ソリューション・サービスとしてのHydra Headと今後の展開と展望
Hydra HeadをHaaSとして提供
Hydra Headは、当初語られていたカルダノのブロックチェーンのスループットの向上をもたらすための位置づけという観点だけではなく、現在のエコシステムの急速な発展に伴い、エンドユーザーの膨大なニーズに少しでも早く対応するためのソリューション・サービスとして提供されます。
Hydra Headは、カルダノエコシステムにおいて必要とされるサービスに基づいて運用されることになり、そのサービス提供者がHydra Headを*HaaS『HaaSはHead as a service』として提供することになります。
*HaaS:利用者が構築する業務システムなどに応じて、必要なOSをインストールして利用する、サーバ、ストレージ、ネットワーク回線など、システム構築に必要なハードウェアを提供するクラウドサービスのことですが、IOGは『HaaSはHead as a service』という言葉から、HaaSという表現をしています。SPOの1JPNさんよりご指摘いただきましたので、訂正追加させていただきます。意味合いとしては同じようなものになります。
これによりカルダノのスケーリングと最適化の恩恵はより早くエンドユーザーに届けられることになり、カルダノネットワークにおけるエンドユーザーの満足度を大きく引き上げることになりそうです。
カルダノの現在地:「Basho:芭蕉期」のスケーリングとネットワークの最適化
科学と理論をベースに構築されているカルダノのロードマップは現在「Basho:芭蕉期」にあります。
「Byron:バイロン期」でスケーラブルで汎用性が高く、高スループットのブロックチェーンの基礎を築きました。
「Shelley:シェリー期」でカルダノが分散化を最適化するまでに必要となる初期の重要なステップを網羅し、多くのノードがカルダノコミュニティによって実行される方向にシフトしました。これによりカルダノは分散性を高め、結果として安全性と堅牢性が高まりました。
「GOGUEN:ゴウグエン期」では、待望のスマートコントラクトやネィティブトークンの実装により、分散型アプリケーションの開発とリリースがカルダノメインネット上で可能になりました。
そして、現在の「Basho:芭蕉期」はスケーリングとネットワークの最適化が行われています。
Hydraのより完全なビジョン
その中でHydraプロトコルファミリーは、そのための重要なコンポーネントです。IOGはブログでHydraの完全なビジョンに向けた最初のステップとして、Hydra Headsの実装に関する記事を公開しました。
この中でカルダノのスケーリングの旅において重要な要素であり、一連のプロトコル最適化の最初のものであるHydra Headが、現時点で『スケーリングと最適化』の全体像の中で、どのように位置づけられるかを発表しています。
また、この記事では、Hydraのエンジニアリングチームが、現在の進捗状況、アプローチ、そして短期および長期のロードマップの概要を説明しており、いくつかの誤解を解き、その利点を明らかにし、開発上の課題についても考察しているので、これを解説していきます。
Hydraとは?
現在、Hydra Headのプロトコルは、2020年当時の最初のアイデアを基に、Hydra Headプロトコルはプルーフオブコンセプトへと成熟し、TestNet MVPのためのより明確な実装に向かいながら、その成熟は続いています。
Hydraは、ネットワークのセキュリティとスケーラビリティ機能に対処するために設計されたレイヤー2ソリューションです。
Hydraは、スループットの向上、レイテンシーの最小化、およびストレージを大幅に必要としないコスト効率の高いソリューションを提供します。
Hydraは一つの独立したオフチェーンミニ台帳
記事はHydra Headについて次のように詳しく説明しています。
Hydra Headには、ピア間の強固なネットワーク層と統合されたカルダノ元帳だけでなく、Hydra Headのライフサイクルを駆動するいくつかのオンチェーンスクリプト(スマートコントラクト)も含まれており、Hydra Headは、証明可能で安全な同型のステートチャンネルであると述べています。
さらに、簡単に言えば、限られた参加者間のオフチェーンミニ台帳で、オンチェーンメイン台帳と同様に(かなり高速にではありますが)機能するものであると説明しています。
Hydra Head自体が一つのチェーンであり、これ自体で取引をコントロールできるという意味ですね。
また、そのため、Hydra Headの参加者は通常の取引に必要な承認によって取引が完了するので、この承認をしなければいつでも、取引をすることも止めることもできるので、資金を失うことはなく、安全な取引環境を提供するものであると説明しています。記事ではさらに次のように説明しています。
Headを形成するとき、参加者はそのHeadに資金をコミットすることができます。これは、特定のルールの下で資金をロックするスクリプトアドレスにオンチェーンで資金を移動させることを意味します。スクリプトは、オンチェーンでのプロトコルの安全な実行を保証し、特に、参加者が互いに不正を行えないことを保証するものです。
しかし、参加者はいつでも、Headを閉じることによってHeadを終了することを決定することができます。この場合、すべての参加者は、オフチェーンで合意した最新の状態を自分の並列ネットワーク上に残して立ち去ることになります。
続けて記事では、Headは、参加者が自分のチップを持ち込んでゲームをする「プライベート・ポーカー・テーブル」だと考えてもらえるとわかりやすいとして次のように説明しています。
参加者は好きなだけプレイすることができます。もし誰かがプレイしなければ、ゲームは進行しません。しかし、参加者がチップを持ち帰ることは自由です。その場合、ゲームは現在の富の配分で終了します。
テーブルのディーラー(オンチェイン・スクリプト)は、人々がルールを守り、不正をしないようにすることで、最終的に、投入されたチップと同数のチップが排出されますが、ゲームの過程で再配布される可能性があります。最終的な結果はテーブルの外でもわかりますが、ゲーム中に起こったすべての行動の履歴は、参加者だけが知っているという仕組みになっています。
Hydraを正しく理解するためのスケーラビリティの指標
IOGはHydraに関する誤解について説明しています。
”Hydraをカルダノのスケーラビリティのための「究極の」ソリューションと位置づける論評を多く見かけますが、スケーラビリティの旅路において重要な要素ですが、最終目的地ではない”と述べています。
また、スケーラビリティの指標について誤解があるとして、ブロックチェーン間の比較の手段として使う上で、単にTPSのみで測るのは、意味がなく、スケーラビリティを検討・議論するための重要な指標として、スループットだけでなく、ファイナリティやコンカレンシーにも目を向けるべきだと説明しています。
- スループット:一定時間内にシステムで処理されるデータ量
- ファイナリティ:ある行動の結果が、システム内の全員にとって不変かつ真実になるまでにかかる時間
- 並行性(同時実行性):異なるアクターが互いにブロックすることなく実行できる作業量
2020年に行われたハイドラヘッド・プロトコルの最初のシミュレーションでは、「1000TPS」という非常に有望な結果が示唆されたましたが、現在、スループットとファイナリティの観点から、実際の実装をベンチマークしているところであると説明しており、これはとても興味深いものになるでしょう。
カルダノのスケーラビリティレイヤーを構築するための強力な基盤であるHydra Headは、Extended Unspent Transaction Output(EUTXO)モデルのパワーを活用し、その上にさらに複雑なソリューションを実現するための不可欠なビルディングブロックであり、競合しないトランザクションを同時に処理することができ、優れたネットワークと相まって、利用可能なリソースを最適に利用することができるとしています。
Hydraのロードマップ
Hydraのロードマップとして、最初のバージョンは小さな参加者グループが低コストでトラフィックを拡大できるようになりますが、カバーできるユースケースのセットが限られているようです。記事はグローバルな消費者間(マイクロ)決済やNFT販売に対するソリューションをすぐに提供できるわけではないと説明しています。
これを拡張するためには、少なくとも何らかの追加的なエンジニアリングの努力なしにはスケールしないと述べており、現在カルダノはいくつかのアイデアを探っています。
それについては次のセクションで、また将来のアップデートでさらに詳しく説明するとのこと。
Hydra Head同士の相互接続の可能性
では現在どんなアイディアがあるのでしょうか?そのアイディアの一つを次のように説明しています。
例えば、Hydra Headプロトコルを拡張するアイディアの中に、Hydra Headの相互接続があります。これにより大きな参加者のネットワークへの道を開き、事実上ローカルなHeadをグローバルなネットワークに変えることになります。
確かにHydra Head同士の相互接続の実現は、カルダノ全体のスケーリングと最適化によりダイナミックで大きな影響をもたらすかもしれません。これはとても楽しみですね。
どのような場合にHydra Headが役に立つのか?
記事では”Hydra Headは、少人数の参加者が多くの素早いやり取りを処理する必要があるときに輝く”と説明しています。
例えば、従量制のAPIサービス、銀行間のプライベートネットワーク、売り手と少人数の入札者との間の速いペースのオークションなどを想像してください。ユースケースはたくさんあり、様々な形態があります。数ヶ月に及ぶ長期的なHeadもあれば、数時間しか続かない短いHeadもあります。
Hydra Headがオフチェーンの分散台帳であることを考えれば、上記のようなもの、Dappsなどさまざまなユースケースに活用され、より簡単に多くのことが実現できるようになると考えられます。
Hydra HeadにおけるSPO
Hydra HeadにおけるSPOの役割についても説明しています。
当初2020年のHydra初期研究では、Hydra Headを運営する候補としてステークプール・オペレーター(SPO)を示唆していましたが、Hydra Headプロトコルは概念実証として研究・構築されたものであるため、台帳のスケーラビリティを確保するためにSPOのみがHydra Headを実行すべきというのは誤解であると断言しています。
Hydra Headプロトコルに関しては、SPOは他のアクターと同じであり、SPOは参加者であり、他のピアとHeadを開くことができますが、興味を持つ人は誰でも参加できると述べています。
SPOがHydra Headを動かすプロバイダーになるということはなさそうですね。
Hydra Headは、エンドユーザーのニーズに少しでも早く対応するためのソリューション
では、Hydra Headはどのように提供されるのでしょうか?
実際にはHydra Headのセットアップの1つとして、ユーザーが管理するHydra Headをサービス(HaaS)として提供することを想定していると説明しています。
これは、現在のライトウォレットやライトウォレットプロバイダーの運用モデルと非常によく似ており、長期的にはこれらのプロバイダーがHydra Headを運用する可能性がはるかに高いとしています。
カルダノのエコシステムの中でトップクラスのライトウォレットプロバイダーで構成されるネットワークを想像してみてください。そのようなプロバイダーは、全体的な信頼を確保しながら、ユーザー間の即時かつ安価な支払いを促進することができます。
また、開発者向けのサービスやDAppプロバイダーも、Hydra Headsを実行する候補になる可能性が高いと想定され、実際、DApp開発者はオンチェーン情報へのアクセスを必要としているので、そのために、開発者は適切なインターフェースを提供し、一般的に毎月の使用料を請求するオンラインサービスに依存することになるとしています。
Hydra Headsはこのプロセスを改善し、サービスプロバイダーとDApp開発者間の有料APIコールによる、より分散化されたビジネスモデルを可能にすることができます。
このことが意味するところは、例えば、カルダノがエコシステムのDapps開発者とより連携しながら、『実際に必要とされるもの』をいち早く実現し、エンドユーザーがよりカルダノネットワークを快適に利用できるようにすることにフォーカスすることだと考えても良いでしょう。
Hydra Headは、現在のカルダノが直面しているスケーラビリティと最適化の礎であり、カルダノエコシステム自体をよりダイナミックにスケーリングし、多くのユーザーが必要とするものをいち早く提供するようにするソリューションの一つであり、これを含んだ多くのサービス(Dapps)が展開されることにもなりそうです。
IOGは現在および将来のカルダノユーザーにとって有用であってこそ、Hydraは成功することができると述べています。これがいち早く展開されることで、現在ますます高まるカルダノユーザーの期待をより早く快適に満足させることになると考えられます。
また、HydraのロードマップがGithubで公開されており、このロードマップには暫定的な日付も含まれています。実際に最初のバージョン1.0.0のリリースは現在のことろ今年Q3(暫定)との記述があり、これらの予測は、これまでに達成された作業と、これから残っている作業についての開発チームの予測の両方からきており、ロードマップを可能な限り正確なものにするため、定期的に内容や日程の見直しを行い、アジャイルに対応するとしています。
今年のリリースとサービスの展開は十分ありそうで、今後Hydra Headの実装には目が離せませんね!
もしこの記事が気に入っていただけましたら、SIPO、SIPO2、SIPO3への委任をどうぞよろしくお願いいたします!10ADA以上の少量からでもステーキングが可能です。
ステーキングについて知りたい方は、下記の記事をご参考ください。
ステーキング(委任)とは?
カルダノ分散型台帳システムによるステーキングの魅力とその方法:2021版
Q&A:カルダノ、ステーキングに関する基本的な説明集
ダイダロスマニュアル
ヨロイウォレット Chromeブラウザ機能拡張版マニュアル
ニュース動向 in エポック318
SundaeSwapの報酬計算機が不具合を修正
SundaeSwapの報酬計算機が更新され、これまで報酬を確認することができなかったユーザーも、報酬の見積もりを確認可能に
SundaeSwap DEXに、『MELD/ADA』が登場
メタバースの入り口となるGO Labsが立ち上げるCardanoの先駆的なメタバースIDO Launchpad「GOmetalaunch」
Haskellとカルダノ・ブロックチェーンの開発者グループであるGO labsは、カルダノのメタバースネットワークへの入口となるGOmetalaunchを発表し、GOmetalaunchユーティリティトークン、$URGOトークンのシードセールが開始しました。
カルダノ(ADA)の大量保有者がわずか10日で2倍以上に:Crypto Insights Firm Santiment by Daily Hodl
暗号分析会社Santimentによると、カルダノ(ADA)の舞台裏で、水面下で強気なファンダメンタルズが展開されているとDaily Hodlが伝えています。
ネットワークの最適化シリーズ#2:ネットワーク全体の容量を増加させ、DAppユーザー体験を向上させるためのブロックサイズ(72KBから80KB)とメモリユニット(12.5Mから14M)の増量実施を発表
IOGブログ:パイプラインの導入。カルダノのコンセンサスレイヤースケーリングソリューション
パイプラインは、2022年に導入される重要なスケーリング改善策の1つです。その仕組みと、なぜそれが重要なのかを説明します。
ADAX DEX v1.0がカルダノのメインネットでライブ
[SIPO]のTwitterフォロワー数が『3500人』を超え
Daedalus 4.8.0 リリース
Cardanoノード最新版により、パフォーマンスが大幅に向上
Cardashiftが、SundaeSwap DEXに上場、取引開始
Cardashiftがハスケル財団のスポンサーに
社会問題や環境問題を解決するスタートアップの資金調達、構築、加速を行うコミュニティ運営のローンチパッドを提供するCardashiftが、カルダノの開発会社であるIOGがカルダノブロックチェーンを構築するために選んだ関数型プログラミング言語であるハスケル(Haskell)の財団のスポンサーになりました。
オンチェーンメトリクスは、カルダノが反転することを示唆している by Cryptoslate
Cryptoslateは、カルダノの「指数関数的成長」を示すレポートや DeFi Lamaの示すオンチェーンメトリクスを用いて、カルダノが反転の兆しを見せていることを伝えています。
Meld、銀行口座を持たない人のためにカルダノ上で分散型融資を開始 by venturebeat.com
分散型融資を提供するMeldについて詳しい解説記事がventurebeat.comに掲載されていますので、ご紹介します。カルダノ上で銀行口座を持たない人のためにどのように機能するのかを見てみましょう。
IOGブログ:Hydra Headsの実装。Hydraの完全なビジョンに向けた最初のステップ
一連のプロトコルの最初のものであるHydra Headは、カルダノのスケーリングの旅において重要な要素である。それが全体像の中でどのように位置づけられるかを見てみましょう。そして、いくつかの神話を打ち破りましょう。