Cardano のステークプール運営者 BKIND は 10 月 24 日、エポック 663 時点のステークと DRep の集中を自前の集計で示す投稿を X に出しました。トレジャリーからの引き出しを通すのに必要な 3 分の 2 の投票力は、294 ある有効な DRep のうち上位 20 だけで届き、上位 5 が組めば引き出しを止められる、という内容です。
編集部が 10 月 25 日時点の Koios のデータで数え直しても、ほぼ同じ水準でした。委任者にとっては、ADA が持つ 2 つの票をどこに預けているかを見直すきっかけになる数字です。BKIND の主張と、数え直した結果、数字の読み方を順に整理します。
BKIND が示した DRep の偏り
BKIND の投稿は、Cardano の有効な DRep を 294 と数え、そのうち上位 20 が合わせて、トレジャリー引き出しの可決に必要な 3 分の 2 の投票力を持つとしています。逆に上位 5 が合わされば、引き出しを否決に追い込める、とも書いています。数字は BKIND 自身のデコーダーと db-sync による、エポック 663 の集計です。
投稿はさらに、上位の DRep の多くがステークプールの運営者でもあると指摘しています。プールを運営する DRep だけで、DRep 投票のすべての閾値を越えられるという主張です。ステークを持ち主ごとに束ねると、ごく少数の持ち主に委任が集まり、1 年前から委任先がほとんど動いていない、という集計も添えられています。
このうち、プールや DRep を同じ持ち主に束ねる判定は BKIND 独自のもので、編集部では数え直していません。本稿では、公開データで確かめられた DRep の投票力の集中を中心に扱います。
Koios で数え直すと、上位 19 で 67.9%
Koios に登録されている DRep のうち「有効(active)」とされるものは 298 で、委任された投票力が 0 より大きいものは 294 でした。BKIND の数字と一致します。この 294 の投票力の合計は約 51.5 億 ADA です(既定の選択肢である「常に棄権」「常に不信任」は含みません)。
投票力の大きい順に足し上げると、上位 5 で 35.3%、上位 19 で 67.9%、上位 20 で 69.2% になりました。トレジャリー引き出しの DRep 側の可決基準は 67% なので、今回の数え方では上位 19 で届きます。BKIND の「上位 20」とは 1 つずれますが、集計した時点や分母の取り方の違いの範囲で、偏りの大きさとしては同じ結論です。上位 5 で 3 分の 1 を超えるので、この 5 者が反対に回れば、ほかの全員が賛成しても引き出しは通りません。
ただし、実際の可決判定の分母はこれと同じではありません。分母には「常に不信任」に委任された分が入り、未投票の DRep の分も反対と同じ側に数えられます。上位の数者だけで決まる、というより、上位の数者が動かなければ決まらない、と読むほうが実態に近い数字です。
ADA が持つ 2 つの票
BKIND が投稿で強調しているのは、委任者の ADA には 2 つの票がある、という点です。
1 つ目はステークプールへの委任です。プールの運営者(SPO)は、ハードフォークの開始、憲法委員会の交代や不信任、セキュリティにかかわるパラメータの変更などに、委任された ADA の重みで票を投じます。2 つ目は DRep への委任で、トレジャリーからの引き出しや多くのパラメータ変更、憲法の改正などは DRep の票で決まります。トレジャリー引き出しには SPO は投票しないため、上の 67% は DRep と憲法委員会だけの話です。
2 つの委任は別々に選べます。同じ大口の運営者がプールと DRep の両方を持っていれば、1 人の委任者の ADA が両方の票で同じ側の重みになる、というのが BKIND の問題提起です。
委任先を選ぶときの見方
BKIND は、自分のプールの運営者がいくつのプールを運営しているかを確かめ、複数ならプールを 1 つだけ運営する運営者へ移すよう呼びかけています。小さなプールは当面の報酬がやや下がるものの、委任が集まれば上がっていく、という説明です。投稿には、飽和点に余裕があり、リレーが応答する単独運営のプールの一覧も紹介されています。
DRep についても、すでに大きな投票力を持つ相手を避け、投票の理由を説明している DRep を選ぶよう勧めています。そのうえで、その DRep の考え方が自分と合っているかを確かめることも求めています。
委任先を決める基準は、これだけではありません。プールなら安定してブロックを作れているか、手数料や誓約(pledge)の水準、DRep なら投票の記録や理由の中身も判断材料になります。分散を重視するか、報酬や運営の実績を重視するかは委任者それぞれの判断ですが、自分の ADA がどこで、どれだけの重みになっているかを一度確かめておくことは、どちらを選ぶにしても役に立ちます。
エポック 664 の後に見直す数字
自分の DRep の投票力と、投票に理由を添えているかは、GovTool の DRep 一覧で確かめられます。DRep の投票力はエポックごとのスナップショットで決まるため、次の区切りであるエポック 664 の開始(日本時間 10 月 27 日 6 時 44 分ごろ)の後に、上位の顔ぶれと比率がどう動くかが次の確認点です。
ことば
- DRep(委任代表者) — ADA 保有者から投票権の委任を受け、トレジャリー引き出しやパラメータ変更などに票を投じる代表者。委任された ADA の量がそのまま投票力になります。
- 有効な DRep — 一定期間投票などの活動がないと DRep は無効(inactive)扱いになり、その投票力は可決判定に数えられません。今回の 294 は、有効で、かつ委任を受けている DRep の数です。
- 単独運営プール — 1 人または 1 チームがプールを 1 つだけ運営している形。複数のプールを持つ運営者に比べ、1 つの運営者に重みが集まりにくいとされます。
一次ソース / 関連リンク
- BKIND SPO の投稿(X・10 月 24 日)
https://x.com/BKINDSPO/status/2113942214388687204
GovTool の DRep 一覧(gov.tools)
投稿で紹介されている単独運営プールの一覧(smitblockchainops.nl)
投稿で紹介されている DRep の一覧(smitblockchainops.nl)
