Fluid Token、バベルフィーを実装!Cardanoの歴史的瞬間
2025年2月21日、Fluid TokenがCardanoメインネット上で初のAquariumトランザクションを実行し、ついにバベルフィー(Babel Fees)の概念が現実となりました。この画期的な発表に、Cardanoの創設者チャールズ・ホスキンソン氏も歓喜の声を上げました。
バベルフィーとは?
バベルフィーとは、Cardanoの取引手数料をADA以外のトークンで支払うことを可能にする仕組みです。このアイデアは、2021年に発表されたIOGの公式ブログ記事に端を発します。その名の由来は、ダグラス・アダムズの名作『銀河ヒッチハイク・ガイド』に登場する”バベルフィッシュ”から取られています。このフィッシュはあらゆる言語を即座に翻訳する能力を持ち、バベルフィーも同様に異なるトークンをADAに変換する橋渡しの役割を果たします。
バベルフィーの仕組み
従来、ブロックチェーン上のトランザクション手数料は、プラットフォームのネイティブトークン(Cardanoの場合はADA)で支払う必要がありました。しかし、バベルフィーを活用すれば、他のトークン(例:BTC, USDC, ETHなど)で手数料を支払うことが可能になります。
この仕組みは以下のステップで動作します:
- ユーザーがADAを持っていなくても取引を発行可能
- トランザクションに「ADA建ての負債(Liability)」を宣言
- ブロックプロデューサーがこの負債を引き受け、代わりにADAを支払う
- ユーザーが提供した別のトークンで報酬を受け取る
- 取引が有効になり、ブロックチェーン上に記録される
このメカニズムにより、Cardanoのエコシステムはよりオープンで柔軟なものとなり、他のブロックチェーンとの相互運用性も強化されます。
Fluid Tokenが成し遂げた偉業
バベルフィーの概念自体は2021年から提案されていましたが、実際にメインネット上での実装に成功したのはFluid Tokenが初となります。彼らは、スマートコントラクトを駆使し、この仕組みを現実のものにしました。
チャールズ・ホスキンソンはこの成果について、「Cardanoの設計が正しかったことを証明する重要な出来事であり、DeFiの未来を切り開く第一歩だ」と賞賛しています。
意図駆動型(Intent-Driven)ブロックチェーンの未来
バベルフィーは、単なる手数料の支払い手段にとどまりません。これは、「意図駆動型(Intent-Driven)」のブロックチェーン設計の第一歩でもあります。
例えば、ユーザーが「XYZトークンを最適な価格で売却したい」「最も利益率の高いステークプールに委任したい」といった「意図(Intent)」を宣言するだけで、システムが最適な方法を見つけて実行する仕組みが今後の主流になると考えられます。
このアプローチは、マルチチェーン環境やAIの統合にも非常に適しており、将来的にはAIが最適な取引方法を提案し、自動的に実行する世界が訪れる可能性もあります。
Cardanoが他のブロックチェーンとつながる「観光経済」
バベルフィーの導入により、Cardanoエコシステムは他のブロックチェーンと直接的な相互運用が可能になります。
例えば、EthereumやSolanaのユーザーがCardanoのサービスを利用する際に、自分の持っているETHやSOLで手数料を支払うことができるようになります。これはまるで海外旅行者が現地の通貨を意識せずにクレジットカードで支払うようなものです。
この「ブロックチェーン観光(Blockchain Tourism)」の概念により、
- より多くのユーザーがCardanoに流入
- トランザクションの増加によりCardanoの経済が活性化
- ADAの需要が増加し、エコシステム全体の価値向上につながる
といった大きなメリットが生まれるでしょう。
Fluid Tokenへの称賛と今後の展望
今回のFluid Tokenの成功は、Cardanoのコミュニティがどれほど優秀であるかを示す証拠でもあります。彼らはホワイトペーパーを読み込み、理論を理解し、それを実際に実装しました。
この技術の発展により、
- DeFiの可能性が大幅に拡大
- マルチチェーンの相互運用性が向上
- ユーザーエクスペリエンスが飛躍的に向上
することが期待されます。
Cardanoは、これまでも革新的な設計思想を持つブロックチェーンでしたが、今回のFluid Tokenの成果は、それをさらに証明するものとなりました。
Fluid Tokenのチームに心からの祝福を! これからの発展が楽しみでなりません。
以下はチャールズ・ホスキンソン氏公開動画「Congratulations Fluid Token」を翻訳したものです。
チャールズ・ホスキンソン氏公開動画「Congratulations Fluid Token:Fluid Token、おめでとう!」全翻訳
こんにちは、こちらはチャールズ・ホスキンソンです。暖かく晴れたコロラドからライブ配信しています(いつも暖かく、いつも晴れたコロラド…たまには違うけど)。今日は、とてもクールなニュースを共有したいと思います。滅多に起こらないことですが、こういう時こそ、称賛を送るべきでしょう。
Fluid Tokensは、本日2025年2月21日 午後3時56分(UTC)、メインネット上で初のAquariumトランザクションを実行したと発表しました。これにより、Babel Fees(バベルフィー)がCardanoで正式に導入されました! これは本当に素晴らしいことです。そして、これがそのトランザクションIDです。どうでしょう? このチームの皆さん、おめでとうございます!
これはとても大きな出来事なので、関連するブログ記事の一部を紹介したいと思います。これによって、私たちが取り組んでいることの概要を理解できるでしょう。
Babel Feesの誕生背景
2021年2月24日、Agaloはこの素晴らしいブログ記事を執筆しました(リンクを貼っておきます)。要点を簡単に説明すると、Cardanoネットワークの取引手数料をADA以外のトークンで支払う仕組みを考案したということです。
ダグラス・アダムズの名作**『銀河ヒッチハイク・ガイド』**には、「バベルフィッシュ」という生物が登場します。この生物は、どんな言語でも自分の言語に翻訳して聞くことを可能にします。つまり、銀河中の様々な言語を超えて、意味のあるコミュニケーションを実現するものです。
同じように、暗号資産の世界では、スマートコントラクトプラットフォームによって無数のカスタムトークンが作成されます。では、自分の好みのトークンだけを使ってプラットフォームとやり取りすることは可能でしょうか? もし、取引手数料を好きなトークンで支払う仕組みがあれば、それが可能になるでしょう。
ブロックチェーンの常識として、取引の投稿には何らかのコストが必要であるという考え方があります。なぜなら、そうしないと無制限に無意味なトランザクションを作成され、システムが飽和状態に陥ってしまうからです。この原則に基づき、**「取引手数料はプラットフォームのネイティブトークンで支払うべきだ」**という考え方が一般的でした。そのため、「自分のトークン以外は価値がない」とする部族主義的な態度が暗号資産業界ではよく見られます。
しかし、この制約は本当に必要なのでしょうか? バベルフィーの仕組みを使えば、他のトークンでも手数料を支払えるようになります。
Cardanoのネイティブアセットとバベルフィーの仕組み
Cardanoのネイティブアセット機能では、トークンはミンティングポリシー(発行ルール)に基づいて作成され、ADAと同じくネイティブに台帳で扱われます。Cardanoの拡張UTxO(eUTxO)モデルでは、トランザクションを有効にするためにUTxOを消費する必要があり、入力(Input)と出力(Output)を持ちます。そして、CardanoのUTxOは、単なるADAだけでなく、複数の異なるトークンを含むトークンバンドルを持つことができます(これは「カラードコイン」概念に似ています)。
Satoshi Nakamotoもこの考え方を持っていましたが、完全には実装されませんでした。
また、Cardanoの取引手数料は、固定の関数としてADAで計算されるように設計されています。そして、Ethereumとは異なり、トランザクションの手数料は事前に正確に予測可能です。これはCardano独自の強みの一つであり、Ethereumのアカウントベースモデルでは実現できない特性です。
なぜなら、Ethereumのグローバルステートモデルでは、他のトランザクションが同時に台帳の状態を変化させるため、取引のコストが変動する可能性があるからです。一方、CardanoではUTxOのローカル決定性により、どのノードでも同じ計算結果が得られます。これはBitcoinと同じ仕組みです。
バベルフィーの実現方法
バベルフィーを実装するために、まずトランザクション発行者が「ADA建ての負債」を宣言することから始まります。例えば、「この取引の手数料はADAで支払う必要があるが、私はADAを持っていない」と宣言します。
しかし、このままでは台帳に記録されることはありません。このトランザクションを有効化するためには、誰かがその負債を引き受け、ADAを補填する必要があります。これにより、取引手数料の支払いと、ユーザーが持つ他のトークンとの交換が可能になるのです。
この仕組みを利用すれば、例えばBitcoin DeFi上で、Bitcoinを使ってCardanoの取引手数料を支払うことも可能になります。具体的には、次のような流れになります:
1. ユーザーがADAなしでトランザクションを作成
• 「私はBitcoinを持っているが、ADAは持っていない」と宣言
2. ブロックプロデューサーがこの取引を観察し、負債を引き受ける
• 「このBitcoinを受け取り、ADAの取引手数料をカバーする」と意思決定
3. この二つの取引をグループ化して、台帳に記録
• 取引全体がADA建ての適正価格に調整される
結果として、ユーザーはADAを持たずにBitcoinで取引手数料を支払い、ブロックプロデューサーはBitcoinを手に入れることができます。
ネストされたトランザクションとFluid Tokenの実装
このバベルフィーの仕組みをさらに発展させるために、Paulinaがイノベーションチームと協力し、「ネストされたトランザクション(Nested Transactions)」というコンセプトを正式なCardano Improvement Proposal(SIP)として提案しました。 これは、バリデーションゾーン(Validation Zones)という概念を活用して、より高度な仕組みを構築するものです。
基本的なアイデアは、誰かが部分的なトランザクションを作成し、それを他の誰かが受け取り、完成させるという流れになっています。
• まず、取引の発行者が「意図(Intent)」を宣言します。
• 次に、その意図に対応できるカウンターパーティー(取引相手)を検索します。
• その後、カウンターパーティーがトランザクションを構築し、バンドル化して台帳に提出します。
• 最後に、取引が承認され、ブロックチェーン上で決済(Settlement)が行われます。
このような仕組みを持つブロックチェーンは他にもあり、例えば「Agnoma(アグノーマ)」というプロジェクトは、完全に「意図駆動型(Intent-Driven)」の設計を採用しています。彼らのウェブサイトには「The Intent Machine(意図のマシン)」というコンセプトが掲げられています。
バリデーションゾーンと意図駆動型設計
このプロセスをよりシステマティックにするために、バリデーションゾーン(Validation Zones)という概念がCardanoに導入されつつあります。しかし、Fluid Tokenのチームは、この正式な導入を待たずに、スマートコントラクトを活用して実際にバベルフィーの仕組みを実装してしまいました。 つまり、彼らはCardanoの設計思想をいち早く実現し、先駆者となったのです。
これは、Bitcoin DeFiの重要なコンポーネントであり、この仕組みが実装されたことで、CardanoにおけるDeFiの可能性が大きく広がりました。
この成功を見て、私は本当に誇りに思います。Fluid Tokenのチームは、ホワイトペーパーを読み込み、課題を理解し、実際にそれを形にするという素晴らしい仕事を成し遂げました。そして、その証拠はブロックチェーン上に確かに刻まれています。「**証拠はプリンの中にある(The proof is in the pudding)」というわけです。
意図駆動型設計の重要性
では、「意図(Intent)」とは何でしょうか? そして、なぜそれが重要なのでしょうか?
意図駆動型設計とは、複雑さを抽象化し、ユーザーが「何をしたいのか」だけを宣言すれば、システムが最適な方法でそれを実行するという考え方です。
例として、「目的地に行く」というプロセスを考えてみましょう。
• 手続き型(Procedural):昔のMapQuestのように、「この道を2マイル進み、左に曲がり、さらに1.5マイル進んで右に曲がる」という手順を細かく指定する。
• 宣言型(Declarative):タクシーに乗り、「グランド・セントラル駅までお願いします」と言う。
後者のほうが圧倒的に簡単で、柔軟性もあります。意図駆動型設計は、このようにユーザーが何をしたいかを宣言するだけで、システムが最適な方法を選び、実行するという考え方です。
これは、マルチチェーンのDeFi環境で特に重要になります。
例えば:
• 「私は400ドル分のXYZトークンを、最適な価格で売却したい」
• 「私は最も利益率の高いステークプールに委任したい」
このような意図を指定すれば、ウォレットやスマートコントラクトが自動的に最適な方法を見つけて処理してくれるのです。
意図駆動型ブロックチェーンとCardanoの優位性
この考え方をより進めると、意図駆動型のブロックチェーン設計がどれほど重要かが見えてきます。特にUTxOモデルは、意図駆動型設計と非常に相性が良いのです。
• UTxOモデルでは、ローカル決定性(Local Determinism)が保たれるため、取引の確定性が高い
• バッチ処理が容易で、オフチェーンでの処理(Hydraなど)とも組み合わせやすい
• Ethereumのようなグローバルステートモデルとは異なり、状態の変化による不確実性がない
つまり、Cardanoの設計そのものが、意図駆動型設計を自然に受け入れる構造になっているのです。
また、この仕組みを使えば、「ブロックチェーン間の観光(Tourism)」 という概念も生まれます。
• 他のブロックチェーンから来たユーザーが、例えばEthereumのETHやSolanaのSOLで取引手数料を支払いながらCardanoのエコシステムを利用できる。
• これは、現実世界の「観光」と同じで、観光客は自分の通貨(ドルやユーロなど)で支払いをするが、現地の経済はその取引によって活性化する。
• Cardanoはこの「観光」から恩恵を受け、経済が発展する。
つまり、バベルフィーや意図駆動型設計は、Cardanoのエコシステムを他のブロックチェーンとつなぐ架け橋となるのです。
AIとの統合と未来の展望
さらに、AIを活用すれば、この意図駆動型の仕組みをさらに進化させることができます。 AIが最適な取引方法を見つけ、最良の条件で実行できるようになれば、ユーザーの負担は大幅に減ります。
また、マルチチェーンやプライバシー保護を考慮した場合、さらに興味深い問題が出てきます。
• もし意図を出した人が「自分の身元を明かしたくない」と思った場合、どうすれば安全に取引を成立させられるのか?
• 誰が提案者(Proposer)で、誰が解決者(Solver)なのか?
こうした課題に対して、今後ますます研究が進むでしょう。
Fluid Tokenチームへの祝福
最後に、Fluid Tokenのチームに改めて祝辞を送ります。彼らはこの仕組みを実際に動かし、Cardanoの未来を切り開く大きな一歩を踏み出しました。 彼らの成功は、バリデーションゾーンやCardanoの進化にも大きな影響を与えることでしょう。
Cardanoのコミュニティは、本当に素晴らしい。彼らは学び、理解し、実際に形にする。 そして、時には誰よりも早く実現してしまう。
おめでとうございます! 皆さん、乾杯! 🎉