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TapTools の空白に、Sundae Labs の Float が姿を見せました——主要 5 DEX の価格・ウォレット・取引履歴を、確定チェーンのデータだけで並べます

2026-09-08SIPO

Cardano の DeFi を横断して見るための分析サイトが、告知よりも先に見つかりました。9 月 7 日の早朝(日本時間)、Charles Hoskinson 氏が「TapTools が止まって以来、毎日訪れる新しいサイトができたようだ」と書いて float.sundae.fi を貼り、SundaeSwap の公式アカウントがそれを引用して「Oops, cats out the bag…(おっと、袋から猫が出てしまった)」と返す、という順番でした。Float は Sundae Labs のドメイン配下で動いている Cardano DeFi の分析面で、主要 5 つの DEX を横断した価格・流動性・取引履歴を、確定したチェーンのデータだけで並べます。DEX を作ってきた側が観測する側にも回る——という動きとして読むと、この数か月の Sundae Labs の展開の延長線上に置ける出来事です。ただし正式な発表はまだ出ていません。何が確かめられて、何がまだ確かめられていないのかから始めます。

■ 実際に何が公開されているのか

Float の入口は float.sundae.fi で、同じデータを返す公開 API が api.float.sundae.fi/v1 にあります。サイト自身の説明は「Float — Cardano DeFi analytics / Live token prices across every DEX, wallet portfolios, and full trade history(すべての DEX を横断したトークン価格、ウォレットのポートフォリオ、完全な取引履歴)」です。

API から取れる数字を実際に見てみます。日本時間 9 月 8 日 14 時 21 分時点で、対象となっている取引の場は 10 件、いずれも chain-verified(チェーン上で検証済み)という扱いです。内訳はプロトコルとして 5 つ——Minswap(v1 / v2 / stable)、SundaeSwap(v1 / v3 / stable)、Splash、WingRiders(v1 / v2)、VyFi——で、集計対象のプールは 395 本。流動性の合計は約 9,036 万 ADA、直近 24 時間の出来高は約 369 万 ADA、取引件数は 3,143 件でした。ランキングに載っているトークンは 189 種類です。

画面の側は、トークンのスクリーナー、銘柄ごとの価格・流動性・出来高・保有者数・FDV、分足から日足までのチャート、そして取引の場をまたいで 1 本にまとめられた取引テープという構成になっています。プール単位の一覧や、アドレスを入れて残高と評価額を見る機能もあります。有料の「Float Pro」は「Coming soon」の表示で、スマートマネーの追跡・追随・ポートフォリオ分析といった項目が予告されている段階です。価格は出ていません。画面には「Markets, charts, and basic wallet research remain free.(マーケット、チャート、基本的なウォレット調査は無料のままです)」と書かれています。

■ 「確定したチェーンのデータだけ」という設計

この種のサイトで珍しいのは、データの出どころについての約束を前面に置いていることです。API の説明文(llms.txt)にはこう書かれています——「Confirmed-chain data only; every response carries meta.as_of ({slot, height, hash}) and meta.finality.(確定したチェーンのデータのみ。すべての応答が meta.as_of(スロット・ブロック高・ハッシュ)と meta.finality を持つ)」。

言い換えると、返ってくる数字には必ず「チェーンのどの時点のものか」が同梱されます。実際、先ほどの数字にもブロック高 13,912,999 という時点が付いていました。分析サイトの数値が食い違う原因は、多くの場合その裏にある集計の時点と範囲が見えないことにあります。時点を毎回名乗る設計は、その食い違いを「どちらが正しいか」ではなく「いつのものか」の話に変えます。

金額の扱いも同じ思想です。API はすべての金額を lovelace などの基本単位の整数文字列で返し、小数点の位置は各資産の decimals から読み手が決める形にしています。「decimals が null なら未確定であって、ゼロと決めつけてはならない」と明記されているのは、丸めの都合で数字が静かにずれることを設計で避けているということです。ブロックの巻き戻しに備えて retract(取り消し)の形も決められています。

■ ただし、まだ「ローンチ」ではありません

ここは書き分けが要る部分です。Float は動いていますが、Sundae Labs から正式な発表は出ていません。公式アカウントの反応は「More details soon!(詳細は近く)」であり、Sundae Labs の Pi Lanningham 氏は同じ日にこう書いています——「Anyone who used taptools heavily, please reach out! This is still very early, but I’d love to hear how you used taptools, and what would bring you to Float every day.(TapTools を使い込んでいた人はぜひ連絡してほしい。まだごく初期だが、どう使っていたのか、どうすれば毎日 Float に来てもらえるのかを聞きたい)」。sundae.fi のプロダクト一覧にも、公式ブログにも、Float の記事はまだありません。

サイト自身の説明にある「every DEX(すべての DEX)」も、実測とは幅があります。対象は 5 プロトコル・10 アダプタで、Cardano には他にも取引の場やアグリゲーターがあります。現時点で言えるのは「主要 5 DEX を横断している」までです。有料機能の中身と価格も、まだ確かめようがありません。公開状態にある、という以上のことは、この記事の時点では書けないということです。

■ TapTools が空けた場所

この件がこれだけ注目されたのは、Cardano の観測面にちょうど穴が空いていたからです。

TapTools は 6 月に 4 年の運営を終えると告知し、稼働を止めました。そして 9 月 2 日、777 ADA × 777 枚の NFT 販売を伴う形で復活を発表します。反発は強く、「搾取的だ」「詐欺かそうでなければ詐欺だ」といった反応が並びました。TapTools は販売を撤回し、参加者へ全額を返金したうえで「We got this one wrong(今回は間違えた)」「読み違えた——空気も、受け取られ方も」と述べています。この記事の執筆時点で taptools.io にアクセスすると、表示されるのは「03: AFTER TAP / UNDER CONSTRUCTION」という 1 画面だけです。

Hoskinson 氏が Float を「毎日訪れる新しいサイト」と呼んだのは、その撤回の 4 日後でした。ただし、Sundae Labs 側が「TapTools の後継」を名乗った事実はありません。Pi 氏の投稿も、後継の宣言ではなく、使っていた人への聞き取りの依頼です。空白があり、そこに別のものが姿を見せた——という以上の因果を、いまの材料で結ぶことはできません。TapTools 自体の位置づけについては、6 月の解説記事で扱っています。

■ 作る側が、見る側にも回るということ

編集の目で見ると、この動きの面白さは Sundae Labs という主体にあります。同社は 7 月末に SundaeSwap v4 を発表し、DEX を「モジュール型の流動性基盤」として作り直す方向を示しました(v4 の解説・8 月 2 日)。8 月には、その新しい設計を試すテストネットに取引コンペを添えて走らせてもいます(Sugar Rush)。流動性を作る側が、市場全体を横断して観測する面まで持つ——という広がり方です。

利点ははっきりしています。チェーンのデータを扱い慣れた主体が作るぶん、確定したデータへの近さや、時点を名乗る設計のような固さが出やすい。一方で論点も残ります。自社の DEX を含む市場を自社が可視化することは、順位や見せ方の設計に立場が入り込む余地を構造として持ちます。今のところ画面は取引の場を横並びに扱っていますが、これは今後も観察に値する部分です。

そしてもう 1 つ、TapTools の一件が残した宿題があります。観測面は無料であることが期待されやすい一方で、チェーンを追い続ける費用は誰かが払っています。Float が無料の範囲を明示し、有料の Pro を別に用意しようとしているのは、その宿題への 1 つの答え方です。どこまでを無料に置くのかは、技術の話であると同時に、この領域のインフラが誰の負担で維持されるのかという話でもあります。

■ 次に見るもの

  • 公式の告知が出るかどうか — 「More details soon」がブログや製品一覧に着地したとき、Float が Sundae Labs の中でどの位置に置かれるのかが分かります。実験なのか、事業なのかの区別はそこで付きます。
  • Pro の中身と価格 — 無料の範囲をどこで区切るかは、TapTools の一件を受けたあとの Cardano で、そのまま受け止められ方を左右します。
  • 対象の取引の場が増えるか — 「すべての DEX」を名乗る以上、現在入っていない場が加わるかどうかは、その言葉の裏付けそのものです。
  • TapTools の「AFTER TAP」が何になるか — 空白が埋まるのか、別の形で戻るのか。観測面が 1 つに寄ることの是非も含めて、続きがあります。

一次ソース / 関連リンク