Cardano 発の無期限先物取引所 Strike Finance は日本時間10月14日未明、RealFi の利回りを自社の流動性の保管庫に組み込んだと発表しました。告知に添えた画面では、USD を借りるための担保の一覧に RealFi の sUSDrf(ステークした USDrf)が加わり、借りた USD を Strike の公式の保管庫 SLP に入れる形になっています。
保有者から見ると、sUSDrf が生む利回りと SLP の運用成績を重ねて受け取れる仕組みです。一方で、sUSDrf の損失を引き受ける性質と、SLP の値動き、ドル建ての借入という3つのリスクも重なります。Cardano の上で RealFi のドル建て資産が DeFi につながっていく流れの中で、今回の組み込みが何をしていて、どこに注意が要るのかを整理します。
担保に預けて借り、保管庫に入れる
使われているのは、Strike の「Borrow and Earn」という仕組みです。公式ドキュメントによると、対応する資産を担保として預けたまま、ドル建ての借入枠を使って SLP の持ち分を買います。借りた USD はそのまま SLP に入り、現金として引き出したり、自分の取引の証拠金に使ったりはできません。SLP は Strike の公式のマーケットメイク用の保管庫で、保管庫の手数料は0%とされています。
告知の画面の説明では、借入の金利は0%です。担保の一覧には、これまでの ADA、SundaeSwap の USDCx/USDM の流動性トークン、Ethereum 上の Aave の aUSDC に並んで sUSDrf が表示され、借入の上限(最大 LTV)は担保価値の100%、清算の目安はマイナス10%と示されています。Strike は「USD で年率50%」と告知しており、画面上の sUSDrf の年率表示は49.27%でした。この数字は告知時点の表示で、運用の結果によって変わります。
RealFi の公式 X も、この告知を引用して「作り手が作り手を支える」と歓迎しました。Strike は10月10日(UTC)にも、清算の手数料をすべて SLP の出し手に回すと X で発表しており、保管庫を厚くする動きが続いています。取引の件数も伸びています(既報: Strike Finance V2、累計取引200万件を突破)。
重なる3つのリスク
利回りが重なる分、リスクも重なります。ひとつめは担保の sUSDrf そのものです。RealFi の公式ドキュメントによると、sUSDrf は実物資産のポートフォリオから生まれる収益を、週ごとのステーキングのエポックで受け取る仕組みで、USDrf の下に置かれた劣後の層です。ポートフォリオに損失が出たときは、プロトコル自身の損失準備で吸収したうえで、残りを sUSDrf が USDrf より先に引き受けます。償還には待機期間があり、銀行預金ではなく元本の保証もない、と明記されています。
ふたつめは SLP の成績です。Strike のドキュメントは、SLP の収益はマーケットメイクの損益、資金調達率(ファンディング)の受け払い、清算の手数料、引き取ったポジションの損益などを合わせたもので、決まった利息ではないと説明しています。相場が一方に大きく動けば、得た値幅より損失が上回ることもあります。
みっつめは借入です。借りた額はドル建てで残り、担保と SLP の持ち分の価値が下がって基準を割ると、Strike は SLP の持ち分を払い戻したり担保を換金したりして、借入を減らす手続きに入ります。sUSDrf はドル建ての資産なので、ADA を担保にする場合より価格の変動は小さいはずですが、SLP の側の損失は同じように効きます。
もうひとつ、利用できる地域にも制限があります。RealFi の製品は米国・EU・英国・香港などでは使えず、社債に当たる商品の個人向けの提供を制限している地域では、sUSDrf を使えるのは適格投資家などに限られます。日本は制限の一覧に挙がっていませんが、それだけで利用できるとは言えず、各自の地域の法令を確かめることが利用者の責任とされています。
ドキュメントの担保表が更新されるか
10月14日の時点で、Strike の公式ドキュメントの Borrow and Earn のページは、担保ごとの条件の表にまだ ADA、SundaeSwap の流動性トークン、aUSDC の3つしか載せていません。sUSDrf の借入の上限や清算の条件は、いまのところ告知の画面でしか確かめられない状態です。
次に確かめる先は、このページの担保の表に sUSDrf の行が加わるかどうかです。今週中に条件が文書になれば、画面の表示と照らして、清算の基準や換金のときの割引を確かめられます。同じ週には Indigo でも USDrf を組み込む提案がオンチェーンの投票に進んでいます(既報: Indigo、USDrf の PSM 追加がオンチェーン投票に)。RealFi のドル建て資産を受け入れる Cardano の DeFi は、取引所・貸付・ステーブルコインの各分野に広がり始めています。
ことば
- sUSDrf — RealFi のドル建てステーブルコイン USDrf をステークすると受け取るトークン。週ごとのエポックで価値が積み上がる一方、損失を USDrf より先に引き受ける劣後の層で、今回 Strike の担保に加わりました。
- SLP(Strike Liquidity Provider) — Strike が運営するマーケットメイク用の保管庫。売りと買いの注文を出して取引の相手になり、清算の引き受け手も兼ねます。Borrow and Earn で借りた資金の入れ先は、いまはこの保管庫だけです。
- 無期限先物 — 期限のない先物取引。現物を持たずに価格の上下に応じた損益を得られ、買い手と売り手の偏りは資金調達率の受け払いで調整されます。Strike は Cardano 発のこの種の取引所です。
一次ソース / 関連リンク
- Strike Finance 公式 X の告知(2026年10月13日 UTC)
https://x.com/strikeperps/status/2110053214745972805 - Strike Finance 公式 X: 清算手数料を SLP の出し手へ(2026年10月10日 UTC)
https://x.com/strikeperps/status/2109010459420729662 - RealFi 公式 X の引用投稿
https://x.com/realfi_co/status/2110060741373878337
Strike Finance ドキュメント: Borrow and Earn
docs.strikefinance.org
Strike Finance ドキュメント: SLP Vault
docs.strikefinance.org
RealFi ドキュメント: sUSDrf (staked USDrf)
docs.realfi.co
RealFi ドキュメント: Jurisdictional eligibility(利用できる地域)
docs.realfi.co
RealFi ドキュメント: Legal Disclaimer
docs.realfi.co
