SundaeSwap は日本時間 10 月 27 日夜、Project Catalyst の Fund 11 で資金を受けた Gummiworm の仕様書づくりが完了したと公式 X で発表しました。成果物は 51 本の記事、5 万語、40 点以上の図からなるホワイトペーパーで、プロトコルの設計から利用者の資金の守り方までを公開しています。
Catalyst の資金で書かれた仕様書が、誰でも読める形で残ったことになります。Cardano の上で速さを取りにいく仕組みは Hydra をはじめいくつもありますが、Gummiworm は「取引を処理する役」と「資金を預かる役」を別のグループに分ける設計を取っています。仕様書に書かれている中身と、まだ書かれていない部分を分けて整理します。
処理する役と、預かる役を分ける
ホワイトペーパーの概要によると、Gummiworm の中心にあるのは、取引の実行と資金の保管を切り離すという判断です。取引を並べて処理するのは Head と呼ばれるグループで、署名を 1 回集め終われば次のブロックを出せるため、速く動けます。一方、L1 (Cardano 本体) への入金と出金を承認するのは Coil と呼ばれる別のグループです。
この分け方の狙いは、資金に触れられる範囲を絞ることにあります。仕様書は、Head の参加者には利用者の資金に手を付ける手段がなく、資金の受け入れも払い出しも Coil を通る必要があると書いています。Head が合意できなくなったときに備えて、あらかじめ署名しておいた取引が一定の時刻に有効になり、規則に沿って最新の状態から資金を L1 へ戻す「デッドマンスイッチ」の手順も用意されています。
比較の材料として、仕様書はほかの方式の参加者数にも触れています。Bitcoin の Lightning は 2 者、Hydra は 2〜8 者で 1 つの Head を組む方式です。Gummiworm はこれと並べて、処理と保管の役割分担から設計を組み立てています。
単一ノードの試作で、ピーク毎秒約 4,000 件
仕様書の「Results」の節には、試作の計測値が載っています。本番向けに用意したマシンで、参加者 1 者の Head を動かした非公式の試験では、ピークで毎秒約 4,000 件、持続的な平均で毎秒 3,400 件の取引を処理しました。取引が受け付けられたことを示す仮の確認 (ソフト確認) は、ネットワークの遅延に約 370 マイクロ秒を足した時間だとしています。
一方、L1 で資金の動きが確定するまでの時間 (ハード確認) は、まだ数字がありません。仕様書は、Coil の参加者数とネットワークの状態に左右されるため、Coil を展開してから計測すると書いています。Cardano からの入金には、およそ 360 ブロック分にあたる 2 時間の待機を一律に置く規則があります。速さの数字は Head の中の話であり、L1 との出入りには別の時間がかかる、という読み方が正確です。
仕様書には、Gummiworm の上で動かす例として Sugar Rush という取引所も含まれています。プライバシーと MEV (取引の順番を操作して得る利益) への耐性を重視した、指値注文を板 (オーダーブック) で付け合わせる型の DEX です。注文を処理する台帳は Intel の TDX という隔離された実行環境の中で動き、Gummiworm の合意の仕組みは、中身を読まずに暗号化された注文を並べられるとしています。台帳単体の計測では、毎秒 7 万件を超える処理を保ったと書かれています。
仕様は完成、製品はこれから
今回完了したのは、あくまで仕様書を書くという Catalyst の約束です。ホワイトペーパーの工程表を見ると、2026 年 3 月に単一ノードの試作を初めて公開し、4 月に仕様書の最初の草案を書き、複数の参加者で組む最初の Head と、資金を L1 へ戻す手順の自動化までを終えています。仕様書は 5 月 29 日に一般公開され、最新の更新は 10 月 17 日です。
この先の段階には日付がありません。Coil の合意、TDX によるプライバシー機能、障害からの復旧を加えた機能完成版、その後の試験と堅牢化、Ethereum の EVM を L2 の台帳として、Midnight を Cardano に代わる L1 として扱う拡張、誰でも Coil に参加できる分散化と続きます。仕様書自身も、工程表はチームの意図であって約束ではないと断っています。
仕様書は George Flerovsky 氏と SundaeSwap Labs の名義で、CC BY-SA 4.0 のライセンスで公開されています。条件を守れば、ほかのチームが読み、検証し、改変して使える形です。Catalyst の資金で生まれた成果物が公共財として残る、というのが今回の完了のいちばん具体的な意味です。
次に見るもの
確認できる次の一点は、ホワイトペーパーの「Results」の節に、Coil を展開したあとのハード確認の計測値が載るかどうかです。工程表の機能完成版に日付が入るのも、同じ gummiworm.net の「Roadmap」の節に表れます。L1 との出入りにかかる時間が数字で示されれば、Hydra など Cardano のほかの L2 と比べる材料がそろいます。
ことば
- Gummiworm — SundaeSwap Labs が研究・開発している、高速な決済と資金の分散管理を両立させるためのプロトコル。2022 年から専用の資金なしで研究が続き、2026 年に入って資金を得て試作と仕様書づくりが進みました
- Coil — Gummiworm で資金の保管と L1 への出入りを承認する参加者のグループ。取引を速く処理する Head とは別の役で、将来は誰でも参加できるネットワークにする計画が工程表に書かれています
- Project Catalyst — Cardano のコミュニティが投票で開発資金の配分先を決める仕組み。資金はマイルストーンごとに支払われ、今回の Gummiworm は Fund 11 で選ばれた仕様書づくりの案件でした
一次ソース / 関連リンク
- SundaeSwap 公式 X の告知(Catalyst Fund 11 の完了)
https://x.com/SundaeSwap/status/2115080576617128014
Gummiworm ホワイトペーパー: 概要(gummiworm.net)
Gummiworm ホワイトペーパー: Gummiworm の全体像(gummiworm.net)
Gummiworm ホワイトペーパー: 試作の計測結果(Results)(gummiworm.net)
Gummiworm ホワイトペーパー: 工程表(Roadmap)(gummiworm.net)
Gummiworm ホワイトペーパー: Sugar Rush(gummiworm.net)
- SundaeSwap 公式 X(仕様書の一般公開・5 月 29 日)
https://x.com/SundaeSwap/status/2060425938156806487
