Go で書かれた Cardano のノード Dingo の v0.78.0 が、日本時間 10 月 5 日早朝に GitHub で公開されました。開発元の Blink Labs は同日昼、この版から Dingo が MCP(Model Context Protocol)の窓口を持ち、AI エージェントが台帳の状態やガバナンス、ステーキングの情報をノードのデータベースから直接引けるようになったと X で告知しています。
これまで AI に Cardano のデータを読ませるには、ノードとは別に用意したインデクサや外部の API を経由するのが普通でした。ノードそのものが AI 向けの窓口を内蔵すると、自分で動かしているノードの手元のデータを、そのまま問いかけの相手にできます。何ができるようになったのか、どこまでが読み取り専用なのか、Haskell 以外のノードの中で Dingo がいまどこにいるのかを順に整理します。
21 の道具と 6 つの手順書
MCP は、AI のアシスタントが外部のデータや道具につながるための共通の手順です。Dingo のドキュメントによると、v0.78.0 の MCP サーバーは読み取り専用の道具(ツール)を 21 個登録しています。内訳は、データベースに直接 SQL で問い合わせる 3 個と、Cardano の用語で引ける 18 個です。
- チェーンの先端・ブロック・取引の取得
- UTxO や資産、アカウント(ステークキー)の検索、プロトコルパラメータの参照、アドレスの解読
- メモリプール(未処理の取引の待ち行列)の状態
- ステークプールの成績、ガバナンスの状態と個別の提案、エポックの要約
- Plutus のスクリプトを Go の中で模擬実行し、必要な計算資源を見積もる evaluate_tx
あわせて、決まった調べ方をまとめた手順書(プロンプト)が 6 本用意されています。ノードの健康状態の診断、取引の事前の模擬実行、プールの報酬の監査、資産の追跡、CIP-1694 のガバナンスの要約、アドレスの調査です。ドキュメントは接続先の例として Claude Code、Claude Desktop、Cursor、Codex を挙げ、ストリーミング可能な HTTP と SSE(サーバーからの逐次送信)の 2 つの方式に対応しています。
SPO にとって分かりやすいのは、プールの成績の道具です。記録されたエポックごとの報酬とステーク、プレッジ、手数料の設定を、既定で直近 10 エポック、最大 50 エポックまでさかのぼって返します。「自分のプールのこの 1 か月の報酬を並べて」という問いかけを、自前のノードのデータで済ませられる形です。
既定ではオフ、書き込みはできない設計
ノードのデータベースを AI に開くことになるため、ドキュメントは守りの設計に多くの紙幅を割いています。
- MCP は既定で無効(ポート 0)。有効にしても、待ち受けは既定で自分のマシンの中だけ
- SQLite への接続は読み取り専用のモードで開き、書き込みにあたる SQL は実行前に拒否する
- 接続元ごとに要求の回数を制限し、AI が同じ問い合わせを繰り返してノードの CPU やディスクを使い切るのを防ぐ(既定は毎秒 60 回)
- トークンの名前など外部から入ってくる文字列は長さを制限し、制御文字を取り除いたうえで「信頼できないデータ」と印を付けて返す
最後の点は、AI 向けの窓口ならではの守りです。トークンの名前やメタデータは発行者が自由に書けるため、そこに AI への指示を紛れ込ませる攻撃が考えられます。ドキュメントは、返した結果に含まれる指示に AI 側が従ってはならないと明記しています。一方で、認証は既定では設定されていません。自分のマシンの外から接続できるようにする場合は、トークンによる認証を自分で設定する必要があります。
Haskell 以外のノードの中で
Dingo は、Haskell で書かれた参照実装の cardano-node とは別に、Blink Labs が Go で作っているノードです。10 月 3 日には、Blink Labs が Dingo でメインネットのブロックを作るプールとして OTG を紹介しており、10 月 4 日の記事では、ブロックヘッダーの実装番号でそれを確かめました。
ただし、Dingo の README は冒頭で「活発に開発中で、まだ本番での利用には向かない」と書き、テストネットと開発用のネットワークでの利用にとどめ、実際の資金を扱うメインネットでは使わないよう求めています。リリースの間隔も短く、10 月 2 日から 4 日(UTC)の 3 日間に v0.76.0・v0.77.0・v0.77.1・v0.78.0 の 4 つの版が出ています。MCP の窓口も、まずは試験環境で触る機能と見ておくのが自然です。
AI からノードのデータを引く窓口は、Cardano の周辺で続けて出てきています。9 月 27 日には、Java 製のインデクサ Yaci Store の 3.0.0 ベータが SQL の分析層と MCP サーバーを加えました。ノードの多様性は、ブロックを作る実装の数だけでなく、データを外へ渡す入口の多様さとしても進み始めています。
次に見るもの
SPO や開発者が自分のノードに AI をつなぐとき、何を任せ、何を自分の目で確かめるか。その線引きを考える材料は、Dingo の GitHub に 2 つあります。
- docs/mcp のドキュメント: 道具の一覧と守りの設定が、次の版でどう変わるか。特に認証を既定で有効にするかどうか
- リリースページ: README の「本番利用には向かない」という注記が外れる版が、Dingo をメインネットで動かす判断の節目になります
ことば
- MCP(Model Context Protocol) — AI のアシスタントが外部のデータや道具を使うための共通の接続手順。ノードがこれに対応すると、AI は同じ作法で台帳の状態を問い合わせられます。
- Dingo — Blink Labs が Go で開発している Cardano のノード。参照実装の Haskell 版とは別に作られており、10 月にはメインネットでブロックを作るプールも紹介されました。
- プロンプトインジェクション — データの中に AI への指示を紛れ込ませ、AI に本来の目的と違う動きをさせる攻撃。発行者が自由に書けるトークンのメタデータは、その入口になりえます。
一次ソース / 関連リンク
- Blink Labs 公式 X の告知(2026年10月5日)
https://x.com/blinklabs_io/status/2106950253119172982
MCP サーバーを加えた変更(Dingo #4566)(GitHub)
GitHub


