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1 NIGHT が生む DUST は 5、満タンまで約 1 週間——Midnight の手数料資源が湧く速さと消える速さ

2026-08-11SIPO

Midnight の取引手数料を払うのは、ネイティブトークンの NIGHT ではありません。NIGHT を保有していると自動的に湧いてくる DUST という資源が、その役割を担います。この二層構造の考え方については前回の記事で扱いました。ここで見るのは、その先にある具体的な数字です。1 NIGHT からいくつの DUST が湧くのか、満タンまでどれくらいかかるのか、NIGHT を動かしたら DUST はどう減るのか。手数料の払い方は、ネットワークを使い続けた人の手元に何が残るのかという話であり、保有量に紐づくガバナンスの重みをどこに置くかとも地続きです。開発者向けドキュメントに記載されているパラメータを、順に確認していきます。

■ 1 NIGHT が生む DUST は 5、満タンまで約 1 週間

Midnight の開発者ドキュメントは、DUST の初期パラメータを次のように定めています。

night_dust_ratio = 5_000_000_000; // 5 DUST per NIGHT
generation_decay_rate = 8_267; // ~1 week generation time
dust_grace_period = Duration::from_hours(3)

読み方はそのままで、NIGHT を 1 保有していると、最大 5 DUST まで湧きます。公式ブログも「Every 1 NIGHT generates a maximum capacity of 5 DUST」(1 NIGHT ごとに最大容量 5 DUST が生成される)と同じ比率を示しています。そして満容量に達するまでの時間が、およそ 1 週間です。ブログ側の表現では「Full capacity is reached over the course of one week」(満容量には 1 週間かけて到達する)となっており、その間の増え方は直線的だと説明されています。

ドキュメントはこの関係を、太陽光パネルと電気にたとえています。「NIGHT: Analogous to a Solar Panel. It is a valuable asset you hold. DUST: Analogous to Electricity.」(NIGHT は太陽光パネルに相当する、保有する価値ある資産。DUST は電気に相当する)という置き方です。パネルは売らずに持ち続け、そこから出てくる電気を使う。使っても、パネルは減りません。

満容量に到達したあとは、生成された分と減衰した分が釣り合う状態になります。つまり「1 週間で満タン」というのは、空の状態から使い始めるまでの立ち上がり時間であり、そこから先は湧き続ける水位の話になります。単位も細かく定義されていて、NIGHT は Star(1 NIGHT = 10^6 Stars)、DUST は Speck(1 DUST = 10^15 Specks)が最小単位です。

■ 溜まる・満ちる・減る・尽きる——四つの区間

DUST の残量は、時間を四つの区間に分けて計算されます。ドキュメントの記述はこうです。「1. Generating: From creation to Capacity (or NIGHT spend). 2. Constant (maximum): At capacity until NIGHT spend. 3. Decaying: From NIGHT spend until value hits zero. 4. Constant (zero): Forever after.」(生成中:作成から容量到達まで。一定:容量に達してから NIGHT が使われるまで。減衰中:NIGHT が使われてからゼロになるまで。ゼロで一定:以後ずっと)。

ここで区間を切り替えるスイッチは、DUST を使ったかどうかではなく、裏付けとなっている NIGHT が動いたかどうかです。「Once the backing NIGHT is spent, DUST immediately starts to decay, even if it was still in the generation phase.」(裏付けの NIGHT が使われた時点で、たとえまだ生成途中であっても DUST はただちに減衰を始める)と明記されています。生成が終わるのを待ってはくれません。

減衰にかかる時間も生成と対称で、公式ブログは「It takes one week for DUST to fully decay if the associated NIGHT has been transferred」(紐づいた NIGHT が移された場合、DUST が完全に減衰するまで 1 週間かかる)としています。ただし NIGHT を送った側にはお釣りの UTXO が残り、そこから新しい DUST の生成が始まります。保有量を減らせば、最大容量もそれに応じて自動的に調整されます。手元の NIGHT を動かすと、古い側は 1 週間かけて枯れ、新しい側は 1 週間かけて満ちる——その入れ替わりの最中は、使える手数料資源が一時的に薄くなる、という理解になります。

■ Cardano 側の残高を、Midnight 側が見ている

もう一つ、Cardano の保有者にとって直接関わるのが、DUST がどこの残高を見て湧いているのかという点です。Cardano 上の NIGHT(cNIGHT)から DUST が生成される流れは、Midnight 側の Native Token Observation Pallet が担うクロスチェーンの処理として説明されています。「Any time a cNIGHT UTXO is created (received) or spent (sent) by that address, the event is broadcast.」(そのアドレスで cNIGHT の UTXO が作成(受取)または使用(送付)されるたびに、イベントがブロードキャストされる)とあり、受取なら DUST の生成イベント、送付なら破棄イベントが対応して生まれます。

そのためには事前の紐づけが必要です。ドキュメントは手順の最初を「User registers their Cardano reward address + DUST public key on Cardano.」(利用者は Cardano 上で、自分の Cardano リワードアドレスと DUST 公開鍵を登録する)と記しています。そして「A new DUST UTXO is created if and only if a NIGHT UTXO is created and its key has a table entry.」(新しい DUST UTXO が作られるのは、NIGHT UTXO が作られ、かつその鍵が登録表に存在する場合に限る)という条件が置かれています。保有しているだけで自動的に湧く、という言い方は正確ですが、その手前に登録という一手が挟まる設計です。

■ 開発者が、利用者の手数料を肩代わりできる

DUST は譲渡できません。ドキュメントは「DUST is a shielded capacity resource only for gas. You cannot transfer DUST between users.」(DUST はガス専用のシールドされた容量資源であり、利用者間で移転できない)と定めています。公式サイトの NIGHT 解説も「It cannot be sent between wallets to settle debts or purchase goods.」(債務の決済や商品の購入のためにウォレット間で送ることはできない)としています。売買される市場を持たない、というのがこの資源の性格です。

一方で、肩代わりは構造として認められています。公式サイトは「Developers can hold NIGHT to generate enough DUST to cover transaction fees for their users. This allows applications to be ‘free’ at the point of interaction.」(開発者は NIGHT を保有して、利用者の取引手数料を賄えるだけの DUST を生成できる。これにより、アプリケーションは利用の時点で「無料」になりうる)と説明し、これを self-funding DApps と呼んでいます。DUST を送るのではなく、開発者が保有する NIGHT から湧いた DUST が利用者の取引に充てられる、という形です。

この二つは矛盾しません。移転できないのは「資源を売買の対象にしない」ためであり、肩代わりが成り立つのは「誰の取引に使うか」を手数料の支払い側が指定できるためです。利用者が最初にトークンを買わなくても使い始められる導線は、ここから引かれています。

■ 何を見ておくか

今回確認した数字は、ドキュメント上で INITIAL_DUST_PARAMETERS、つまり初期パラメータとして置かれているものです。1 NIGHT あたり 5 DUST という比率も、約 1 週間という生成時間も、運用の中で調整されうる値として読むのが妥当でしょう。見ておく点を三つに絞ります。

ひとつは、これらのパラメータが変更されるかどうかと、変更の決め方がどこに置かれるか。ふたつめは、実際の利用で DUST の再生が消費に追いつくかどうか——1 NIGHT で 5 DUST という上限が、どれくらいの取引量に相当するのかは、手数料の実測が出てから分かる話です。三つめは、ネットワークの遅延を吸収するために置かれた 3 時間の猶予(DUST Grace Period)が、実運用でどう働くか。ドキュメントは「A transaction is accepted if its timestamp is within this window relative to the block time.」(取引は、そのタイムスタンプがブロック時刻に対してこの窓の内側にあれば受理される)と説明しています。

設計の考え方は、数字が入ることで初めて検証できる形になります。パネルの大きさと、電気の湧く速さは分かりました。あとは、どれだけ電気を使う暮らしなのかという話です。


一次ソース / 関連リンク