チャールズ・ホスキンソン氏が語る、オープンソースの現実：オープンソースの難しさとガバナンスの重要性
2025年2月、チャールズ・ホスキンソン氏がコロラドからのライブ配信で「オープンソースの課題」について語りました。彼の話の中心は、単なる技術的課題ではなく、そこに関わる人々の政治的・社会的背景がどのようにオープンソースプロジェクトの運営に影響を与えるかという点でした。
オープンソースの本当の難しさ
多くの人はオープンソースを単なるGitHubのリポジトリやコードの管理として考えがちですが、実際には「人間関係」が最も大きな課題であるとホスキンソンは指摘します。プロジェクトの成功には、多様な背景や価値観を持つ開発者たちの協力が不可欠ですが、その違いが時に対立を引き起こすこともあります。
Ainプロジェクトの対立
ホスキンソン氏は、Ainプロジェクト内での最近の対立を例に挙げました。ある開発者がプロジェクトから追放されたとツイートしたことから始まり、関係者同士の対立が激化しました。その背景には、政治的な意見の相違や個人的な価値観の違いがあったと言います。
この問題の解決策として、ホスキンソン氏は「対話」を挙げています。彼によると、プロジェクトのメンバーは直接話し合い、お互いの立場を理解することが最も重要です。
ガバナンスの必要性
ホスキンソン氏は、こうした問題を防ぐために「メンバー制組織」の重要性を強調しました。例えば、Linux財団やApache財団のような組織は、プロジェクトの運営を円滑に進めるための枠組みを提供しています。これにより、個人の意見の違いがプロジェクト全体を崩壊させることを防ぐことができます。
また、彼は「カルダノが最も価値のある暗号通貨プロジェクトの一つである理由は、最初にガバナンスと協力の仕組みを確立したからだ」と述べています。カーダノでは、技術の開発よりもまず「いかにして持続可能な協力体制を作るか」に重点を置いてきたため、現在のような堅牢なエコシステムが実現しているのです。
オープンソースの未来
最後にホスキンソン氏は、「オープンソースは楽しいものだが、同時に複雑なものでもある」と語り、「多様性を受け入れるならば、時には対立も受け入れるべきだ」と強調しました。大切なのは、「異なる意見を持っていても、互いに敬意を払い、共通の目的に向かって協力すること」だと結びました。
まとめ
オープンソースは単なる技術ではなく、人々の協力によって成り立つものです。そのため、政治的・社会的な背景が影響を与えることは避けられません。しかし、適切なガバナンスの仕組みと対話を通じて、オープンソースプロジェクトはより持続可能なものとなります。
カルダノのように、ガバナンスと協力の重要性を理解し、構築することが、最終的に成功への鍵となるのです。
以下はチャールズ・ホスキンソン氏動画「Open Source Politics」を翻訳したものです。
チャールズ・ホスキンソン氏動画「Open Source Politics：オープンソース・ポリティクス」全翻訳
こんにちは、皆さん。こちらはチャールズ・ホスキンソンです。暖かく晴れたコロラドからライブ配信しています。コロラドはいつも暖かく、いつも晴れています。時々ですがね。
さて、今日は「オープンソースは難しい」ということを改めて学びました。なぜなら、オープンソースは単なるGitHubのリポジトリやコードではなく、技術の活用や有用性に関わるものだと思われがちですが、実際にはキーボードを叩いているのは生身の人間だからです。
今朝Twitterを開くと、いきなり大きな炎上を目にしました。マティアス・ベンクールが「Ainから追放された」と発言し、それに続いてルーカスが「俺たちをファシスト呼ばわりし、全てを憎んでいる」と言い、そこにはまるで戦争のような状況がありました。私は全く事情を知らず、「一体何が起こっているんだ？」と思いました。
しかし、もっと広い視点で見ると、メンバー制組織の核心的な役割の一つが「社会的な調整を管理すること」だということが分かります。リナックス財団、アパッチ財団、オープンコア財団、インターセクトなど、こういった組織はすべてこの役割を担っています。技術自体は簡単なものです。最終的にはGitHubやGitのプロジェクトがあり、そこにコードを置くだけです。「これは良いアイデアだ」と人々が賛同し、それに従って行動する。でも、そこに人が関わると、政治的な問題が生じることがあるのです。
ちょっとした例をお見せしましょう。私は「政治的な理由でオープンソースの貢献者が排除された事例」について調べてみました。
例えば、ロシアのLinuxカーネルのメンテナ―たちがいましたが、Linux財団は米国の制裁に従うために、11人のロシア人メンテナ―を排除しました。これは残念なことです。なぜなら、その中にはLinuxの黎明期から関わっていた重要人物もいたからです。LinuxはLinuxなのに。
また、GitHubのアカウント停止の件もあります。特に大きなものは、エリック・レイモンドのケースでした。彼は私のヒーローであり、『The Cathedral and the Bazaar（伽藍とバザール）』という素晴らしい本を書いた人物です。彼はOSI（オープンソース・イニシアティブ）の多様性推進の方針に反対したために追放されました。DEI（ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン）の問題が関係していたようです。
他にも、セス・ヴァルゴとChef、OpenAI、Drupalの貢献者など、多くの事例があります。これはほんの一部を調べただけで、実際には何百人もの人がさまざまな理由でオープンソース・コミュニティから排除されているのではないかと思います。そして、必ずしもすべてのケースが政治的なものとは限りません。
実際、人々の政治的な立場は多様です。一部の人は極右の思想を持っているかもしれないし、また別の人は共産主義を信じているかもしれません。私がビットコインの初期に関わっていた頃、ルーク・ダッシュ・ジュニアという開発者がいました。彼はビットコインのブロックを作る際に、毎回聖書の一節を埋め込んでいました。彼は非常に独特な世界観を持っていましたが、私たちは彼を愛していました。
私は他人の政治的な意見に対して特に問題を感じたことはありません。多様な意見を持つ人々と一緒に働くことを楽しんでいます。歴史的に見ても、私と仕事をしてきた人々はこのことをよく理解していると思います。
Ainはもともと私が始めたプロジェクトではなく、オープンソースとして始まりました。さまざまな人々が関わり、協力して開発が進められてきました。しかし、どんな社会的な関わりにも言えることですが、異なるバックグラウンドを持つ人々が集まると、時間とともに対立の種が生まれ、それが分裂の原因になることがあります。
今回も同じようなことが起こりました。ある人は「チャールズはトランプと関係があるからファシストで悪人だ」と言い、別の人は「それは良いことだ」と言い、意見の違いが対立を生んでしまったようです。しかし、解決策はただ一つ、話し合うことです。
私の理解では、ルーカスとマティアスは今後対話する予定のようです。うまくいけば、再び協力できるようになるでしょう。長期的には、メンバー制の組織が必要であることを認識することが重要です。そうした組織があることで、すべての人が意見を表明できる仕組みが整うからです。
最近、予算提案の中で「官僚機構はいらない。Intersectやその他の組織に資金を渡すべきではない。金の無駄だ」という意見を見かけました。しかし、こうした組織の存在理由はまさに、今回のような対立を防ぐためなのです。
Ainには才能ある優れた開発者たちが関わっています。彼らは情熱を持ち、素晴らしい成果を上げています。しかし、異なる世界観や意見を持っていることも事実です。NBO（非営利組織）は、そうした異なる視点を持つ人々が協力し合える基盤を提供するために存在しています。
オープンソースはしばしば対立を生みます。これは過去にも繰り返されてきた歴史です。例えば、1985年に登場したHaskellは、もともとMirandaという言語が商業化され、知的財産が制限されたことに反発して生まれました。また、オラクルがSunを買収した際には、PostgreSQLの開発が加速しました。
オープンソースは、技術だけではなく、人々の政治観や個人的な意見が絡むため、難しいのです。今回の騒動は、まさにオープンソースが抱える課題を象徴するケーススタディと言えるでしょう。
私としては、常に協力を重視しています。ルーカスとマティアスも、きっと話し合いを通じて問題を解決し、元の関係に戻れると信じています。これは私たち全員にとっての学びの機会です。
カーダノが世界で最も価値のある暗号通貨プロジェクトの一つである理由は、私たちが「ガバナンスと協力」に焦点を当ててきたからです。技術的な問題を解決するのは簡単ですが、効果的なガバナンスを確立することこそが最も重要なのです。
最後に言いたいのは、「多様性を称賛するならば、時折対立や議論が生じることも受け入れなければならない」ということです。大切なのは、意見の相違があっても「不快にならずに議論すること」、そして「分裂しそうなときには立ち返ること」です。結局のところ、私たちを結びつけるものの方が、分断するものよりもはるかに強いのです。
ようこそ、分散化の世界へ。これが現実であり、同時に面白いところでもあります。
ありがとう、皆さん。
