Intersect が Upgrade Bulletin 32 を公開しました。挙げられた見出しは 3 つで、注視すべきノードリリース、ノード多様性ワークショップの日程(シンガポールとロンドン)、そして DijkstraNet を MusashiNet と並走させること、です。どれも「Dijkstra をいつ入れるか」ではなく「入れるまでに何をどの順で置くか」の話で、SPO にとっては手を動かす順番が決まってくる内容です。ここでは 3 点それぞれについて、Intersect のハードフォーク作業部会(Hard Fork Working Group)の議事録で確認できる範囲まで踏み込んで整理します。
初期報: Upgrade Bulletin 32を公開、ノード多様性ワークショップ開催予定
■ 「注視すべきノードリリース」は 4 本に分かれています
速報の段階では「node releases to keep an eye on」という一行だけでした。何を注視するのかは、9 月 1 日のハードフォーク作業部会の議事録に具体的な形で残っています。いま並んでいるのは 4 本で、それぞれ役割が違います。
- 11.1 — メインネット向けの準備が整った版。細かな改善に加えて、旧来のトレーシング機構が取り除かれています。
- 11.2 — 統合作業が始まった版。Leios を除く Dijkstra の機能の大半が入りますが、ハードフォーク対応版ではありません。位置づけは早期テスト用です。
- 11.3 — Dijkstra のスコープを一通り満たす版。ハードフォーク対応と表示される最初のリリースがここになります。
- 12.0 — プロトコルバージョン 12、つまり Dijkstra 時代そのものを持ち込む版。
SPO の実務として押さえておきたいのは、11.2 と 11.3 の間にある線です。11.2 は「新しい機能を先に触っておくための版」であって、これを入れたからハードフォークの準備が済むわけではありません。8 月 25 日の議事録の時点では、11.3 を機能完成版として 8 月末までに、という見通しが語られていました。つまり注視すべき対象は、バージョン番号そのものより「どれがハードフォーク対応と明示されるか」のほうです。
同じ議事録には、ハードフォークの発効について 12 月 5 日〜1 月 4 日(中程度の確度)と 2 月 24 日〜3 月 26 日(高い確度)という二つの窓が記録されています。幅があるということは、ここから先の数字は動きうるということでもあります。
■ DijkstraNet は MusashiNet を置き換えるものではありません
3 点目の「DijkstraNet to run alongside MusashiNet」は、テストネットが 1 本増えるという話ではなく、役割の違う 2 本を同時に回すという話です。
MusashiNet は、Ouroboros Leios を評価するための試作環境です。Cardano の運用ドキュメントには「production 用途ではなくテスト用の advanced environment」と明記されていて、合意形成そのものは Praos のまま動いています。ネットワークマジックは 164、公開されているビルドは prototype-2026w35 系です。SIPO でも、この環境で 41 日間に 12 万 7 千ブロックが積まれた件や、そこで壊れたものが記録つきで公開された件を扱ってきました。
一方 DijkstraNet は、9 月 1 日の議事録によれば pv11 から始めて pv12 へフォークする予定で、こちらにも Leios は入りません。つまり並走といっても、両者が見ている対象は重なっていません。MusashiNet は「スループットを上げる仕組みが実際に動くか」を、DijkstraNet は「Dijkstra の変更を載せたチェーンがフォークを越えられるか」を確かめる場です。
この分け方は、読む側にとっては地味に重要です。MusashiNet で出た数字を Dijkstra のハードフォークの準備状況として読むと、話がずれます。逆に DijkstraNet が順調でも、それは Leios が来ることを意味しません。
■ ワークショップは 2 都市、決めるのは「アップグレードのやり方」
ノード多様性ワークショップの日程も、議事録側に具体的に残っています。シンガポールが 10 月 6 日〜8 日、ロンドンが 11 月 12 日〜13 日です。
8 月 25 日の議事録では、ロンドン回に参加するのはノード実装チーム、SPO、そしてハードフォークの意思決定に関わる人たちで、目的は「Cardano のネットワークアップグレードについて、費用対効果の高いやり方を決めること」だと書かれています。9 月 1 日の議事録では、ノード実装のスケジュール、アップグレードの進め方、そして Cardano のプロダクトに対する標準づくりが議題として挙がっています。
ノード多様性は、単一の実装に依存しないことでネットワークの回復力を上げるという話として語られてきました。ただ実装が増えれば、ハードフォークのたびに「どの実装が、どの時点で、何に対応しているか」を揃える作業が増えます。ワークショップの議題が実装の話ではなくアップグレードの進め方と標準に寄っているのは、多様性を増やす段階から、多様性を前提に運用を設計する段階へ移りつつあるということだと読めます。
■ 次に見るもの
- 11.3 が「ハードフォーク対応」と明示されるか、いつされるか。SPO が入れ替えを計画する起点はここです。11.2 の登場は、その合図ではありません。
- DijkstraNet の pv11 → pv12 フォークが実際に走るか。発効の窓(12 月〜1 月/2 月〜3 月)は、ここが済んでいるかどうかで絞られていきます。
- 10 月 6 日〜8 日のシンガポール回で何が共有されるか。11 月のロンドン回が「決める」場だとすれば、10 月は材料が並ぶ場になります。
Upgrade Bulletin は、3 行の見出しだけを読むと毎回よく似た内容に見えます。ただ今回の 3 点は、いずれも「いつ」ではなく「どの順で」に関する更新でした。日付が決まるのはその後です。
一次ソース / 関連リンク
- Intersect「Upgrade Bulletin 32 is here」(2026年9月4日・X)
https://x.com/IntersectMBO/status/2095828428008092091 - Intersect ハードフォーク作業部会 議事録(2026年9月1日)— ノード 11.1/11.2/11.3/12.0 の役割、DijkstraNet、ワークショップ日程、発効の窓
https://cardanoupgrades.docs.intersectmbo.org/general/hard-fork-working-group-meeting-minutes/1st-september-2026 - Intersect ハードフォーク作業部会 議事録(2026年8月25日)— ロンドン回の参加者と目的、11.3 の位置づけ
https://cardanoupgrades.docs.intersectmbo.org/general/hard-fork-working-group-meeting-minutes/25th-august-2026 - Intersect「Dijkstra upgrade bulletins」一覧(#32 は 9 月 3 日付で掲載)
https://cardanoupgrades.docs.intersectmbo.org/dijkstra-era-upgrade/dijkstra-upgrade-bulletins - The Cardano Operations Book「MusashiNet prototype」— 用途、Praos 運用、ネットワークマジック 164
https://book.world.dev.cardano.org/adv-musashi.html - SIPO「『最終エポック』は、いま走っている 652 のことです——Upgrade Bulletin 31 の 3 点」
https://sipo.tokyo/signal-20260828-61ac0b15/ - SIPO「Leios のテストネットが41日で12万7千ブロックを積みました」
https://sipo.tokyo/signal-20260821-dc4562b5/ - SIPO「Leios のテストネットで壊れたものが、記録つきで公開されました」
https://sipo.tokyo/signal-20260827-ef9f1eda/
