Go で書かれた Cardano ノード Dingo を開発する Blink Labs が 10 月 21 日、コミュニティプールの GMBL が Dingo でメインネットのブロックを作ったと発表しました。9 月 16 日の OTG (Star Forge) に続く 2 つ目のプールで、1 例目から約 5 週間後のことです。
参照実装の cardano-node 以外でブロックを作る運営者が一人から二人になったことで、ノードの多様性は一つのプールの挑戦から、別々の運営者がそれぞれ選ぶ段階へ一歩進みました。この記事では、チェーンに残った記録、GMBL というプールの素性、そして開発元の README がいまも残している警告を順に確かめます。
ブロック高 14,097,344 に残った「69」
該当のブロックは、日本時間 10 月 21 日 22 時 47 分 16 秒に作られています。Blink Labs の告知にある「9:47 AM」は米東部の時刻で、同じ瞬間を指しています。エポックは 662、ブロック高は 14,097,344、取引は 4 件です。作ったプールは pool1mhww3q6d7qssj5j2add05r7cyr7znyswe2g6vd23anpx5sh6z8d で、登録名は GimbalPool、ティッカーは GMBL です。
このブロックのヘッダーには、プロトコルの版番号として 11.69 が入っています。Cardano のブロックヘッダーの版番号のうち、台帳のルールが見るのはメジャー (11) だけで、マイナー (69) はブロックの有効性に影響しません。この空いている欄に実装の識別番号を書き込む慣行があり、レビュー中の CIP-203 の草案は Dingo に 69 を割り当てています。Blink Labs 自身も 9 月 16 日、メインネットの Dingo のブロックは版番号 11.69 で識別できると X で説明しています。
ただし、この番号はブロックを作った側が自分で書き込む値です。チェーンが保証するのは、GMBL がこのブロックを作り、ヘッダーに 69 を記したところまでです。実際に動いていたソフトが Dingo だったことは、運営者と開発元の申告に支えられています。この点は、10 月 4 日の Signal「Cardano の代替ノード、メインネットで実装番号つきブロックは2プール」で詳しく扱いました。
GMBL は学びの場を名乗るコミュニティプール
GMBL のプール登録情報は、自らを「Community Pool for Gimbalabs: learn, tinker, participate.」と説明し、ホームページに Gimbalabs を掲げています。Gimbalabs は、学びと協働のための開かれた場を掲げるコミュニティで、公式サイトではハッカソンや Cardano のバウンティの場を案内しています。
1 例目の OTG が「唯一のモバイルのステークプール」を名乗り、変わった環境での運用そのものを特徴にしてきたのに対し、2 例目は学習と実験を看板にするコミュニティから出てきました。別実装を試すことが、特定の運営者の個性を離れ、学びの場の題材にもなり始めたと読めます。
規模の面では、GMBL は大きなプールではありません。エポック 655 から 662 までの 8 エポックで GMBL が作ったブロックは、今回の 1 本だけでした。ブロックを作る出番は委任された量に比例した確率で回ってくるため、委任の小さいプールにとっては、数エポックに一度の出番そのものが貴重です。その出番を Dingo に任せたことになります。
1 例目の OTG は Dingo を主力に
先行する OTG は、9 月 16 日の初ブロック以降も Dingo を使い続けています。編集部で OTG のブロックをエポック 655 から 662 まで確かめると、作った 89 本のうち 56 本のヘッダーに 69 が入っていました。初めのうちは 0 や 1 のブロックと混ざっていましたが、エポック 662 では 14 本すべてが 69 です。OTG の運営者は 10 月 17 日、X で「Dingo is my primary block producer now.」と書いています。
一方、Blink Labs は 10 月 21 日、X 上の質問への返信で、自分たちでメインネットのプールを運用する予定はなく、Dingo を採用するかどうかは SPO のコミュニティ次第だと答えています。開発元が自前のプールで実績を積むのではなく、独立した運営者が一人ずつ手を挙げていく形で、メインネットでの実績が積み上がっています。
README の警告は「ブロック生成」に絞られた
Dingo の GitHub の README には、いまも冒頭に警告があります。現在の文面は「not yet ready for mainnet block production use」で、テストネット (preview・preprod・musashi) と devnet でのみ使い、実資金のあるメインネットでブロック生成に使わないよう求めています。9 月 16 日の時点では「not yet ready for production use」と、本番での利用全般を対象にした書き方でした。警告の対象が、メインネットでのブロック生成に絞られたことになります。
つまり OTG と GMBL は、開発元がまだ推奨していない使い方を、自らの判断で選んでいます。委任している側から見ると、Cardano の委任は ADA を預け入れる仕組みではないため、ノードの不具合で委任した ADA そのものが減ることはありません。影響が出るとすれば、割り当てられたブロックを作り損ねて報酬が減る場面です。どのプールがどの実装で動いているかは、こうした判断材料の一つとして、これから委任先を選ぶときの観点に加わっていきそうです。
次に確かめる一点
今回の 1 本が一度きりの試みなのか、GMBL が Dingo を常用するのかは、次の GMBL のブロックで分かります。日本時間 10 月 27 日 6 時 44 分ごろに終わるエポック 663 のあいだに GMBL がブロックを作れば、Cardanoscan の GMBL のプールページから、そのブロックの版番号が 11.69 かどうかを確かめられます。GMBL は割り当てが少ないため、次の 1 本がこのエポックに来ない可能性もあります。その場合は、Blink Labs の X で 3 つ目のプールの告知が先に出るかどうかが、同じ問いへのもう一つの答えになります。
ことば
- Dingo — Blink Labs が Go で書いている Cardano のノード実装です。ブロック生成のほか、Blockfrost 互換の API なども持ちます。10 月 18 日には v0.85.0 でウォレット向けのクエリに対応しました (Dingo v0.85.0、ウォレット向け Blockfrost 互換クエリに対応)。
- CIP-203 — ブロックヘッダーの版番号のマイナー値を、どの実装がブロックを作ったかの識別番号として登録する提案です。実装が増えるほど番号の衝突が問題になるため、登録簿で番号を管理しようとしています。
- ブロックの割り当て — Cardano では、各スロットでブロックを作るプールが、委任された量に比例した確率で選ばれます。委任の小さいプールは選ばれる回数が少なく、1 本 1 本の出番の重みが大きくなります。
一次ソース / 関連リンク
- Blink Labs 公式 X の告知 (2026-10-21)
https://x.com/blinklabs_io/status/2112915924575465939
該当ブロック (Cardanoscan・ブロック高 14,097,344)(cardanoscan.io)
GMBL のプールページ (Cardanoscan)(cardanoscan.io)
- Blink Labs 公式 X の 1 例目の告知 (2026-09-16 JST・OTG)
https://x.com/blinklabs_io/status/2099951643920142612 - Blink Labs 公式 X の返信 (Dingo のブロックは版番号 11.69)
https://x.com/blinklabs_io/status/2100170148959154250 - Blink Labs 公式 X の返信 (メインネットのプールは運用しない)
https://x.com/blinklabs_io/status/2113024250751644142 - OTG (Star Forge) 運営者の X の投稿 (2026-10-17)
https://x.com/Star_Forge_Pool/status/2111263524970455215

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