*【SIPOからの投票変更とその理由】を追加しました。2025年4月24日
DRep SIPO:2025年ネット・チェンジ・リミット(NCL)に関する2つの提案についてSIPOの投票理由

🗳️【SIPOからの投票表明と理由】
2025年ネット・チェンジ・リミット(NCL)に関する2つの提案について
Cardanoコミュニティの皆さまへ
DRepを務めますSIPOより、2025年度のネット・チェンジ・リミット(NCL)に関する2件の提案に対して、私がどのような理由で投票判断を行うかをご説明いたします。
なお、今回の「ネット・チェンジ・リミット(NCL)」について、SIPOによる詳しいレポートと解説を提出させていただいておりますので、こちらのの方も合わせてご覧ください。
コミュニティ提案への✅賛成票について
コミュニティ提案(2025年300M ADA/2026年250M ADA)の概要
🔹 提案名称
Set 2025 Net Change Limit of 300M ADA, 2026 Net Change Limit of 250M ADA
(2025年ネット・チェンジ・リミット=3億ADA、2026年=2億5,000万ADA)
🔹 提出日・ID
- 提出日:2025年3月17日(Epoch 546)
- ガバナンスアクションID:gov_action10ueqgzwenxr39le68n0se9peu92r7gm2846xwehh3u0ahc0qd0uqqyljxu5
- Adastatリンクはこちら
🔹 提案の目的
この提案は、Cardanoのトレジャリーから引き出すことのできる年間最大額(=ネット・チェンジ・リミット:NCL)を事前に定めておくことで、予算制度全体の健全性と透明性を確保することを目的としています。
🔹 内容と特徴
年度 | 上限額(NCL) | 補足 |
---|---|---|
2025年 | 300M ADA | 予測されるトレジャリー収入(同年)にほぼ一致 |
2026年 | 250M ADA | より保守的な枠に設定。先を見越した構造 |
主なポイント:
- 収入に見合った支出上限の設定 → トレジャリー収入に合わせて、支出上限もコントロールしようという「収支バランス型」の設計です。
- 複数年にわたる計画性 → 2025年だけでなく、翌年(2026年)の上限も提示しており、長期的視点での財務戦略を志向しています。
- 柔軟な姿勢 → 提案文中では「必要に応じて、将来的に上限を引き上げる別提案も可能」と明言しており、硬直した方針ではありません。
- ガバナンスプロセスへの信頼 → 提案者は、IOGやCF、EMURGOなどの公式組織とは無関係のコミュニティ有志であり、非中央集権的な姿勢を示しています。
🔹 想定されるメリット
- 過剰支出の抑制と財務の健全性確保
- トレジャリーの長寿命化と戦略的活用
- 予算プロセスの予測可能性向上
- コミュニティベースの意思決定強化
🔹 提案の批准条件(ラチェット)
- 提案は、DRepによる67%以上の支持を目安にしています(実際には過半数+1 ADAで可決可能だが、より強い正統性を求める姿勢)
この提案は、NCLという制度の趣旨をよく理解し、それをCardanoの長期的発展とエコシステムの安定性に活かそうとする意図が明確に示されたものです。
予算における「責任」と「柔軟性」のバランスを重視する方針に共感するDRepsやコミュニティメンバーから、広く支持を得つつあります。
✅【賛成】コミュニティ案(2025年 300M ADA/2026年 250M ADA)
SIPO(エポック551)として、「Set 2025 Net Change Limit of 300M ADA, 2026 Net Change Limit of 250M ADA」というコミュニティ提案に賛成票を投じることを決定しました。
https://adastat.net/governances/7f320409d9998712ff3a3cdf0c9439e1543f236a3d746766f78f1fdbe1e06bf800

この決断の理由は以下の通りです:
- 継続的な財政健全性の重視:この提案は2025年に3億ADA、2026年に2億5000万ADAという段階的な引き出し上限を設けています。これは財務への年間流入量と同等かそれ以下のレベルであり、財務残高を維持または増加させる保守的なアプローチです。
- 長期的な予測可能性の確保:2年分のNCLを同時に設定することで、エコシステムの参加者に対して中期的な予測可能性を提供します。これはプロジェクト計画や投資判断において重要な要素となります。
- 柔軟性の確保:提案者たちは「より高いNCLが必要とされる場合は新たなガバナンス提案で対応可能」と明記しています。つまり、この提案は硬直的な制限ではなく、将来の状況変化に応じて調整できる柔軟性を備えています。
- コミュニティ主導のアプローチ:この提案はコミュニティメンバーから直接提出されたものであり、ボトムアップの意思決定プロセスを体現しています。これはカルダノの分散型ガバナンスの理念に沿うものです。
予算委員会提案への❌反対票について*こちらは以下の理由で賛成に変更しております。
*重要なお知らせ:2025年4月24日、SIPOとして予算委員会提案(2025年 NCL:350M ADA)投票に対して、判断を「反対」から「賛成」へと変更することにいたしました。その理由を下段に掲載しておりますのでご覧くださいませ。
予算委員会提案(2025年 NCL:350M ADA)の概要
🔹 提案名称
Set 2025 Net Change Limit of 350M ADA
🔹 提出日・ID
- 提出日:2025年3月26日(Epoch 547)
- ガバナンスアクションID:gov_action1nd3t833j7v5sz65k3tp9yyvztw60sjcjgcgjr37682s3m7frwrusqmd2k80
- Adastatリンクはこちら
🔹 提案の目的
この提案は、2025年のCardano財務(トレジャリー)からの年間最大出金額(NCL)を3億5,000万ADA(350M ADA)に設定することで、予算アクションや引き出しアクションの上限基準を定めることを目的としています。
このNCLが可決されることにより、以降の予算プロセス(各種提案や支出)がCardano憲法に準拠して合法と見なされる条件が整います。
🔹 内容と特徴
年度 | 上限額(NCL) | 補足 |
---|---|---|
2025年 | 350M ADA | Epoch 532〜Epoch 604(12月末までの72エポック)に適用 |
2026年 | 記載なし | 別途提案予定、今回の提案には含まれない |
主な特徴:
- 前年の実績に基づいた提案 → 2024年の実際のトレジャリー収入(約336M ADA)に基づいて設定。 → モデル値(351M ADA)と±5%以内で一致していることから、350M ADAは妥当であるとの判断。
- 2025年の予算期間(Epoch 532〜604)を明示 → 約1年間に相当(2025年1月〜12月末)
- 支出の最大枠を確保 → エコシステム成長に向けた柔軟な予算対応を可能にすることが意図されています。
- 予算行動と憲法の整合性を担保 → NCLが定まっていない限り、予算アクション自体が違憲と見なされるため、制度上の必要条件としてNCLが要求されていることが強調されています。
🔹 提案の動機(Motivation)
- 憲法第IV条3項の要件に従い、予算提出前にNCLの設定が必須
- 過去のトレジャリー収支に基づき、現実的な上限ラインを導入
- 「前年に貢献した分を、翌年に最大支出可能額として設定する」ことで、プロジェクトによる貢献インセンティブを形成
🔹 想定されるメリット(提案者の立場)
- 実績ベースの透明性ある設定
- 予算活動のフル活用と拡張性
- 憲法と整合性のある正式プロセスの確立
🔹 懸念点(コミュニティ内で指摘されている論点)
- 支出上限が高すぎる(350M ADA) → 年間収入(約300M ADA)を大幅に上回る点が「財政的に非保守的」として批判あり
- 単年度しか設定されていない → 2026年以降の継続性が不透明。中長期的な予算戦略が見えないとの声
- 柔軟性が見られない → 「上限再調整の仕組み」や「シナリオ別対応策」の提示がなく、硬直的と捉えられる可能性
✍️ 補足:投票における閾値
この提案は、有権DRepステークの過半数(50%+1 lovelace)によって可決されます。
ただし、一部コミュニティでは「財政に関わる提案は67%以上の支持が望ましい」とする声もあります 。
❌【反対】予算委員会案(350M ADA)
「2025 Net Change Limit」という予算委員会案には反対票を投じることを決定しました。
https://adastat.net/governances/9b62b3c632f329016a968ac25211825bb4f84b12461121c7da3aa11df92370f900

この決断の理由は以下の通りです:
- 過度に高い上限設定:3億5000万ADAという上限は、予想される財務流入額を上回る水準であり、財務残高の減少につながる可能性があります。持続可能性の観点から、支出は収入を超えるべきではないと考えます。
- 単年度のみの視点:この提案は2025年のみを対象としており、より長期的な視点が欠けています。エコシステムの健全な発展には、中長期的な計画と予測可能性が重要です。
- 財政規律の懸念:より高い上限設定は、「予算があるから使う」という傾向を助長する恐れがあります。NCLは上限であって目標ではありませんが、実際の運用では上限いっぱいまで使用する圧力が生じることが懸念されます。
- 持続可能性への配慮不足:財務は将来世代のためのものでもあり、現在のニーズと将来の可能性のバランスを取る必要があります。コミュニティ提案の段階的な減少アプローチは、この世代間の公平性をより反映していると考えます。
🗳️【SIPOからの投票変更とその理由】2025年 NCL:350M ADA(予算委員会提案)
2025年ネット・チェンジ・リミット(NCL)に関する予算委員会提案(350M ADA)について
Cardanoコミュニティの皆さまへ
これまで「反対」の立場を取っていた「2025年 NCL:350M ADA(予算委員会提案)」に関して、状況の変化を受けて、「賛成」へと投票判断を変更することといたしました。
🎯【変更の背景と理由】
私たちは当初、「より保守的かつ長期的視点を持つコミュニティ提案(300M / 250M ADA)」を支持しておりました。
しかし、その提案は惜しくも不成立となりました。
その結果、このまま350M ADA案も否決されてしまうと、予算制度全体が前に進まず、2025年の予算プロセスが大きく停滞するリスクが現実のものとなっています。
特に以下の点を重く見て、投票判断を改めました:
- 予算アクションが実行不可能となる恐れ NCLが設定されていない限り、Catalystを含むすべての支出提案は実行不能です。
- 中小開発者の資金難とプロジェクト停滞 IOG等大手は自前のリソースで一定期間持ちこたえられるものの、多くの中小ビルダーや新興プロジェクトはNCL未設定による遅延により、深刻な影響を受けかねません。
- エコシステム全体への信頼低下 ガバナンスプロセスが停滞し続ければ、外部からの信頼性にも関わる重大な問題です。
🛡️【今後に向けた姿勢】
私SIPOは、NCL=支出の「最大上限」であり、必ずしも使い切る必要はないという原則を改めて強調した上で、今後も以下の立場を堅持してまいります:
- トレジャリーの持続可能性を守ること
- 中長期的な財政戦略の確立を求め続けること
- 次年度以降の段階的なNCL提案や、収支バランス型設計の再提起
✅【現在の投票判断】
- 2025年 NCL:350M ADA(予算委員会提案) → ❌ 当初:反対 → ✅ 現在:賛成

私SIPOの判断は、理想と現実のバランス、そしてエコシステム全体への影響を総合的に勘案したものです。
引き続き、Cardanoの持続可能で健全な発展に貢献できるよう、責任あるDRepとして行動してまいります。
SIPO|CARDANO SPO & DRep
エポック553|2025年4月24日
総括

私SIPOの投票判断は、カルダノエコシステムの長期的な健全性と持続可能性を最優先に考えたものです。2つの提案の間には大きな金額差はなく(5000万ADA)、どちらもあくまで「上限」設定であることを理解していますが、その根底にある財政哲学と将来への視点に重要な違いがあると判断しました。
コミュニティとして、財務の責任ある管理を通じて、カルダノの長期的な成功に貢献できることを願っています。
※なお、これは私たちの判断根拠の説明であり、各DRepやステークホルダーが自身の分析と価値観に基づいて独自の判断を下すことを尊重します。
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シリーズ連載:進化するカルダノ・ベーシック
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SIPOはDRepへの登録と活動もしております。もしSIPOの活動に興味がある方、DRepへの委任方法について知りたい方は以下の記事をご覧ください。また委任もぜひお願いいたします。
SIPOのDRepとしての目標と活動方針・投票方法
SIPOのDRep投票履歴:https://sipo.tokyo/?cat=307
ダイダロスの方は最新バージョン7.0.2で委任が可能になりました。
SIPOのDRep活動にご興味がある方は委任をご検討いただければ幸いです。
DRep ID:
drep1yffld2866p00cyg3ejjdewtvazgah7jjgk0s9m7m5ytmmdq33v3zh
ダイダロス用👇
drep120m237kstm7pzywv5nwtjm8gj8dl55j9nupwlkapz77mgv7zu7l
二つのIDはダイダロス以外のウォレットではどちらも有効です。ADAホルダーがSIPOにガバナンス権を委任する際に使用できます。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。