IOGがカルダノの最強スケーラビリティ・ソリューションの一つであるHydraファミリー・プロトコルから、カルダノ・エコシステムで決済ソリューションを実装するためのオープンソースの開発者用ツールである「Hydra for Payments」を発表しています。
この記事では、 Cardanoのマイクロペイメントをアンロックする開発者用ツールである『Hydra for Payments』について紹介しています。
以下はIOGブログに掲載された記事「Hydra for Payments – introducing developer tooling to unlock micropayments on」を翻訳したものです。
Hydra for Payments – カルダノのマイクロペイメントをアンロックする開発者用ツールの紹介
by Obsidian Systems 2022年11月10日
IOGはObsidian Systemsチームと協力し、Hydra Headプロトコルに基づくユースケースの開発を推進しています。Hydra for Paymentsはそのようなユースケースの1つです。
はじめに
スケーラビリティは、ブロックチェーンが手数料や取引決済時間を大幅に増加させることなく、数百万件の取引を処理できるようにするための鍵です。スケーラビリティの問題に対処することは、カルダノのの設立理念の1つであり、Basho開発フェーズの焦点となっています。
カルダノのプラットフォームは、レイヤー1の強化を実施することでメインチェーンの処理能力を向上させ、さらにメインブロックチェーンから独立して動作する処理能力を追加すること、つまりレイヤー2のソリューションによって拡張されることになります。これらのソリューションは、ネットワーク性能を向上させ、より高いスループットと低い取引処理コストを提供します。
Hydraファミリーのプロトコルは、カルダノのレイヤー2スケーリングの重要なコンポーネントの1つです。Hydra Headは、この一連のプロトコルの最初のものです。このプロトコルは、さらなるスケーラビリティを構築するための土台となるものです。Hydra Headは、比較的少数の参加者間のオフチェーンマイニッジャーで、メインのオンチェーン台帳と同様の働きをしますが、より高速です。
ここでは、Hydra for Paymentsを紹介します。これは、Cardanoエコシステムで決済ソリューションを実装するためのオープンソースの開発者用ツールです。
Hydra for Paymentsの紹介
Hydra for Paymentsは、様々な決済のユースケースにおいてHydra Headプロトコルの使用を簡素化します。第一世代のライトウォレット機能が基本的なネットワークアクセスを可能にしたように、Hydra for PaymentsはCardanoエコシステムにおけるマイクロペイメントのパワーを解き放ちます。
Hydra for Paymentsは、ライトウォレットの開発者にツールキットを提供し、Hydraファミリーのプロトコルを継続的に活用して、ユーザーのニーズに合った製品を作り、運用コストを削減し、拡大するカルダノネットワークでより高いスループットを可能にします。
開発者が使いやすいようにする一方で、Cardanoの多様なウォレットプロバイダーに対応できるよう柔軟性を保つよう努めます。
Hydra for Paymentsは後のフェーズで、ライトウォレットプロバイダーが必要とする基本的なバックオフィスインターフェースを含む予定です。
- 独自のHydra Headサービスを維持する
- ノード・インフラストラクチャの検査
- オペレーションの大幅な拡大
- このようなサービスを他者に提供する
HydraがCardanoの全体的なスケーラビリティ戦略の一部に過ぎないように、Hydra for Paymentsも最終的にはレイヤー2ライトウォレットの大きなストーリーの一部を形成することになるでしょう。
Hydra for Paymentsの特徴
- 利用可能: Hydra for Paymentsはオープンソースで、今日からアクセス可能です。
- 親しみやすい::レイヤー1とのインタラクションは簡単で、開発者が習得すべき新しいコンテキストやテクニックを導入することはありません。
- 速い:トランザクションは、ノードが通信するネットワークの速度によってのみ制約される傾向があります。
- シンプル:Hydraの同型性により、Hydra for Paymentsは開発者に大きな実装の複雑さをもたらしません。
- アイソモーフィック:同型のデザインは、既存の開発者用ツールをほとんど変更することなく再利用することを可能にします。
Hydra for Paymentsツールキットの開発を通じて、2つの視点が共存し、並行して進行していきます。
- まず、Hydra Headの一般的なプロトコルで説明されている技術的な基礎は、Hydra for Paymentsでも確実に維持されるよう、継続的に検証される予定です。これは、信頼性、安全性、正確性に関わることであり、特に重要です。
- 第二に、ライトウォレット開発者の実用的な配慮は、ツールキット全体に浸透しています。機能は常に、開発、配備、および維持が合理的であるように設計されます。Hydra for Paymentsが統合されれば、ライトウォレット開発者の運用コスト、インフラの監視能力、そしてユーザー体験の向上が大幅に改善されるでしょう。
Hydra for Payments カルダノ
図1. Hydra for PaymentsとHydra Headsによるライトウォレットの基本的な統合
現在、さまざまなレイヤー2ソリューションが存在し、また設計・開発中です。複数のアプローチが熱心に議論され、あるいは支持されていますが、実装や展開にはほど遠い状態です。
サイドチェーンとロールアップは、開発コスト、市場投入までの時間、セキュリティ、および初期実装の複雑さに関する異なるトレードオフを提供しながら、特定の問題セットを解決するための素晴らしい候補です。例えば、これらのソリューションの中には、明示的なアセットブリッジを必要とし、開発者が考慮すべき全体的な攻撃対象が増えるというトレードオフがあります。同様に、同型でないソリューションは、メインネットのセマンティクスから乖離するため、開発者のオーバーヘッドを増加させます。
Hydra for Paymentsのロードマップ
当初、APIはHydra Headプロトコルのプリミティブとドメインを直接マッピングし、Headの便利な操作を提供する予定です。時間の経過とともに、また開発者がHydra for Paymentsを統合するのに応じて、特定のマイクロペイメントのユースケースに対応する特別な、または補助的な機能を追加していく予定です。
Q4 2022
Hydra for Paymentsのツールは、開発者がクレデンシャル(ユーザ等の認証に用いられる情報)を管理し、Hydra Headのライフサイクル全体を管理し、共通の便利なインターフェースを通じてHeadと対話することを支援するために、徐々にロールアウトされる(アジャイル方式)予定です。
Hydra Headプロトコルは第4四半期にいくつかの重要な機能強化が行われますが、これは初期のHydra for Paymentsインターフェースにはすぐには影響しないでしょう。
Hydra for Paymentsの機能デモの部分は、あるグループがHeadにオプトインして比類ないスピードとコストで資産を転送することを可能にする限定的な高速決済システムに焦点を当てる予定です。
標準規格
ライトウォレットの開発者が軽量な汎用DApp接続のためのCIP-30標準の恩恵を受けたように、HydraベースのソリューションはHydraインフラストラクチャを管理するための標準の形成の恩恵を受けるはずです。これは最終的にエンドユーザーのニーズを満たすためにレイヤー2のDAppsと対話することを可能にします。
このような標準の議論や形成に参加するだけでなく、Hydra for Paymentsは、進化する標準が実用的であることを保証する共有リファレンスを展開・作成することで貢献します。
2023
今後、私たちはHydraプロトコルの新機能や機能強化、そしてHydra for Paymentsでの積極的な利用を継続的に見ていくことになるでしょう。初期の例としては、Hydra for Payments の完全実装で、既存のオープン・ヘッダでの資金のコミットおよびデコミットの機能が追加されるでしょう。これにより、ユーザーが資産を追加したり引き出したりしている間、支払いチャネルを開いたままにしておくことができます。
将来的には、既存の消費者向けライトウォレットにHydra for Paymentsを完全に統合することができます。これは、専用のHydra-Head-as-a-Service製品の発売を伴う可能性があり、全体的な運用コストを比較的低く抑えながら、ライトウォレットの開発者の市場投入までの時間をさらに短縮することができます。
単一のHeadと相互作用する新機能の検証を続ける中で、初期実装と星型Headネットワークトポロジーの使用への移行を検討する可能性があります。Hydra Headの初期段階から得られた教訓は、Hydra for Paymentsを迅速に拡張してヘッド間通信などの新機能を統合できるようにするために適用されます。この初期の例としては、Hydra Headを接続して適切なHydra Headネットワークを形成し、ほぼすべての決済ユースケースで改善されたユーザーエクスペリエンスをもたらすことができるかもしれません。
最後に、ツールキットが成長するカルダノのエコシステムとともに進化するためには、コミュニティからのフィードバック、議論、および貢献を蓄積することが重要です。
もっと知りたいという方は、Hydra Discordチャンネルに参加して、さらに議論を深めてください。