EMURGO は日本時間 2026 年 10 月 28 日 13 時 27 分、公式 X アカウント (@emurgo_io) で、EMURGO と Yoroi の 2 つの DRep を 11 月 30 日に正式に登録解除すると発表しました。8 月 3 日に示していた「いずれ登録を解除する」という方針に、期日が付いたことになります。どちらかの DRep に委任しているウォレットは、11 月 30 日までに別の委任先を選ばないと、ステーキング報酬を引き出せなくなります。
Koios で確かめると、10 月 28 日 (エポック 664) の時点で 2 つの DRep に委任されている ADA は合わせて約 6 億 1,344 万 ADA、委任しているステークアドレスは約 1 万 6,000 件です。発表は乗り換え先を選ぶときの 4 つの観点を挙げ、例として 5 つの DRep の名前を出しました。SIPO もそのひとつです。本記事では、発表の中身、何もしないと何が止まるのか、乗り換えの前に確かめておきたいことを整理します。
8 月の予告に、11 月 30 日という期日
EMURGO が DRep をやめる方針を最初に示したのは 8 月 3 日です。SecondFi (旧 Yoroi) のセキュリティ事案で影響を受けた利用者の支援と回収の作業に力を集中させるためとして、Intersect の理事会からの即時の辞任とあわせて、DRep の登録をいずれ解除する意向を告げていました。同じ投稿は、移行ツールでウォレットを移すと、ステークプールと DRep の両方への委任が自動的に外れるとも説明しています。
10 月 28 日の発表は、この予告に日付を付けたものです。原文は次のとおりです。
If your wallet is currently delegated to either the EMURGO or Yoroi DRep, please delegate to another active DRep of your choice before 30 November 2026 to ensure you can continue to withdraw your staking rewards and keep your voice represented in Cardano governance. De-registration date may be extended further based on extenuating circumstances.
EMURGO か Yoroi の DRep に委任しているなら、ステーキング報酬を引き続き引き出せるように、そして Cardano のガバナンスで声が代表され続けるように、11 月 30 日までに別のアクティブな DRep へ委任してほしい、という呼びかけです。最後の一文にあるとおり、事情によって登録解除の日がさらに延びる余地は残されています。
委任先を失うのは約 6 億 1,344 万 ADA
10 月 28 日の時点で、2 つの DRep に委任されている量は次のとおりです (Koios・エポック 664)。
- Yoroi の DRep — 約 4 億 126 万 ADA・委任しているステークアドレス 15,171 件
- EMURGO の DRep — 約 2 億 1,218 万 ADA・同 815 件
件数の多くは Yoroi の DRep にあり、EMURGO の DRep の約 19 倍です。使っているウォレットの名前をそのまま委任先に選んだ利用者も多いと見られ、ふだんガバナンスの発表を追っていない人ほど、期日を知らないまま 11 月 30 日を迎えやすい構造です。8 月の発表どおり、SecondFi の移行ツールでウォレットを移した人は、移した時点で DRep への委任がすでに外れています。今回の期日で影響を受けるのは、いまも 2 つの DRep のどちらかに委任が残っているウォレットです。
何もしないと止まるのは「引き出し」
Cardano のガバナンスの仕組みを定めた CIP-1694 は、ステークアドレスが DRep に委任していない場合、報酬アカウントからの引き出しを止めると定めています。委任先の DRep が登録を解除すると、委任は行き先を失います。EMURGO が「報酬を引き続き引き出せるように」と書いているのはこのためです。
止まるのは引き出しで、報酬そのものではありません。ステークプールへの委任は DRep への委任とは別の手続きなので、DRep が登録を解除しても、プールから配られる報酬は報酬アカウントに積み上がり続けます。ADA がウォレットの外へ動くこともありません。委任をやり直せば、それまでに貯まった報酬もあらためて引き出せるようになります。
CIP-1694 では、特定の DRep を選ぶ代わりに、あらかじめ用意された 2 つの選択肢、棄権 (Abstain) と不信任 (No Confidence) へ委任しても、引き出しは止まりません。ガバナンスの声を誰かに預けるか、預けずに引き出しだけを続けるかは、それぞれの判断です。
EMURGO が挙げた 4 つの観点と 5 つの DRep
発表は、新しい DRep を選ぶときの観点として次の 4 つを挙げています。
- 一貫した投票の実績、明確に公開された投票理由、委任者への説明責任
- Cardano のエコシステムへの長期的な関わり
- 商業と技術の両方にわたる幅広い知見
- 商業・技術・ガバナンスの優先事項を同じ重さで見る、バランスのとれた現実的な姿勢
そのうえで、これらの特徴を一貫して示してきた DRep として、Cardano Foundation (@Cardano_CF)・ながまる (@nagamaru_panda)・Phil UPLC (@phil_uplc)・SIPO (@SIPO_Tokyo)・Socious (@SociousDAO) の 5 つを例に挙げました。5 つの DRep の 10 月 28 日時点の規模と DRep ID は次のとおりです。DRep ID は、各 DRep が自分で登録しているプロフィールの X アカウントと照らし合わせて確かめています。
- Cardano Foundation — 約 1 億 4,224 万 ADA・委任 1,444 件
drep1ydpfkyjxzeqvalf6fgvj7lznrk8kcmfnvy9hyl6gr6ez6wgsjaelx - ながまる — 約 1 億 3,120 万 ADA・委任 483 件
drep1ytuddrgqca0xd4aams6pl9zndpcmxg0rs7z3mggjelm6kscp4arg5 - Phil UPLC — 約 1 億 7,754 万 ADA・委任 727 件
drep1yg343cyuckglj48a6gpcey7fkfcy5x5f9g65wme3ne9q2mgaedmkm - SIPO — 約 1 億 463 万 ADA・委任 417 件
drep1yffld2866p00cyg3ejjdewtvazgah7jjgk0s9m7m5ytmmdq33v3zh - Socious — 約 2,812 万 ADA・委任 117 件
drep1ytcv4ax77s0enqef56qjflf4d8zjgxulukme9uf5p8cfaagysjppn
発表は「DReps such as」と書いていて、この 5 つに限るという意味ではありません。どの DRep がどの議案にどう投票し、どんな理由を添えたかは、gov.tools の DRep ディレクトリで誰でも確かめられます。名前が挙がったかどうかよりも、自分が大事にしたい論点で各 DRep がどう判断してきたかを読んでから選ぶのが確実です。
SIPO について書いておくと、今回の名前の挙がり方は EMURGO の判断によるもので、SIPO と EMURGO のあいだに提携の関係はありません。名前が挙がったことで SIPO の投票の判断が変わることもありません。EMURGO に関わる議案も含めて、SIPO はこれまでどおり議案ごとに独立して判断し、その理由を公開していきます。
乗り換えの前に確かめたいこと
委任のやり直しは、ウォレットの中で取引に署名するだけで終わります。EMURGO の発表も、ガバナンスの委任は非カストディアルで、ADA がウォレットから出ていくことはないと念を押しています。手順は次の 3 つです。
- ふだん使っている Cardano ウォレットを開き、ガバナンス (または委任) の画面へ進む
- DRep の一覧から選ぶか、選んだ DRep の ID を貼り付ける
- ウォレットの中で委任の取引を確認し、署名する
このとき気をつけたいのは、委任の手続きに秘密の復元フレーズ (シードフレーズ) は一切いらない、という点です。「DRep の移行を手伝う」「期日までに手続きしないと資産が失われる」といった案内でフレーズの入力を求めるサイトやメッセージは、すべて詐欺と考えてください。SecondFi の事案のあとには、公式に似せた名前のアカウントが現れたこともありました。ウォレットは公式の配布元から入れたものだけを使い、貼り付けた DRep ID は署名の前に先頭と末尾の数文字を見比べておくと安心です。
SecondFi の移行ツールでウォレットを移した人は、DRep だけでなくステークプールへの委任も外れています。両方の委任を同じときにやり直しておくと、手間が 1 回で済みます。手順は SIPO の移行マニュアルにまとめています。
次に確かめる一点は、11 月 30 日の前後に EMURGO の公式 X (@emurgo_io) が出す続報です。期日が延びるのか予定どおりなのかを、SIPO は確認します。あわせて、登録解除のあとに 2 つの DRep からどれだけの委任が動いたかを Koios で確かめます。
ことば
- DRep — Cardano のガバナンスで、ADA の保有者から投票の力を預かって議案に投票する代表者。委任先はいつでも変えられます。
- DRep の登録解除 — DRep がみずから代表をやめる手続き。解除されると、その DRep への委任は行き先を失い、委任していたステークアドレスは報酬を引き出せなくなります。
- 棄権 (Abstain) — 特定の DRep を選ばずに委任できる、あらかじめ用意された選択肢のひとつ。議案には投票しない扱いになりますが、報酬の引き出しは続けられます。
一次ソース / 関連リンク
- EMURGO 公式 X : EMURGO & Yoroi DRep Update: De-registration on 30 November 2026 (2026-10-28)
https://x.com/emurgo_io/status/2115299422850683118 - EMURGO 公式 X : EMURGO & Yoroi DRep Update: Upcoming Changes to Our DReps (2026-08-03)
https://x.com/emurgo_io/status/2084139699623575873
CIP-1694 : A First Step Towards On-Chain Decentralized Governance (報酬の引き出しと DRep 委任・棄権と不信任)(cips.cardano.org)
gov.tools : DRep ディレクトリ (各 DRep の投票と投票理由)(gov.tools)
gov.tools : SIPO の DRep ページ(gov.tools)

