RealFi は 10月8日、公式 X で、Cardano のレンディング(貸し借り)プロトコル Liqwid のアプリ内にある「RealFi Hub」を案内しました。USDrf への交換、sUSDrf へのステーク、ADA を担保にした借り入れを 1 つの画面で扱える入口で、ポイント(R-Points)の倍率が付く操作のうち 3 つは、この Liqwid の上にあります。
Hub はメインネットが始まった 10月1日に Liqwid が公開したもので、稼働を伝えた 10月2日の Signal でも入口の 1 つとして触れました。この記事では、Liqwid と RealFi の公式資料をもとに、Hub で何ができ、どの操作にどんな条件とリスクが付くのかを整理します。公式資料にもとづく解説で、操作を試した記録は含みません。
Hub でできること — 交換・ステーク・借り入れ
Liqwid の告知によると、Hub では次のことができます。
- USDrf への直接の交換
- ADA を担保にした借り入れ
- USDrf をステークして sUSDrf を受け取る
- RealFi に関する操作の履歴を 1 つの画面で確認する
RealFi の 10月8日の投稿は、これを「稼ぐ・借りる・ステークする・運用する」方法をまとめた専用の場所と紹介しています。
RealFi のドキュメントでは、一般の利用者ができる操作は、USDCx から USDrf への交換(RealFi のアプリ内、または連携先のプラットフォームで)、USDrf のステーク、sUSDrf のステーク解除の 3 つです。USDrf の発行(ミント)と償還は、本人確認を済ませた機関投資家などに限られます。Hub は、この「連携先のプラットフォーム」の 1 つにあたり、貸し借りのアプリを普段から使っている人にとっては、別のアプリを開かずに USDrf を扱える入口になります。
交換は SundaeSwap V4 から SteelSwap 経由で
Hub での交換には決まった経路があります。Liqwid の 10月6日の説明によると、USDrf と sUSDrf の交換は、SundaeSwap V4 の「LinearSwap」という 1 対 1・手数料一定のプールで成立します。このプールを集約しているのは DEX アグリゲーターの SteelSwap だけなので、Hub は SteelSwap を経由して注文を流します。
1 対 1 で取引されるため、価格の幅(スプレッド)が開きにくいのが特徴です。SteelSwap が API v2 で SundaeSwap V4 と RealFi に対応した件は、10月3日の Signal で取り上げました。Hub の交換は、SundaeSwap・SteelSwap・Liqwid の 3 つのプロトコルが 1 つの画面でつながった形です。
ポイントの倍率 — Liqwid の上にある 3 つの操作
メインネットの最初のシーズン「Voyager Season」では、対象となるポジションの米ドル換算額に、操作ごとの倍率を掛けて R-Points を計算します。公式の倍率表のうち、Liqwid での操作は次の 3 つです。
- sUSDrf の市場に USDCx を供給する — 30 倍
- USDrf を担保として供給する — 10 倍
- sUSDrf を担保に USDCx を借りる — 5 倍
同じ表で最も高いのは、SundaeSwap で USDrf と USDCx の流動性を提供する 50 倍です。一方で、表の最後の行は「それ以外」が 0 倍で、ポジションを持たずに置いてある USDrf や、ステークしただけの USDrf にはポイントが付かないと明記しています。ステークの利回りとポイントは、別々に決まる仕組みです。
換算の基準も公開されています。USDrf と USDCx は 1 ドル、sUSDrf は 1 ドルにその時点の交換レートを掛けた額、ADA は 1 時間ごとの市場価格で評価されます。ポイント規約によると、保有・供給・借り入れのような続けるポジションは、その日の計測期間を通して同じ場所に置かれていた場合に限って、日ごとに積み上がります。Voyager Season の最初の 4 週間は、獲得したポイントが 50% 上乗せされます。
ただし、R-Points に金銭的な価値はなく、譲渡もできず、RFG などのトークンを受け取る権利も生みません。倍率は運営者がいつでも将来に向けて変えられ、すでに記録されたポイントも、誤りや不正、適格性の問題があれば調整・取消されることがあります。ポイントが確定し RFG に交換されるまでの段階は、9月26日の解説記事にまとめています。
5 倍の「借り入れ」が意味するもの — ループと清算
倍率表は、sUSDrf を担保に USDCx を借りる操作を「さらに USDrf を増やし、ステークするためのループに使われる」と説明しています。sUSDrf を担保に USDCx を借り、それを USDrf に替えてまたステークする、という操作を繰り返すと、手元の資金より大きなポジションを持てます。これがループ(レバレッジ)です。
RealFi の資料自体が、ここに注意書きを付けています。借り入れやループのポジションはレバレッジを使うため、担保の価値が下がったり金利が不利に動いたりすれば清算され、預けた資産の一部または全部を失うことがある。そして、ポイントを理由に、本来なら取らないリスクを取るべきではない、という書き方です。
清算の仕組みは Liqwid のドキュメントに書かれています。
- 借り入れの安全度は「ヘルスファクター」という数値で表され、1 以下になると、第三者がいつでもその借り入れを清算できる
- Liqwid 自身は追加の担保を求める通知(マージンコール)も自動の清算もしない。数値を見守るのは借り手の責任
- 清算を避ける目安として、ヘルスファクターを 2 より上に保つことが挙げられている
sUSDrf を担保にするときに気をつけたいのは、sUSDrf の価値が一定ではない点です。RealFi の設計では、裏付けの資産に損失が出ると、まずプロトコルの準備金が吸収し、残りを sUSDrf が負担します。この損失は sUSDrf の交換レートの低下として表れるので、担保の評価額が下がり、ヘルスファクターも下がります。借り入れの金利も、市場の需給(利用率)で変わる変動金利です。Liqwid の 10月5日の週次集計では、USDCx の市場の利用率は 90.71% でした。
出口にも時間がかかります。sUSDrf のステークを解除すると、USDrf を受け取れるまで 7 日間の待ち時間があります。SundaeSwap の sUSDrf と USDrf のプールで先に替える道もありますが、倍率表はこれを「流動性と価格しだい」としています。Liqwid に供給した資産も、引き出せる額はその市場の残りの流動性に左右されます。ループをほどくには、こうした手順と待ち時間を順に通る必要があります。
入口が変わっても、利用の条件は同じ
RealFi の対象地域のページは、米国、EU と欧州経済領域、英国、香港、包括的な制裁の対象となっている法域、そして利用が違法となる法域を、提供の対象外に挙げています。プロトコルは地域による接続の制限を設けており、VPN などで所在地を偽って使うことは禁じられています。
X では、Liqwid の Hub を通せば地域の制限なく使えるとする利用者の投稿も見られます。ただ、RealFi の資料が対象外としているのは利用者の所在地や居住地で、どの画面から操作するかではありません。ポイント規約は、Liqwid を倍率の対象となる連携先として名指ししたうえで、地域制限の回避を重大な違反としています。Voyager Season のページも、制限に反して得たポイントは無効になり取り除かれると書いています。
日本は対象外の一覧にありませんが、法令への適合を確かめる責任は利用者にあるとされ、一覧にないことは使えることの保証ではありません。また sUSDrf については、個人向けの販売が制限されている法域では、適格投資家や機関投資家などに限って提供されるとしています。
SIPO は RealFi のアルファ・アンバサダー(Alpha Ambassador Programme)として、RealFi SPO アクセラレータープログラムに参加しています。RealFi の仕組みの全体像は、これまでの解説記事で扱っています。
次に確かめる場所
最初の確認点は今夜です。RealFi は 10月9日 22時30分(日本時間)から、公式 Discord でプロダクト責任者の Clay 氏らによる「Office Hours」を開き、ステーキング、ポイント、EVM チェーンへの展開について質問を受けると告知しています。
そのうえで、Voyager Season のページの倍率表を定期的に見直すのが確実です。倍率は将来に向けていつでも変わりうるとされ、50% の上乗せも最初の 4 週間に限られます。Liqwid での借り入れを使うなら、Liqwid のアプリに表示されるヘルスファクターと、Liqwid の公式 X が出す週次集計(Weekly Snapshot)の利用率が、日々の確認先になります。
ことば
- ヘルスファクター — Liqwid で借り入れの安全度を示す数値です。担保と借りた額を米ドル換算で比べ、1 以下になると第三者が清算できます。sUSDrf のように価値が動く資産を担保にすると、この数値も動きます。
- ループ — 預けた資産を担保に借り、それで同じ資産を買い足して再び預ける操作の繰り返しです。ポジションは大きくなりますが、清算されたときの損失も大きくなります。
- LinearSwap — SundaeSwap V4 のプールの方式で、USDrf と sUSDrf を 1 対 1・一定の手数料で交換します。Hub の交換は、このプールを集約する SteelSwap を通ります。
一次ソース / 関連リンク
- RealFi 公式 X の告知(Liqwid の RealFi Hub・2026年10月8日)
https://x.com/realfi_co/status/2108152022272803319 - Liqwid Finance 公式 X(RealFi Hub の公開・2026年10月1日)
https://x.com/liqwidfinance/status/2105668822627717162 - Liqwid Finance 公式 X(Hub の交換経路・2026年10月6日)
https://x.com/liqwidfinance/status/2107579435432173569 - Liqwid Finance 公式 X(週次集計・2026年10月5日)
https://x.com/liqwidfinance/status/2107209703109624126
Liqwid Docs — Liquidations(清算)(docs.liqwid.finance)
Liqwid Docs — Borrow(借り入れとヘルスファクター)(docs.liqwid.finance)
Liqwid Docs — Supply and Earn(供給と引き出し)(docs.liqwid.finance)
RealFi Docs — What is the Voyager Season(倍率表)
docs.realfi.co
RealFi Docs — Launch functionality(一般の利用者ができる操作)(docs.realfi.co)
RealFi Docs — Points Program Terms(ポイント規約)
docs.realfi.co
RealFi Docs — sUSDrf (staked USDrf)(損失の負担と交換レート)
docs.realfi.co
RealFi Docs — Step 3: Unstaking Transactions(7 日間の待ち時間)
docs.realfi.co
- RealFi Docs — Jurisdictional eligibility(対象外の法域)
https://docs.realfi.co/compliance/jurisdictional-eligibility - RealFi Docs — Terms of Service
https://docs.realfi.co/essential-policies/terms-of-service - RealFi 公式 X(Office Hours の告知・2026年10月8日)
https://x.com/realfi_co/status/2108125705896644831 - RealFi メインネット稼働、ポイントは利用額に応じた倍率制に(SIPO.TOKYO)
https://sipo.tokyo/signal-20261002-76a775ec/ - SteelSwap、API v2 で Sundae V4 と RealFi に対応(SIPO.TOKYO)
https://sipo.tokyo/signal-20261003-50131b24/ - RealFi の R-Points、付与から RFG 交換までの4段階(SIPO.TOKYO)
https://sipo.tokyo/learning-20260926-46afad20/ - USDrf と sUSDrf、利回りと損失の行き先(SIPO.TOKYO)
https://sipo.tokyo/learning-20260925-efc5e9f5/ - SIPO、RealFi の SPO アクセラレーターで活動開始(SIPO.TOKYO・2026年9月24日)
https://sipo.tokyo/sipo-realfi-20260924/
本文の記述は、日本時間 2026年10月9日に公式ドキュメントと公式 X で確認した内容です。条件・倍率・数値は予告なく変更されることがあります。
