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エポックな日々

預け先を、選び直す──創業企業がDRepを降り、コア開発の担い手が移った5日間:エポック647

2026-08-08SIPO

エポックな日々:647(2026年8月3日 午前6時44分頃 〜 8月8日 午前6時44分頃)

序章:預けたものは、誰かの手の中にある

委任という行為は、二重になっています。ADAをステークプールへ預けると、ブロック生成を支える力になります。同じADAをDRepへ預けると、国庫や憲法やパラメータについての判断の重みになります。どちらも、自分の資産を手放さずに、自分以外の誰かへ判断を託す仕組みです。

エポック647は、その「託す先」が複数の層で同時に動いた5日間でした。

創業に関わった企業が、DRepの登録を取り下げる予定だと告知しました。預け先そのものが消えるということです。Cardanoのコア開発の一部は、担い手となる組織が入れ替わりました。ビットコインやほかのチェーンの資産をどこへ動かせるかという線も、初めて外側へつながりました。同じ5日間に、SIPO自身もDRepとして8件の票を投じています。その判断の基準は第2章に書きます。

前回のエポック646を、SIPOは「取り分と、役割」の5日間として記録しました。固定費の下限を下げる提案と、ビットコインを動かす多数決の設計が、同じ期間に並んだ。運営者の収入と、運営者に増える責任を、切り離さずに読む回でした。

エポック647で起きたのは、その次の問いです。取り分と役割が動くなら、それを託す相手をどう選ぶのか。降りる人がいて、入れ替わる担い手がいて、新しくつながる線がある。選び直しの材料が、この5日間にまとめて出てきました。

軸は「預け先を、選び直す」です。

第1章:預け先が、なくなる──EMURGOとYoroiがDRepを手放した

8月3日、EMURGOとYoroiが、自分たちのDRepについて「変更を予定している」と告知しました。投稿の見出しは「EMURGO & Yoroi DRep Update: Upcoming Changes to Our DReps」です。SecondFiの事案で影響を受けた利用者への対応を続けるなかでの判断だと説明されています。これを受けて、Intersectのボードからの退任とDRepの登録抹消が予定されている、という受け止めがコミュニティと報道の双方から出ました。

急な方針転換ではありません。EMURGOは7月にも、5団体で構成されるPentadから離脱しています。SecondFiで起きた事案——約1,600万ADA、当時のレートで約240万ドル相当が374のウォレットから流出したもの——への対応にリソースを集中するため、というのがその時の説明でした。今回はそこからさらに一段、ガバナンスの席を手放す動きになります。

DRepの登録抹消には、委任という観点で実務的な意味があります。DRepはADA保有者が投票権を預ける先です。預け先そのものが登録を取り下げれば、そこに預けていた人は預け先を選び直すことになります。Yoroiはウォレットの画面から自分たちのDRepへ委任できる導線を持っていたため、この見直しは「ウォレットが委任先を兼ねる」構造を一度ほどく作業でもあります。その構造そのものへの批判がコミュニティから出ていたことが、背景として報じられています。

創業に関わった組織が運営の席から降りていくこと自体は、分散化の設計としては想定された方向です。ただし、席が空くこと自体は分散化ではありません。空いた席に誰が座るのか、預け先を失った委任がどこへ向かうのかまで見て、はじめて結果が分かります。

関連して、SIPOは8月4日にひとつ注意喚起を出しました。ウォレットを移行すると、ステークプールとDRepの委任が両方外れます。 新しいウォレットへ資産を移すと、それは新しいステークアドレスになりますから、以前の委任は引き継がれません。プール側の委任が切れることは報酬の変化で気づけますが、DRep側の委任が切れたことは、次に投票が起きるまで気づきにくい。預け先が消えるのと、自分で預けるのをやめてしまうのは、結果として同じ状態になります。

エポック647の終わりに、投票していないDRepの投票力がどれだけ残っていたかは、第3章で数字とともに見ます。

第2章:スクリプトか、鍵か──SIPOが8つの提案を分けた基準

8月7日、SIPOはDRepとして投じた票の記録を公開しました。エポック647までに決着した8つの提案について、賛成4・反対3・棄権1。あわせて、審議中の提案についても1件ずつ投票と理由を出しています。

票の内訳そのものより、分かれ目の置き方のほうを記録として残しておきます。8件を分けた線は、ひとつでした。

賛成した提案は、資金の宛先がすべてスクリプトだった。反対した提案は、資金の宛先がすべて単一の鍵だった。

これは提案の目的の良し悪しではありません。同じ金額、同じ目的でも、資金がスクリプトへ渡るなら、使い道の制約はコードとして働きます。条件を満たさなければ引き出せない。単一の鍵へ渡るなら、制約は約束として働きます。守られるかどうかは、受け取った人の判断に依存します。

暗号資産の文脈で「信頼を最小化する」という言い方をよくしますが、この基準はそれを国庫支出に当てはめたものです。提案者を疑っているのではなく、受け取ったあとに何が起きるかを、人の善意ではなく仕組みで確かめられるかを見ている。

分かれた8件の内訳は次のとおりです。

  • 賛成(4件): Scalus 2026(前回のフィードバックを受けて規模を縮小した点を評価)/Blockfrostの非営利化(商用ベンダーからコミュニティ統治の公共財へ移す設計)/Cardano Enterprise Adoptionのチケッティング(収益分配のあるスクリプト管理の支出)/Bifrostのビットコイン橋 第1フェーズ(SPOのステーク加重署名による分散保管)
  • 反対(3件): Global Order Book(公開レジストリと提案者の自社製品が不可分に束ねられ、受取先が単一鍵)/Cardano Builder DAO(2,000万ADAを単一鍵の口座へ渡し、そこから再配分する構造)/dOSPOとOMFの改訂版(原案を否とした際にSIPOが公開した3条件を満たしていない)
  • 棄権(1件): Alchemy by Sundial x Charms(BTCfiの方向性には賛成だが、憲法適合性の懸念・運営者の未確定・プロトコル収益の未実証が残る)

8件の要求額は合計で約6,700万ADA。結果は、7件が閾値67%に届かず失効し、残る1件(dOSPO)がエポック648の境界で決着しました。それが第3章です。

棄権を「判断しなかった」と読まれることがありますが、Cardanoのガバナンスでは棄権票は批准の分母から外れます。つまり棄権は「この件について、私の投票力は分母に入れないでください」という明示的な意思表示です。賛成でも反対でもない第三の選択肢として設計されている。SIPOが1件だけ棄権に回したのは、方向に賛同しつつ確認できない要素が残る、という状態をそのまま記録するためです。

第3章:409万ADAが、期限を迎えた──dOSPOの失効

エポック647の終了境界、8月8日の朝に、ひとつのガバナンスアクションが期限を迎えて失効しました。

Revised Cardano dOSPO and OMF Program Proposal(Action ID: gov_action19apfhh339syqd0gkrxw6zr6pghdfspckr6vagjrpwnr0hx53lxpsq637y3t)です。財務引出額は4,094,000 ADA。オープンソースの持続性を支える資金を、政治的な影響やDAOの構造から独立した組織で管理する、という構想でした。エポック641に提出され、7エポック分の審議期間を使い切っています。

前回記事の終章で、SIPOはこれを「エポック648までに可決条件を満たすか」という確認点として挙げていました。答えは、満たさなかった、です。

SIPOはこの提案に反対を投じています。理由は第2章のとおり、原案を否としたときに公開した3条件を満たしていなかったこと。反対した提案が実際に失効した形になりますが、これを「読みが当たった」と書くつもりはありません。SIPOの投票力は全体の一部にすぎず、失効の主因は別のところにあります。

その主因が、この5日間を通した論点です。投票していない投票力が、結果を決めている。 エポック646の記事で、開発基盤Scalusの提案が賛成51.83%・明示的な反対12.5%でありながら未投票30.02%を残して落ちたことを書きました。同じ構図が続いています。

いま審議中の提案でも、8月8日朝の時点で数字はこうです。

提案DRep賛成投票済み反対未投票閾値期限
minPoolCostを75 ADAへ(+Plutusメモリ上限)15.58%(40票)0.08%(3票)81.1%67%(+SPO 51%)エポック653
AlphaGrowth Cardano PRIME(1億2,000万ADA)42.73%(118票)11.0%(37票)42.71%67%エポック649
PV12ハードフォークを「von Bergen」と命名31.25%(74票)0.0%(0票)65.14%100%(情報提案)エポック651

minPoolCostの明示的な反対は3票、0.08%です。賛否が割れているのではありません。まだ大半が投票していない、という段階です。SIPOはこの3件すべてに賛成を投じました。

第1章で見た「預け先が消える」動きと、この未投票の厚さは、同じ問題の表と裏です。DRepへ預けた投票力は、そのDRepが投票して初めて力になります。預け先が登録を取り下げれば、その分の投票力は行き先を失う。預け先が残っていても投票しなければ、結果は同じです。

第4章:初めて、外から線が来た──InjectiveとのIBC接続

8月4日、Cardano Foundationが、CardanoとInjectiveがIBCでテストネット接続されたことを発表しました。「Injectiveは Cardano への稼働中のオンチェーンIBCレールを持つ最初のチェーンです」という言い方をしています。

IBC(Inter-Blockchain Communication)は、異なるチェーン同士が中央のリレー業者を介さずに資産とメッセージをやり取りするための規格です。つながると、ADAをInjective側へ、INJをCardano側へ動かせるようになります。

いま動いているのはテストネットであり、本番稼働ではありません。この点は8月7日にSIPOも記事の見出しで明示しました。ただ、「他のチェーンからCardanoへ入ってくる標準的な経路」が初めて実装されたことの意味は小さくありません。相互運用の議論が、仕様の話から接続の話に移ったということです。

ここで、前号との接続が効いてきます。エポック646では、第三者のブリッジが破られた直後に、Bifrostの「専用トークンを持たず、参加SPOのステーク加重多数決でBTCを動かす」設計が説明されました。橋の管理を誰に預けるか、という問いでした。IBCは別の答えを出しています。誰かに預けるのではなく、両方のチェーンが互いの状態を検証し合うという設計です。

預け先を減らす方向と、預け先の分散を強める方向。どちらが正しいという話ではなく、資産の種類と相手のチェーンによって使い分けられる選択肢が増えた、と読むのが正確でしょう。

同じ週には、Cardano Foundationが「HydraとLeiosは競合ではなく補完関係にある」と改めて説明しています。Leiosがベースレイヤーの処理量を引き上げ、Hydraは既知の参加者どうしの高速な取引を担う。外へつながる話と、内側を速くする話が、同じ数日のなかで並びました。

第5章:担い手が移る──コア開発4機能のICAN Group移管

8月7日、Cardanoのコア開発の4つの機能が、IO LabsからICAN Groupへ移ることが共有されました。SIPOの記事の見出しに書いたとおり、チームも責任者も、そのまま移ります。

組織が変わって人が変わらない、という移管には、読み方があります。ソフトウェアの継続性は、リポジトリの所有者ではなく、コードを理解している人の連続性に依存します。誰が給料を払うかが変わっても、誰がバグを直せるかが変わらなければ、動き続ける確度は保たれる。

とはいえ、これは「何も変わらない」という意味ではありません。予算の出どころが変われば、優先順位の決め方も変わります。エポック644で、コミュニティが国庫から支えると決めたのは、Mithril、ハードウェアウォレット、開発ツール、ガバナンス運営といった、すでに使われている基盤でした。エポック645では、Blockfrostの非営利化提案が閾値に届かず、「見えないインフラを誰が支えるのか」という問いが残りました。

コア開発の担い手が移ることは、その問いの続きです。創業組織が担ってきた部分を、別の枠組みへ移していく。第1章のEMURGOのDRep見直しと、方向としては同じ地図の上にあります。Cardanoが特定の一組織に依存する度合いを、実務のレベルで下げていく作業が、ガバナンスと開発の両側で進んでいる、というのがエポック647時点の見え方です。

観察を続ける点も書いておきます。移管そのものは告知で分かりますが、移管後にリリースの頻度や、課題への応答速度がどう変わるかは、しばらく時間が経たないと分かりません。ここは断定せず、次のエポック以降で見ます。

第6章:署名の隣に増えた作業と、テストネットの一周

運営者が手を動かす話も、この5日間に二つありました。

ひとつめは、MithrilのDMQノードです。 8月6日、SIPOは「DMQノードがbetaで本番ネットワークに載りました——Mithrilシグナー運用者に増えたひとつの作業」という記事を出しました。Mithril v2630.0で、DMQノードが release-mainnetrelease-preprod の両方でstable(beta)へ昇格しています。

Mithrilは、フルノードの同期を軽くするための署名の仕組みです。多数のSPOが署名を持ち寄って証明書を作り、新しく参加するノードがチェーン全体を最初から検証しなくても、その証明書を信頼して短時間で追いつける。エポック644で、コミュニティが国庫から支えると決めたあの基盤です。DMQは、その署名をやり取りする拡散の層にあたります。

同じリリースには破壊的変更も含まれます。CardanoImmutableFilesFull 証明書タイプのサポートが削除され、CardanoDatabase への移行が必要になりました。要件はCardano Nodeが10.7.1以降、DMQ環境ではDMQノードが0.7.0.0以降です。

投票と違って、こちらには「未投票」がありません。やるか、動かなくなるかのどちらかです。ガバナンスの話題が続く時期ほどこの種の更新は静かに流れていきますが、ネットワークの可用性を実際に支えているのはこちら側です。

ふたつめは、Leiosです。 8月8日、Input Outputから、Leiosがテストネット MusashiNet 上でエンドツーエンドで動いているという報告がありました。ノードが同期し、エンドーサーブロックが証明され、トランザクションがテストネット上を実際に流れている、という状態です。あわせて、Earthフェーズで設計の堅牢性が確認できたこと、そして次のWaterフェーズへ進むことが示されました。

Musashi Dojoと名づけられたこのテストネットは、Earth(基本設計の検証)、Water(パラメータの探索)、Fire(実機・OS・ハードウェア構成を広く試す段階)、Wind(敵対的なテスト)、Void(メインネット前の最終段階)という五つの段で進みます。プール運営者が広く関わるのは、Fireフェーズです。

「エンドツーエンドで動いた」という報告の意味は、個々の部品が動いたということではありません。ブロックの生成・証明・伝播という一連の流れが、テストネット全体として成立した。設計図の段階から、動く系としての検証段階へ移ったと読めます。

なお、同じ期間には開発側の道具も動きました。Midnightが開発者向けのAIツールキットを二本立てで公開しています(Kapa MCPとMidnight Expert)。Compactのような新しい言語はAIモデルの学習データにほとんど含まれておらず、そのままではもっともらしいが通らないコードが返る。知識の側をドキュメントに固定し、検証の側を実際のコンパイルと実行で確かめる、という二段構えでした。推測で埋めさせないという設計思想は、第2章でSIPOが投票の基準に置いた「約束ではなく仕組みで確かめる」と、同じ形をしています。

第7章:エポック647 市場指標・KPI分析

マクロ12指標(エポック647期間・8月3日〜8月7日の日次記録)

ADAは記録の初日8月3日に$0.189234、最終日8月7日に$0.203826。この5日間の記録のなかでの最高値も8月7日の$0.203826で、期間を通じて上昇しました。ただし12指標は1日1回の記録なので、日中の高値ではありません。エポック境界の確定値では、エポック646終了時の$0.1896からエポック647終了時の$0.2014へ、+6.2%です。日次記録の最終行(8月7日朝)と境界(8月8日朝)で数字が違いますが、これは見ている時計が違うためで、矛盾ではありません。時価総額は$7.08bから$7.52bへ増えました。

$NIGHTは$0.01983 → $0.01906と下落し、ADAとは逆方向に動いています。BTCは$63,520 → $64,315、ETHは$1,887.71 → $1,902.66で、いずれも小幅高。ADAの上げ幅が暗号資産全体より大きい期間でした。

株式は、S&P500が7,489.72 → 7,709.96(+2.9%)、ナスダックが25,373.85 → 26,348.35(+3.8%)、日経平均先物が63,370 → 65,725(+3.7%)と、そろって上昇しています。VIXは15.99 → 15.15へ低下し、期間中は一貫して16台前半以下でした。

為替と金利では、USD/JPYが157.256から158.468へと円安方向。ドル指数(DXY)は99.642から99.965とほぼ横ばい、米10年債利回り(TNX)は4.745%から4.67%へ低下しました。

商品は動きが大きく出ました。金が$4,125.90 → $4,299.10(+4.2%)、期間中の記録上の最高は8月6日の$4,308.0です。原油はWTIが$80.73から8月6日の$75.13まで下げ、8月7日に$78.10へ反発、ブレントは$90.12 → $83.33。記録上の地合いも、初日の「リスクオン」から最終日の「原油急騰×株式軟調の警戒局面」へと変わっています。株式は上げ、金も上げ、原油が振れる。方向が揃わない期間でした。

暗号資産関連株のCOINは146.26 → 145.41とほぼ横ばいで、ADAの上昇には連動しませんでした。

Cardano オンチェーンKPI(Dune Analytics経由)

※自動集計の基準日は2026年8月6日 23:59:48 UTC(エポック647の期間内)です。ステーキング関連はエポック647:100%時点の値を第9章に併記します。

  • ステーキング率:57.45%(Dune算出・8月6日基準)/エポック647:100%時点の実測では57.14%
  • Nakamoto係数:164(前回164・横ばい)
  • 日次トランザクション:21,636(8月6日)/前号の基準日は15,650でしたから、約38%増
  • アクティブアドレス:11,310/前号の9,273から約22%増
  • Script Tx比率:34.97%/前号の32.69%から上昇
  • ステーブルコイン総額:$59.33M(USDCx $40.77M/USDM $9.64M/USDA $4.45M/Djed $2.24M/iUSD $1.62M/USDC $0.48M ほか)
  • Treasury残高:1,444,502,386 ADA(エポック647基準)/前号の1,473,763,718 ADAから約2,926万ADA減
  • ガバナンス:提案中 6件/批准 0件/失効 68件(8月6日 23:59:48 UTC 基準)

三つ、読みを添えます。

トランザクションとアクティブアドレスの同時増は、片方だけが伸びるより素直な形です。取引が38%増える一方でアドレスが22%増えている。少数のアドレスが取引を積んだのではなく、参加している主体そのものが増えた期間だったと読めます。Script Tx比率も32.69%から34.97%へ上がっており、増えた取引にスマートコントラクトの利用が含まれていることを示します。8月6日にFluidTokensがFluid Lending上のUSDM需要を告知し、8つある市場のうち6つが利用率99.5〜100%に達していると説明していました。DeFi側の活動と方向は一致しています。ただし因果は断定しません。

失効件数が64件から68件へ4件増えたのは、エポック647の境界で期限を迎えた4件(Bifrost・Global Order Book・Scalus・Net Change Limit)が反映されたためで、前号の第1章で扱った分です。

Treasury残高の約2,926万ADA減は、エポック646で可決した2026年度予算の執行が進んだことを示します。国庫は「増えないこと」ではなく「決めたとおりに出ていくこと」で機能します。

SIPO DRep 活動

SIPO DRepの投票力は、2026年8月8日朝の取得時点で約₳88.43Mです(active・有効期限エポック667)。エポック644記事の時点では約₳86.03Mでしたから、その後₳2.4Mほど増えています。取得した時点の値であり、エポック境界で固定した値ではありません。

この期間の投票行動は、第2章のとおりです。決着した8件の記録公開と、審議中の提案への投票を、8月7日にまとめて出しました。

第8章:エポック647 配信記事の紹介

エポック647(8月3日〜8月8日)にSIPO・SITIONの各アカウントから配信した主な記事です(暗号資産・ブロックチェーン関連を中心に抜粋)。

日付媒体種別タイトルURL
8/3@SIPO_Tokyoエポックな日々取り分と、役割──SPOの収入の床と、ビットコインを動かす多数決が並んだ5日間:エポック646https://sipo.tokyo/post-47203/
8/3@SIPO_Tokyo速報Scalus v1.0.0がリリース、Cardanoコミュニティが3年間の支援に謝意https://sipo.tokyo/breaking-x-2084272599618527607/
8/3@SIPO_TokyoDaily Intel開発の「見える化」が同じ週末に二つ届く——DevXの進捗サイトとMidnight Explorer APIhttps://x.com/SIPO_Tokyo/status/2084079005825950005
8/4@SIPO_TokyoDaily Intel創業企業が、ガバナンスの席を降ります——EMURGOとYoroiがDRepの見直しを告知https://sipo.tokyo/daily-intel-20260804/
8/4@SIPO_Tokyo速報CardanoとInjectiveがテストネットでIBC接続、クロスチェーン資産移動が実現https://sipo.tokyo/breaking-x-2084293242330222885/
8/4@SIPO_TokyoSignalウォレットを移行すると、ステークプールとDRepの委任が両方外れますhttps://sipo.tokyo/signal-20260804-884417bf/
8/4@SIPO_TokyoSignal次のハードフォークに何が入るか、が決まる段階に来ていますhttps://sipo.tokyo/signal-20260804-024af358/
8/4@SIPO_Tokyo速報Midnight Improvement Proposal(MIP)プロセスがプロトコル進化を推進https://sipo.tokyo/breaking-x-2084631913633812777/
8/5@SIPO_TokyoDaily Intel小さなプールの固定費を下げる提案が、投票に入りましたhttps://x.com/SIPO_Tokyo/status/2084752085816598780
8/5@SIPO_Tokyo速報Cardano財団、ブラジルのスポーツ団体とのパートナーシップ第1段階を完了https://sipo.tokyo/breaking-x-2084675542851223712/
8/5@SIPO_Tokyo速報RealFi、1ヶ月で3,000以上のウォレットを活性化https://sipo.tokyo/breaking-x-2084995535790842076/
8/6@SIPO_TokyoSignalDMQノードがbetaで本番ネットワークに載りました——Mithrilシグナー運用者に増えたひとつの作業https://sipo.tokyo/signal-20260806-b42d114d/
8/6@SIPO_TokyoDaily Intel貸せるドルが足りていません——Fluid Lendingの8市場中6つが利用率ほぼ100%https://x.com/SIPO_Tokyo/status/2085126741182550387
8/6@SIPO_TokyoSignalCardanoのビルダー13チームがDraper Universityに入りますhttps://sipo.tokyo/signal-20260806-c99b6840/
8/6@SIPO_TokyoSignalMidnightがLumeraと提携 — プライバシー基盤に分散ストレージを組み合わせるhttps://sipo.tokyo/signal-20260806-fd8ccf83/
8/6@SIPO_Tokyo速報Cardano憲法の改正ポータルがアルファテスト開始https://sipo.tokyo/breaking-x-2085274768308080695/
8/7@SIPO_TokyoDRep記録エポック647の8提案をどう投票したか ― 賛成4・反対3・棄権1を分けたのは「資金の預け先」https://sipo.tokyo/sipo-drep-epoch-647-eight-proposals-summary/
8/7@SIPO_TokyoDRep記録『minPoolCostを75 ADAへ引き下げ/Plutusメモリ上限(Part 2)』に賛成https://sipo.tokyo/sipo-drep-reduce-minpoolcost-75-ada-plutus-memory-part2/
8/7@SIPO_TokyoDRep記録『AlphaGrowth Cardano PRIME(120,000,000 ADA)』に賛成(Yes)https://sipo.tokyo/sipo-drep-alphagrowth-cardano-prime-120m-ada/
8/7@SIPO_TokyoDRep記録『Update Constitutional Committee 2026』に賛成(Yes)https://sipo.tokyo/sipo-drep-update-constitutional-committee-2026/
8/7@SIPO_TokyoDRep記録PV12のハードフォークを「von Bergen」と名づける提案に賛成(Yes)https://sipo.tokyo/sipo-drep-name-pv12-hard-fork-von-bergen/
8/7@SIPO_TokyoSignalCardanoがIBCでInjectiveとつながりました——いま動いているのはテストネットですhttps://sipo.tokyo/signal-20260807-bef81dc3/
8/7@SIPO_TokyoSignalCardanoのコア開発4機能がIO LabsからICAN Groupへ移ります——チームも責任者も、そのままhttps://sipo.tokyo/signal-20260807-6e246df2/
8/7@SIPO_TokyoSignalMidnightの開発支援ツールが二本立てになりました——Kapa MCPとMidnight Experthttps://sipo.tokyo/signal-20260807-42f24f43/
8/7@SIPO_TokyoDeep DiveCardano憲法を直す入口が開いた — CAPポータルの使い方と、参加すると何が変わるかhttps://sipo.tokyo/cap-portal-alpha-guide/
8/7@SIPO_TokyoCharles動画「Wallets in 2026」紹介・解説・全翻訳:AIが攻撃者の制約を外した後、資産をどう守るかhttps://sipo.tokyo/post-47253/
8/8@SIPO_TokyoDaily IntelLeiosがテストネットで一周しました——設計の確認が終わり、次の検証段階に入りますhttps://sipo.tokyo/daily-intel-20260808/
8/8@SIPO_TokyoSignalMidnightはNIGHTを燃やさない——DUSTという「再生する資源」が手数料を払う設計https://sipo.tokyo/signal-20260808-76833237/
8/8@SIPO_TokyoSignalCardanoの開発ツール地図が公開されました——重複と空白が見える形に、Hydraは次の性能改善へhttps://sipo.tokyo/signal-20260808-e90f938c/
8/6@SITIONjpSignal金融庁に「暗号資産・ステーブルコイン課」——組織図が示す制度化の次段階https://x.com/SITIONjp/status/2085197120513212667
8/7@SITIONjpSignalCLARITY Act、上院が採決を9月へ先送り──締切は妥協を強制しなかったhttps://x.com/SITIONjp/status/2085691675062452722
8/7@SITIONjpSignalCircle Arcの創設バリデータにBlackRock・Visa・DTCC——法が動かない間に、レールが決まるhttps://x.com/SITIONjp/status/2085668161177993705
8/4@SITIONjpSignalStrategyが取得平均を下回る価格でビットコインを売ったhttps://x.com/SITIONjp/status/2084431931844993080

*(このほか、@SIPO_Tokyoは毎朝のDaily Intelと随時の速報、@SITIONjpは12指標・Event Risk Radar・Daily Intel、@LifeMakersComはAIを中心としたDaily Intel・Deep Dive・星読みをこの期間も配信しています)*

第9章:エポック647 終了時点 ステーキング動向

エポック647:100%時点のSIPO 3プール合計は、有効ステーク ₳105.23M / ライブステーク ₳105.38M / 委任者 2,195名でした。エポック647のブロックは90(前エポックから−4)、Lifetime累計は46,542に達しています。

プール有効ステークライブステーク委任者ep647ブロックLifetime
SIPO₳44.03M₳44.04M1,1433519,785
SIPO2₳33.62M₳33.62M4793014,854
SIPO3₳27.58M₳27.73M5732511,903

今回の特徴は、増えた分がほぼ一つのプールに集中したことです。

ライブステークの合計は105,234,284.64 ADAから105,377,857.89 ADAへ、₳143,573増えました。内訳を開くと、SIPOが₳2,902増、SIPO2が₳4,460、そしてSIPO3が₳145,132増。合計の増加は、事実上SIPO3の単独です。同じ期間にSIPO3の委任者数は572名から573名へ1名増えていますから、まとまった額の委任が一件入った、と読むのが自然でしょう。

委任者数の合計は2,195名で、前エポックと同じです。SIPO2が480名から479名へ1名減り、SIPO3が1名増えて、差し引きゼロ。同じ5日間にADAは境界価格で6.2%上がっていますが、委任の構成はほとんど動いていません。価格と委任は別の時計で動く、というのが今回も出ています。

ブロックは94から90へ、4減りました。プール別ではSIPOが38→35、SIPO2が28→30、SIPO3が28→25です。直近5エポックでは103(643)→103(644)→84(645)→94(646)→90(647)と推移しています。ブロック生成は確率的なので、1エポック単位の増減に意味を読みすぎないようにしています。3プールを束ねると期待値に寄っていく、というのが複数プール運用の意味です。

有効ステークとライブステークの照合も、今回きれいに通りました。エポック647の有効ステーク合計105,234,284.64 ADAは、エポック646終了時点のライブステーク合計と小数点以下まで完全に一致しています。プール単位でも、SIPO 44,034,554.67/SIPO2 33,619,505.39/SIPO3 27,580,224.58の3件すべてが一致しました。ライブは今の預かり、有効は1エポック前のライブが確定したもの。2つの時計は、ずれているのではなく、1エポック分ずれるのが正しい動作です。

ネットワーク全体では、エポック647の集計で総サプライ₳37.66b、総ステーク₳21.52b、ステークを持つプール2,693、総ウォレット5,929,814、総委任1,347,175。ステーキング率は56.98%(646)から57.14%へ上昇しました。ウォレットは5日間で約4,400増えています。

詳しい内訳は、本日朝に公開したステーキング状況スレッドをご覧ください( https://x.com/SIPO_Tokyo/status/2085857560914244080https://x.com/SIPO_Tokyo/status/2085859277995159618 )。

終章:選び直す、ということ

エポック646の終わりに挙げた確認点を、一つずつ答え合わせします。

minPoolCostとPlutusメモリ上限は、投票が続いています。8月8日朝の時点でDRep賛成15.58%、明示的な反対0.08%、未投票81.1%。期限はエポック653です。SIPOは賛成を投じ、その理由を公開しました。ただし、SPO・委任者・DApp・ノード負荷という四つの視点それぞれの根拠が公開文書として揃ったかというと、まだです。持ち越します。

憲法委員会の入れ替えActiongov_action1w2w64uhelz0cg2np7m37hal905tdd7jpzm3fcyc3g7qvkwgfppgqqfsggt5)は、エポック646に提出され、期限はエポック653。選出された候補が任期エポック799まで務める設計であることが提案本文で確認できました。SIPOは賛成を投じています。なお本アクションについては、投票集計側が憲法委員会の票数フィールドを返さないため、SIPOが日常使っている検証経路では票の内訳を取得できませんでした。取得できなかったものを推測で埋めることはしません。 数値は次回、取得できた時点で書きます。

Cardano PRIMEは、期限のエポック649(8月13日)が次の境界です。8月8日朝の取得時点でDRep賛成42.73%、明示的な反対11.0%、未投票42.71%。前号の取得時点は33.26%でしたから9ポイント以上伸びましたが、閾値67%までは24ポイント以上あります。SIPOは賛成を投じました。

dOSPOとOMFは、第3章のとおり、8月8日の境界で失効しました。要求額4,094,000 ADA。可決条件は満たされていません。

Bifrost失効後については、参加SPO数、ステーク加重の閾値、監査、鍵管理、インセンティブが公開文書として整理された形は、この5日間では確認できませんでした。持ち越します。

Daedalusの執行は、Enactedへ移行しましたenacted_epoch=647)。財務引出額1,785,333 ADA、DRep賛成比率77.06%。前号で「Ratifiedのまま、執行は次へ持ち越し」と書いた分の答えが出た形です。あわせて8月7日にはDaedalus 11.2.0が公開され、一部のLinux環境で起きていた起動時のクラッシュが修正されました。保守・改善は動いています。

ツール採用の実証は、部分的に進みました。Scalusはv1.0.0に到達(8月3日)、RealFiは1か月で3,000以上のウォレットを活性化したと報告(8月5日)、8月8日にはCardanoの開発ツール地図が公開され、重複と空白が見える形になりました。ただし、SundaeSwap v4やGravityDEX Preprodの利用・性能・コストの記録は、まだ出ていません。持ち越します。

7件のうち、確定したものが2件、途中のものが3件、持ち越しが2件です。すべてに同じ種類の答えが出るわけではありません。確定と途中と未取得を混ぜずに記録することが、この連載でやろうとしていることです。

そのうえで、エポック648で確認すべきものを挙げます。

1. Cardano PRIMEの決着:期限はエポック649(8月13日)。賛成42.73%が閾値67%へ届くか、未投票42.71%のまま期限を迎えるか。次の境界で答えが出ます。 2. EMURGOとYoroiのDRep登録抹消:告知から実行までには手続きの時間があります。実際にオンチェーンで抹消されるか、そして預けられていた委任がどこへ動くか。 3. minPoolCost提案の投票の伸び方:DRepの未投票81.1%が動くか。そしてSPO側の有効投票ステークが51%へ向かうか。自分たちの固定費に関わる提案で、運営者がどれだけ投票するかが測られます。 4. InjectiveとのIBC:テストネットから本番へ進むか、実際の資産移動が観測されるか。 5. ICAN Groupへの移管後:リリースの頻度と、課題への応答速度が変わらないか。 6. DMQノードの移行状況:破壊的変更を含むv2630.0が、SPO側でどこまで反映されるか。 7. 取引とアドレスの水準:日次21,636件・アクティブアドレス11,310・Script Tx 34.97%が、この水準で推移するか、戻るか。

エポック647は、大きな決定が生まれた5日間ではありませんでした。1件が失効し、3件が投票の途中で、残りは告知と移管と接続です。

けれど、託す先が動いた5日間ではありました。DRepを降りる組織があり、コア開発の担い手が移り、外のチェーンへ線がつながりました。SIPO自身も、資金の宛先がスクリプトか単一の鍵かで自分の票を分けています。

委任は、預けて終わりではありません。預け先が変わることもあれば、預け先が判断しないこともある。だから定期的に、いま自分は誰に何を託しているのかを確かめる必要があります。ウォレットを移したときに委任が外れることも、引退したプールへ委任が残り続けることも、確かめなければ気づけません。

選び直せる状態を保つこと自体が、分散化の中身です。 選択肢が多いことではなく、いつでも選び直せて、その選択の結果が公開の記録に残ること。エポック647に起きたことは、そのための材料が一段増えた、という出来事の集まりでした。

いつもSIPO / SIPO2 / SIPO3へ委任をいただき、ありがとうございます。委任は、ブロック生成を支えるだけでなく、DRepを通じて判断の重みを託す行為でもあります。SIPOはSPO・DRep・観察者として、結論だけでなく、その結論へ至る理由と、まだ答えの出ていない問いを記録し続けます。

出典・参照