Cardano の台帳 (ledger) のコードに 10 月 27 日、Leios の証明書を検証する規則「LEIOSCERT」が取り込まれ、29 日にはノードのコンセンサス層からその規則を呼び出す窓口も加わりました。処理量を引き上げる仕組み Leios が、論文と試作の段階を越えて、次の時代 Dijkstra の台帳ルールとして書き込まれ始めたことを示す変更です。
IOG も 10 月 30 日の週次開発報告の告知で「Leios certificate checks」を今週の項目の先頭に挙げています。この記事では、証明書の検証が何を確かめるのか、同じ週に入った Dijkstra の手数料と報酬計算の変更、そして Hydra 2.4.2 の中身を、ステークプール運用者 (SPO) と委任者の目線で整理します。
Leios の証明書が確かめる 3 つのこと
Leios (CIP-164「Ouroboros Linear Leios」) では、通常のブロックとは別に、取引をまとめた「エンドーサーブロック (EB)」がブロックヘッダの中で告知されます。委員会がその EB に票を投じ、ステーク比率で定めた定足数を満たしたことを示す証明書が、後のブロックに載る仕組みです。台帳が「この EB は正しく承認された」と受け入れてよいかどうかを判定するのが、今回の LEIOSCERT です。
設計を記した issue によると、LEIOSCERT は次の 3 点を確かめます。
- 現在のスロットが、EB が告知されたスロットから見て早すぎないこと (CIP のパラメータと式で判定)
- EB の告知が、現在より前のエポックのものではないこと
- 証明書そのものが有効であること (証明書の作成に使われた委員会と、プロトコルパラメータの定足数をもとに検証)
ブロック本体を扱う BBODY 規則にも、証明書まわりの失敗条件が加わりました。ブロックヘッダが「証明書を含む」と示しているのに本体に証明書がない場合、証明書を載せたブロックに取引も入っている場合、そして EB の告知がないまま証明書が出てきた場合は、いずれもブロックを拒否します。証明書を運ぶブロックは証明書の運搬に専念する、という CIP の設計がそのまま台帳の判定条件になった形です。
30 日には EB そのものを適用する規則 (EB / EBLEDGERS) も入りました。こちらは現時点では、告知されたハッシュと適用しようとしている EB のハッシュが一致するかだけを確かめる最小限の実装です。
証明書だけを先に確かめる窓口
29 日に取り込まれた変更は、コンセンサス層が呼び出すための検証窓口を台帳側に設けるものです。issue の説明では、証明書の検証に必要な情報はそろっていても、EB の本体がまだ手元に届いていないため BBODY 規則を走らせられない場面を想定しています。
つまり、ノードは EB の中身を受け取る前に、証明書が正しいかどうかだけを先に判定できるようになります。EB は取引をまとめた大きな塊なので、その到着を待たずに判定を進められる分離は、Leios の狙いである処理量の引き上げとブロック伝播の速さを両立させるための下ごしらえと読めます。
Leios が Dijkstra とともに段階的に導入される計画については、Weekly Brief #29 でまとめています。10 月 27 日に開通した Dijkstra の試験網の様子は エポックな日々 663、CLI での Dijkstra 取引の組み立ては Node 11.2 の記事 をご覧ください。
SPO に関わる Dijkstra の 2 つの変更
同じ週、台帳には SPO と委任者に直接関わる変更が 2 つ入っています。
1 つ目は最低手数料の計算です (10 月 22 日)。Dijkstra では取引の中に別の取引を入れ子にする「サブトランザクション」が使えるようになりますが、これまでの実装では最低手数料の計算にサブトランザクションの分が含まれていませんでした。今回の修正で、入れ子の取引の手数料も合算して最低手数料を出すようになりました。
2 つ目は報酬計算で、CIP-23 (Fair Min Fees) の考え方を取り入れたものです (10 月 23 日)。Dijkstra では、最低固定費 (minPoolCost) を下回る固定費を宣言したプールの登録や更新が、エラーで拒否されなくなります。その代わりに報酬を計算するときは、宣言した固定費と最低固定費の大きい方を使います。8 月に Dijkstra 向けに追加された最低マージン (minPoolMargin) も同じ扱いで、宣言したマージンと最低マージンの大きい方が報酬計算に使われます。
SPO の立場から見ると、登録の時点では弾かれない代わりに、実際の報酬の分け方では最低値が効く、という構造になります。プールが宣言した値と報酬計算に使われる実効値がずれうるため、委任先を比べるツールや一覧が宣言値だけを表示していると、委任者が受け取る報酬の見込みと食い違う可能性があります。最低マージンの具体的な値は、この変更では定めていません。
Hydra 2.4.2、処理量の引き上げと Windows 版
週次開発報告の告知が挙げたもう 1 つの項目が、10 月 22 日に公開された Hydra 2.4.2 です。リリースノートによると、スナップショットにまとめる取引の単位を大きくして処理量を引き上げ、資金をメインチェーンへ戻す「部分的なファンアウト」を高速化しました。hydra-node の Windows 版も初めて用意されています。
あわせて、デポジットの扱い、スナップショットの整合性、ネットワークの停滞や再起動からの復帰について、正しさと粘り強さを高める修正がまとめて入りました。対応する cardano-node は 11.1.3、動作確認された cardano-cli は 11.2.3.0 です。委任型のヘッド構成のデモも追加されています。
次に確かめる点
Leios の台帳実装で次に見るべきなのは、EB の規則がどこまで広がるかです。現時点では告知ハッシュとの照合だけなので、EB に含まれる取引の検証がこの規則に載ってくるかどうかが、実装の進み具合を測る目印になります。確認先は cardano-ledger リポジトリの Leios 関連の issue と、11 月 6 日 (金) に出る予定の IOG の次回週次開発報告です。
ことば
- Leios — Cardano の取引処理量を引き上げるためのコンセンサスの拡張 (CIP-164)。通常のブロックとは別に取引の塊を承認する仕組みで、今回その承認を台帳が判定する規則が入り始めました。
- エンドーサーブロック (EB) — Leios で取引をまとめて運ぶ塊。ブロックヘッダで告知され、委員会の票が定足数に達すると証明書が作られます。中身が大きいため、証明書だけを先に確かめる窓口が設けられました。
- Dijkstra — Conway の次に予定されている Cardano の時代 (era)。Leios やサブトランザクションなど、今回の変更はいずれもこの時代の台帳ルールとして書かれています。
一次ソース / 関連リンク
- IOG 公式 X の告知 (週次開発報告 2026-10-30)
https://x.com/IOGroup/status/2116153156329685293
cardano-ledger: Add LEIOSCERT (#6209・10 月 27 日)(GitHub)
cardano-ledger: LEIOSCERT の設計 (issue #6185)(GitHub)
cardano-ledger: Leios certificate validation API (#6216・10 月 29 日)(GitHub)
cardano-ledger: Add Leios certificate related BBODY failures (#6202)(GitHub)
cardano-ledger: Implement minFee calculation for Dijkstra (#6190)(GitHub)
cardano-ledger: Use CIP-23 effective cost and margin in rewards calculations (#6197)(GitHub)
- cardano-ledger: CIP-23 Fair Min Fees (issue #5954)
https://github.com/IntersectMBO/cardano-ledger/issues/5954 - Hydra 2.4.2 リリースノート
https://github.com/cardano-scaling/hydra/releases/tag/2.4.2 - CIP-164: Ouroboros Linear Leios
https://github.com/cardano-foundation/CIPs/tree/master/CIP-0164
