『進化するカルダノ・ベーシック』[#12]進化を遂げ無限の可能性を広げるカルダノ開発環境「(その5)オールインワンのオープンソースソリューションAtlasとは?」
シリーズ連載『進化するカルダノ・ベーシック』は、カルダノについて初心者や、既に知っているが日々進化し続けるカルダノの現在進行形について知りたい方向けに、様々な視点と角度から、カルダノの基礎知識とその未来について、最新アップデート情報を交えてお伝えする企画(不定期)です。
前回は、第12回目の記事としてカルダノの独自な進化を支える「[#12]進化を遂げますます無限の可能性を広げるカルダノ開発環境「(その1)カルダノ・ブロックチェーンにおける開発環境の特徴とその能力」、「(その2)カルダノのコア開発環境Plutusとは?」、「(その3)Marloweの魅力とその将来性」、「(その4)カルダノに更なる革新をもたらすの開発環境AIKENとは?」についてお届けしました。
今回はその5として「Atlas:カルダノ・ブロックチェーン上で分散型アプリケーション(dApps)の開発を簡素化するために設計された、オールインワンのオープンソースソリューション」ついてお届けします。
Atlasについて
Atlasは、カルダノ・ブロックチェーン上で分散型アプリケーション(dApps)の開発を簡素化するために設計された、オールインワンのオープンソースソリューションです。Dr. Lars Brünjesの指導の下、Genius YieldのChief Scientific OfficerであるMarvin Bertin氏、Well-Typed、MLabs、そしてPlankらによって共同開発されました。
Genius Yieldのミッションは、「誰にでもDeFiを実現すること」で、このミッションの一環として、Atlasをオープンソース化しています。
Atlasは、トランザクションの構築、UTXOのバランシング、およびPlutusスマートコントラクトとのインターフェースに関連する複雑さを抽象化することで、開発者にシームレスな体験を提供することを目指しています。
Atlasは、Plutusスマートコントラクトの制限を改善した別のHaskellベースのdAppフレームワーク(PAB)です。Atlasは、カルダノ・ブロックチェーン上でdApps(分散型アプリケーション)とPlutusスマートコントラクトを実行するためのオフチェーンバックエンドツールとして機能します。これにより、カルダノのdApps(分散型アプリケーション)開発者はトランザクションを構築し、スクリプトと対話し、ブロックチェーンとインターフェイスすることができます。
それではAtlasについて詳しく見ていきましょう。
Atlas主要な機能
カルダノ用のオールインワン開発環境であるAtlasの主要な機能は下記のようなものがあります。
直感的なAPI
Atlasは、トランザクションを構築し、スマートコントラクトを実行するのを容易にする直感的なAPIを提供します。この機能は、ブロックチェーン開発に深く精通していない人々に特に有益です。
ファーストクラスのHaskellサポート
Haskellの関数型プログラミングの力を活用してアプリケーションを開発します。Atlasは、Plutusの基本要素とカルダノ・ノードとのネイティブな相互運用性を提供し、オンチェーンとオフチェーンのコードの間で効率的かつ簡潔なインターフェースを提供します。
モジュラーなデータプロバイダー
Atlasは、ブロックチェーン・データの複数のプロバイダーをサポートしており、dApp内でデータがどのようにフェッチされ、使用されるかについて、より大きな柔軟性とカスタマイズが可能です。
最新の革新
Atlasは、カルダノの最新の機能、たとえば参照入力、インラインデータム、参照スクリプトなど、常に更新されています。これにより、開発者はカルダノ・エコシステムの最新の革新を活用できます。
包括的なテストフレームワーク
Atlasには、Plutus Simple Modelに基づいたテストハーネスフレームワークが付属しており、開発者はオンチェーンの動作に忠実なリアルなテストを書くことができます。また、シミュレーション環境での本物のプライベートノードでの統合テストもサポートしています。
コミュニティとサポート
Atlasには、トップのHaskellおよびPlutus開発者からなるオープンソースコミュニティがあります。開発者が問題に遭遇した場合、Cardano Stack Exchangeコミュニティで#Atlasタグを使用して助けを求めることができます。
ライセンス
AtlasはApache 2.0の下でライセンスされており、オンチェーンのPlutusスマートコントラクト用のオフチェーンコードを書くための真にオープンソースなソリューションです。
Atlasを使用する利点
Atlasの直感的なAPIとファーストクラスのHaskellサポートによる大幅な効率化
Atlasの直感的なAPIとファーストクラスのHaskellサポートは、下記のようないくつかの方法でカルダノベースのアプリケーションの開発プロセスを大幅に効率化します。
エントリーバリアの低減
直感的なAPIは、ブロックチェーン開発に関連する多くの複雑さを抽象化し、新参者がCardano上での構築を容易にします。これにより、エントリーバリアが低くなり、より多くの開発者がCardanoエコシステムに参加することが促されます。
Plutusとのシームレスな統合
AtlasがCardanoのスマートコントラクト言語であるPlutusとネイティブに相互運用できることにより、オンチェーンとオフチェーンのコードの間でシームレスな統合が可能です。これは、すでにHaskellに精通している開発者にとって特に有益であり、既存の知識を活用してより複雑なアプリケーションを構築できます。
簡素化されたトランザクション構築
APIは、カルダノ・ネットワークにトランザクションを構築および送信するプロセスを簡素化します。これにより、開発者はトランザクションの構築の複雑さに困惑することなく、アプリケーションのビジネスロジックにより集中できます。
コードの再利用性
ファーストクラスのHaskellサポートにより、開発者はテスト、維持、再利用が容易なモジュラーなコードを書くことができます。これにより、開発サイクルが速くなり、より堅牢なアプリケーションが生まれます。
型安全性とエラーハンドリング
Haskellの強力な型システムは、コンパイル時にエラーをキャッチすることで知られています。この機能は、Atlasの直感的なAPIと組み合わせることで、追加のセキュリティと堅牢性の層を提供し、高額なミスを防ぐのに役立ちます。
効率化された開発ワークフロー
直感的なAPIとHaskellサポートの組み合わせにより、より効率的な開発ワークフローが可能になります。開発者は、Atlasが提供する同じ開発環境内で、スマートコントラクトとオフチェーンコードの作成を簡単に切り替えることができます。
要するに、Atlasの直感的なAPIとファーストクラスのHaskellサポートは、カルダノ・ベースのアプリケーションを開発するためのよりユーザーフレンドリーで効率的な環境を作り出し、初心者から経験豊富な開発者まで、より迅速かつ効率的に堅牢で安全なdAppsを構築できるようにします。
dAppsの柔軟性とカスタマイズに大きな影響を与える、Atlasのモジュラーなデータプロバイダー
Atlasにおけるモジュラーなデータプロバイダーは、下記のようないくつかの理由でdAppsの柔軟性とカスタマイズに大きな影響を与えます。
データソースの多様性
モジュラーなデータプロバイダーにより、開発者はさまざまなデータソースから選択できます。これにより、開発者は単一のデータプロバイダーに固定されず、必要に応じて異なるブロックチェーンデータソース間で切り替えることができます。
カスタマイズ
データプロバイダーのモジュラー性により、開発者はデータの取得と処理をアプリケーションの特定のニーズに合わせて調整できます。これにより、dApp内でデータがどのようにフェッチされ、処理され、利用されるかについて、より大きなカスタマイズが可能になります。
スケーラビリティ
dAppsが複雑さとユーザーベースで成長するにつれて、新しいデータプロバイダーを簡単に追加または交換できる能力がスケーラビリティにとって重要になります。Atlasのモジュラーなアプローチにより、大きなコードの改修なしに新しいデータプロバイダーを統合することで、アプリケーションを簡単にスケールすることができます。
冗長性と信頼性
複数のデータプロバイダーをモジュラーな形式で設定することで、冗長性が確保されます。1つのデータプロバイダーが故障した場合や不正確な情報を提供した場合でも、システムは別のプロバイダーにフォールバックできるため、dApp全体の信頼性が向上します。
コスト効率
異なるデータプロバイダーは、API呼び出しやデータ取得に対して異なるコスト構造を持つ場合があります。モジュラーなシステムにより、開発者は特定のユースケースに最もコスト効果の高いオプションを選ぶことができ、運用コストを削減する可能性があります。
コンプライアンスとセキュリティ
場合によっては、規制要件が使用できるデータプロバイダーの種類を指定する場合があります。モジュラーなシステムが提供する柔軟性により、承認されたまたは認証されたデータプロバイダーのみを統合することで、このような規制に簡単に準拠できます。
要するに、Atlasのモジュラーなデータプロバイダーは、開発者が変化するニーズに簡単に適応し、効率的にスケールし、信頼性とコンプライアンスを確保できるように、dAppsの柔軟性とカスタマイズを大幅に向上させます。
信頼性とセキュリティに重要な役割を果たす、Atlasの包括的なテストフレームワーク
Atlasの包括的なテストフレームワークは、下記のようないくつかの理由でカルダノ・ブロックチェーン上で開発されたアプリケーションの信頼性とセキュリティを確保する上で非常に重要な役割を果たします。
早期のエラー検出
このフレームワークにより、エラーや脆弱性を早期に検出し、それらがより大きな問題にエスカレートする前に対処することができます。これは、エラーが高額で取り返しのつかないものである可能性があるブロックチェーン領域において特に重要です。
現実的なテスト環境
Atlasは、Plutus Simple Modelに基づいたテストハーネスフレームワークを提供し、開発者がオンチェーンの動作を模倣する現実的なテストを書くことができます。これにより、アプリケーションがCardanoネットワークにデプロイされた際に期待通りに動作することが確保されます。
統合テスト
Atlasは、シミュレーション環境内の本物のプライベートノードでの統合テストをサポートしています。これにより、開発者はdAppのすべてのコンポーネント、スマートコントラクトを含め、シームレスに連携して動作することを確認できます。これにより、デプロイ後の統合問題のリスクが低減します。
コード品質保証
包括的なテストにより、コードが品質基準を満たし、さまざまな条件下で期待通りに動作することが確保されます。これは、ユーザーやステークホルダーの信頼を築くため、また任意の規制遵守要件を満たすために重要です。
セキュリティ監査
テストフレームワークは、潜在的な脆弱性や攻撃ベクトルを特定するためのより広範なセキュリティ監査の一部として使用することができます。これは、dApp内の機密データとトランザクションのセキュリティを確保するために不可欠です。
継続的な改善
堅牢なテストフレームワークにより、継続的な改善と反復的な開発が可能になります。開発者は、その安定性とセキュリティに自信を持ちながら、アプリケーションを簡単に更新および拡張することができます。
開発者の効率
包括的なテストフレームワークを導入することで、デバッグプロセスが効率化され、開発者が問題を特定して修正するのが容易になります。これにより、開発サイクルが速くなり、市場投入までの時間が短縮されます。
Atlasの包括的なテストフレームワークは、アプリケーションの信頼性とセキュリティを確保するために非常に重要です。それは、開発者が早期に問題を特定し、対処するために必要なツールを提供し、さまざまなコンポーネントの統合を検証し、コード品質を保証し、dAppsの継続的な安定性とセキュリティを維持するためのものです。
参考記事とリソースリンク:
公式サイト:https://atlas-app.io/
追加のリソースは下記のリンクがあります。
AtlasとAIKENの違い
最後に、前回「(その4)カルダノに更なる革新をもたらすの開発環境AIKENとは?」ではAIKENについてお届けしましたが、AtlasとAIKENの違いは主にどのような違いがあるでしょうか??
AtlasとAIKENは共にカルダノブロックチェーン用に設計された開発環境ですが、異なる目的と機能を提供しています。現時点での簡単な比較は以下の通りとなります。
Atlas
- 対象となる層: 主にHaskellとPlutusの開発者を対象としています。
- 言語サポート: HaskellとPlutusに強力なサポートを提供しています。
- 機能: 分散型アプリケーション(dApps)とスマートコントラクトの開発を容易にするよう設計されています。
AIKEN
- 対象となる層: Haskellに詳しくない開発者を含む、より広範な開発者に向けています。
- 言語サポート: 複数のプログラミング言語をサポートする可能性があります。
- 機能: dApp開発のためのよりユーザーフレンドリーなインターフェースとツールを提供することに焦点を当てています。
AIKENついては下記の記事をご参照下さい。
これまでの記事「シリーズ連載:進化するカルダノ・ベーシック」はこちらをご覧ください。
もしこの記事が気に入っていただけましたら、SIPO、SIPO2、SIPO3への委任をどうぞよろしくお願いいたします!10ADA以上の少量からでもステーキングが可能です。ステーキングについて知りたい方は、下記の記事をご参考ください。
ステーキング(委任)とは?
カルダノ分散型台帳システムによるステーキングの魅力とその方法:2021版
Q&A:カルダノ、ステーキングに関する基本的な説明集
ダイダロスマニュアル
ヨロイウォレット Chromeブラウザ機能拡張版マニュアル
ニュース動向 in エポック439
『進化するカルダノ・ベーシック』[#12]進化を遂げ無限の可能性を広げるカルダノ開発環境「(その4)カルダノに更なる革新をもたらすの開発環境AIKENとは?」
回はその4として「カルダノに更なる革新をもたらすの開発環境AIKENとは?」ついてお届けします。
AIKENがカルダノDeFiのスケーリングを支援 by TapTools
TapToolsは、AikenがCardanoのDeFi(分散型金融)エコシステムのスケーリングにおいて果たす役割についての記事「Aiken to Help Scale Cardano DeFi」公開しました。
記事は、Cardanoのエコシステムが進化し続ける中で、Aikenを採用し、スケーラビリティの課題に取り組むことは、すべての参加者にシームレスで効率的なDeFi体験を提供する上で極めて重要だと述べています。さらにこれはエキサイティングな旅であり、Cardanoは分散型金融の世界で大きな進歩を遂げる位置にあるとしてます。
「JPNFT」と「JPG Store」が業務提携し、無許諾/海賊版NFTを排除し、正規版NFTを提供するマーケットプレイスを構築することを発表
提携により、jpnft認証マークを用いて正規版NFTを判別しやすくなります。 JPNFTは正規IPの認証・登録、NFT海賊版の探索・削除、IPライセンスマッチングサービスを提供し、JPG Storeはカルダノのブロックチェーンを採用したNFTマーケットプレイスです。
カルダノの6周年
Cardanoコミュニティは過去6年間で成長し、さまざまなマイルストーンを達成しました。
カルダノネットワークは6年前ジェネシスブロックを生成し、ネットワークは再起動やブロックチェーンのロールバックを一度も経験することなく連続稼働を記録しています。
ChatGPTが選ぶ「永遠に購入し続けるべき」3つの暗号通貨
ChatGPT-4によると、永遠に購入し続けるべきトップ3の暗号通貨はBitcoin(BTC)、Ethereum(ETH)、およびCardano(ADA)です。
FinboldはChatGPT-4に対して「投資家が永遠に保持して購入できる3つの暗号通貨を推奨してください」という質問し、ChatGPT-4が永遠に購入し続けるべきトップ3の暗号通貨はBitcoin(BTC)、Ethereum(ETH)、およびCardano(ADA)であると答えたと記事で伝えています。
カルダノ・ネットワークでは、1,280以上のプロジェクトが進行中
IOHKは、カルダノにおいて現在1,287件のプロジェクトが進行中であることを明らかにする最新の開発レポートを公開しました。これは前月からの増加を示しており、開発者の関心が高まっていることを強調しています。レポートでは、ネットワーク、ウォレット、スマートコントラクトの機能のアップグレードについても言及されており、Laceウォレットの改善やMarloweチームによるスマートコントラクトの作業の強化などが含まれています。これらの進展は、カルダノの開発活動の高いランキングと、ブロックチェーン上で働く開発者の数の多さをサポートしています。
ブロックチェーン技術の異なる世代:第三世代のブロックチェーンであるカルダノの立ち位置
TheCryptoBasicがカルダノについての立ち位置である第三世代のブロックチェーンについて記事「Cardano’s Third-generation Blockchain: Bridging The Gap To Modern Cryptocurrencies」を公開しており、簡潔によくまとめられていますのでご紹介します。