Cardano PRIME が9月24日、第3段階のインセンティブを2〜3か所の取引場所に集中させる方針を連続投稿で説明しました。40か所に薄く配る形を避け、1か所あたりの深さを取る、という設計判断です。
今回示されたのは配分の考え方です。配分先そのものはまだ出ていません。PRIME は現在、対象プロジェクトを募る RFP を9月30日締切で公開しており、どこに何を配るかはまだ決まっていません。ただ、9月19日に公開されたエコシステム監査が Cardano DeFi に100点満点で51.3点をつけた直後のこの説明は、PRIME が何を弱点と見ているかを示しています。以下、投稿の論旨と、引き合いに出された2つの前例を追います。
■ 40の浅いプールは、1つの深いプールにならない
PRIME の説明はこう始まります。「インセンティブを40か所に広げれば、40の浅いプールができる。スクリーンショットに写るには十分だが、報酬が細るときに持ちこたえるには足りない」。
続く投稿では、より具体的な言い方をしています。「40の浅いプールを足しても1つの深いプールにはならない。実際の取引がなおスリッページを起こす場所が40できるだけだ」。ここで言う深さとは、ある程度の規模の注文を出しても価格が動かない状態を指します。PRIME はこれを「実際の取引が価格を動かさない程度の深さ」と表現しました。
そのうえで PRIME は「PRIME の規模では、制約は広さではなく深さのほうにある」と述べ、集中を「同じ資本のより正直な使い方」と呼んでいます。手元の資本量が変わらないなら、置き方で成果を変えるしかない、という立論です。
■ Avalanche Rush と Aerodrome、2つの前例
PRIME は判断の根拠として、他チェーンの2つのインセンティブ計画を並べました。
Avalanche Rush は報酬をプールとパートナーに広く配りました。対して Aerodrome は、より少数の場所に排出を集中させ、次にどこへ配るかを流動性提供者の投票で決める形をとりました。PRIME はこの2つを「2つのインセンティブ計画、2つの異なる形」と整理しています。
そのうえで、広く配ることで買えるものと集中で買えるものを対比しました。広く配れば、より多くのプールに資金が触れ、より多くのプロトコルが言及される。集中させれば、報酬がなくてもトレーダーが選ぶような場所に、実際に使える流動性ができる。PRIME が選んだのは後者です。
最後の投稿では建築の比喩が使われました。「砂利ではなく要石を」。要石が重要なのは数が多いからではなく荷重を支えるからだ、として、第3段階は流動性を実際に固定できる場所に資本を置き、支えられるだけの重さを与える、と締めています。
■ 選ばれなかった場所と、選び方の透明性
この設計には、PRIME 自身が触れていない側面もあります。2〜3か所に集中させるということは、選ばれなかった場所との差が開くということでもあります。Cardano DeFi は参加するプロトコルの数が多いことを長所として語ってきた面があり、資本の集中はその語り方と衝突します。
選定の透明性も論点になります。Aerodrome の例で PRIME が挙げたのは「流動性提供者の投票で次の配分先を決める」という仕組みでしたが、PRIME 自身が投票方式を採るかどうかは、今回の投稿では示されていません。RFP の審査基準は公開されていますが、報酬の集中先をどう決めるかは別の問題です。
■ 9月30日と、その次
直近の分岐点は9月30日です。RFP の締切は米東部時間9月30日23時59分(日本時間10月1日12時59分)で、9月23日時点で55件の応募が届いていました。応募の分布はカテゴリごとに偏っており、ウォレット・エージェント基盤・無期限先物に集まる一方、オラクルやブリッジ、集中流動性などは薄いままです。
締切後に確かめるのは2点です。ひとつは、PRIME が第3段階の配分先をどの形で公表するか(対象の取引場所名まで出すのか、選定基準だけなのか)。もうひとつは、「2〜3か所」という今回の数字が、実際の配分でも維持されるかどうか。どちらも Cardano PRIME の公式発信(x.com/Cardano_Prime)と、PRIME が定期開催しているコミュニティ更新で最初に出てきます。
■ ことば
- Cardano PRIME — Cardano の国庫から1億2,000万 ADA の配分が承認された、DeFi 流動性の強化を目的とする12か月の計画。第1段階でエコシステム監査を公開し、現在は対象プロジェクトを募る段階にあります。
- スリッページ — 注文を出したときに、想定した価格と実際に約定する価格がずれること。プールが浅いほど大きくなります。PRIME が「深さ」を問題にしているのは、この幅を小さくしないと大口の取引が Cardano を選ばないためです。
- Aerodrome — Base チェーンの分散取引所。報酬の配分先を流動性提供者の投票で決める方式をとっており、今回 PRIME が集中型の前例として挙げました。
一次ソース / 関連リンク
- Cardano PRIME の連続投稿(第3段階の設計・2026年9月24日)
https://x.com/Cardano_Prime/status/2102933302948896868 - Cardano PRIME:Avalanche Rush と Aerodrome の対比
https://x.com/Cardano_Prime/status/2102933315187823047 - Cardano PRIME:広さと深さで買えるもの
https://x.com/Cardano_Prime/status/2102933326768336948 - Cardano PRIME:要石の比喩
https://x.com/Cardano_Prime/status/2102933350055075865 - Cardano PRIME の RFP、残り1週間で応募55件(SIPO.TOKYO)
https://sipo.tokyo/signal-20260923-31526f0f/ - PRIME 監査、Cardano DeFi は 100 点満点で 51.3 点(SIPO.TOKYO)
https://sipo.tokyo/cardano-prime-defi-audit-51-3/
