確認します。

1. FAQ が扱ったのは、リキッドステーキングの預かり証

FAQ は冒頭で、これはスタッフの見解であって規則でも委員会の声明でもなく、法的な効力を持たないと断っています。ステーキングに関わる問いは2つです。

問い1.2は分類です。投資契約の対象になっていないデジタルコモディティの預かり証であれば、保有者の所有を証明するという実用上の機能を持つため「デジタルツール」に当たります。プロトコル型のリキッドステーキング事業者が発行する預かり証は、ネットワークのプログラム上の動作と需給から価値が生まれるため「デジタルコモディティ」にも分類されうる、としています。

問い1.3は「預かり証」の条件です。預かり証は預けた資産の権利や便益を変えず、追加の利得も与えません。そして発行者は、預かった資産を移転・貸付・担保差入れ・再担保化できず、第三者の請求にさらすこともできない、と明記されました。預かった資産を貸し出して利回りを上乗せするような設計は、この定義の外に出ることになります。

2. Cardano の委任は、3月の解釈の「委任型」に近い

土台になっているのは、SEC が3月17日に出し3月23日に発効した解釈リリース(33-11412)です。この文書はデジタルコモディティの例として ADA を含む16銘柄を挙げ、ステーキングを4つの類型に分けたうえで、いずれも証券の募集・売出しに当たらないとしました。

4類型のうち2つ目は、保有者が資産と秘密鍵を自分で管理したまま、検証の権利を第三者のノード運営者に委ねる形です。解釈リリースは脚注で、この仕組みをノード運営者への「委任(delegate)」と呼ぶネットワークがあると説明しています。Cardano の公式ドキュメントも、委任の仕方にかかわらず ADA はいつでも通常どおり使えると書いており、資産を預けない点で、この類型の説明とよく重なります。

報酬の分け方も対応しています。Cardano では、プールの報酬からまず運営者が申告した固定費が差し引かれ、次に申告したマージン(割合)が差し引かれてから、委任者に配分されます。解釈リリースは、ノード運営者が報酬額を保証したり設定したりしない限り、手数料を定額でも割合でも差し引いてよいとしています。SEC はこの運営者の役割を「事務的・定型的」なものと位置づけ、報酬はネットワークへの役務の対価であって、他人の経営努力から生まれる利益ではないと説明しました。

反対に、解釈の範囲から外れる条件も示されています。事業者が、いつ・どれだけステークするかを自分で決める場合や、報酬額を保証・設定する場合です。「利回り○%を約束」と打ち出すサービスは、この線の外側にあります。

3. 日本の委任者にとって、変わること・変わらないこと

今回の FAQ も3月の解釈も、米国の証券法をどう読むかという話で、日本の法律を変えるものではありません。日本では別の流れとして、7月15日に暗号資産を資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移す改正法が成立し、7月23日に公布されました(令和8年法律第64号)。暗号資産は「有価証券とは別の金融商品」と位置づけられ、暗号資産の部分は公布から1年以内に施行されます。

この改正法でステーキングに関わるのは、利用者から暗号資産を借り入れる業務を規制の対象に加えた部分です。土台になった金融審議会ワーキング・グループの報告(2025年12月10日)は、個人から借りた暗号資産をステーキングなどで運用する事業では、利用者が事業者の信用リスクやスラッシングのリスクを負うとして、リスク管理体制やリスク説明、広告規制を求めました。いつでも返還を求められる実質的な預かりは「借入れ」ではなく「管理」として扱う、とも整理しています。

自分のウォレットから ADA をプールに委任する場合は、事業者に暗号資産を貸すわけではないため、この借入れ規制が想定する形とは異なります。米国の預かり証の条件と日本の借入れの整理は、どちらも「資産が利用者の手元にあり、事業者が使えないかどうか」で線を引いている点で共通しています。

税金の扱いは、現時点では変わっていません。国税庁の FAQ(問1-7)は、ステーキングで得た暗号資産を、取得した時点の時価で所得に算入するとしています。令和8年度税制改正大綱(2025年12月26日)は、登録された暗号資産を取引業者に売却した所得を20%の分離課税とし、改正金商法の施行日が属する年の翌年1月1日から適用するとしましたが、大綱の中にステーキングという言葉は出てきません。

次に確かめる場所

米国側の次の節目は10月20日です。SEC が8月18日に提案した Regulation Crypto Assets(整理番号 S7-2026-27)の意見募集がこの日に締め切られ、規則案ページに集まる意見書から、ステーキングや預かり証の扱いを規則本文にどこまで書き込むべきかという議論の行方が見えてきます。FAQ は「最終更新日」を持つ文書で、同じページに問いが追加されていきます。

日本側は、改正金商法の施行(公布から1年以内)に向けて金融庁が公表する内閣府令案です。取り扱える暗号資産の基準や業務管理体制の細目はここで決まります。金融庁の報道発表資料に意見募集が載ったとき、交換業者を通じたステーキングにどんな体制が求められるのかを確かめられます。

ことば

  • プロトコルステーキング — SEC の解釈リリースでの呼び方で、PoS ネットワークの仕組みに沿って暗号資産をステークし、検証に参加して報酬を得ること。ソロ・委任型・カストディ型・リキッドの4類型に分けて整理されました。
  • 預かり証トークン — リキッドステーキングで資産を預けた人が受け取るトークン。預けた資産と報酬を請求できる証明で、預けたまま取引や担保に使えます。Cardano の標準的な委任ではこのトークンは発行されません。
  • 固定費とマージン — Cardano のプール運営者が報酬から受け取る2つの手数料。固定費は報酬から先に差し引かれる一定額、マージンは残りに対する割合で、どちらも運営者がプール登録時に申告します。SEC の解釈が「定額でも割合でも可」とした手数料の形に、そのまま対応します。

一次ソース / 関連リンク