Intersect は 10 月 30 日付の週報 #135 で、SPO (ステークプール運営者) に向けて Linux カーネルの重大な脆弱性 CVE-2026-98432 への備えを呼びかけました。深刻度の指標 CVSS は 10 点満点の 9.8 で、ブロック生成ノードとリレーが動いているカーネルの版を確かめ、使っている配布版 (ディストリビューション) が修正版を出したら適用して再起動するよう求めています。
SPO の多くが使う Ubuntu では、11 月 1 日時点で修正版がまだ出ていません。Ubuntu のセキュリティページは、サポート中の LTS (長期サポート版) をすべて「脆弱・対応中」と表示しています。修正を待つあいだに何を確かめておけばよいのかを、Intersect の呼びかけと Ubuntu・CVE の一次情報から整理します。
TCP の接続受付で起きるメモリの誤り
CVE の記録によると、不具合は Linux カーネルの IPv4 の TCP 処理にあります。外から接続の要求 (SYN) を受けて応答 (SYN-ACK) を返す途中で、別の CPU が同じ要求の再送を並行して処理すると、すでに解放されたメモリを読みにいく「解放後使用」が起きることがある、という内容です。IPv4 のオプション情報の後始末の仕方が原因で、修正はその解放を安全なタイミングまで遅らせるものです。
IPv6 はこの経路では影響を受けないと記録に書かれています。一方で、要求のソケットを別の待ち受けに移す設定 (net.ipv4.tcp_migrate_req=1 など) を使っている場合には、似た問題がもう 1 つある、とも説明されています。
リレーは外部のノードから TCP の接続を受けて動くので、待ち受けの処理にかかわる不具合は運用の前提に直接触れます。CVE は 10 月 15 日に公開され、Ubuntu の評価では優先度「高」、CVSS は 9.8 (Critical) です。
Ubuntu はまだ対応中
Ubuntu の CVE ページ (10 月 30 日更新) では、linux パッケージの状態が次のようになっています。
- 26.04 LTS・24.04 LTS・22.04 LTS: 脆弱。修正は対応中 (それぞれ 7.0.0-43.43・6.8.0-149.149・5.15.0-203.213 で作業中と表示)
- 20.04 LTS・18.04 LTS・16.04 LTS: 脆弱
- 14.04 LTS: 影響なし
Intersect の週報も、一部の配布版ではすでに修正済みのカーネルが出ているものの、Ubuntu はまだ準備中だと書いています。追加の案内は Intersect の X と SPO 向けのチャンネルで共有する、としています。
いま SPO の側でできるのは、各サーバーで uname -r を実行してカーネルの版を控え、使っている配布版の修正状況を追えるようにしておくことです。修正版が出たときは、ブロック生成ノードとリレーを同時に落とさないよう、再起動の順番を決めておくと作業が短く済みます。
node 11.2 の先行版と重なる時期
同じ週報は、cardano-node 11.2 の先行版も取り上げています。Leios を除く Dijkstra ハードフォークの機能をひと通り含み、DijkstraNet (Dijkstra の試験網) を Dijkstra 時代へ進めるもので、試験網の SPO はそのハードフォークの前に更新が必要です。Leios を含む 11.3 の先行版は 3〜4 週間後、早ければ 2 週間後と見込まれています。11.2 の中身は 10 月 29 日の記事で取り上げました。
カーネルの更新は再起動をともない、ノードの更新もサーバーに手を入れる作業です。試験網に参加している SPO にとっては、この数週間に両方が重なります。どちらも急ぎで片づけるより、手順を 1 つの作業窓にまとめて計画するほうが事故は減ります。
確認できる次の一点は、Ubuntu の CVE-2026-98432 のページです。サポート中の LTS の状態が「対応中」から「修正済み」に変わった時点が、更新と再起動に入る合図になります。あわせて Intersect の X で、追加の案内が出ていないかを確かめておくと確実です。
ことば
- CVSS — 脆弱性の深刻度を 0〜10 点で表す共通の物差しです。9.0 以上は Critical とされ、今回の 9.8 は外から突かれうる種類の不具合に付きやすい水準です。
- 解放後使用 (use-after-free) — すでに返却したメモリを、プログラムが引き続き読み書きしてしまう誤りです。並行処理のタイミングで起きやすく、カーネルの中で起きるとサーバー全体の安定性にかかわります。
- LTS — Ubuntu の長期サポート版です。サーバーでよく使われ、セキュリティ修正が長く提供されますが、修正版が出るまでの間は今回のように「対応中」の表示が続きます。
一次ソース / 関連リンク

Intersect weekly update #135 (2026 年 10 月 30 日)
intersectmbo.org
- Intersect 公式 X の週報 #135 の告知
https://x.com/IntersectMBO/status/2116569049874272525
CVE 記録: CVE-2026-98432(cve.org)


