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ホワイトハウスが描いた新金融の設計図──ビットコイン準備資産化とブロックチェーン国家戦略の真意:ニュース動向 & ステーキング状況 in エポック578

ホワイトハウスが描いた新金融の設計図──ビットコイン準備資産化とブロックチェーン国家戦略の真意

以下の記事のデータやニュースの引用は次のXアカウントから参照・引用しています。
SITION@SITIONjp
SIPO:CARDANO SPO & DRep@SIPO_Tokyo

序章:世界がページをめくった日──2025年7月30日

2025年7月30日、アメリカ合衆国ホワイトハウスの「Indian Treaty Room」で、一冊の報告書が静かに公開されました。そのタイトルは『Digital Assets Report – EO14178』──デジタル資産に関する国家戦略の方向性を示す、全158ページに及ぶ政策文書です。

しかし、それはただの報告書ではありませんでした。内容がSNSで拡散されると、「Crypto Bible(暗号版バイブル)」「準備通貨革命の予言書」などといった言葉がX(旧Twitter)を駆け巡りました。報告書にはこう記されていたのです。

“…develop strategies that could be used to acquire additional bitcoin for the Reserve.”

「国家の備えとして、ビットコインを追加取得する戦略を策定すべきである」──この一文は、金融政策の常識に根本的な問いを投げかけました。

これまでビットコインは、エルサルバドルのような周縁国家が通貨の“賭け”として選ぶ存在でした。しかし今回、その名が登場したのは、世界基軸通貨・米ドルの本拠地、ワシントンD.C.です。そして提言の主語は、「トランプ政権下のホワイトハウス」そのものでした。

この動きは、金(ゴールド)・外貨・エネルギーに並ぶ“第4の備蓄”として、ビットコインがグローバル金融秩序の中で再定義されつつあることを意味します。そして同時に、スマートコントラクトやステーブルコイン、トークン化資産などのWeb3的インフラも、国家政策の中枢へと吸収されていこうとしています。


第1章|大統領令14178とは何か──デジタル資産国家戦略の出発点

2025年、アメリカ合衆国においてデジタル資産政策の転換点となる大統領令が発出されました。それが「大統領令14178(Executive Order 14178)」です。

本章では、この大統領令がなぜ重要なのか、その内容と背景、目的、そして暗号資産分野に与える構造的な意味について解説いたします。

■ バイデン政権のEO14067との対比──「規制」から「国家戦略」へ

暗号資産に関する大統領令といえば、多くの方は2022年に発表されたバイデン政権下の「EO14067(Ensuring Responsible Development of Digital Assets)」を思い出されるかもしれません。

EO14067は、「責任ある開発」「金融安定性の確保」「消費者保護」を軸とし、主にリスク管理規制枠組みの整備を目的としていました。そこではCBDC(中央銀行デジタル通貨)の研究も含まれておりましたが、米国政府としてビットコインやDeFiを戦略的資産と認定する意図は明示されておらず、どちらかといえば消極的で慎重なスタンスが目立ちました。

一方で、今回発表されたEO14178は、方向性がまったく異なります。キーワードは「戦略(strategy)」「リーダーシップ(leadership)」「備蓄(reserve)」であり、デジタル資産を国家競争力の中核に据える宣言文書と位置づけられます。

■ EO14178の目的:何のために出されたのか

EO14178はその序文において、「デジタル資産を中心とする技術革新が、経済安全保障・国家安全保障・技術主権・金融インフラ・外交・法の支配に及ぼす影響に鑑み、国家戦略を定めることを命ずる」としています。

具体的な目的は以下の6点に整理できます。

  1. 国家安全保障への影響評価(制裁・マネロン・敵対国対応)
  2. 金融・決済インフラとしての活用検討
  3. 準備資産・備蓄通貨としての可能性評価
  4. 官民パートナーシップによる実装計画
  5. 国際競争力と外交戦略の整合性
  6. 国内法体系と既存規制機関の再設計

このように、単なるテクノロジー政策ではなく、外交・安全保障・通貨戦略にまたがる包括的指令であることが最大の特徴です。

■ 報告書作成の指令──その成果が『Digital Assets Report』である

大統領令14178は、ホワイトハウス国家経済会議(NEC)および国家安全保障会議(NSC)に対し、「180日以内に、暗号資産・ブロックチェーン・分散型金融・ステーブルコイン・ビットコイン準備資産化に関する国家戦略文書を作成せよ」と命じました。

この命令に応じて編纂されたのが、今回の『Digital Assets Report – EO14178』であり、報告書はこの大統領令の実行報告であると同時に、政策の“設計図”でもあるのです。

■ 暗号資産の「格上げ」としてのEO14178

この大統領令が象徴するのは、暗号資産がついに国家戦略レベルに「格上げ」されたことです。

従来は民間イノベーションの一部、あるいはリスク資産として扱われていたビットコイン・イーサリアム・ステーブルコイン・NFTなどが、今やエネルギー、半導体、レアアースと同じレイヤーで語られる時代に突入したことを意味します。

この転換が象徴するのは、「国家と通貨の関係」「中央集権と分散化の境界」「政府の備えの概念」そのものが、書き換えられつつあるということです。


第2章|国家戦略に組み込まれた暗号資産──スマートコントラクトからトークン化まで

大統領令14178に基づいて作成された『Digital Assets Report』は、単なる法的整理や金融商品としての暗号資産の評価にとどまらず、それらが国家の経済構造・産業政策・財政システムそのものにどう組み込まれていくかを描き出しております。

この章では、報告書が提示する「デジタル資産を中心に据えた国家戦略」の内実を、具体的な項目ごとに紐解いてまいります。

■ トークンは経済インフラへ──「経済構造の再設計」的視座

報告書では、デジタル資産を以下のような領域で**「戦略的インフラ」として組み込む必要がある**と述べております(p.35以降参照)。

  • トークン化資産(Tokenized Real World Assets)
  • 分散型ID(DID)と認証システム
  • スマートコントラクトによる契約・執行・支払いの自動化
  • ステーブルコインによる即時決済インフラ
  • NFTを用いた権利証明・履歴管理
  • ブロックチェーン上での予算配分・公共監査・透明性の担保

これらは単なる技術的選択肢ではなく、国家が財政・司法・貿易・社会保障などの中核業務にブロックチェーン技術を組み込むことを示唆するものです。

■ スマートコントラクトは「政府会計を透明化する道具」として再定義

報告書のp.63〜70では、スマートコントラクトの役割が従来のDeFiやDAOの文脈とは異なる形で定義されております。

“Smart contracts can be applied to public finance workflows, enabling programmable disbursement, conditional payments, and real-time oversight of budget execution.”

つまり、スマートコントラクトは政府の補助金、予算執行、福祉支出、公共契約の遂行状況を**「オンチェーンで実行・記録・検証可能な公共ガバナンス手段」として導入する対象**とされているのです。

これは、「プログラマブル公共財政」という全く新しい概念への扉を開く提案であり、Web3技術が官僚制そのものの透明化・効率化に寄与する構想にほかなりません。

■ ステーブルコインとリアルタイム決済インフラの統合

また報告書では、特にドル建てのステーブルコインについて、以下のようなユースケースが挙げられております(p.41〜45):

  • 国境を越えたリアルタイム決済(貿易・送金)
  • 災害時の即時給付金(emergency relief)
  • 給与や年金のスマート化
  • 開発援助やグラントの配布
  • 対制裁国との非接触型貿易決済(制裁準拠型DeFi)

これらは、「デジタルドル」や「公認ステーブルコイン(Regulated Stablecoins)」を軸としたドル覇権の防衛的ツールであると同時に、非銀行化された経済圏における金融包摂の実装手段としての側面も帯びています。

■ NFTと分散型ID(DID)は公的認証の要素技術に

さらに報告書は、NFTや分散型ID技術についても以下のように整理しています:

  • 所有権の追跡と改ざん防止(例:土地・建物・証券)
  • 教育・資格・職歴証明(公的証明書としてのNFT)
  • 国境を越えた本人確認(KYC/AMLの効率化)
  • 投票権、参政権、助成申請などの政府サービスへの活用

ここにおいては、従来の「アート作品」や「コレクティブル」としてのNFTではなく、パブリックインフラとアイデンティティの融合技術としてのWeb3が強調されております。

これは、カルダノのAtala PRISMのような分散型ID基盤が、グローバルな行政システムに組み込まれる可能性を示唆するものでもあります。

■ 「経済安全保障と技術主権のためのブロックチェーン」

報告書の文脈をまとめると、アメリカはブロックチェーン技術を「民間イノベーション」ではなく、経済安全保障・金融主権・インフラ防衛のための国家的ツールとして位置づけようとしています。

これまでエネルギー・半導体・AIに向けられていた「戦略的基幹技術」の視座が、ついにブロックチェーンにも向けられたといえます。

そして、その戦略の頂点に置かれたのが、次章で解説する「ビットコインの準備資産化」というテーマなのです。


第3章|ビットコインを“備える”アメリカ──戦略的準備資産の意味と影響

『Digital Assets Report – EO14178』の中でも最も注目を集めた記述が、p.147〜148に記された次の一文です。

“The administration should develop strategies that could be used to acquire additional bitcoin for the Reserve…”

日本語に訳すと、「政府は、(国家)準備資産としてのビットコインを追加取得するための戦略を策定すべきである」となります。

これは、アメリカ合衆国が初めて、ビットコインを戦略的備蓄資産として保有する可能性を公式文書で示した歴史的瞬間であり、金融・安全保障・国際通貨体制にとって極めて大きな意味を持ちます。

■ 「備える通貨」としてのビットコイン

ビットコインが国家の「準備資産」として語られるのは、これが初めてではありません。2021年以降、エルサルバドルや中央アフリカ共和国といった国々が国家としてBTCを保有・運用してきました。

しかし、それらはあくまで周縁国によるリスクテイク的な政策でした。一方、今回提案しているのは世界最大の外貨準備国、基軸通貨発行国アメリカです

しかも、金(ゴールド)や外国債券と並ぶ「準備資産(Reserve Asset)」の一つとして、ビットコインを戦略的に追加取得するという提言は、これまでとはまったく次元の異なる動きといえます。

■ なぜ今、ビットコインを“備える”のか

ホワイトハウスが示した背景には、以下のような複数の戦略的動機があると考えられます。

✅ 1. 金融制裁の信頼性低下と備えとしての非国家通貨

近年、米国による対ロ制裁やSWIFT排除の常態化により、ドル基軸体制に対する反発が各国で強まっております。

その中で、国家の通貨とは独立したビットコインの性質は、「検閲耐性を備えた経済的バックアップ手段」として再評価されております。

✅ 2. インフレヘッジとしての役割

FRBのバランスシート膨張、累積財政赤字、金利政策の制約などを背景に、ビットコインが「21世紀の金(Digital Gold)」として認識されてきた潮流が政策レベルにまで浸透してきたと考えられます。

✅ 3. 中国・BRICS・中東の動きへの対抗

BRICS諸国や中国・イランなどが「脱ドル化」や金本位構想を進める中で、アメリカはビットコインという非国家通貨を国家の備蓄に加えることで、金融戦略の柔軟性を高めようとしているように見えます。

■ 「保有戦略」の具体化と課題

報告書は、「どのように取得し、どこで保管し、どのように活用するか」までの詳細には踏み込んでおりませんが、次のような可能性が想定されます。

項目想定される手法
取得方法OTC市場での直接購入、戦略備蓄ファンドの設立、民間からの寄付受領など
保管手段財務省のExchange Stabilization Fund(通貨安定基金)、または新設の暗号資産管理口座
活用用途通貨危機時の非常手段、連邦プログラム補填、国際援助決済、信用創出担保など

また、国債・金・ドルと並列する資産として扱うには、価格変動性や法的根拠、安全保障面での対策が必要であることから、段階的な試験導入が想定されます。

■ カルダノとの接点──BTC準備資産×ADAユースレイヤー

ここで見逃してはならないのが、準備資産=ビットコインという上位戦略の下に、「どのレイヤーでそれを活用するか」という実装戦略の空白が残されているという点です。

たとえば、

  • wrapped BTC(WBTC)やBitcoinOSのような、UTXO上でのBTC利用
  • スマートコントラクトによる自動担保型ファイナンス
  • ステーブルコインと連携したオンチェーン会計

といった領域は、カルダノのレイヤー1設計、Hydraによる高速決済、Midnightによる機密保護、そしてGovToolやCSWFによる財政ガバナンスの分散化と極めて親和性が高いものです。

アメリカが「ビットコインを備える時代」に突入するならば、その“使われる場”としてのレイヤー1が問われる時代もまた始まるといえるでしょう。


第4章|スマート国家会計とプログラマブル公共財政の可能性

『Digital Assets Report – EO14178』では、暗号資産を単なる投資資産や通貨ではなく、国家財政をより透明で効率的に管理するための“会計技術”として活用する構想が詳細に語られております。特に、スマートコントラクトと分散型台帳を用いた公共財政の再設計については、「次世代政府会計の基本構造」とも呼べるほどの深い提言がなされています。

この章では、米国政府が構想するスマート財政の全貌と、それがカルダノ型のレイヤー1とどのように交差しうるかを探ってまいります。

■ 公共予算の「オンチェーン化」という発想

報告書のp.63〜70では、公共財政の透明性とアカウンタビリティを確保するために、以下のような要素をブロックチェーンで実現することが提案されています:

  • 予算の執行・支払いのスマートコントラクト化
  • 給付金や補助金の自動化(例:災害・失業時)
  • 条件付き送金(conditional disbursement)
  • 執行状況のリアルタイムトラッキング
  • 政府契約・調達プロセスの改ざん防止

これにより、「誰が、いつ、何のために、どれだけの資金を、どのウォレットに送ったのか」という記録が、すべてブロックチェーン上に可視化されることになります。

■ なぜ今「スマート公共財政」なのか?

その背景には、既存の公共財政に関する以下の課題意識があります。

  • ✅ 不透明な補助金配分と利権構造
  • ✅ 災害時の支援遅延と中抜き
  • ✅ 政府契約の談合・改ざん・隠蔽
  • ✅ 膨大な行政手続きによる非効率性
  • ✅ インフレ下での財源の追跡困難

ブロックチェーンを活用すれば、公共部門の会計プロセスそのものが「プログラマブル」で「監査可能」になり、国家の信頼性が根本から再設計される可能性があると報告書は示唆しております。

■ 実装イメージ:報告書が描くスマート支出モデル

報告書内の構成図(※図4.3に該当)では、次のようなフローが描かれています:

  1. 政府が政策ごとに「予算ウォレット」を作成
  2. スマートコントラクトに予算執行条件(目的・対象・KPIなど)を組み込む
  3. 条件を満たした国民・企業・自治体が申請
  4. コントラクトが承認→オンチェーンで即時支払い
  5. 市民や監査機関はトランザクションを常時参照可能

このような枠組みにより、「公金の動き」が誰の目にも明らかとなり、腐敗防止と迅速な財政実行を両立できるとしています。

■ カルダノとの親和性:レイヤー1での財政設計

このようなスマート国家会計の構想は、スマートコントラクトの拡張性、ガバナンスの柔軟性、データの永続性、スケーラビリティ、マルチアセット性をすべて兼ね備えたレイヤー1においてのみ真価を発揮します。

カルダノはすでに以下の機能を持ち合わせており、まさにこのビジョンの「現実的な選択肢」になり得ます:

  • ✅ スマートコントラクト(Plutus)
  • ✅ ガバナンス機構(Voltaire + GovTool)
  • ✅ 分散型財政配分(Project Catalyst)
  • ✅ マルチアセット標準(ネイティブトークン)
  • ✅ Hydraによる処理の高速化

加えて、Voltaire期のCardanoでは、「オンチェーン支出と予算評価」「コミュニティによる意思決定」が実験的ではなく制度として組み込まれており、報告書で示された国家戦略をすでに先取りしている部分も見られます

■ 公共財政の「再分散」こそ、Web3国家の本質

最終的に、報告書が示唆するスマート国家の方向性とは、「中央政府のコントロール強化」ではなく、むしろ公共財の再分散(Re-decentralization)であるとも読めます。

オンチェーンでの透明性と追跡性を担保しつつ、ガバナンスや配分判断を市民参加型へと切り替えていく──この方向性は、まさにカルダノのVoltaire構想やCSWF(主権財団)構想と響き合うものです。


第5章|Cardanoへの波及──レイヤー1国家構想と第三世代の台頭

『Digital Assets Report – EO14178』は、直接的にCardanoという名前を言及しているわけではありません。しかし、その報告書全体に通底しているテーマ──すなわちビットコインの備蓄、ステーブルコインの国家統合、スマート公共財政の導入、分散型IDやトークン化インフラの活用──は、まさにCardanoが長年かけて構築してきた設計思想そのものであると言えます。

この章では、報告書が提示した国家戦略に対して、Cardanoが持つ技術的・制度的ポジションがどのように交差し、どのような未来を開くのかを読み解いてまいります。

■ Cardanoは「国家インフラ」レイヤーの設計を最初から視野に入れていた

カルダノの設計思想は、ローンチ当初から「科学的ピアレビュー」「形式検証」「レイヤード設計」「将来の制度統合」を重視してきたことが特徴です。

これにより、他のレイヤー1と比較しても以下の点で抜きん出たポテンシャルを持っております:

項目Cardanoの優位性
スマート財政Voltaire期のオンチェーン予算・投票・会計機構
ID認証Atala PRISMによる分散型IDフレームワーク
安定決済USDA・DJED・持続可能なステーブルモデル
秘匿性MidnightによるZK構造と復元可能な匿名性
分散統治DRep制度・CIP提案・憲法による自律設計

こうした要素の多くは、報告書で掲げられていた国家レベルの実装要件(スマート予算・透明性・国際対応・準備通貨活用)に直接的に対応するものとなっております。

■ 「備蓄BTC × 活用ADA」──新たな通貨二層モデルの可能性

報告書では、ビットコインを準備資産としつつ、スマート契約やステーブルコインには別のインフラを使う「分離的モデル」が暗黙的に描かれております。

ここで鍵となるのが、「備えるレイヤー(BTC)」と「使うレイヤー(ADA)」の住み分け構造です。

BTCは

  • 価値の保存(store of value)、
  • 国家間信用の担保、
  • グローバル決済基軸

として蓄積される一方で、ADAは

  • 契約と予算の自動化、
  • 公共政策と参加型民主主義の支援、
  • オンチェーン運用と匿名保護

といった実務的な領域で活用されることが想定されます。

この「BTC × ADA」の二層構造は、実は金本位制+地方紙幣モデルの現代版とも言えるような新たな通貨思想の萌芽でもあります。

■ レイヤー1国家構想の先にある「カルダノ国家モデル」

カルダノコミュニティにおいて近年浮上しているのが、「カルダノ国家モデル」という構想です。

これは、Cardanoを単なるインフラやトークン経済圏にとどめず、主権・制度・財政・市民性を備えたブロックチェーン国家(stateless state)としての機能へと拡張するビジョンです。

この文脈において、EO14178とその報告書は次のようなメッセージを投げかけているとも受け取れます:

  • 「既存国家が暗号資産を取り込み始めたとき、我々の設計思想は世界にどこまで通用するのか?」
  • 「憲法、財政、代表制、匿名性と復元性──それらが連動するレイヤー1とは何か?」
  • 「カルダノは“デジタル公共インフラ”の基準を満たせるか?」

こうした問いに対して、Cardanoは今、現実の国家や国際機関と交差するフェーズに入りつつあるのです。

■ 技術から制度、そして文明へ──第三世代の“地ならし”

ビットコインが「価値の備え」、イーサリアムが「スマート金融の実験場」として広がった第一・第二世代の流れに対して、カルダノは第三世代として制度設計と分散的秩序の整合性を追求してきたプロジェクトです。

EO14178によって、国家レベルの制度設計がブロックチェーンと交差した今こそ、カルダノが長年かけて築いてきた設計思想が“地ならし”の効力を持つ局面が訪れたのではないでしょうか。

国家戦略としての暗号資産という新たなフェーズにおいて、Cardanoはその理性と構造性によって、未来の制度的OSの一部を担う存在となるかもしれません。


終章|備える国家と創る文明──カルダノから未来へ

『Digital Assets Report – EO14178』の発表は、単なる政策文書の公開にとどまりませんでした。それはむしろ、国家と通貨、テクノロジーと制度、集中と分散という文明の根本構造を見直す時代が訪れたことを、静かに、しかし明確に告げる宣言だったと言えるのではないでしょうか。

アメリカ政府が示したのは、暗号資産を「抑制する対象」から「戦略的に備える対象」へと格上げし、スマートコントラクトやステーブルコイン、トークン化インフラを国家システムに統合していく未来像でした。

その根底には、「技術によって国家を効率化し、国家によって技術を正当化する」という相互依存の力学が見て取れます。

■ 備える国家──BTCの静的な力

報告書のなかでもひときわ印象的だったのは、「ビットコインを国家の準備資産として戦略的に取得すべきである」という一文です。

これは、「備える」という国家の根源的本能を再び定義する動きでした。

ビットコインは中央管理を必要とせず、検閲にも強く、物理的にもサイバー的にも機動性を持ち、そして有限です。

この静的で普遍的な価値の源泉を、国家が“備える”ことの意味とは何か──それはおそらく、「いざというときの文明の最小構成単位を持つ」ということに他なりません。

■ 創る文明──ADAの動的な力

一方で、ビットコインが静的であるのに対し、カルダノが備えるのは「動的な力」──すなわち制度を創る力です。

  • 投票を通じて意思決定を行い、
  • コントラクトで財源を自動実行し、
  • 憲法と社会契約で統治構造を定義し、
  • ステークとアイデンティティで信頼を分散し、
  • 未来の制度や貨幣をオープンに実験できる場を構築する。

このように、Cardanoは国家のように「備える」のではなく、むしろ文明のレイヤーそのものを創り変えていく技術と構造を持っています。

■ 国家とカルダノ──交差点に立つ存在

EO14178が描いたのは、「暗号資産を活用する国家」のモデルでした。

一方、Cardanoコミュニティが長年取り組んできたのは、「国家のように振る舞うプロトコル」の構築です。

ここにおいて、国家とプロトコルは、ついに交差点に立ちました。

  • 国家はプロトコルを必要とし、
  • プロトコルは制度と統治を必要とし、
  • 市民は分散性と透明性、主権と選択肢を必要としている。

この三者が交わる場所にこそ、「新しい公共性」や「再設計された民主主義」が生まれる余地があるのではないでしょうか。

■ 未来へ──カルダノが指し示す地図

カルダノは、速さで勝負するプロジェクトではありません。

それはむしろ深さと整合性で構築される“文明のOS”です。

EO14178という巨大な現実国家の報告書と向き合ったことで、我々は改めてCardanoの存在が持つ地政学的・制度的・哲学的な重みを再認識しました。

そして今、我々に問われているのは、このプロジェクトを「どの未来に接続するか」という設計意思そのものです。

備える国家と、創る文明。

Cardanoが拓くのは、まさにその両方を統合する時代の地図なのかもしれません。


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