【Midnight Whiteboard 解説】Midnightが描くWeb3の次の10年
Input Output の CEO、チャールズ・ホスキンソンが久々にホワイトボード前に立ち、
「暗号資産の第4世代」について大きな発表を行いました。
今回のテーマは、Cardano と肩を並べる“もう一つの柱”として誕生する新しいネットワーク
Midnight(ミッドナイト) の全体像です。
内容は非常に広範で深く、暗号資産の歴史と未来をつなぐ“決定版レクチャー”と言えるものになっています。
この記事では、そのポイントをコミュニティ向けにわかりやすく紹介します。
■ 暗号資産は「第4世代」へ
チャールズは、暗号資産の進化を4つの世代に分けて説明します。
- 第1世代:ビットコイン(分散型の価値移転)
- 第2世代:イーサリアム(スマートコントラクト)
- 第3世代:カルダノ(スケーラビリティ / 相互運用性 / ガバナンス)
- 第4世代:ミッドナイト(合理的プライバシー / アイデンティティ / 協調)
Cardano が“インフラを整えた世代”だとすれば、Midnight は
“世界中が実際に使える暗号ネットワークへ進化させるための最後の仕上げ”
という位置づけです。
■ Midnight が解決する3つの課題
Midnight は、過去15年の暗号資産が解決できなかった
① 合理的プライバシー(Rational Privacy)
② アイデンティティ(DID)
③ 協調(Cooperation)
の3つに焦点を当てています。
◆ ① 合理的プライバシー
「全部公開」か「全部秘密」ではなく、
“見せたい人だけに見せる” という現実的なプライバシー。
そのために Midnight では
- ゼロ知識証明(ZK)
- 完全準同型暗号(FHE)
- GPU最適化(Tensor Codes)
- Lattice暗号(量子耐性)
など最先端の暗号技術を統合しています。
さらに、オフチェーンとオンチェーンのプライバシーを
ひとつのスタックとして統合しているのが特徴です。
◆ ② DID(分散型ID)との統合
W3C標準の DID(Decentralized Identifier)を Midnight のプライバシー基盤と組み合わせ、
誰でも、どんな存在でも(人・AI・ロボット・IoT…)使えるID体系を実現します。
- 個人情報は保護
- しかし必要な証明だけ出せる
- 規制にも自動対応できる
- DeFi のコンプライアンスも自動化
この「プライバシーを持ったID」は、暗号資産だけでなく
医療・金融・AIエージェント経済にも大きな影響を与えます。
◆ ③ 協調(Cooperative Economics)
Midnight は“世界全体で協力できる仕組み”を重視します。
その中心にあるのが Minotaur(ミノタウルス)。
● PoW と PoS を同時に使う「マルチリソース合意」
- 複数チェーンのバリデータが協力
- ブロック報酬は複数ネットワークに分配
- 数千チェーンでも合意可能な拡張性
- どれかが止まってもネットワークは動く
暗号資産の“教義戦争(PoW vs PoS)”を終わらせる技術です。
■ 史上最大:Glacier Drop(氷河ドロップ)
Midnight の初期配布は、暗号資産史上最も公平なもののひとつです。
対象はなんと 3,360万アカウント。
対象チェーンは 8つ:
- BTC
- ETH
- ADA
- SOL
- BSC
- AVAX
- XRP
- BAT
さらに、
- 21日のPoWスカベンジ(未請求分の採掘)
- Genesis Block からの Lost-and-Found(遺失物再請求)
という形で、**“取り逃しゼロ”**の配布設計になっています。
VC や内部者だけが得をする Ponzinomics を完全に排除した形です。
■ デュアル・トークノミクス
Midnight では2種類のトークンが存在します。
● Night(ナイト)
- デフレ資産
- ガバナンス・コンセンサス用
- Cardano(安全なL1)上で管理
● Dust(ダスト)
- トランザクション・計算コスト用
- 価格を安定させるために生成率を調整
- プライバシー領域を扱う
この仕組みにより、
- 長期価値(Knight)
- 日常利用での安定性(Dust)
の両立が可能になります。
■ チェーンを繋ぐ「Capacity Exchange」
ユーザーが ETH しか持っていなくても、Midnight では
- ETH → Dust に自動変換
- Dust → バリデータ報酬へ
という流れを 自動で 行えます。
ユーザーは
- ADA でも
- ETH でも
- BTC でも
- ステーブルコインでも
好きな資産で Midnight を利用できます。
チェーンの違いを意識する必要がありません。
■ Web3 の未来:「手続き」から「意図」へ
チャールズが語った中で最も未来的だったのが「意図(Intent)」の概念です。
Web3はこれまで
“トランザクション(手続き)ベース” でした。
しかし、未来はこうなります:
「明日までにSNACKを200ドル分、Xドル以下で買いたい」
これが「意図(Intent)」です。
ユーザーは “何をしたいか” だけ伝えれば OK。
どのチェーンで実行するかは Midnight が最適化します。
- Cardano が安いならそちら
- Solana が速いならそちら
- CEX の方が有利ならそちら
ユーザーは目的(意図)だけを指定すればよくなる世界です。
合理的プライバシーがあるため、
意図を公開して価格操作される心配もありません。
■ Midnight は「暗号資産の最終世代」
チャールズは最後にこう語りました。
「これこそが、15年の暗号資産の歴史が求めていた“最後のピース”だ。」
「Cardano にも、Ethereum にも、Solana にもない。“第4世代”は Midnight にある。」
そして、
「あなたの自由、あなたのデータ、あなたの主体性を守るために作った。」
Midnight は
プライバシー × アイデンティティ × 協調
という、Web3 の根本的課題を統合的に解決するネットワークです。
- AIエージェント経済
- 医療データ連携
- 世界規模のDeFi
- 公共サービスの次世代化
- 多チェーン統合の基盤
こうした未来の基盤そのものを形作ります。
■ まとめ
Midnight Whiteboard は、暗号資産の“次の10年”を示す重要なメッセージでした。
- プライバシーの再発明
- DID を基盤にした新しいID社会
- 協調型の合意(Minotaur)
- 公平な初期配布
- 価格予測可能なトークン経済
- チェーンを跨ぐ Layer2
- そして「意図」で動く未来のWeb3
Midnight は、Cardano の進化を次のステージへ押し上げる
暗号資産の最終世代(第4世代)と言えます。
これから数ヶ月、そして数年をかけて
Midnight の機能が順次展開されていきます。
カルダノの新しい章が、いよいよ始まろうとしています。
以下はチャールズ・ホスキンソン氏動画「Midnight Whiteboard with Charles Hoskinson」を翻訳したものです。
チャールズ・ホスキンソン氏動画「Midnight Whiteboard with Charles Hoskinson」全翻訳
こんにちは。Input Output の CEO、チャールズ・ホスキンソンです。
今日は「暗号資産の第4世代」と、私の会社の歴史の中でも最高傑作の一つとなる製品についてお話しします。
昔々、地球がまだ冷え切っていなかった頃──
そこには「良き古きビットコイン」がありました。
ビットコインは本当に“魔法のような存在”でした。
2009 年にようやく登場するまで、長い年月がかかりました。
ビットコインは、暗号資産分野における「第一世代」でした。
この 10 年間、私の講演を聞いたことがある人なら、私が“世代論”をよく語るのを知っていると思います。
■ ビットコインが解決しようとした課題
それは「分散型の価値移転」という概念でした。
デジタルな世界で価値を動かすことは昔から可能でした。
銀行から銀行へ、人から人へ。
しかしそこには必ず “仲介者(ミドルマン)” が存在しました。
ミドルマンの問題点は、
- 市場の力を握ること
- すべてを見ることができること
- 何でも決められること(手数料、誰が参加できるか等)
です。
そこで、サトシ・ナカモトが興味を持ったのは、こうした疑問でした。
「ビットコインという価値を仲介者なしで送れるネットワークを作れるのか?」
完全に分散化され、許可不要な仕組みでこれを実現する方法は、当時まだ存在しませんでした。
そして実際、2013 年頃まで誰もビットコインが“本物の革命”になると信じていませんでした。
初期のビットコインは低迷していました。
参加者も価値もほとんどなかったのです。
しかし、ヘルフィニー、マーティ・マルミ、マイク・ハーン、ギャビン・アンドリーセン、ロジャー・バーなど、
情熱的な支持者たちによって、ビットコインは転換点を迎えました。
そうしてビットコインは
$0 → $250
へと成長しました。
■ 2013年:第二世代の誕生へ
2013 年頃、世界は気づきました。
「分散型の価値移転は“本物だ”。これからずっと続くものだ。」
では次に当然出てくる疑問は、
「これを使って、何ができるのか?」
ということです。
■ 価値とは何か?
価値を表す方法は無数にあります。
- 株式
- 債券
- コモディティ
- 通貨
- 知的財産
- その他あらゆる価値表現
また、トランザクション(取引)はもっと複雑です。
- 1 対 1(アリス → ボブ)
- 1 対 多(ボブ → 国全体)
- 多 対 1(国 → ボブ)
- 多 対 多(複雑な商取引)
そして取引には「メタデータ」があります。
- 誰が
- いつ
- どこで
- どうやって
- 何の目的で
- どんな規制の下で
など、価値移転の周りには無限の条件があります。
■ Bitcoin の“固定的な仕組み”では世界のすべてを表現できない
ビットコインの仕組みは「特定の方法で BTC を動かす」ことに特化しています。
しかし世界には、
- 無数の価値
- 無数の取引条件
- 無数の規制・地理的要素
が存在します。
ビットコインの固定的な機能では、この“価値の宇宙”をすべて表現できません。
■ そこで生まれたのが「スマートコントラクト」
これはまさに「JavaScriptがWebブラウザに登場した」時と同じくらい革命的でした。
JavaScript 登場以前、Web は静的でした。
JavaScript が登場すると、Amazon、Facebook、YouTube など、
ダイナミックで高度な体験が生まれました。
それと同じように、
スマートコントラクトが登場し、第二世代が始まりました。
その代表例が Ethereum です。
■ しかし第二世代にも限界があった
2015 年頃、私たちは気づきました。
分散型の価値移転とプログラマビリティだけでは、
“大規模利用”は不可能だ。
必要なのは3つ:
- スケーラビリティ
- 相互運用性(インターオペラビリティ)
- ガバナンス
これを私は 2017 年のホワイトボード動画で語りました。
そのときが Cardano の夜明けでした。
Cardano の発展と “第4世代” Midnight の登場
Cardano が誕生してから 8 年が経ちました。
その間に 数兆ドル規模の価値が暗号資産業界で生み出されました。
Cardano も最高時価総額が 1,000億ドル に到達し、
現在でも 200億ドル規模 を維持しています。
今では 暗号資産ユーザーは 5億5,000万人 に達しました。
スケーラビリティを議論するために「ブロックチェーン・トリレンマ」という概念も生まれました。
相互運用性やガバナンス面でも多くの進展があり、
Cardano ではすでに「オンチェーンプロトコル」でガバナンスが機能する段階に到達しています。
さらに Cardano は、世界最大級の DAO の一つでもあります。
- Ouroboros の改良
- Leios の導入
- Hydra によるスケール拡張
これらによって、スケーラビリティのトリレンマをほぼ解決する見通しも立っています。
またブリッジ技術を中心に、
既存金融との相互運用性の議論・法整備も進みました。
■ では、これで終わりなのか?
答えは 「NO」 です。
なぜなら、
最終的な目的は “世界の経済・政治・社会システムを動かすこと”
だからです。
それは──
- 各国政府
- 企業
- 個人の金融システム
すべてを、完全に分散化された形で動かすということです。
ビットコイン以来、暗号資産の根源的価値は変わっていません。
- 誰もコントロールできない
- 凍結されない
- アクセスを奪われない
- 身元も主体性も自分が所有する
- 経済的エージェンシーを持つ
これらをすべて維持したまま、世界全体を載せられるインフラが必要なのです。
■ そこで登場するのが Midnight
これからお話しするのが、最後の世代──第4世代の暗号資産です。
これこそが
何十億という人々を暗号資産空間に迎え入れ、
金融市場全体を統合し、
世界を変える世代になります。
ビットコインの誕生から 16 年、
Ethereum の実験期、
Cardano の構築期を経て──
私は最も興奮しているのが Midnight です。
なぜか?
Midnight こそ、暗号資産を“本当に誰でも使えるもの”にする存在だからです。
■ Midnight の使命:暗号資産の最後の 3 大問題を解決する
私たちは過去 6 年間、
暗号資産空間の“最後の未解決問題”に取り組んできました。
それは以下の 3 つです。
- 合理的プライバシー(Rational Privacy)
- アイデンティティ(Identity)
- 協調(Cooperation)
これらは
- 技術的な問題
- 社会的な問題
の両方があります。
しかし“世界中の誰もが安全に利用できる統一プロトコル”は存在していませんでした。
Midnight は、
あらゆるチェーンの上に載る Layer2
となることで、これを解決します。
■ 第1の問題:合理的プライバシー(Rational Privacy)
すべての組織には「公開情報」と「非公開情報」が存在します。
ブロックチェーンの空間は
“公開側”の能力を最大化してきました。
- 透明性
- 監査可能性
- タイムスタンプ
- 不変性(消せない)
これらは素晴らしい性質です。
世の中のほとんどの経済・政治・社会システムには存在していません。
しかし現実の世界には「秘密にすべき情報」が大量にある
- Amazon の購入履歴
- Google の検索履歴
- 医療記録
- 学歴
- 訴訟情報
あなたは世界中に全公開したいですか?
──答えは No です。
人生のあらゆるものは
陰(private)と陽(public)がセットなのです。
現状のブロックチェーンは
“公開 99% + 私的 1%”
という歪んだ構造でした。
これでは世界の基盤にはなりません。
■ プライバシーは「誰に対して非公開か?」が本質
プライバシーとは
- “誰にも見せない”ことではない
- “特定の人には見せる”必要がある
例:
- 医療記録 → 医者には見せる必要がある
- 成績証明書 → 大学院には出す必要がある
つまり本質は
「誰が見るべきで、誰は見るべきでないか」
という概念です。
現状のブロックチェーンのプライバシー技術は、
- マルチパーティ計算(MPC)
- Trusted Execution Environment(TEE)
- もしくは“ビットコイン式の匿名性”
など、どれも 限定的 でした。
単に「資産を匿名で移動」できるだけでは
2009 年のレベルから抜け出せないのです。
■ そこで生まれたのが6年かけて作った技術「Kacina」
Kacina は、
近年発展したゼロ知識証明(ZK)の力を最大限活用し、
- 公開情報と秘密情報の分離
- 秘密情報の証明(中身を出さずに正しさだけ証明)
- 表現の自由
- 検証可能性
- 合理的な開示
これらを実現します。
例:
- コカコーラのレシピを公開せず、「本物のレシピを知っている」ことだけ証明できる
- 秘密情報の中身を渡さずに「米国市民である」ことだけ証明できる
- 「税務要件を満たしている」ことだけ証明できる
これは 巨大なイノベーション です。
■ しかし本物のプライバシーには“統合”が必要
オンチェーン
オフチェーン
データベース
スマートフォン
クラウド
これらすべてが“別々”では、どこかから漏れます。
統合された1つのプライバシースタックが必要です。
そこで生まれたのが
Nightstream(ナイトストリーム)
です。
Nightstream の使命は 3 つ:
■ Nightstream の3つの使命
1. プライバシーの統合
オンチェーンとオフチェーンの暗号技術を
同一の暗号基盤(Lattice 暗号)へ統合します。
これは量子耐性も備え、無限スケーラビリティも可能にします。
2. GPU を最大活用した高速化
ゼロ知識証明は重い──
そこで GPU をフル活用します。
チャールズが紹介した NVIDIA DGX(ペタフロップ級)は
スマホにもその技術がやがて降りてきます。
暗号計算を GPU で線形加速するための仕組みが
Tensor Codes(テンソルコード)
です。
これにより、
- 証明時間が “数時間 → 数分 → 数秒 → ミリ秒 → ナノ秒” へと自然に短縮
- ASIC 不要
- GPU の進化に合わせて勝手に高速化
という未来が実現します。
3. データ処理の次元を変える
ブロックチェーンはデータベースではありません。
必要なのは「証明」ですが、
データ本体はオフチェーンにあります。
そこで必要なのが
FHE(フル準同型暗号)
です。
これにより、
- データを復号せずに
- 暗号化されたまま
- 計算・照合・分析
が可能になります。
Nightstream は
ZK、FHE、Tensor Codes、Lattice 暗号を融合する
世界初の統合プライバシーフレームワークです。
Kacina と Compact 言語、そして「アイデンティティ(DID)」へ
Kacina の強みをさらに活かすため、
私たちは新しいプログラミング言語 Compact(コンパクト) を開発しました。
これは TypeScript をベースにしており、
JavaScript 開発者がそのまま使えるように設計されています。
- 数千万人の JS/TS 開発者が参入可能
- スマートコントラクトを簡単に記述できる
- 将来的にはあらゆるデータベースと連携可能
- 証明コストは時間とともに下がり続ける(GPUの進化に合わせて自動で高速化)
開発者体験(DevX)を最大化し、
合理的プライバシーの世界を扱いやすいものにします。
■ 合理的プライバシーの次の課題:アイデンティティ(Identity)
開示(Disclosure)が必要になると、
「誰に見せるか?」
が必ず問題になります。
つまりアイデンティティが必要になる。
しかし、ここで問題があります。
ブロックチェーンの世界には
「信頼できる第三者が入り込む隙」が大量にあるのです。
■ 規制の問題:DeFi における “古い考え方”
最近、Clarity Act(米国 DeFi 規制)などの議論があります。
古い考え方の規制当局は、こう考えます:
- DeFi プロトコルの代わりになる「中央集権的な組織」を作らせる
- その組織が銀行免許や KYC/AML の許可を取得する
- DeFi を使う人はすべてその中央組織を通る
──これでは DeFi の意味が完全に失われます。
「吸血鬼を再び招き入れる」ようなものです。
我々は 決してそれを許してはいけない。
■ 新しい道:ブロックチェーンベースのアイデンティティ
解決策は新しいパラダイムです。
それが DID(Decentralized Identifier:分散型ID) です。
これは W3C(Web の標準化組織)が定めた
インターネットの“公式の ID 規格”と言えます。
DID は
- 人間
- AI エージェント
- ドローン
- ロボット
- 犬に埋め込んだマイクロチップ
- 金塊
…など、あらゆる存在を識別できます。
まさに 「ユニバーサルID」。
■ DID は “公開”しないと意味がない。しかし公開したら危険
DID は
- DID(識別子)
- DID Document(その説明)
で構成されます。
ただし問題があります。
DID をそのままオンチェーンに置くと世界中に見えてしまう。
- 公開
- 永久保存
- 改ざん不可
- 透明性
というブロックチェーンの性質が裏目に出るのです。
■ 解決:DID × 合理的プライバシー(Kacina)
DID の世界には、
- Anonymous Credentials(匿名証明)
- Selective Disclosure(選択的開示)
など高度な技術がすでに存在します。
これらを Kacina と統合することで、
「プライバシーを持ったアイデンティティ」
という、これまで不可能だった概念が実現します。
■ これは“インターネットに欠けていた最後の部品”
かつて同じ質問を、
インターネットの創造者の一人 Vint Cerf(ヴィント・サーフ) に尋ねました。
「もしインターネットを作り直せるとしたら、何を変えたいですか?」
彼はこう答えました:
- インターネットにはアイデンティティ標準がなかった
- そのため複雑性が爆発した
- パスワード地獄、EC詐欺、個人情報盗難
- プライバシーの不在は“ディストピア”を招く
つまり本来、
インターネットには“アイデンティティ+プライバシー”が必要だった。
しかし、当時は技術がなかった。
■ 今、Midnight によってそれが可能になった
DID とプライバシーを組み合わせると、
- オンチェーン規制を自動化
- DeFi のコンプライアンスも自動化
- 個人情報は守られる
- 企業や国が求める証明だけ提供できる
- 誰もあなたの秘密を知る必要がない
これこそが 21世紀のデジタルインフラの基盤になります。
■ 実例:Uniswap の「規制版フロー」を Midnight が可能にする
通常の Uniswap は:
- アドレスから送る
- 取引完了
だけです。
しかし “規制対象の資産” を扱う場合、
本来は KYC/AML が求められます。
今の方法は2つ:
- Uniswap が中央集権組織を作って KYC する
- 法律違反になって創業者が逮捕される
どちらも最悪です。
■ Midnight を挟むと「完全自動化」できる
ユーザーが規制対象のトークンを扱うとき:
- まず “Pending Address(保留アドレス)” に送る
- Midnight が DID と ZK 証明を使い自動審査
- “許可” のみを Uniswap に返す(中身は渡さない)
- 通常フローで取引実行
Uniswap はただ
OK(許可) or NG(拒否) の証明を見るだけ。
ユーザーの個人情報は
Uniswap に一切渡らない。
これは
- 米国向け
- EU向け
- 中東向け
- 日本向け
など、地域ごとに異なる規制フローを自動生成できます。
■ 医療データの共有も同じ
- 歯科医院
- 眼科
- 病院
- かかりつけ医
それぞれがあなたの健康情報の一部を持っています。
米国ではほぼ同期していません。
しかし Midnight を “調整レイヤー(Coordinator Layer)” として使えば、
- どこからでも
- 誰が必要かを判断し
- プライバシーを守りながら
- 必要な医療情報だけ
- 自動で共有
できるようになります。
■ 次の巨大市場:「AIエージェント経済(Agentic Commerce)」
ここから“兆ドル規模の話”に入ります。
AIエージェントがあなたの代わりに商品を探し、購入する世界
が 2030 年には主流になります。
- 人間の検索は減る
- AI が代わりに検索する
- AI が代わりに交渉する
- AI が代わりに購入する
Google検索やAmazon検索は
AIによるエージェント検索へ置き換わります。
■ この世界で必要なのは「プライバシーを持ったAI」
しかし問題があります。
AIエージェントの性能を上げるには
“あなたの情報”が必要です。
- 資産状況
- 健康状態
- 家族情報
- 嗜好
- 生活パターン
- 購買履歴
全部渡す気はありますか?
その情報は
一度渡したら永遠に戻ってきません。
その情報は
Google や OpenAI の資産になります。
これは ディストピアの未来です。
■ Midnight の答え
「AI に“直感だけ”与えて、中身は渡さない。」
- AI はあなたの好みを学べる
- しかしあなたの秘密は知らない
- Midnight が“選択的開示”を制御
- AIは必要な「証明」だけ受け取る
これこそが 合理的プライバシーの核心です。
■ 専門家エージェントの市場も生まれる
未来の「コンシューマーレポート」は
- “雑誌” ではなく
- “専門特化AIエージェント”
になります。
例:
チャールズがアマゾンで買った“ジャングル帽子”のように、
専門家エージェントを $3 ぐらいで購入し、
- 全人類レベルの知識を持つ
- 公正な AI
- あなたの条件に合わせて買い物してくれる
という世界が生まれます。
このエージェント市場は
ブロックチェーンによって成立します。
- チューニングデータの秘密は守られる
- ユーザーの秘密も守られる
- 両者が合理的プライバシーを持つ
Midnight のプライバシーレイヤーと
AI(GPUベース)が同じ基盤を使うため
自然な統合が可能です。
公平な初期配布(Glacier Drop)、デュアル・トークノミクス、Minotaur(マルチリソース合意)、そして「意図ベースの未来」へ
■ 第3の柱:協調(Cooperation)
合理的プライバシー
アイデンティティ
それらが整っても、まだ“利用者”がいなければ意味がありません。
暗号資産プロジェクト最大の課題──それは採用(Adoption)です。
数百万人、数十億人に使われて初めて価値が生まれます。
では、2025年に“新しい暗号ネットワーク”を立ち上げるには
どうすればよいのか?
■ 最悪の方法:Ponzinomics(VC 特権経済)
チャールズはこれを「地獄の10層目」と表現しています。
典型的な悪い例:
- 創業者とVCがこっそり安値でトークンを買う
- 内部者だけで大量保有
- 上場させる
- マーケティングで価格を釣り上げる
- 小売投資家(一般人)が買う
- 内部者が売り抜ける
- 崩壊
- また新しいチェーンを作って同じことをする
暗号資産が信用を失った最大の理由がこれです。
Midnight はこれを徹底的に排除します。
■ Midnight の答え:Cooperative Economics(協調経済)
まず最初に行うのは Glacier Drop(氷河ドロップ) です。
全世界へ “公平に” 配布するための仕組みです。
配布対象は 8つの主要エコシステム:
- Bitcoin
- Ethereum
- Cardano
- Solana
- Binance Smart Chain
- Avalanche
- XRP
- BAT(広告の重要性から追加)
合計 3,360万アカウントが対象です。
暗号資産史上最大のエアドロップ。
時間とともに氷河のように少しずつ“溶けて”受け取れる仕組み。
■ 配布の第2段階:21日間の PoW スカベンジ(採掘)
もし対象者が受け取らなかった場合、
21日間の PoW(CPU採掘)で“残りを回収”できます。
これはすでに
ビットコイン初期数年間の計算量を超えるCPUが動いているほど人気です。
■ 配布の第3段階:Lost-and-Found(遺失物センター)
- 氷河ドロップの受け取りを忘れた人
- 採掘にも参加しなかった人
これら全員が
Midnight のジェネシスブロック(最初のブロック)から再請求できる
仕組みが用意されています。
■ Midnight の初期配布は世界で最も公平
- VC 特権なし
- 内部者優遇なし
- すべてのエコシステムへ均等に
- 暗号資産の95%の価値をカバー
これこそが 「公平なスタートライン」 です。
■ 次の課題:デュアル・トークノミクス(Dual Token Model)
協調を成立させるには、価格の安定性も重要です。
暗号資産の2つの性質には常に対立があります:
① デフレ資産(例:Bitcoin)
- 供給が減るほど価値が上がる
- 長期的価値保存に強い
- 需要 > 供給 → 価格上昇
- しかし価格変動が激しい
企業利用に向かない(予算計画が立たない)
② 価格安定性(Predictability)
アプリ開発者は価格の予測可能性が必要:
- 今日の取引コスト
- 来月の取引コスト
- 半年後の取引コスト
が見えないとビジネスにならない。
暗号資産は
- 1年で10倍
- その半年で−90%
- また2年で10倍
のような乱高下が日常です。
■ Midnight の解決:2つのトークン
Midnight には2つのトークンがあります。
1. Night(ナイト)
- デフレ資産
- ガバナンス
- コンセンサス
- Cardano と同じ「安全・安定な L1」で管理
- ADA のように“価値の根幹”を担う
2. Dust(ダスト)
- 計算・手数料用ユーティリティ
- 価格を予測可能に調整できる
- 内部的に生成される
- 秘密保持用ネットワーク(Midnight側)で扱うことも可能
Night → Dust を生成する式は
価格を安定させるように調整可能。
■ 利点
- 公開資産(Night)と秘密資産(Dust)の分離
- Cardano(安全)と Midnight(高速・実験的)の分離
- 価格予測性とデフレ価値の両立
- 公共性とプライバシー性の両立
■ 次の革命:Capacity Exchange(キャパシティ交換)
Midnight は あらゆるチェーンの Layer2 です。
では質問:
「Ethereum のユーザーが Midnight の手数料を支払うにはどうする?」
答えは Capacity Exchange(キャパシティ交換)。
ユーザーの資産(ETH / ADA / BTC / USDC / SOL など)を
Dust に自動変換し、手数料として使えるようにします。
観光地の外貨両替のように
ユーザー:ETH で支払う
Midnight:Dust に交換
バリデータ:Dustを獲得
バックエンドでは Night が価値の源泉
ユーザーは
チェーンを意識する必要がない。
■ ブリッジ不要の“チェーン間相互理解”:Folding(フォールディング)
従来のブリッジは危険でした。
- ハッキングが多い
- 中央集権化される
- 狙われやすい
Midnight は違います。
Zero-Knowledge の「Folding」により
他チェーン全体の状態を“数学的に要約”して理解できます。
例:
- Ethereum 全履歴 → 小さな ZK 証明
- Midnight 全履歴 → 小さな ZK 証明
- 互いに検証可能
ブリッジ不要。
数学だけでチェーン間の信頼を成立させます。
■ 協調の極致:Minotaur(ミノタウルス)=マルチリソース合意
これが Midnight の核心技術の一つです。
疑問:
「PoW と PoS、どちらが正しいのか?」
答え:どちらも正しい。両方使えばいい。
■ Minotaur とは?
- 複数チェーンのバリデータを同時に利用
- PoW と PoS を同時に採用
- 8チェーン以上の資源を組み合わせて合意形成
- ブロック報酬も複数ネットワークに分配
- 超軽量クライアント(ログスペースコンセンサス)でスケール
世界初の Multi-Resource Consensus(マルチリソース合意)。
これにより:
- 無限にスケール
- 何千チェーンでも合意可能
- 分散性が極端に高まる
- セキュリティを共有
- すべてのネットワークが協力者になる
PoW vs PoS の“宗教戦争”を終わらせる技術です。
■ そして最後の頂点:「意図(Intention / Intent)」
ここから、暗号資産の未来そのものの話に入ります。
■ 暗号資産の世界は “手続き(Procedural)” に縛られている
現在の Web3 はこうです。
- トランザクション
- スマートコントラクト
- 逐次的な手続き
例えるなら:
「12:00 にアップルビーズで会おう」
(意図=“場所と時間”だけの指示)
ではなく、
「ガソリン50%のフォードに乗り、
このルートを時速○kmで走り、
この標識で停まり、
また走って…」
と細かい手順を全て指定する世界です。
■ 未来は“手続き”から“宣言(Declarative)”へ
2030 年以降、Web3 の主流は 意図(Intent) に移行します。
例:意図
「明日までに、SNACK を、価格 X 以下で、200ドル分買いたい」
ユーザーはただこれを宣言するだけ。
これを満たすには?
- Cardano の DEX?
- Solana の DEX?
- Centralized Exchange(CEX)?
普通のユーザーは
どこで買われようが関係ない。
重要なのは:
- 条件
- 時間
- 価格
- 買いたい量
この4つだけです。
■ 意図を公開すると危険になる
「Xドル以下で買いたい」と公開したら:
- 前に回り込んで価格操作される
- 意図から個人情報を推測される
- 医療計画などを悟られる
例:医療関連の意図を複数出すと…
- 突然旅行予約がゼロ
- 医療記録を一括取得
- 保険契約を見直し
- 大病院への渡航予約
これらの意図を AI が分析すると
“あなたは癌の可能性が高い”
という結論が導けてしまう。
これこそ
未来の「ミランダ権」(あなたの意図はすべて利用される)
です。
■ Midnight は“世界の意図レイヤー”になる
意図には絶対条件があります:
- 透明性(検証可能)
- 秘密性(誰にも漏れない)
- 決定性(確実に実行される)
- 公平性(悪用されない)
Midnight はすべて満たします。
なぜなら Midnight は:
- すべてのチェーンと通信でき
- すべての意図を秘密に保持し
- 最も公平な場所へルーティングし
- 証明可能に結果を返す
- 価格予測可能な手数料(Dust)で実行でき
- 公平配布(Glacier Drop)で中央集権化されていない
だからです。
Midnight で意図を出すと:
- Cardano が最適なら Cardano へ
- Ethereum が最適なら Ethereum へ
- Solana が最適なら Solana へ
- Bitcoin が最適なら Bitcoin へ
ネットワーク側が最適な実行先を選びます。
■ これこそが暗号資産「第4世代」
チャールズ曰く:
Cardano にもない
Ethereum にもない
Solana にもない
Midnight にしかない
これが第4世代だ
■ 最後にチャールズの総括
私たちは:
- 6年以上の研究
- 数億ドルの投資
- 世界中の科学者・エンジニアの協力
- 暗号資産15年分の知見
を Midnight に込めました。
なぜか?
あなたの自由(価値・思想・表現・移動)を守るためです。
世界は:
- パンデミック
- 経済崩壊
- 政府不信
- 通貨価値下落
- 個人データの独占
に直面しています。
古い仕組みはもう信用できません。
Midnight は新しい社会インフラの基盤となる
暗号資産の最終世代です。
■ 結び
Midnight は間もなく
- 取引所
- ウォレット
- ノード
- 開発者ツール
として手元に届きます。
暗号資産の未来は
「中央集権 vs 分散」ではなく「フェア(公平)かどうか」
に移行します。
Midnight により、
我々は “不公平な世界” を終わらせ、
“公平な世界” を創る。
これはチャールズの
15年間の集大成です。
























