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TxPipe、eMudhra 中間 CA を信頼しない修正版を4製品で公開

2026-10-23SIPO

Cardano のインフラ道具を開発する TxPipe は 10 月 22 日夜 (日本時間)、データノード Dolos、イベント取り込みの Oura、dApp 基盤の Balius、Boros の 4 製品について、修正版を出したと公式 X で告知しました。認証局 eMudhra の中間 CA 証明書のうち、秘密鍵を誰でも導き出せてしまうものを、これらの道具が信頼しないようにする修正です。

どの道具も、Mithril からの初期同期やクラウドへのデータ送出など、外部のサーバーと HTTPS でやり取りする箇所を持っています。ブラウザ側の対処は済んでいますが、こうした道具はソフトウェアを更新しない限り直りません。この記事では、eMudhra で何が起きたか、4 製品で何が変わったか、運用している方が何を確かめればよいかを順に整理します。

eMudhra の中間 CA で何が起きたか

事案をまとめた公開ページによると、eMudhra の中間 CA 証明書 8 枚の秘密鍵が漏えい状態にあります。原因は認証局側の鍵の生成の誤りで、証明書そのものから秘密鍵を復元できてしまうというものです。2025 年 4 月に証明書が作られた時点から、この状態だったとされています。

報告者は 8 枚それぞれの秘密鍵で同じ文面に署名し、10 月 17 日にブラウザや OS の「ルートプログラム」(信頼する認証局を決める窓口) に届け出ました。Mozilla のバグ管理にも 10 月 18 日付で「eMudhra: Private key compromise of Intermediate Certificates」が立っています。公開ページは、これらの鍵を持つ攻撃者はあらゆるウェブサイトやサービスになりすませる、と書いています。

対処は進んでいます。Firefox と Chrome では 10 月 17 日から、Microsoft の製品では 20 日から、Apple の製品では 22 日から、該当の証明書がブロックされました。eMudhra 自身も中間 CA 証明書を失効させています。問題はその先で、公開ページは、失効情報を参照しない多くのクライアントは、ソフトウェアの更新が無いと危ない中間 CA を信頼し続けると指摘しています。

4 製品で何が変わったか

TxPipe のスレッドと GitHub によると、変更点は次のとおりです。

  • Dolos v1.6.2 (v1 の長期サポート系列) — Mithril からの初期同期、スナップショットの復元、OpenTelemetry への送出が使う TLS ライブラリ rustls を、修正済みの版に上げました。RUSTSEC-2026-0381〜0383 の 3 件への対処です。Docker イメージも、Debian の修正済みの証明書一覧で作り直されています。
  • Oura v2.2.1 — 古い 8.5 系に固定されていた Elasticsearch のクライアントと、AWS SDK が既定で使う旧来の HTTP クライアントを、どちらも現行のものに移しました。リリースノートでは「AWS と Elasticsearch の送出先を rustls 0.21 から外す」と書かれています。
  • Oura v1.9.5 (v1 の長期サポート系列) — AWS の送出先を SDK 1.x 系へ、Google Cloud Pub/Sub を google-cloud-pubsub 0.30 へ、RabbitMQ を修正済みの rustls-connector へ移しました。
  • Balius v0.5.4 — balius-runtime と baliusd が rustls 経由で行う HTTP 通信を修正済みの版へ。baliusd のイメージを修正済みの証明書一覧で作り直し、6 つのクレート (Rust のパッケージ) をすべて 0.5.4 として crates.io に出しています。
  • Boros — HTTP・Vault・SQL・gRPC の各クライアントが、OS の証明書ストアではなくバイナリに同梱した証明書だけを信頼する作りです。rustls-webpki 0.103.16 と webpki-roots 1.0.10 に上げ、依存関係を固定する Cargo.lock を新たにリポジトリへ入れました。GitHub 上では 10 月 21 日の変更として入っており、版番号付きのリリースは出ていません。

TxPipe のライブラリ Pallas については、リリースは不要だとしています。どのクレートも TLS クライアントを取り込んでおらず、ライブラリとして Cargo.lock も持たないため、Pallas を使うアプリが自分の依存関係を更新すれば修正が入る、という説明です。

ブラウザ以外の道具は、更新しないと直らない

今回の対処の中心にある webpki-roots は、Mozilla が信頼している認証局の一覧を Rust のプログラムに組み込むためのパッケージです。RustSec の勧告によると、1.0.10 で eMudhra の「emSign ECC Root CA – G3」が一覧から外れました。証明書の検証を受け持つ rustls-webpki も、0.103.16 から問題の中間 CA の公開鍵を含む経路を拒否するようになっています。

ブラウザは、配信された失効情報で利用者の手を介さずに危ない証明書を止められます。一方、バイナリに証明書の一覧を焼き込んだ道具は、その一覧ごと作り直さない限り同じ状態のままです。Dolos・Oura・Balius のイメージを作り直したのも、Boros が依存関係を固定したのも、この理由からです。ノードの横でこれらを動かしている SPO や dApp の運営者にとっては、ブラウザの更新が済んでいても、サーバーの上の道具が古いままなら対処は終わっていない、ということになります。

運用している方が確かめること

まずは手元で動かしている版を確かめ、Dolos は v1.6.2、Oura は v2.2.1 か v1.9.5、Balius は v0.5.4 以降に上げます。Boros は 10 月 21 日以降の main から作り直したものかどうかが目安になります。Docker で動かしている場合は、イメージを取り直して再起動するまでが一組です。

更新したあとに試せる確認先もあります。事案の公開ページは、問題の中間 CA で署名したテスト用のサイトを用意しており、たとえば curl なら curl https://dv-g3b-emudhra.we-have-a-problem.com/ を実行して証明書エラーになれば、そのクライアントは危ない中間 CA を信頼していません。認証局側の事後の説明を追うなら、まだ開いたままの Mozilla のバグ 2083449 が確認先です。

ことば

  • 中間 CA — ルート証明書の下で、実際にサイトの証明書を発行する認証局です。今回は、その秘密鍵を証明書から導けることが分かり、ブラウザや OS が該当の証明書を個別に遮断しました。
  • webpki-roots — Mozilla の信頼する認証局一覧を Rust のプログラムへ同梱するためのパッケージです。OS に頼らず動く反面、一覧の更新はプログラムの作り直しで届きます。
  • Dolos — TxPipe の Cardano「データノード」です。ブロック生成やリレーとは別の役割として、少ない資源で台帳を最新に保ち、API での問い合わせに答えることに絞っています。

一次ソース / 関連リンク

Boros: Cargo.lock の追加と –locked でのイメージ作成 (#52)(GitHub)

eMudhra Intermediate CA Compromise (事案の公開ページ)(we-have-a-problem.com)

Mozilla Bugzilla 2083449: eMudhra: Private key compromise of Intermediate Certificates(bugzilla.mozilla.org)

RUSTSEC-2026-0382 (rustls-webpki)(rustsec.org)

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