SundaeSwap v4 は、Cardano の分散型取引所 (DEX) である SundaeSwap の新しい版で、2026 年 10 月 1 日にメインネットで動き始めました。利用者は出す資産と受け取る量の下限を決めるだけで、途中でどのプールを通るかは任せられます。
SIPO は SundaeSwap v4 のスクーパーを運用しています。この記事では、注文を処理する側から見える実例も交えて、v4 の魅力を 3 つ紹介します。発表された機能は順に開いている途中なので、今使えるものとこれから開くものも分けて整理します。
注文を実行する、スクーパーという役割
SundaeSwap で交換するとき、利用者のウォレットからプールへ直接お金が動くわけではありません。まず注文を出し、それを見つけたスクーパーがプールとつなげて、チェーン上の取引として実行します。スクーパーは複数の運用者が動かしているプログラムで、注文を処理する係だと考えると分かりやすいと思います。
SundaeSwap はこの 5 年で、基本の取引の仕組みをつくった v1、使い勝手を磨いた v2、処理能力を 10 倍にした v3 と進んできました。v4 で開発元の Sundae Labs が掲げたテーマは「Professional DeFi」です。Cardano の DeFi が、外の市場と効率で競えるようになるために何が必要かを、機能ごとに問い直した版といえます。
魅力 1:経路を任せても、上乗せ分は利用者に戻る
交換したい 2 つの資産を直接結ぶプールがないとき、DEX では間に別の資産をはさんで乗り継ぎます。Sundae Labs の説明によると、従来は乗り継ぎのたびに取引が分かれていました。取引が増えるぶん価格がずれる機会も増え、途中の資産を持ったまま止まってしまうこともあります。
v4 の Atomic Swaps は、この経路全体を 1 つの取引で実行します。すべての段階が成立するか、どれも成立しないかのどちらかなので、途中の資産だけが手元に残ることはありません。

もう 1 つの特徴は、注文を複数のプールへどう分けるかを、既定でスクーパーに任せられることです。v4 は内部で DEX アグリゲーターのように働きます。「任せる」と聞くと、処理する側が得をする余地が気になるかもしれません。Sundae Labs は、分割で生まれた上乗せ分をスクーパーではなく利用者に渡すことを、スマートコントラクトが強制すると説明しています。
実際の取引でも確かめられます。SIPO のスクーパーが 11 月 5 日に処理した最初の取引では、資産を受け取ったのは利用者とプールだけで、スクーパーの財布への支払いはありませんでした。
10 月 20 日には、ADA から利回り付きの sUSDrf へ 1 回の操作で交換できるようになりました。通るのは ADA / USDCx (v3)、USDCx / USDrf (v4)、USDrf / sUSDrf (v4) の 3 つのプールです。経路の詳細は 10 月 20 日の記事にまとめています。
魅力 2:ステーブルコインを 1 対 1 で交換できる
Linear Swaps は、信頼できるステーブルコイン同士を固定の比率で交換するプールです。従来のステーブルコイン向けプールでも価格のずれは小さくできましたが、ゼロにはなりませんでした。受け取る量が事前に確定すると、支払いなどほかのサービスに組み込みやすくなります。
先ほどの取引が、ちょうど Linear Swaps の実例です。利用者は 1,587.40 USDCx を出し、1,586.60 USDrf を受け取りました。差は 0.05% で、これが手数料です。このほか注文に添えた 5 ADA のうち 3.72 ADA が戻り、ネットワーク手数料 0.99 ADA を含む 1.28 ADA が使われています。交換額が小さいほど、この ADA の費用は相対的に重くなります。
固定比率には弱点もあります。同じ方向の交換が続くと、片方の資産が尽きてしまうのです。USDrf / USDCx プールの残高も、11 月 7 日の未明は USDrf 約 25 万に対して USDCx 約 65 万と偏っていましたが、同じ日の朝には約 42 万と約 48 万まで動きました。v4 は偏りに対して、足りない資産を補う交換をした人へ報酬を払う仕組みを組み込みました。報酬の仕組みは 9 月 30 日の記事で解説しています。
魅力 3:プールを部品のように組み替えられる
v4 のプールの中心は、トークンの準備金と、それに対する持ち分 (LP トークン) だけです。価格の決め方や取引の条件といったほかの要素は、差し替えられるように作られています。Sundae Labs はこれをレゴのブロックに例えています。

魅力は、作ったプールがそのまま SundaeSwap の画面、注文の流れ、アグリゲーターとの連携に乗る点です。Sundae Labs の説明どおりなら、流動性を提供する側は取引所を一から作らなくても、こだわりたい部分だけを作り込めます。利用者の側は、新しいプールの存在を知らなくても、注文の経路に組み込まれて恩恵を受けられます。
動きはすでに出ています。Cardano PRIME が 10 月に発表した最初の資金提供先には、v4 の上に市場の中核機能を作る Sundae Labs と、v4 の流動性ポジションを自動で管理するボールトを作る Steer が入りました。
今使えるものと、これから開くもの
v4 は小さな機能から順に開く方針です。次の一覧は、11 月 7 日時点で SIPO が確かめた状態です。「これから開くもの」は発表済みの機能で、メインネットでの稼働はまだ確認していません。
今使えるもの
| 機能 | できること |
|---|---|
| Linear Swaps | ステーブルコインを固定の比率で交換 |
| Stableswap | USDrf と sUSDrf のように価値の近い資産を交換 |
| Atomic Swaps | 複数のプールを 1 つの取引で通過 |
これから開くもの
| 機能 | できること |
|---|---|
| 集中流動性 | 流動性を特定の価格帯に集め、価格のずれを減らす |
| 複数資産のプール | 2 種類に限らない資産を 1 つのプールに入れる |
| 部分約定 | 大きな指値注文を時間をかけて少しずつ成立させる |
| ほかのプロトコルとの連携 | Butane や Indigo の仕組みも交換の経路に使う |
| カスタム Vault | 流動性を運用する独自の Vault を作る |
今、何が動いているか
取引が続いている v4 のプールは 2 つで、どちらも RealFi のステーブルコイン向けです。Sundae Labs の分析サイト Float には、もう 1 つ v4 のプールが載っていますが、直近 30 日の取引はありません。
| プール | 預かり残高 | 30 日の取引 |
|---|---|---|
| USDrf / USDCx (Linear Swaps) | USDrf 41.6 万 USDCx 48.2 万 | 417 件 |
| sUSDrf / USDrf (Stableswap) | sUSDrf 74.0 万 USDrf 85.2 万 | 94 件 |
Float API より。2026 年 11 月 7 日 07:25 JST 時点。
まだ小さな規模ですが、入口は広がっています。SundaeSwap の画面に加えて、DEX アグリゲーターの SteelSwap が v4 に対応し、Liqwid の RealFi Hub の交換も v4 のプールを使っています。ADA と各種トークンの交換に v4 がどこまで広がるか、v3 の流動性をどう扱うかは、これから見ていく点です。
使う前に確かめたいこと
- 公式のサイトから開く:交換の画面は app.sundae.fi です。検索結果には紛らわしいドメインが出ることもあるので、ブックマークからの利用をおすすめします。
- 新しいコントラクトであること:7 月の発表時点で監査は終盤とされ、結果は後日共有するとされていました。11 月 7 日時点で、SIPO は結果の報告書をまだ見つけていません。大きな額を動かす前に、公式の発表を確かめてください。
- 受け取るトークンの性質:sUSDrf は損失を USDrf より先に負担する層で、RealFi には利用できない地域もあります。RealFi の仕組みと、利用前に確かめる 4 点をあわせてお読みください。
この記事は仕組みの解説で、特定のトークンの購入や運用を勧めるものではありません。
なぜ、それが信頼につながるのか
v4 では、経路を選ぶのはスクーパーです。それでも利用者は、受け取る量の下限を自分で決められ、上乗せ分はコントラクトによって利用者へ戻り、経路は全部成立するか全部成立しないかのどちらかです。
スクーパーを運用している SIPO の立場から見ると、これは心強い設計です。利用者に SIPO を信用してもらわなくても、守るべきことはコードが守ってくれます。処理する人を信じるのではなく、処理の結果を規則で縛る。DEX が大きくなるほど、この違いが効いてくると SIPO は考えています。
次の一歩
次に確かめたいのは 2 点です。Sundae Labs の公式 X で ADA を含むペアの v4 プールが告知されるか、公式ブログで監査の結果が公開されるかを見ていきます。動きがあれば、この記事も更新します。
- v4 の設計を詳しく読む:SundaeSwap v4 発表の Deep Dive
- 稼働初日の範囲を確かめる:SundaeSwap V4 稼働、まずはステーブルコインの 2 プールから
- 乗り継ぎの仕組みを読む:Sundae V4、複数プールをまたぐ交換を 1 取引で決済
- SIPO の活動を知る:SIPO について
実際の画面を使った交換の手順は、次のマニュアルで紹介する予定です。
もっと知りたい人へ
集中流動性は Cardano でどう違うのか
Uniswap v3 が広めた集中流動性では、1 つのプールが価格帯ごとの細かいデータを持ちます。Sundae Labs の説明によると、v4 は UTxO の仕組みを生かして、価格帯ごとに小さく独立したプールへ流動性を分け、自動の経路づくりで全体をまとめて使う設計です。
部分約定はなぜ必要か
プールの表示価格が目標に届いても、大きな指値注文は価格のずれのために目標の価格では成立しません。v4 は注文の中で予算を決めると、その範囲でスクーパーが注文を小さく分けて執行できるようにします。自動の経路づくりが注文をプールの間で分けるのに対し、部分約定は注文を時間の上で分けます。
次の時代への備え
Sundae Labs は、v4 を Midgard と Leios で検証し、入れ子の取引やプログラマブルトークンなど今後の機能を取り込みやすくしたと説明しています。Gummiworm の L2 とは、v4 の一部のプールの流動性で L2 の取引を満たせるように共同で設計しているとしています。
出典
- Introducing Sundae v4(Sundae Labs・2026 年 7 月 30 日):機能と方針
- Sundae V4 is LIVE(Sundae Labs の X・2026 年 10 月 1 日):稼働の告知
- Sundae V4 introduces Atomic Swaps(Sundae Labs の X・2026 年 10 月 7 日):1 つの取引で通過する仕組み
- scooper-v2(GitHub):スクーパーの説明と実装
- Float API の v4 市場一覧:プールの残高と取引件数
- 取引 9d592b68…f1fb(Cardanoscan):Linear Swaps の実例
- Cardano PRIME、最初の資金提供先 9 チームを発表(SIPO・2026 年 10 月 24 日):Sundae Labs と Steer の助成
この記事の版
v1.0(2026 年 11 月 7 日時点の情報)。機能の稼働に合わせて、同じ URL のまま更新します。