Cardano のウォレット VESPR は 10 月 26 日朝 (日本時間)、ブラウザで使う VESPR (告知では「VESPR web」) が Keystone と Ledger のハードウェアウォレットに対応したと公式 X で告知しました。パソコンのブラウザで dApp を使いながら、取引の署名は 1 件ずつ手元の端末で確かめる形になり、秘密鍵をネットから切り離した端末に置いたまま Cardano の dApp に触れられます。
VESPR は告知で、dApp の取引はすべて端末での確認が必要だとし、「ブラウザの手軽さと、オフラインに置いた鍵」の両立をうたっています。同じ週末には、Keystone の公式サイトから購入者の配送情報が流出したことも公表されました。ハードウェアウォレットの使い方を確かめ直している方に向けて、今回の対応の中身と、流出の件との関係を整理します。
ブラウザ拡張機能での 2 通りのつなぎ方
VESPR の公式サイトは、パソコン向けの Windows 版や Mac 版のアプリは無く、パソコンでは Chrome ウェブストアから入れるブラウザ拡張機能を使うよう案内しています。今回 Keystone と Ledger が使えるようになったのは、この拡張機能です。公式ドキュメントでは、拡張機能での接続方法が次のように整理されています。
- Ledger — USB ケーブルか Bluetooth でつなぎ、端末側で Cardano アプリを開いておく。Bluetooth を持たない Nano S Plus は USB で使う
- Keystone — ケーブルも Bluetooth も使わず、パソコンのカメラと Keystone のカメラで QR コードを読み合う
- Trezor — 対応していない
Keystone を使うには、マルチコイン版のファームウェアで、バージョン 1.7.0 以降が必要です。拡張機能は最新版を、カメラ付きのパソコンの Chrome か Brave で使うよう求められています。スマートフォン版 (iOS・Android) で Keystone を使う場合は、VESPR 3.8.0 以降が条件です。
拡張機能ならではの作りもあります。ブラウザは USB・Bluetooth・カメラを使う許可の確認を通常のウィンドウでしか出せないため、「ハードウェアウォレットをつなぐ」を選ぶと、VESPR の小さな別ウィンドウが開き、そこで Ledger か Keystone を選びます。ドキュメントは、Arc のように VESPR がツールバーの小さなポップアップで開くブラウザでは署名に制限があり、Keystone の署名はできないと注意しています。
署名は 1 件ずつ、端末の画面で
ハードウェアウォレットをつないでも、VESPR が受け取るのはアカウントの公開鍵だけです。VESPR は残高を表示し、取引を組み立てるところまでを受け持ち、署名そのものは端末の上で行われます。dApp からの署名の依頼は専用の VESPR ウィンドウで開き、内容を確かめてから署名に進む流れです。
Keystone の場合は、Keystone が VESPR の画面に出た依頼の QR コードを読み取り、端末で承認したあと、端末に出た署名の QR コードを VESPR が読み返します。Ledger の場合は、すべての取引を Ledger の画面で確かめて承認します。どちらでも、送金先や金額を最後に見るのはパソコンの画面ではなく端末の画面です。
ドキュメントがいちばん強く警告しているのは、ハードウェアウォレットのリカバリーフレーズを VESPR に入力しないことです。接続の手順でリカバリーフレーズを求められることはなく、「ウォレットを復元」の画面などに入力すると、VESPR はそれを普通のソフトウェアウォレットとして作り直してしまい、鍵は端末に守られなくなります。
Keystone の流出とは別の出来事
Keystone は 10 月 25 日未明 (日本時間) の公式 X で、公式サイトへの不正アクセスにより、購入者の氏名・連絡先・配送先住所・注文内容が第三者に渡ったと公表しました。リカバリーフレーズ、秘密鍵、ウォレットのパスワードは流出の対象外とされています。詳しくは 10 月 26 日の Signal で整理しました。
流出したのはネットショップ側の購入記録で、端末の中の鍵ではありません。VESPR の今回の対応も、端末の鍵を端末に置いたまま使うための仕組みで、流出の件とは別の出来事です。両者が重なるのは、「リカバリーフレーズをどこにも入力しない」という一点です。Keystone は、注文していない交換用の端末が届いても、そこにリカバリーフレーズを入力しないよう呼びかけており、VESPR のドキュメントの警告と同じ方向を向いています。
ブラウザで dApp を使う場面が増えるほど、偽のサイトや偽の拡張機能に触れる機会も増えます。署名の内容を端末の画面で確かめる手順は、その場面でこそ効いてくる守りです。
つなぐ前に確かめること
Keystone をつなぐ前に、端末でファームウェアがマルチコイン版の 1.7.0 以降かを確かめてください。手順は VESPR のドキュメント「Check Keystone Firmware Version」にあります。Keystone の流出については、同社が予告している詳しい報告が公式 X (@KeystoneWallet) と keyst.one で出たときに、影響の範囲を確かめられます。
ことば
- ハードウェアウォレット — 秘密鍵を専用の端末の中に保管し、署名も端末の中で行う機器です。パソコンやスマートフォンがウイルスに感染しても、鍵そのものは外に出ない作りになっています。
- 公開鍵 — 秘密鍵から作られる、外に見せてよい鍵です。VESPR はこれだけを受け取ってアドレスと残高を表示するため、端末をつないでも資産を動かす力は VESPR 側に移りません。
- dApp — ブロックチェーン上のスマートコントラクトを使うアプリです。DEX での交換などがこれにあたり、操作のたびにウォレットへ署名の依頼が届きます。
一次ソース / 関連リンク
- VESPR 公式 X の告知 (VESPR web の Keystone・Ledger 対応)
https://x.com/vesprwallet/status/2114493652743663789
VESPR ドキュメント: Connect a Hardware Wallet
docs.vespr.xyz
docs.vespr.xyz
docs.vespr.xyz

VESPR
- Keystone 公式 X の告知 (不正アクセスと流出範囲の公表)
https://x.com/KeystoneWallet/status/2114054080754770137
