Cardano のトレジャリーから 94 万 ADA を求める提案「AURORA」の DRep (委任代表者) の賛成は、11 月 1 日 14 時 21 分 (日本時間) 時点で可決基準の 3.42% にとどまっています。可決に必要なのは 67% で、投票済みの反対は 30.4% と賛成の約 9 倍です。
AURORA は、Cardano 上の個別の貸し付けの案件を、プロトコルをまたいで探し、比べ、確かめられるようにする共通の基盤づくりを掲げています。提出は 10 月 19 日、期限はエポック 669 (11 月下旬) です。何を作る提案で、なぜ反対が先行しているのかを、提案書と DRep の投票理由から整理します。
貸し付けの案件を探せる「市場の層」
提案書によると、AURORA が前提にするのは、Cardano の eUTxO モデルの上で、貸し付けの案件を 1 件ずつ独立した UTxO (Loan Request UTxO) として置く形です。案件が個別に存在するだけでは市場にならず、資金の出し手やアプリが案件を見つけ、条件を比べ、自分の基準で確かめる共通の仕組みが要る、というのが提案の問題意識です。
トレジャリーの資金で作るのは、案件を共通の形式で記述するメタデータ規格、資格や適格性などの証明を扱う検証の枠組み、案件を索引化して検索できるようにする AURORA Discovery Engine、公開 API と絞り込みの道具、資金の出し手の条件を記述する規格、開発者向けの道具と参考実装です。貸し付けの組成や決済そのものは、それぞれの貸し付けプロトコルに任せるとしています。
実施は Fairway が担い、Sundial が技術面で、Fallen Icarus が設計の助言で加わります。期間は約 5 か月、マイルストーンは 4 つで、成果物はすべて Apache 2.0 で公開します。資金はまず独立した 3-of-5 のマルチシグに入り、実施側は署名鍵を持たない形です。独立した監査を 2 回 (M2 の成果公開後と M4 の期間中) 行うことも書かれています。
賛成 3.42%、投票済みの反対 30.4%
11 月 1 日 14 時 21 分 (日本時間) 時点の集計は次のとおりです。
- DRep の賛成: 可決基準 (未投票を分母に含め、棄権は除く) で 3.42% (13 票)。可決に必要なのは 67%
- 投票済みの反対: 30.4% (47 票)
- AlwaysNoConfidence (常に不信任を選ぶ既定の DRep) に委任された分: 3.07%
- 未投票: 63.11%
- 棄権: 9 票 (分母に含めない)
- 憲法委員会: 7 人のうち反対 2 人、5 人が未投票
未投票がまだ 6 割を超えているので、大口の DRep の 1 票で数字は数ポイント動きます。それでも、可決の 67% までは 60 ポイント以上の開きがあり、反対の票の数は賛成の 3 倍を超えています。トレジャリーの引き出しは SPO の投票対象ではないため、可否は DRep と憲法委員会の票で決まります。
反対の DRep が挙げる「まだ無い市場」
反対票に付いた投票理由を読むと、共通する論点は「索引を作る対象の市場が、まだメインネットに無い」という点です。
DRep の BKIND は、AURORA はメインネットに存在しない貸し付け市場の索引に 94 万 ADA を求めている、と書いています。土台にする貸し付けのモデルはメインネットで使われたことがなく、参加を約束した貸し手やプロトコルもなく、納品はテストネットで終わり、資金の多くは前払いの固定報酬だ、という指摘です。
別の DRep は、担保や審査、債務不履行の処理が整った現実資産 (RWA) の貸し付けは支持するとしたうえで、AURORA はメインネットの貸し付け市場や名前の挙がった利用者、資金の出し手、試験運用が示される前に、探索とメタデータの層に資金を求めていると書いています。法域ごとの規制対応や審査、担保、回収といった貸し付けの難しい部分は範囲の外にある、という見方です。
RWA の貸し付けを Cardano に呼び込むという目標そのものに反対する声は、読んだ範囲では見当たりません。論点は順番で、市場ができる前に共通の層へ資金を入れるか、市場が育ってから整えるかです。
確認できる次の一点は、gov.tools の AURORA の提案ページです。未投票の 63% を握る大口の DRep が、エポック 669 の期限までにどちらへ投じ、どんな理由を書くか。反対の論点に提案者がどう答えるかは、提案者の Fairway の X アカウントでも追えます。
ことば
- Loan Request UTxO — 貸し付けの案件 1 件を、条件や状態ごと 1 つの UTxO として置く形です。AURORA はこれを索引化して、プロトコルをまたいで探せるようにすることを目指しています。
- 可決基準 — 賛成の割合を、未投票を含めた DRep の投票力全体で割った値です。棄権は分母から除きます。トレジャリーの引き出しは、この値が 67% に届くことが条件の一つです。
- AlwaysNoConfidence — 委任された投票力を、常に「不信任」の側に数える既定の選択肢です。gov.tools の「No」の表示には、投票済みの反対とこの分が合わせて表示されます。
一次ソース / 関連リンク
GovTool の AURORA 提案ページ (投票状況)(gov.tools)
AURORA のプロジェクトページ (Fairway)(aurora.fairway.global)
DRep BKIND の投票理由(smitblockchainops.nl)
DRep の投票理由 (RWA の貸し付けの難しい部分が範囲外という指摘)(albert-kevin.github.io)
- Fairway 公式 X
https://x.com/fairway_global
