Cardano 財団は 11 月 5 日、財務記録をブロックチェーンに載せる報告基盤 Reeve のリリース 1.8 を公式 X で告知しました。GitHub に出ている 1.8.0 の変更点の中心は助成金の受け取りや支出を記録する機能で、一度チェーンに公開した資金の記録と、その元になるプロジェクト情報が後から食い違わないようにする仕組みが入っています。
国庫から資金を受けて動くチームを多く抱える Cardano にとって、「受け取った資金がどう使われたか」をチェーン上で後から確かめられるかどうかは、DRep (委任代表者) が資金案を判断するときの論点の一つです。1.8 は、その記録を書き込む側の仕組みを整える版です。告知の第一報は初期報でお伝えしました。本稿ではリリースノートの中身を読み解きます。
プロジェクトに消えない番号、公開後は編集にロック
財団は告知で、1.8 が「プロジェクトのライフサイクル管理」と「Project Spending Module の追跡」を強化すると説明しています。GitHub のリリースページには同じ版番号の 1.8.0 が 10 月 22 日付 (協定世界時) で出ており、追加項目の多くがこの 2 点に当たります。
まず、プロジェクト・サブプロジェクト・マイルストーンに、恒久的な識別子 proId が付きました。参照はこの番号で固定され、タイトルは自由に書き換えられます。CSV で資金データを取り込むときも、既存のプロジェクトとの照合は ID だけで行い、タイトルでは照合しないと明記されています。名前を変えたら別のプロジェクトとして扱われてしまう、という事故を防ぐ設計です。
次に、項目単位のロックです。公開済みの配分を持つマイルストーンは項目が編集できなくなり、プロジェクトの金額と通貨も、資金の出来事が公開された時点で固定されます。構造に関わる編集をした場合は、影響を受ける下書き (DRAFT) の出来事が ERROR として印付けされます。あわせて、サブプロジェクトやマイルストーンを親と違う通貨で作成・更新することもできなくなりました。
チェーンに載せた記録は書き換えられません。その一方で、元になるプロジェクト情報が組織の側で自由に動けば、両者は少しずつずれていきます。1.8 のロックは、そのずれが生まれる入口を閉じる変更です。
公開の失敗をやり直せる流れ
チェーンへの書き込みまわりにも手が入っています。資金の出来事をまとめて公開するエンドポイントが加わり、公開を見送った出来事は個別に報告されます。オンチェーンへの公開が失敗した場合は、出来事が下書きに戻り、失敗の詳細が記録されたうえで、もう一度公開できるようになりました。
不具合の修正では、Funding モジュールで 64 バイトを超える長い文字列のフィールドについて、オンチェーンのメタデータのスキーマと読み取り処理が食い違っていた問題が直っています。支出の CSV を取り込む際に、関係のない出来事がまとめられてしまう問題も解消されました。資金の出来事の一覧は、タイトル・状態・種類・通貨・日付の範囲・金額の範囲でサーバー側の絞り込みができるようになっています。
財団の外で使うための下ごしらえ
会計ソフト NetSuite との接続設定は、これまで 1 つの組織を前提に環境変数で持っていました。1.8.0 からは組織ごとにデータベースへ保存し、専用の設定 API で管理する形に変わり、秘密情報は AES-256-GCM で暗号化して保存されます。報告書のテンプレートには、組織ごとに設定する「会計基準」の項目も加わり、公開用のスキーマに書き出されます。
アプリケーション本体 (cf-reeve-application) の 1.8.0 でも、この変更に合わせて LOB_NETSUITE_CLIENT_* の環境変数が廃止されました。すでに Reeve を自前で動かしている組織が更新する場合は、接続設定の移し替えが必要になります。
1 つの仕組みで複数の組織を扱い、組織ごとに会計基準を持たせる。どちらも、財団が自分の帳簿のためだけに使う道具であれば要らない機能です。10 月 15 日の Signal でお伝えした「他の組織も組み込めるオープンソース」という案内に、コードの側が追いつき始めていることが読み取れます。
次の版で確かめられること
ただし、外部の組織がすぐに使える状態になったわけではありません。cf-reeve-platform の README には、使い方を示すサンプルアプリケーションを「近く提供する」という一文が、1.8.0 の時点でもそのまま残っています。今回のリリースで加わった文書は、台帳を追いかけて記録を同期する ledger follower アプリの README です。
Reeve は 7 月 21 日の 1.6.0 から 1〜2 か月おきに版を重ねてきました。確認できる次の一点は、cf-reeve-platform のリリースページに出る 1.8.0 の次の版で、README のサンプルアプリケーションの一文が書き換わるかどうかです。サンプルが出れば、国庫から資金を受けるチームのうち、自前でシステムを組む開発者を持たないところも、支出を Reeve の形式で残しやすくなります。
ことば
- Reeve — Cardano 財団が開発する、財務記録をブロックチェーンに載せる報告基盤。別名 Ledger on the Blockchain (LOB)。1.8 で手が入った Funding まわりは、助成金の受け取り・支出・返金を出来事ごとに残す部分です。
- マイルストーン — プロジェクトを区切った達成目標の単位。Reeve では資金の配分をマイルストーンに紐づけて記録し、1.8 からは公開済みの配分を持つマイルストーンが編集できなくなりました。
- NetSuite — 企業向けのクラウド会計・基幹業務ソフト。Reeve は会計ソフトから取引を取り込んでチェーンに載せるため、その接続設定が組織ごとに持てるかどうかが、複数の組織で使えるかを左右します。
一次ソース / 関連リンク
- Cardano 財団公式 X の告知 (Reeve Release 1.8・2026 年 11 月 5 日)
https://x.com/Cardano_CF/status/2118330793479024874
GitHub: cf-reeve-platform 1.8.0 リリースノート(GitHub)


