カルダノ・ガバナンスの進化:ヴォルテール時代の幕開けと未来
Intersectは記事「The Evolution of Cardano Governance: A Brief History」を公開し、カルダノの分散型ガバナンスの実現を目指し、段階的に進化を遂げてきたその歩みを振り返り、現在進行中のヴォルテール時代、そして未来の展望について解説します。
カルダノのロードマップ:分散型ガバナンスへの道
カルダノの開発は、明確なフェーズに分かれています。
- バイロン時代:ADAとコンセンサスメカニズムの確立。
- シェリー時代:ブロック生成の分散化、ステーキング導入。
- ゴーグエン時代:スマートコントラクトとdAppsの実装。
- バショウ時代:スケーラビリティと最適化。
- ヴォルテール時代(現在):分散型ガバナンスの確立。
ヴォルテール時代では、カルダノのネットワーク運営が完全にコミュニティの手に委ねられることが目指されています。これにより、ADA保有者が直接意思決定を行い、ネットワークの進化を主導できるようになります。
CIP 1694:分散型ガバナンスの青写真
ヴォルテール時代の基盤となるのがCIP 1694です。これは、オンチェーン投票、財務管理、憲法改正の仕組みを定めた提案であり、ADA保有者が直接ガバナンスに参加できるシステムを確立しました。
CIP 1694の策定にあたっては、IOG、EMURGO、カルダノ財団の支援のもと、世界各地でワークショップが開催され、コミュニティの意見を反映させながら設計が進められました。
Chang&プロミン・ハードフォーク:ガバナンスの本格始動
分散型ガバナンスを実現するために、カルダノは2つの重要なハードフォークを実施しました。
- Chang・ハードフォーク(2024年8月)
- Plutus V3の導入(高度な投票機能の実装)。
- DRep(代表者)と暫定憲法委員会(ICC)の設立。
- 暫定憲法の施行。
- プロミン・ハードフォーク(2025年12月)
- コミュニティの主導によるオンチェーン・ガバナンスの完全実装。
- DRep、SPO、ICCが完全機能し、財務引き出しを含む重要な決定を実施。
- 亡きマシュー・プロミン氏を称え、命名。
憲法制定への道:ワークショップと憲法会議
ガバナンスの枠組みを確立するために、52か国で63回の憲法ワークショップが開催され、1,400人以上のコミュニティメンバーが参加しました。各地域で選ばれた代表者は、2024年12月にブエノスアイレスとナイロビで開催された憲法会議に出席し、カルダノ憲法の最終承認に向けた議論を行いました。
会議では、憲法草案が圧倒的多数の賛成で承認され、オンチェーン投票に進むことが決定されました。
オンチェーン投票とカルダノ憲法の制定
2025年1月30日、憲法会議で承認された憲法がDRepおよびICCによるオンチェーン投票に提出されました。2025年2月18日、DRepの84.29%の賛成票とICCの満場一致の承認を受け、2025年2月23日、カルダノ・ブロックチェーン・エコシステム憲法が正式に施行されました。
今後の展望:選挙と憲法改正
憲法が施行されたことで、カルダノ・エコシステムは次のフェーズに移行します。
- 憲法委員会(ICC)の選挙:現在のICCの任期はエポック580(2025年9月1日)まで。市民委員会内の選挙作業部会が選挙プロセスを策定中。
- 憲法改正の検討:この憲法は最終版ではなく、将来的な改正が議論される可能性があります。
カルダノの未来は、これからもコミュニティの手によって築かれていきます。
以下はIntersect記事「The Evolution of Cardano Governance: A Brief History」を翻訳したものです。
カルダノ・ガバナンスの進化:簡潔な歴史
2025年2月25日

ロードマップとヴォルテール時代の幕開け
カルダノのロードマップは、分散型ガバナンスへ向かう旅であり、明確な時代ごとに分かれています。
• バイロン時代では、コンセンサスメカニズムやADAの導入を含む基盤技術を確立しました。
• シェリー時代では、ブロック生成の分散化が進み、ステーキングが導入され、ステークプールオペレーターへのインセンティブが設定されました。
• ゴーグエン時代では、スマートコントラクトと分散型アプリケーション(dApps)が実装されました。
• バショウ時代では、スケーラビリティの向上と最適化が重点的に進められました。
これらの時代を経て、最終段階へと移行しました。
ヴォルテール時代は、これまでの取り組みの集大成であり、分散型ガバナンスを確立するものです。ADA保有者が協力してカルダノを管理し、持続可能で民主的な意思決定システムを作り上げることを目的としています。
ヴォルテール時代では、ネットワークの変更を提案・議論・実施するためのプロセスが確立され、コミュニティが直接意思を反映できる仕組みが整います。これにより、シェリー時代に始まった分散化が完全に開花することとなります。
CIP 1694:分散化の青写真
CIP 1694は、ヴォルテールの生誕年にちなんで命名されたカルダノ改善提案(CIP)であり、ヴォルテール時代のガバナンスシステムを定義しています。
この提案では、オンチェーン投票、財務管理、憲法改正のメカニズムが策定されています。完全な分散化を実現するという強い意志から生まれたCIP 1694は、ADA保有者が直接プラットフォームの未来を管理できる枠組みを確立し、カルダノを真のコミュニティ主導のエコシステムへと導きます。
CIP 1694の開発は、オンチェーンガバナンスを求める強いコミュニティの声に後押しされました。その重要性を認識したコミュニティリーダーは、議論を活発化させるためのイベントを開催し、「ガバナンスワークショップレター」を発表しました。これが大きな反響を呼び、IOG、EMURGO、カルダノ財団の支援のもと、グローバルワークショップ助成金が設立されました。
約100件の応募の中から選ばれたものが、世界各地での対面・オンラインワークショップとして実施されました。
ワークショップでは、ガバナンス行動のデポジット、DRep(代表者)のインセンティブ、投票基準など、CIP 1694の提案に関する多様なフィードバックを収集しました。このグローバルな議論の結果が、最終的なCIP 1694の設計に直接反映されました。
Chang&プロミン・ハードフォーク
カルダノの分散型ガバナンスへの道のりは、2つの重要なフェーズを経て大きく前進しました。
最初のフェーズは、フィル・チェン(Phil Chang)にちなんで名付けられたチェン・ハードフォークであり、2024年8月に実施されました。このフェーズは、ガバナンス基盤の構築が目的であり、いわば「ブートストラップ」段階にあたります。
このハードフォークでは、次のような変革が行われました。
• Plutus V3の導入:高度な投票メカニズムを実装するための強力なエンジン
• DRep(委任代表者)の導入:ADA保有者が代表者を通じてガバナンスに参加できる仕組み
• 暫定憲法委員会(ICC)の設立:ネットワークのガバナンスを一時的に管理する組織
• 暫定憲法の施行:最終的な憲法制定に向けた指針の策定
次のフェーズは、2025年12月にオンチェーン・ガバナンス行動によってコミュニティ主導で実行されました。これにより、オンチェーン意思決定の完全な実装が実現されました。
これは単なる投票の仕組みではなく、「実際の所有権の確立」を意味していました。DRep、SPO(ステークプールオペレーター)、ICCのすべてが完全に機能するようになり、財務引き出しを含むネットワークの重要な決定を直接行うことが可能になりました。
この歴史的な瞬間は、以前は「Chang・アップグレード#2」と呼ばれていましたが、2024年に逝去したマシュー・プロミン(Matthew Plomin)を称え、「プロミン・ハードフォーク」と改名されました。
暫定憲法:正式憲法への架け橋
チェン・ハードフォークは単なる技術的なアップグレードではなく、カルダノ・ガバナンスの新時代の幕開けとなりました。その中で、暫定憲法が極めて重要な役割を果たしました。
この文書は、カルダノ・ブロックチェーン・エコシステム憲法の正式版を制定するまでの一時的なフレームワークであり、オンチェーン・ガバナンスを実践しながら、将来的なガバナンス体制を試行・改善するために設計されました。
暫定憲法の主な内容:
• ガバナンスの基本原則を策定(DRep、ICC、ADA保有者の役割)
• ネットワーク変更の提案・投票メカニズムの導入
• オンチェーン・ガバナンスの試験的実施
この暫定的なフェーズは、カルダノの未来にとって非常に重要でした。
実際にオンチェーン・ガバナンスを試験運用し、提案されたメカニズムを現実の環境でテストすることで、分散型意思決定の課題と可能性について貴重な知見が得られました。
コンセンサスの構築:憲法ワークショップ
コンセンサスは一朝一夕に築かれるものではありません。より多くの対話と議論、そして共通のビジョンが必要でした。
そのため、52か国で合計63回の憲法ワークショップが開催され、世界中から1,400人以上のコミュニティメンバーが参加しました。
このワークショップでは、多様な文化的背景や技術的視点を持つ人々が集まり、暫定憲法の原則を洗練し、カルダノの未来に向けた合意形成を行いました。
各ワークショップでは、代表者(Delegate)と副代表者(Alternate Delegate)を選出しました。
彼らの役割は、地域コミュニティの意見を集約し、コミュニティの懸念や提案を反映させることでした。
このプロセスにより、憲法制定に向けて幅広い視点が取り入れられました。
憲法会議
憲法会議では、カルダノ・エコシステム全体から集まった数百人の代表者が、それぞれのコミュニティの声を届けました。
この歴史的なイベントは、2024年12月4日から6日にかけて、ブエノスアイレスとナイロビで同時開催され、コミュニティによるガバナンスの所有権をさらに強化する場となりました。
この会議は、カルダノの分散型ガバナンス実現へ向けた重要なステップであり、最終的なカルダノ憲法を承認するための道筋を確立するものとなりました。
会議では、憲法草案に関する集中的な議論が行われ、最終的に圧倒的多数の賛成票をもって、DRepおよびICCによるオンチェーン投票へ進むことが決定されました。
オンチェーン投票と憲法の制定:コミュニティの声
プロミン・ハードフォークの後、2025年1月30日、憲法会議で承認された憲法が、DRepおよびICCによる正式なオンチェーン投票へ提出されました。
この新しい憲法は、暫定憲法に代わる恒久的なフレームワークとして、カルダノ・エコシステムの未来を導くものとなりました。
憲法には、カルダノ・ブロックチェーンとそのコミュニティを形成する原則、ルール、プロセスが詳細に定められています。
2025年2月18日、ガバナンス行動が承認基準を満たし、正式に可決されました。
• DRepによる投票結果:84.29%の賛成票により憲法を承認しました。
• ICCの決定:満場一致で「合憲」と判断されました。
これにより、2025年2月23日、カルダノ・ブロックチェーン・エコシステム憲法が正式に制定されました。
今後の展望:選挙と憲法改正
憲法が正式に施行され、DRepが機能し、憲法委員会(ICC)が確立されたことで、カルダノは次の発展段階へと進みました。
現在の最優先事項は、憲法委員会(ICC)の選挙です。
現在のICCの任期は、エポック580(2025年9月1日)までと設定されています。
これに備え、市民委員会(Civics Committee)内の憲法委員会選挙作業部会が、初期の選挙プロセスを策定しており、選挙の詳細は近日中に発表される予定です。
さらに、コミュニティは憲法の将来的な改正についても検討し始める可能性があります。
重要なのは、この憲法が「カルダノ・ブロックチェーン・エコシステム憲法」であり、最終版ではないという点です。
この文書は、カルダノ・エコシステムの進化に適応し、必要に応じて改正できる柔軟な設計となっています。
そのため、コミュニティ内では、
• 憲法をどのように修正すべきか
• いつ改正が必要になるか
• 改正のプロセスをどう設計するか
といった議論が今後さらに活発化することが予想されます。
カルダノの未来は、引き続きコミュニティの手によって築かれていきます。