Cardano の処理能力を引き上げる Ouroboros Leios の試作版 rc-2026w44 が、日本時間 11 月 2 日朝に GitHub で公開されました。投票の集まり具合が落ちたときにエンドーサーブロックを自動で小さくする仕組みや、ノードが複数の相手への送信の帯域を割り振る仕組みなどを、試験的な機能として入れています。
ouroboros-leios rc-2026w44 のリリースノート (GitHub)(GitHub)
Leios は Dijkstra のハードフォークで今の 3〜5 倍から段階的に入る計画で (Weekly Brief #29)、今回の試作は、その本番に向けて「負荷が高いときにネットワークがどう振る舞うか」を詰める段階にあることを示しています。SPO にとっては、いずれ自分のノードの設定として扱うことになりうる部分です。この記事では、リリースノートから変更点を読みます。
票の余裕に合わせて、ブロックの大きさを変える
Leios では、通常のブロックとは別に、取引をまとめて運ぶエンドーサーブロックが告知され、ステークを持つプールの投票が定足数に届くと、その中身が確定に向かいます。たくさんの取引を流せる一方で、投票が定足数に届かなければ、せっかく作ったエンドーサーブロックは使われません。
今回入った「適応型のエンドーサーブロック」は、この点に手を入れるものです。リリースノートによると、ブロックを作るプールは、最近の告知に投票したステークから定足数のしきい値を引いた「余裕」を見て、余裕が細ってきたら作るエンドーサーブロックを小さくします。余裕だけを基準にするため、ステークの 97% が投票していても 80% しか投票していなくても同じように働き、目標値を別に決める必要がないと説明しています。
あわせて、投票を受け付ける時間の窓が、プロトコルのパラメータに従って開閉するようになりました。これまではパラメータにかかわらず、告知から 3 秒後に開き、その 4 秒後に閉じていましたが、今後はパラメータで決まる時間で開閉します。この機能は初期設定では無効で、ノードの設定に専用の項目を加えると有効になります。
送信の帯域を相手ごとに割り振る
もう 1 つの柱が、ノードの送信の割り振りです。ノードが接続している相手全体で共有する送信の帯域の予算を新しい設定項目で決め、初期値は 250 Mbps、0 にすると割り振りを止められます。相手を段階 (tier) に分けて送信の順番を決め、その結果どの段階の相手がどれだけ待たされたかを数える指標も加わりました。
取引の受け渡しも変わります。自分で指定した接続先、最近新しい取引を届けてきた相手、ランダムに選んだ少数の相手には全速で取引を問い合わせ、それ以外の相手には間隔を空けます。1 回に問い合わせる取引の ID の数は 6 から 10 に増えました。同じ取引を 2 度並べた応答はエラーとして退けるようになり、高い負荷のもとで取引の受け渡しの計数が出なくなる不具合も直しています。
ほかに、プールの鍵の束 (運用証明書・VRF・KES) にプールごとの BLS 署名鍵を加えられるようになったこと、エンドーサーブロックの取引の検証にかかった時間と量を記録するようになったことなどが並びます。
作り直しなしで試せる試作
リリースノートは、試験用のネットワーク Musashi Dojo でこの版を最大限に使うには、送信の割り振り・適応型のエンドーサーブロック・新しい取引の受け渡しの 3 つをすべて有効にするよう呼びかけ、そのための設定ファイルを添えています。今回はデータベースも通信の形式も変わらないため、同期のやり直しもネットワークの作り直しも要らず、1 つ前の w43 のノードとそのまま通信できます。問題があれば w43 に戻してよいとしています。
ここ数週の試作と比べると、この点がはっきりします。10 月 17 日の w42 はネットワークの作り直しが必要で、10 月 26 日の w43 は同期のやり直しが必要でした。毎週の試作で通信の形式やデータの持ち方を固めていた段階から、上に機能を足して試す段階へ移ってきたと読めます。Musashi Dojo は宮本武蔵にちなんだ名前で、IOG は Cardano の日本のコミュニティに敬意を表したものだと説明しています。
先行版 52%、ハードフォーク 5%
IOG の Leios の開発トラッカーは、11 月 3 日の時点で先行版 (Release Candidate) の進み具合を 52%、ハードフォークを 5% と示しています。改善提案・技術仕様・1,000 TPS の実演・Leios のテストネットはいずれも 100% で、残っているのは本番に入れるための詰めの部分です。
Cardano の処理能力は、上に乗る DeFi や決済の使い道の天井を決めます。いま Cardano では先物やレバレッジの取引の場が相次いで動き出していますが (Daily Intel 11/3)、取引が増えるほど、ネットワークが混んだときに何を優先し、どこで量を絞るかの設計が効いてきます。今回の 2 つの機能は、まさにその「混んだとき」の振る舞いを決める部分です。次の確認点は、GitHub の ouroboros-leios のリリース一覧に出る次の試作 (w45) で適応型のエンドーサーブロックが初期設定で有効になるかどうかと、開発トラッカーの先行版の数字が 52% から動くかどうかです。
ことば
- エンドーサーブロック (EB) — Leios で取引をまとめて運ぶ追加のブロックです。プールの投票が定足数に届くと確定に向かうため、今回の試作は投票の余裕に応じて大きさを変える仕組みを試しています。
- 定足数 (quorum) — エンドーサーブロックを有効にするのに必要な、投票したステークの割合のしきい値です。今回の仕組みは、投票したステークとこのしきい値の差を「余裕」として見ています。
- Musashi Dojo — Leios を試すための試験用ネットワークです。宮本武蔵にちなんで名付けられ、IOG は Cardano の日本のコミュニティへの敬意を込めたと説明しています。
一次ソース / 関連リンク
ouroboros-leios rc-2026w42 のリリースノート (GitHub)(GitHub)

Leios development tracker


