Cardano（ADA）のエコシステムでステーキングプールを運営する公式アンバサダーのCardaniansは、「プレマイニング」されたADAコインは中央集権の道具ともカルダノ（ADA）の持続可能性に対する脅威とも解釈されるべきではないことを詳細に説明する記事Myth busting: Pre-mined ADA is a big issue for Cardano」を発表しました。
この記事は、もしプロジェクトが事前に採掘された（プレマイニング）コインを持つなら、それは詐欺に違いないという神話を打ち砕くもので、ビットコインのPoWコンセンサスとカルダノのPoSコンセンサスを比較しながら、カルダノが「プレマイニング：採掘前」の議論だけで詐欺なのかどうかを検証してします。
この記事を読めばカルダノ（ADA）コミュニティはADA事前採掘供給について心配する必要はないことがわかります。
Cardaniansはツィートで次のように述べています。
プレマイニングされたADAコインがあるからといって、Cardanoは詐欺なのだろうか？
いいえ、IOGチームが公正な方法でコインを配布し、PoSネットワークはこれ以上ない、より良い方法で立ち上げられたからです。
この記事を読むと、分散化の観点からビットコインとカルダノADAのプレマインングのプロセスが詳細に解説されておりとても参考になりますので、興味がある方はぜひ下記の記事をお読みください。
以下はCexplorer.ioに掲載された記事「Myth busting: Pre-mined ADA is a big issue for Cardano」を翻訳したものです。
プレマイニングされたADAはカルダノにとって大きな問題という神話を打ち砕く by Cexplorer.io
by Cexplorer.io 2022年11月3日
もしプロジェクトが事前に採掘されたコインを持つなら、それは詐欺に違いないと主張する人がいます。唯一可能な公平なコインの分配は、採掘に参加した人に報酬が行くPoWコンセンサスです。ADAコインは2015年から2017年にかけて公的に販売されました。カルダノが「採掘前」の議論だけで詐欺なのかどうか見てみましょう。
TLDR
- 「プレマイニング」という用語は、コインが公開される前、および/またはブロックチェーンが立ち上がる前に採掘されるコインのことを指します。
- カルダノはプレマイニングされたADAコインを公平に分配していました。
- ビットコインは発売当初、あまり分散化されておらず安全ではありませんでしたが、誰も気にしていませんでした。現在では、ブロックチェーンは最初から安全でなければならないので、そう簡単に立ち上げることはできません。
- サトシは1,125,150BTCのコインを所有しています。このコインは事前に採掘されたものと考えていいのでしょうか？
- どのチームも、ブロックチェーン・ネットワークを構築するための報酬を得るに値します。
- VCファンドが初期コイン配布に参加することの意味を知ることは良いことだが、プロジェクトそのものに致命的な影響を与えないとも限りません。
- ADAコインの初期販売は中央集権的に行われましたが、この出来事が現在のCardanoネットワークの分散化に影響を与えたとは言えません。
- CardanoはPoSコンセンサスに切り替わった後、最初の日に分散化されたのです。
- ADAコインの初期配布を気にする人がほぼいないように、サトシのコインを気にしない人も多いのです。
ブロックチェーンを安全に立ち上げるには？
パブリックブロックチェーンを安全に立ち上げるのは、比較的複雑な作業である。サトシは簡単だった。ビットコインのネットワークが開始されたとき、彼と数人の友人しか知らなかったからだ。それは実験であり、もし最初の段階で失敗していたとしても、多くの人が経済的な損失を被ることはなかったでしょう。ハッシュレートの大きさから見て比較的容易であったにもかかわらず、誰も51％攻撃を試みなかった。多くの愛好家がノートパソコンでBTCの採掘を始めたが、コインの市場価値がなかったため、多くの場合、単なる楽しみであった。
採掘者は徐々に採掘に参加し、それに伴いハッシュレートも上昇しました。これは現在も同様で、ハッシュレートは上昇しているものの、マイニングに関わることが難しくなってきていることを除けば、同じです。そのため、小規模なマイナーは減少し、代わりに少数の起業家の手になる大規模なマイニングホールが建設されています。
今日は状況が違います。ブロックチェーンネットワークの立ち上げは、事実上いつ攻撃が来てもおかしくないので、より困難になっています。カルダノは、IOHK、Cardano Foundation、Emurgoの3つの団体が維持するわずか数台のノードからなる連合ネットワークとしてスタートしました。2020年にProof-of-Stakeコンセンサスに移行し、移行期間中にADAコインをユーザーに十分分配する必要がありました。
Bitcoinのように、数年かけて最小から最大まで徐々に成長させることはできないのだ。PoSへの移行期間中は、分散化とセキュリティを可能な限り高くする必要があり、プロジェクトの目標はセキュリティを維持し、理想的にはセキュリティを高め続けることです。
ビットコインのセキュリティと分散化が当初低かったことを気にする人はいませんでした。ビットコイン発売後、1ブロック採掘あたりの報酬は50BTCでした。サトシは1,125,150BTCを採掘し、現在に至るまで使っていない。合計22,500ブロックになる。Satoshiはおそらく2009年1月から7月にかけて自分で採掘したのでしょう（彼一人だとすると、これだけのブロックを採掘するのに156日かかる）。実は、チーム全員がサトシ・ナカモトというペンネームの後ろに隠れているかどうかはわからないが、それはあまり重要ではありません。
PoSに切り替わる前、Cardanoのテストネットに登録して自分のプールを始めようと思えば、誰でもできました。ADAコインのオーナーは、テストネットでステーキングを学びましだ。プールの運営者とステイカーが訓練されると、CardanoメインネットでのPoSへの移行が可能になりました。テストネットでは、人々はテストADA（tADA）を手に入れました。この報酬は、Cardanoのメインネットにいる人たちにも渡されました。
希望する人はADAコインを購入し、Cardanoネットワークの立ち上げに参加することができたのです。
プレマイニングコインとは何ですか？
「プレマイニング」とは、コインが公開される前、あるいはブロックチェーンが立ち上がる前に採掘されるコインのことです。プレマイニングとは、利害関係者にコインを販売する前に、内部グループのためにコインを作成するプロセスであり、実践でもあります。このプロセスは本質的に中央集権的であり、通常はブロックチェーン・ネットワークの立ち上げを計画しているチームによって管理されています。
プレマイニングは、新興企業の新規株式公開（IPO）前に、その従業員に株式を提供する行為に似ています。暗号通貨の世界では、開発などの資金調達のために、チームがコインの一部を保有することが一般的です。コインの一部は、利害関係者に売却されます。コインの売却が公正である限り、原則的にこのプロセスに問題はありません。
私たちの観点では、コインの売却は、すべての入札者にとって公平でなければなりません。もし、チームがコインのかなりの部分を自分たちとVCファンドのために確保し、その後、コインの総量のほんの一部しか一般販売に充てないのであれば、コインの公正な分配は語れません。例えば、あるチームがコインセールを数回に分けて行い、最初のラウンドにベンチャーキャピタルファンドや高額入札者だけを招待するようなことはダメなのです。最初のラウンドでは、その後のラウンドよりもコインが安くなる可能性があります。小資本の入札者は通常、コインの総数のうちわずかな割合を購入し、残念ながら最も高い価格で購入することになります。
どのようなプロジェクトでも、特に将来のユーザーにとって、コインの分配をできる限り公平にすることが目標であるはずです。初期コイン配布の問題点は、一番儲かる買い方が最初の短期間になりがちで、後から来た人は皆、何らかの不利益を被ることです。しかも、最初に買うのが一番有利だったという事実は、例えばブロックチェーンが登場した5年前や、一般販売でコインを配布した当初に比べて、コインの市場価値が高くなった現在の状況下で初めて明らかになります。
もちろん、プロジェクトの初期段階では、失敗のリスクはより高くなります。カルダノで言えば、最初にコインを公売で流通させた関係者が最も高いリスクを負ったと言えます。今日コインを購入する人は、カルダノのネットワークが機能し、チームが最初に約束したものを提供したことを確認できるため、リスクは少なくなります。
多くのプロジェクトでよく非難されるのは、VCファンドの参加で、プロジェクトが約束したものを提供した時点でコインを投棄してしまうことです。後から来た入札者が購入することで、コインの市場価値は数倍になったかもしれません。VCファンドは、プロジェクトのマーケティングやプロモーション、場合によってはパートナーシップに協力することができます。VCファンドがコインの最初の配布に関わった場合、彼らにとって利益が出たときにコインを売却するリスクは常に存在します。コインの市場価値の下落は劇的なものになる可能性があります。
VCファンドの参加の意味を知ることは重要です。しかし、プロジェクトそのものに致命的な影響を与えるとは限らないということは重要です。十分な数のユーザーを集めれば、プロジェクトはこの局面を乗り越え、成功することができます。コインを所有することが経済的に意味を持つようになれば、コインの価値は再び上昇する可能性があります。これは個人でも可能であり、通常、コインがコンセンサスの意思決定力を分配するため、つまりプロジェクトを分散化するために使われる場合には有利となります。
採掘前のADAコインの販売
Cardanoは採掘前のADAコインを公平に分配していた。ADAバウチャーの配布は、2015年10月から2017年1月の開始までの間に、アジアで4段階に分けて行われました。将来起こりうる問題を回避するため、Know Your Customerのガイドラインに従ったのです。暗号通貨の分野では初めてのことでした。さらに、配布プロセスについても監査が行われました。VCファンドは明確に招待されておらず、私の知る限りでは参加しませんでした。
25,927,070,538枚のADAコインが一般に販売されました。これは、最大供給量である45,000,000,000 ADAコインの約57%にあたります。Genesisブロックでは、3つのエンティティにADAコインを配布しました。Cardano Foundation、Emurgo、IOG (IOHK)の3団体に配布されました。Cardano Foundationは648,176,761 ADAを、Emurgoは2,074,165,644 ADAを、IOGは2,463,071,701 ADAを受領した。売却により108,844.5BTCを稼ぎました。8,000BTC以上がCardano Foundationに寄付されました。
プロジェクト開始時点で、合計31,112,484,646 ADAが配布されました。13,887,515,354枚のADAコインは、現在貨幣拡張（報酬とプロジェクト金庫）によって解放しているCardanoプロトコルのために予約されていました。
ADAコインの最初の販売は中央で行われたが、この出来事が現在のCardanoネットワークの分散化に影響を及ぼしたというわけではない。Cardanoは、ADAコインを保有する人々によって所有されています。ADAコインは、プールを作るため、またプールに権限を委譲するために重要である。ブロック生成という点では、Cardanoは完全に分散化されたネットワークである。ADAコインの初期販売により、分散化が確保されたと言えます。PoSブロックチェーンを立ち上げるのに、これ以上の方法はないでしょう。CardanoはPoSコンセンサスに切り替わった後、最初の日に分散化されました。IOGチームはいくつかのプールを運営したましたが、それを批判することはできません。ブロックチェーンが立ち上がった後、しばらくは世界で唯一BTCを採掘していたサトシを批判するのと同じことです。ネットワークがスムーズに動くようにするのは、チーム以外の誰がすべきなのでしょうか？
プレマイニングされたコインを本当に気にする人はいるのでしょうか？
私たちの観点では、採掘前のADAコインはCardanoにとって問題ではありません。CardanoはADAコインを公平に分配していましたし、PoSはおそらくこれ以上ない方法で立ち上げることができたと思います。昔コインを買った人、今コインを買っている人に迷惑がかからないのであれば、誰が本当に気にするのでしょうか？
プレマインドのコインを最も批判しているのは、PoWネットワークのファンで、コインを分配する唯一の公平なシステムはPoWだと考えています。ビットコインの場合、事前に採掘されたコインはなく、報酬として、つまり採掘によってのみ手に入れることができます。
忘れてはならないのは、サトシは当初BTCを自分で採掘していたので、彼のコインは事前に採掘されたものと考えることができることです。サトシはハッシュレートを提供する報酬としてそれらを手に入れましたが、他の誰も持っていなかった優位性について話すことができ、ラップトップを半年間フルパワーで稼働させても経済的に高くはありませんでした。サトシは21,000,000BTCのコインの5%以上を永遠に所有することになります。どのチームも、ブロックチェーン・ネットワークを作り上げたのだから、報酬を得るに値します。サトシはIOGチームと同様に報酬を手に入れました。それぞれ異なる方法で、しかし、ある方法が他より優れていると言うのは公平ではありません。あえて言えば、Cardanoの場合にADAコインの初期配布を誰も気にしないように、サトシのコインを気にしない人が多いということです。なぜそう考えるのか。多くの新規参入者は、過去にあまり関心がなく、現在と未来に関心があるのです。ほとんどの新参者はBTCの採掘を始めないでしょう、それは今の起業家のためのビジネスだからです。その代わり、彼らは中央集権的な取引所でBTCを買う。新規参入者がコインを買わざるを得ず、ビットコインプロトコルからの報酬としてコインを得る方法がない場合、なぜ事前に採掘されたコインを気にする必要があるのでしょうか？
人々がADAコインを買うのは、ほとんどがステーキングのためです。彼らは報酬として新しいADAコインを手に入れたいと思っているのです。それは、ネットワークの分散化に対する関心と見ることができます。ASICマイナーの購入は、基本的に非常に似た原理です。人々は、報酬を得る資格を得るために最初に投資しなければなりません。
もし誰かがADAコインを買ったとしても、おそらく彼らはコインの初期配布について知っていて、それを批判することはないでしょう。人々は、まず自分の利益に関心があり、社会の福祉は二の次なのです。「コインが事前に採掘されたのだから詐欺に違いない」という議論よりも重要なのは、プールの運営やステーキングの報酬といったもので、次いで分散化の質、実社会での利用、プロジェクトのミッションやビジョンが重要です。
IOGチームは、現在もCardanoプロジェクトに取り組み、新たな改良を加えています。このプロジェクトは2014年に始まり、多くの学術的研究、リキッドステーキングによるPoS、まだハッキングされていないPlutusプラットフォーム等を生み出してきました。IOGチームには数百人の社員がいます。ソフトウェア開発は非常に高価なプロセスであり、開発資金がなければ、カルダノは今のような形では存在しないでしょう。
まとめ
ビットコインの誕生におけるサトシの貢献を減殺するつもりはありませんが、彼が基本的に既存の技術を組み合わせただけであることを忘れてはならない。PoW、非対称暗号、ブロックチェーン、分散ネットワーク、ハッシュ関数など、それらを繋ぐだけの要素で十分でした。結果は見事でしたが、新しいものを開発するために投資する必要はありませんでした。IOGチームの仕事のおかげで今日あるものは、事前に採掘されたADAに投資する価値が間違いなくありました。
ビットコインのローンチの魔法はPoWにあります。ラップトップを走らせ、報酬を待つだけです。サトシはおそらく、最初のコイン配布で問題にぶつかるので、PoSネットワークを立ち上げることができなかったのでしょう。プールの運営やステーキングには、コインの所有権が必要です。サトシが興味のある人にしばらく無料でコインを送り、他の人は後で公開市場で買わなければならないとしたら、公平ではないだろう。チームがブロックチェーンを別の方法で立ち上げたことを理由にCardanoを批判するのは愚かなことです。他にも多くのネットワークがあり、ハッカーが攻撃に備えている時代にPoSブロックチェーンを稼働させるには、2009年とは異なるアプローチが必要だったのです。IOGチームはそれを正しく行い、事前に採掘されたADAコインも問題ない。少なくとも、多くの評論家が考えているほど大きな問題ではありません。
