シリーズ連載『進化するカルダノ・ベーシック』【#5】Ouroborosとは?(その2)Ouroborosとは革新的な技術と哲学の融合
シリーズ連載『進化するカルダノ・ベーシック』は、カルダノについて初心者や、既に知っているが日々進化し続けるカルダノの現在進行形について知りたい方向けに、様々な視点と角度から、カルダノの基礎知識とその未来について、最新アップデート情報を交えてお伝えする企画(不定期)です。
前回は、第5回目の記事として『【#5】Ouroborosとは?(その1)デジタル時代の分散型サークル社会を実現するOuroborosの精神性と古代日本との繋がり』についてお届けしました。
そして今回は【#5】Ouroborosとは?(その2)として、『Ouroborosとは革新的な技術と哲学の融合』についてお伝えしたいと思います。
なお、Ouroborosプロトコルはカルダノの重要な心臓部であり、技術や思想を一つにまとめたものであることから、数回に分けてお伝えしていきます。
Ouroboros(ウロボロス)とは?
カルダノのコンセンサスプロトコル「Ouroboros」の名前は、自分自身の尾を食べる蛇や竜の古代のシンボルから着想を得ています。Ouroborosのシンボルは、歴史を通じて様々な文化で使用され、無限、永遠の循環、そして絶え間ない更新の概念を表しています。
下記はカルダノの創設者であるチャールズ・ホスキンソン氏がOuroboros Omegaについてツィートした時のOuroborosのイメージ画像です。
カルダノ・ブロックチェーンの文脈では、「Ouroboros」の名前は、コンセンサス・プロトコルの周期的な性質と、ブロックチェーンに新しいブロックを作成、検証、追加する継続的なプロセスを示しています。
カルダノ・プロトコルの設計は、持続可能性、セキュリティ、そして時間の経過に応じて適応・進化できる能力を重視し、Ouroborosのシンボルの絶え間ない進化するサイクルの考え方を反映しています。
そのためOuroborosは、一瞬一瞬の継続性を保証します。これにより、取引、合意、情報の共有など、すべての追加は不変の過去の一部となり改竄不可能な真実を提供することができます。
さらにOuroborosは、新しい市場を持続的にサポートすることができる、パーミッションレスな(許可のない)分散型ネットワークの創造と実りを促進し、新しい世界のパラメータを定義するために存在しています。
Ouroborosの中心にあるのは、無限大という概念です。グローバルネットワークは、持続的かつ倫理的に成長しなければなりません。
拡張性と持続的な安全性に優れたOuroborosは、ビットコインから始まった「ブロックチェーン革命」を継承し、カルダノとブロックチェーンで構築された未来の基盤となるものです。
学界はOuroborosの価値を認めている
2017年8月にIOGのサイエンスチームのよってOuroborosの論文である『Ouroboros: A Provably Secure Proof-of-Stake Blockchain Protocol』が発表されました。
「暗号通貨とブロックチェーン」のカテゴリーに分類されるカルダノの開発会社であるIOGのOuroboros論文は、学術的にも注目を集めています。この論文は、厳格なセキュリティ保証付きのPoSを提示した最初のものでもあります。
「Ouroboros. A Provably Secure Proof-of-Stake Blockchain Protocol」論文は、最も引用されたセキュリティ論文リストの上位にランクインしました。Google Scholar(グーグル・スカラー)の最新ランキングによると、カルダノの基盤となっているプルーフ・オブ・ステークの仕組みを概説したこの論文は、暗号通貨とブロックチェーンのカテゴリで183件の被引用数で2番目に多く引用されています。
Ouroborosは厳密なセキュリティ保証を持つ最初のプルーフ・オブ・ステーク・ブロックチェーンプロトコル
Ouroboros(ウロボロス)は、環境に優しく、安全性が高く、検証可能な暗号技術の仕組みです。この仕組みにより、ビットコインと同等のセキュリティが提供されます。
さらに、Ouroborosは、ビットコインのプルーフ・オブ・ワークよりも効率的なプルーフ・オブ・ステークのメカニズムを採用しています。この仕組みは、エネルギーの消費量が少なく、セキュリティを高めることができます。
そして、Ouroborosは、学術的なピアレビューを通じて安全性が証明された最初のコンセンサスプロトコルで、すべての参加者が有効なトランザクションに同意することを保証します。
また、Ouroborosは、プロトコルの完全性、寿命、性能、および分散ネットワークの性能を保証するために、独自の技術、暗号学、組み合わせ論、数学的ゲーム理論を組み合わせています。
さらに、Ouroborosは、数学的に検証されたメカニズムと行動心理学と経済哲学を組み合わせて、ブロックチェーンのセキュリティと持続可能性を保証しています。
結果として、実証済みのセキュリティ保証を持つプロトコルが誕生し、最小限のエネルギーでグローバルな無許可ネットワークの伝播を促進することができます。
プルーフ・オブ・ステークとプルーフ・オブ・ワークの比較
ブロックチェーンには主に2つのプロトコルがあります。プルーフ・オブ・ステーク(PoS)とプルーフ・オブ・ワーク(PoW)です。これらのプロトコルは、分散型ネットワークのためのコンセンサスアルゴリズムです。何千ものノードで構成されるネットワークが、許可のない設定で新しい追加(ブロック)に合意する方法を規定するルールセットです。
プルーフ・オブ・ワークは、ビットコインで使用されているブロックチェーンプロトコルです。プルーフ・オブ・ワークは革命を起こしました。しかし、新しいブロックごとにコンセンサスを得るためには、プルーフ・オブ・ワークは膨大なエネルギーを必要とします。
プルーフ・オブ・ステークは、プルーフ・オブ・ワークのパフォーマンスとエネルギー使用の課題に応え、より持続可能なソリューションを実現します。新しいブロックを作成するために計算上複雑な方程式を解く「採掘者」に頼るのではなく、プルーフ・オブ・ステークでは、参加者(カルダノの場合はステークプール)を選択して、ネットワーク内で管理しているステークに基づいて新しいブロックを作成します。
これにより、ネットワークは、より強力なハードウェアを追加することで垂直方向ではなく、ノードを追加することでパフォーマンスを向上させ、水平方向にスケールすることが可能になります。その結果として生じるエネルギー使用量の違いは、家庭と小国の違いに例えることができます。PoSはマスマーケットへのスケールという位置づけですが、PoWはそうではありません。
ブロックチェーン・プロトコルには様々な種類のコンセンサスメカニズムがあります。セキュリティ、スケーラビリティ、非中央集権のレベルは様々です。
下記の記事ではコンセンサス(合意形成)における主な6つの仕組みについて解説していますので、ぜひ参考にしてください。
Ouroborosの根幹であるプルーフ・オブ・ステークの主な特徴
Ouroborosの特徴をまとめるとは次のようになります。
安全性
Ouroborosは、攻撃者に対して数学的に検証可能なセキュリティを維持しています。
このプロトコルは、他の斬新なコンセプトに加えて、ランダムなリーダーの選択によって達成されます。正直な参加者が51%のステークを保持している限り、安全であることが保証されています。
拡張性
Ouroborosプロトコルは、拡張性に優れており、新しい***イテレーション**と厳密なセキュリティ分析によって進化し続けています。*イテレーションとは、一連の工程を短期間で繰り返す開発サイクル。 アジャイル開発を行う上での概念。
そしてOuroborosの柔軟なモジュール型の設計思想と独自のハードフォーク技術により、比類なき拡張性を実現しています。
インセンティブと報酬
Ouroborosを使ったブロックチェーンネットワークの持続可能性を確保するために、プロトコルはネットワーク参加者に報酬を与えるインセンティブメカニズムを特徴としています。
これは、ステーク・プールを運営するか、ステーク・プールにADAのステークを委任するかのどちらかになります。これらの活動のいずれかを完了することで報酬(ADAの形で)を得ることができます。
ステークの委任とステークプール
Ouroborosは、ネットワークへの一貫した信頼性の高い接続を保証するために、ノードオペレーターであるステーク・プールによりブロック生成が行われネットワーク制御を分配しています。
ステーク・プールはスロット・リーダーとして割り当てられ、チェーンにブロックを追加することで報酬を得ます。
ADAのホルダーは、自分のステークを特定のステーク・プールに委任することができ、そのステーク・プールがスロット・リーダーに選ばれる可能性を高め、ステーク・プールの報酬を共有することができます。
*ステーキングの仕組みに関しては別の記事でお伝えする予定です。
高いエネルギー効率
Ouroborosは、既存のブロックチェーンが直面している最大の課題である、コンセンサスを達成するためには、より多くのエネルギーが必要である問題を解決します。Ouroborosを使用することで、カルダノはビットコインの最大400万倍のエネルギー効率で、安全、持続可能、倫理的にスケールすることができます。
Ouroborosでカルダノが目指すもの
Ouroborosでカルダノが目指すのは、国家や権力に依存しない分散型のシステムでありプラットフォームです。この上で全ての人が経済的アイデンティを得て、信用をもとに自由に取引ができる仕組みです。これによって更なる経験と信用が生まれ、相互の結びつき、相互理解が深まり、やがて持続可能な繁栄をもたらすと考えられます。
私たちには、現在のグローバル化した世界で立場や特定のイデオロギーなどで分断されない自由で公平な基盤、経済圏が必要です。カルダノはまさしくこれを実現するためのプラットフォームであり、誰もが公平で生きられる基盤を作ろうとしているのです。
近い将来は、AIが発達し人々がベーシックインカムで生活し仕事をしなくても生活できるようになったとしても、経済的に自由であり、自由な生き方ができる選択肢のある世界は必要です。それと同時にお互いの助け合いや結びつき、相互理解も当然必要です。もしそれがないということを受け入れるのならば、それは社会や世界に対して、自己の意思、自由と自律・自律の放棄なのではないでしょうか?
世界中の違う文化、イデオロギー、立場の違いを超えて、経済が発展しなければ、私たちは持続可能な信用取引の合意に達することができません。これができなければ、分断された経済圏で不公平な取引が横行したままなのです。
これを解決するためには公平なアイデンティティと評価が必要であり、信用することなく信用を醸成する基盤が必要なのです。
この微妙なバランスを維持し持続可能なプロトコルとして開発されたのが、カルダノのプロトコルであり、Ouroborosなのです。
カルダノ財団のサイトに、「Ouroborosとは何か?」について次のような説明があります。
Ouroborosは革新的な技術と哲学の融合です。ウロボロスの研究は、私たちが社会としてどのように行動するかを探り、ゲーム理論によって定義された、個人と集団の利益の間の理想的なバランスを発見することを目的としています。ウロボロスのインセンティブ・メカニズムは、参加者の正直な参加に報い、不正な行為者を抑制します。ウロボロスのインセンティブ・メカニズムは、パーミッション・ネットワークのための安定した持続可能な基盤であり、永続的に構築された未来のインフラです。
「Ouroboros:ウロボロスとは?」より
特に、Ouroboros研究の目的を「個人と集団の利益の間の理想的なバランスを発見すること」とあり、ウロボロスのインセンティブ・メカニズムについて説明している部分では、「参加者の正直な参加に報い、不正な行為者を抑制します。」とあります。これこそがカルダノの魂であり、カルダノが提供しうる経験だと言えるでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回は、カルダノの心臓部である「Ouroborosとは革新的な技術と哲学の融合」であるについて、その特徴などを交えて説明しました。
次回はOuroborosが誕生以来がどのように進化し、今後どのようなアップグレードを遂げるかについて技術的な視点で説明していきたいと思います。
もしこの記事が気に入っていただけましたら、SIPO、SIPO2、SIPO3への委任をどうぞよろしくお願いいたします!10ADA以上の少量からでもステーキングが可能です。
ステーキングについて知りたい方は、下記の記事をご参考ください。
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カルダノ分散型台帳システムによるステーキングの魅力とその方法:2021版
Q&A:カルダノ、ステーキングに関する基本的な説明集
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