Cardano のプール最低固定費(minPoolCost)を 170 ADA から 75 ADA へ下げるパラメータ変更案が、エポック 660 の終わり(日本時間 10 月 12 日 6 時 44 分)で投票を締め切られ、DRep の賛成 44.18% で失効しました。可決に必要な 67% には 22.82 ポイント届かず、minPoolCost は 170 ADA のまま据え置かれます。
反対票が賛成を上回ったわけではありません。投票済みの反対は 14.51% にとどまり、最後まで投票しなかった DRep が 37.66% 残りました。3 週間で賛成は 4 倍近くに増えましたが、基準に届く前に期限が来た、という終わり方です。最終の票と、その推移、そして固定費をめぐる議論が次に向かう先を整理します。
最終の票は賛成 44.18%、未投票 37.66%
以下は、失効の確定後に日本時間 10 月 12 日 14 時 23 分に取得した数値です。
- DRep 賛成:44.18%(87 票)。可決基準の読み方で、未投票を分母に含み、棄権を分母から外した割合です。閾値は 67%
- 投票済みの反対:14.51%(37 票)
- AlwaysNoConfidence:3.65%
- 未投票:37.66%
- 棄権:19 票(分母外)
- 憲法委員会:賛成 5・反対 0・未投票 2
gov.tools の画面では「No」が 18.16% と表示されますが、これは投票済みの反対に AlwaysNoConfidence を足した値です。投票して反対した DRep の割合は 14.51% で、賛成の 3 分の 1 ほどにとどまっています。
この議案では SPO の票は可決の条件に入っておらず、SPO 側の閾値は 0%、投票は 0 票でした。提案書が明記していたとおり、必要だったのは DRep の 67% と憲法委員会の承認です。憲法委員会は賛成 5 まで進みましたが、DRep 側の基準を満たせなかったため、議案は承認に至りませんでした。SIPO は DRep として、この案に 9 月 15 日に棄権で投票しています。
3 週間で 11.79% から 44.18% へ
票は止まっていたわけではありません。SIPO.TOKYO がこれまでに取得した時点の数字を並べると、動きがはっきり見えます。
- 9 月 23 日 14 時 22 分:賛成 11.79%(31 票)・投票済みの反対 10.8%(24 票)・未投票 74.38%・憲法委員会の賛成 2
- 10 月 10 日 14 時 34 分:賛成 34.73%(77 票)・投票済みの反対 13.83%(32 票)・未投票 47.79%・憲法委員会の賛成 3
- 最終:賛成 44.18%(87 票)・投票済みの反対 14.51%(37 票)・未投票 37.66%・憲法委員会の賛成 5
未投票は 74.38% から 37.66% まで、およそ半分に減りました。その間に賛成は 32 ポイント余り増え、投票済みの反対は 4 ポイントほどしか増えていません。議案に向き合い始めた DRep の多くは賛成に回った、という形です。10 月 10 日の取得から締切までの 2 日足らずでも、賛成は 9 ポイント以上積み上がっています。
それでも、残っていた未投票の大部分が賛成に回らなければ 67% には届かない計算で、9 月 23 日の時点で書いた「失効」の筋書きがそのまま現実になりました。Cardano のオンチェーン投票では、反対多数での否決よりも、賛成が基準に届かないまま期限を迎える形のほうが起こりやすい構造があります。今回はその典型例になりました。
170 ADA のまま、小規模プールの計算は変わらない
失効によって、プールが報酬から委任者への分配より先に受け取る固定額の下限は、2023 年に引き下げられた 170 ADA のまま続きます。提案書が示していた試算では、1 ブロックあたりの総報酬を約 300 ADA とした場合、1 エポックに 1 ブロックしか作れないプールでは、170 ADA の固定費が報酬の約 57% を占めます。75 ADA ならこれが約 25% になる、というのが引き下げ案の狙いでした。
ブロックの少ない小規模プールほど、委任者の手取りから固定費が占める比率が大きいという計算は、そのまま残ります。委任する側から見れば、プールの宣言する固定費と、そのプールが 1 エポックに作れるブロック数を合わせて見る必要性は変わっていません。
次の論点は CAP-12 の「最低マージン」
固定費をめぐる議論は、別の場所に移りつつあります。Intersect の週報 #132 によると、Dijkstra 時代のパラメータを定める憲法改正案 CAP-12 の改訂版では、これまで名前だけ挙がっていて定義のなかった最低プールマージン(minimum pool margin)に独立した節が設けられ、ガードレールも付きました。
あわせて、minPoolCost をプールの運営コストに見合う水準に保つことを求める既存のガードレールについて、執筆者は廃止へ動いたとされています。このガードレールが残っていると、新しいマージンのパラメータが固定費の役割を置き換えられないためです。報酬に比例するマージンで固定費を置き換えていく方向は、9 月 23 日の記事で触れた IO Research の更新版報告の推奨とも重なります。
週報は、プレッジのレバレッジに関するパラメータの変更頻度や、CAP-10 との関係など残りの論点を翌週に示す予定だと伝えています。多くの値はまだ仮置きで、ベンチマークが必要な段階です。
確かめる先は CAP-12 の議論ページ
今回の失効は、固定費を下げる方向そのものが否定された結果とは言えません。賛成は最後まで増え続け、投票した DRep の中では賛成が反対を大きく上回っていました。足りなかったのは、未投票のまま残った 37.66% を動かすことでした。
確認できる次の一点は、Intersect の憲法改正ポータルにある CAP-12 の議論ページです。最低プールマージンの値と、minPoolCost のガードレール廃止がどう書き込まれるかを、週報の次号 #133 で予告された追加論点とあわせて見ていきます。同じ 75 ADA 案が改めて提出されるかどうかは、gov.tools の議案一覧に新しい提案として現れるかで確かめられます。
ことば
- minPoolCost — プールが報酬から委任者への分配より先に受け取る固定額の下限です。2023 年に 340 ADA から 170 ADA へ下がり、今回の 75 ADA 案の失効で、この水準が当面続くことになりました。
- 可決基準の賛成 % — 未投票の DRep を分母に含め、棄権を分母から外して計算する割合です。投票しない DRep が多いほど上がりにくく、今回の 44.18% も、未投票 37.66% を含む分母で計算されています。
- 最低プールマージン — 報酬に比例してプールが受け取る取り分の下限を定めるパラメータです。固定額の minPoolCost と違い、ブロックの少ない小規模プールほど不利になる仕組みを和らげる案として、CAP-12 で定義が進んでいます。
一次ソース / 関連リンク
Reduce minPoolCost to 75 ada(提案ページ・投票結果・gov.tools)(gov.tools)
Reduce minPoolCost to 75 ada(Cardanoscan の議案ページ)(cardanoscan.io)

Intersect Weekly Update #132(CAP-12 改訂版の要点・2026 年 10 月 9 日)
intersectmbo.org
CAP-12(Intersect 憲法改正ポータル)(cap.intersectmbo.org)


