カルダノのエコシステムを統合する「Project One Page」発表
カルダノ創設者のチャールズ・ホスキンソン氏が、新たなプロジェクト「Project One Page」を発表しました。本プロジェクトは、カルダノエコシステム全体の主要な指標(KPI)を一元的に管理し、可視化するダッシュボードの開発を目的としています。
背景:なぜ統合ダッシュボードが必要なのか?
現在、カルダノのエコシステムには、さまざまなデータを提供するプラットフォームが存在します。例えば、ADA Stats や TapTools などがあり、ステーキング状況やトークンの動向、取引数などを個別に追跡できます。しかし、エコシステム全体を包括的に把握できる統合ダッシュボードは存在しません。
ホスキンソン氏は、「エコシステムの成長を測定し、改善するためには、何を追跡すべきかを明確にする必要がある」と述べています。また、カルダノの分散型ガバナンスが進む中で、DRep(分散代表者)や憲法委員会のメンバーが説明責任を果たせるようにすることも重要です。
「Project One Page」が目指すもの
本プロジェクトでは、以下のような指標を含む統合ダッシュボードを作成することを目標としています。
- TVL(Total Value Locked):カルダノ上の資産の総ロック額
- DII(Decentralized Infrastructure Index):分散型インフラの指数
- トランザクション数とアクティブアドレス数
- コードコミット数、GitHub の活動状況
- DAppの利用状況とボリューム
- スマートコントラクトの数とその稼働状況
- コミュニティガバナンスの統計
- 分散化の度合い(コンセンサスの状況)
- ブロックチェーンのサイズと成長率
このダッシュボードを通じて、カルダノエコシステムの健全性や成長率を可視化し、より多くの人々がデータに基づいた議論を行えるようにすることが狙いです。
Rare Evo でのコンテスト開催と賞金
ホスキンソン氏は、コミュニティに対し、統合ダッシュボードのプロトタイプを作成することを呼びかけました。これに伴い、Rare Evo というイベントでダッシュボードのコンテストを開催し、優勝者には賞金を授与する予定です。
賞金額は 5 桁、または 6 桁に設定される可能性があり、データ分析の専門家や開発者が参加できる機会となります。
カルダノの未来に向けた取り組み
本プロジェクトの意義は、単なるデータの可視化にとどまりません。分散型ガバナンスの発展に伴い、データに基づいた意思決定を促進し、エコシステムの成長を加速させることが期待されています。
また、ホスキンソン氏は「このダッシュボードを政治の世界にも応用できる」と述べ、KPI に基づいた政策議論の必要性にも言及しました。政治の場では感情的な対立が目立ちますが、明確な指標を用いることで、建設的な議論が可能になると指摘しています。
まとめ
「Project One Page」は、カルダノエコシステムの成長を客観的に測定し、改善を促すための重要な取り組みです。Rare Evo でのコンテストを通じて、コミュニティが協力し、最適なダッシュボードを構築することが期待されています。
今後の進展に注目しつつ、カルダノのさらなる発展に期待しましょう!
以下はチャールズ・ホスキンソン氏動画「Project One Page」を翻訳したものです。
チャールズ・ホスキンソン氏動画「Project One Page」全翻訳
こんにちは、これはチャールズ・ホスキンソンです。暖かく晴れたコロラドからライブ配信しています。コロラドはいつも暖かく、いつも晴れていますが、時にはワイオミングのような天候にもなります。
オフィスに戻ってきました。昨夜はコロラド・スプリングスで議員のクランク氏と夕食を楽しみました。
議会のメンバーたちと話をしながら、彼らのニーズについて学び、仮想通貨ビジネスについて話しました。
さて、ここで皆さんに今年一年を通じて取り組めるプロジェクトを発表したいと思います。Rare Evo のイベントに向けて、賞品も用意する予定です。
私は考えました。「カルダノのエコシステムを追跡するための究極のダッシュボードとは何か?」と。
例えば、Aus Stats にはダッシュボードがあります。
そこでは価格、市場価値、ステークプール、ホルダー数、流通供給量、総ステーク量、エポックごとの取引数などが表示されています。
さらに、少し掘り下げると、例えば 834 件の分散型アプリ(DApp)に関する統計や、委任者の数など、さまざまなデータを確認できます。
また、UTXO(未使用トランザクションアウトプット)のデータもあります。
さらに、TapTools ではカルダノ内のさまざまなトークンの動向を追跡できます。
リアルタイムのブロック状況や、注目すべきトランザクション、メンプール(未処理のトランザクションの集合)に関する情報なども確認できます。
しかし、現状ではエコシステム全体を包括する「ダッシュボード」は存在しません。
つまり、私たちがエコシステムとして何を重要視し、どの指標(KPI)を追跡すべきかが明確になっていないのです。
現在、カルダノには分散型ガバナンスが導入されており、「何を追跡すべきか?」という自然な疑問が生じます。
そこで、私たちが追跡すべきと考えている指標をいくつかリストアップしました。
例えば、
• TVL(Total Value Locked、ロックされた総価値)
• DII(Decentralized Infrastructure Index)
• トランザクション数およびアクティブアドレス数
• コードコミット数、GitHub のコミット数
• DApp の利用状況やボリューム
• スマートコントラクトの数
• コミュニティガバナンスの統計
• 分散化の度合い(コンセンサス)
• ブロックチェーンのサイズ
現在、カルダノのブロックチェーンサイズは約 186GB です。
ビットコインは約 640GB、比較としてソラナは 300TB 以上です。
ソラナのアクティブなステート(状態データ)だけで 200GB 以上あり、ノード運用には月額約 22万5000ドルがかかります。
一方、カルダノのステークプール運用コストはそれよりもはるかに低くなっています。
つまり、カルダノのエコシステムには、さまざまな観点からデータを分割して分析する方法が無数に存在します。
そして重要なのは、エコシステム全体で協力して、究極のダッシュボードを開発することです。
このダッシュボードは、カルダノの主要な KPI を追跡する「すべてのダッシュボードの母」となるべきものです。
なぜこれが必要なのか?
議会のメンバーや、DRep(分散代表者)、憲法委員会のメンバーたちは、年間を通じてこのダッシュボードの数値を向上させる責任を負います。
エコシステムをより良くし、見栄えをよくするためには、まず測定が必要です。
測定がなければ、何が改善されているのかを知ることはできません。
また、測定がなければ、ロードマップや予算を決定する際に、何が重要なのかを明確にすることもできません。
例えば、TPS(Transactions Per Second、秒間取引数)を追跡することも考えられます。
これは測定が難しい指標ですが、Mithril や Leios の導入によって、どの程度改善できるのかを推定できます。
また、予算の支出を追跡し、それが TVL の向上に寄与しているかを検証することも可能です。
ステーブルコインの TVL を追跡し、財務戦略がどの程度影響を与えているのかを評価することもできます。
このように、データを追跡することで、改善の余地が明確になります。
そこで、今回の発表ですが、エコシステム全体で協力し、さまざまな候補となるダッシュボードのデモを作成してもらいたいと思います。
データソースを特定し、データの集約がどれほど困難だったのかを説明し、どのようにすれば容易になるのかを議論してください。
Rare Evo でコンテストを開催し、優勝者には賞金を授与する予定です。
詳細はこれから詰めていきますが、賞金は 5 桁、もしくは 6 桁の範囲になる可能性があります。
契約条件や細かい規定を整理した上で正式に発表しますが、
この取り組みにより、多くのチームが「エコシステム全体を見渡すダッシュボード」の課題について考え、
アイデアを形にしてくれることを期待しています。
データ分析の分野で活動している Zerberus や ADA Stats などのプロジェクトも、このチャレンジに取り組んでくれることを期待しています。
そして最終的に、このダッシュボードがカルダノのエコシステムの「公式な指標追跡ダッシュボード」となることを目指します。
このダッシュボードが完成すれば、DRep たちがその数値に対して説明責任を負うことになります。
また、エコシステム全体で成長を促進する機関やプロジェクトに対して、明確な評価基準を設けることができます。
これにより、事実に基づいた KPI 主導のアプローチが可能になります。
もう一つの利点は、マーケティングの観点からもこのダッシュボードを活用できる点です。
四半期ごとの進捗を示すことで、カルダノに対する批判に具体的なデータをもって反論できます。
例えば、「カルダノはゴーストチェーンであり、何の DApp も存在しない」と言われたときに、
このダッシュボードを見せれば、四半期ごとの主要 KPI の改善状況を示すことができます。
「これらの数値は重要ですか?」と問いかけ、
もし相手が「はい」と答えれば、「では、四半期ごとに改善しているのが分かりますね」と伝えられます。
もし「いや、それは重要ではない」と言われた場合でも、「では、どの指標が重要なのか?」という建設的な議論が可能になります。
一方で、仮に「カルダノはナンバーワンではないからダメだ」と言われた場合でも、
「この成長トレンドを見れば、いずれトップに立つことが分かります」と説明できます。
これにより、相手が本当に無知なだけなのか、あるいは単なる FUD(恐怖・不確実性・疑念)を広めているだけなのかを見極めることができます。
また、一部の人々は特定の KPI しか重視していない場合もあります。
例えば、「価格」だけを評価基準にしている人がいるかもしれません。
もしカルダノの価格が横ばいであった場合、その他の指標がいかに素晴らしい結果を示していても、
その人にとっては「カルダノは進歩していない」という結論になるでしょう。
しかし、こうした状況でも、共通の基準を持つことで、お互いの立場を理解しやすくなります。
「あなたは価格を最重要視しているが、私たちはエコシステム全体の健全性を評価している」と説明すれば、
「単なる意見の違い」であることが明確になります。
これにより、不毛な対立を避け、建設的な議論が可能になるのです。
こうした指標をもとに、エコシステム全体で KPI の改善に必要な施策を議論することができます。
私たちの内部ではすでにいくつかの KPI を追跡しており、Intersect や IO によるロードマップもそれらの改善を目指しています。
私が特に重視しているのは、以下の 3 つの視点です。
1. ユーザーの利便性向上
• カルダノの利用を簡単にすること
2. DApp 開発者の利便性向上
• より速く、より安く、より簡単に開発できる環境を整えること
3. 流動性、相互接続性、エコシステムの評価向上
• カルダノがより魅力的な選択肢となるよう、外部との連携を強化すること
例えば、Leios(L2 スケーリングソリューション)は、すべてのカテゴリーでメリットがあります。
高速な最終確定(Finality)、高い TPS(秒間トランザクション処理数)、
チェーンとの統合の容易化など、多方面にわたる改善が期待できます。
また、プログラミング言語の改善は、エンドユーザーにはあまり影響を与えませんが、
DApp 開発者にとっては大きな違いをもたらします。
例えば、Aiken(アイケン)の導入により、開発の手間とコストが大幅に削減され、
Plutus(プルータス)は徐々に高保証(High Assurance)言語へと進化しました。
ウォレットの改善も重要なカテゴリーの一つです。
例えば、新しいマルチシグ標準である ZP-30 や、ウォレットの標準化など、
エンドユーザーの利便性を向上させる取り組みが進行中です。
これにより、カルダノのエコシステム全体の流動性が向上し、より多くのユーザーが参加しやすくなります。
私は、こうしたカテゴリーと KPI ダッシュボードを組み合わせ、
客観的に「どのように改善すればよいか?」を議論できるようにしたいと考えています。
専門家を招き、それぞれの分野でどうすれば成長できるかを検討する場を設けるのもよいでしょう。
これはまさに「分散型ガバナンス」の実践です。
コミュニティ全体で協力し、何が重要かを議論し、それを世界に発信するのです。
もし政治家がこのようなアプローチを取っていたらどうでしょうか?
現在の政治の世界では、対立する政党がお互いを「邪悪な存在」だと決めつけ、極端なレトリックを用いて攻撃し合っています。
しかし、本来であれば、KPI を基にした客観的な議論を行うべきです。
例えば、米国の政治家が「現在の教育レベルはこうであり、これをこの数値まで改善する」と明確に示し、
「医療システムの現状はこうであり、これをどのように向上させるか」と説明するべきなのです。
しかし、実際には KPI を提示しないため、政治家は説明責任を回避できます。
これと同じことが、カルダノのエコシステムでも起こり得るのです。
もし私たちがエコシステムのリーダーに説明責任を求めるのであれば、
まず私たち自身がそのリーダーシップをどう方向付けるのかを決める必要があります。
また、すべての人がすべての分野に精通しているわけではありません。
例えば、DC Spark のセバスチャンは、憲法投票で「棄権」しました。
その理由は、「自分が専門知識を持たない分野については判断を下さない」というものでした。
彼は、自分が詳しい分野では積極的に意見を述べ、そうでない分野では慎重に対応したのです。
同様に、KPI のセットを作成すると、それぞれの分野の専門家が特定の指標にフォーカスできるようになります。
その結果、全体の戦略をよりバランスの取れたものにすることができるのです。
このプロジェクトを「Project One Page(プロジェクト・ワン・ページ)」と名付け、
エコシステム全体で協力して推進していきたいと思います。
Rare Evo までの期間、エコシステム内外のデータ分析チームが協力し、
最高のダッシュボードを作成することを期待しています。
最終的には、この「ワンページ」をカルダノの公式な指標として、
すべてのインタビューで活用し、世界に向けて発信できるようにしたいと思います。
ありがとうございました。