研究が実装へと降りてくる瞬間──IOR「Cardano Vision & WP2025」初年度年末レポートを読み解く:
SRL1–5が示すCardanoの現在地と、DRepとして見る評価軸

はじめに― なぜ“研究レポート”が重要なのか?
研究レポート」「論文」「年末報告書」と聞くと、
正直なところ、ちょっと難しそうで、自分には関係ない話に感じてしまう方も多いかもしれません。
ですが、今回Input Output Researchから公開された
Cardano Vision & Work Program 2025(WP2025)初年度の年末レポート(草案)は、
いわゆる「専門家向けの成果発表」にとどまるものではありません。
むしろこれは、
「Cardanoの未来が、どの順番で、どこまで現実に近づいているのか」を示した、
いわば 工程表 のような資料です。
多くのブロックチェーンでは、
「新機能が発表される → あとから安全性や整合性を考える」
という流れが一般的です。
一方でCardanoは、
研究 → 検証 → 実装というプロセスそのものを、最初から制度として組み込んでいる、
かなり珍しいブロックチェーンです。
今回のレポートが重要なのは、
その“研究がどう進み、どこまで実装に近づいているのか”が、
数字と段階(SRL)を使って明確に示されている点にあります。
WP2025は、Cardano Vision & Work Program 2025という名前の通り、
5年間にわたる中長期の研究計画です。
そして今回公開された年末レポートは、
その初年度がどうだったのかを振り返る「決算報告」にあたります。
特に注目すべきなのは、
今回のレポートが 2つの異なる視点 から、同時に公開されている点です。
- 基礎研究(SRL1–2) ─ 数理モデルや証明を中心とした、3〜5年先を見据える研究段階
- 技術検証(SRL3–5) ─ プロトタイプや仕様を通じて、「実装できるかどうか」を確かめる段階
この2つが並んで提示されたことで、
「今はまだ研究段階のもの」と
「すでに実装を見据えて動いているもの」が、
はっきり区別できる形で見えるようになっています。
つまり今回の年末レポートは、
「将来こうなったらいいですね」という話ではなく、
Cardanoがどの未来に向かって、どこまで歩いてきたのかを確認できる資料なのです。
本記事では、できるだけ専門用語をかみ砕きながら、
このレポートが示している意味と、
そこから見えてくるCardanoの現在地を、一緒に整理していきたいと思います。
第1章|Cardano Vision & WP2025とは何か― なぜ5年スパンの研究計画が必要なのか
Cardano Visionとは、ひとことで言えば
「ブロックチェーンを、短期トレンドではなく“社会インフラ”として進化させるための設計思想」です。
現在の暗号資産業界では、
価格や流行を起点にした短期的な機能追加や改善が、どうしても注目されがちです。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
ただしその一方で、
- スケーラビリティを上げた結果、セキュリティが犠牲になる
- 使いやすさを優先した結果、中央集権化が進む
- 成長を急いだ結果、設計の歪みが後から表面化する
といったケースが、業界全体で何度も繰り返されてきました。
Cardano Visionは、こうした「あとから無理が出る設計」を避けるために、
最初から中期〜長期を前提に研究投資を行うという立場を取っています。
その中核にあるのが、
- スケーラビリティ
- セキュリティ
- 持続可能性
という、ブロックチェーンにおける“避けて通れない難問”です。
これらは、
「良いアイデアがあればすぐ解決する」
「実装してから考えればいい」
という種類の問題ではありません。
数理モデルを立て、
攻撃モデルを定義し、
長期運用を前提に検証しなければ、
かえって危険な結果を生む領域でもあります。
そこでCardanoでは、Input Output Researchを中心に、
5年間という時間軸で研究を積み上げる前提の計画として、
Cardano Vision & Work Program 2025(WP2025)が設計されました。
WP2025の特徴は、
単発の研究テーマを並べるのではなく、
毎年20〜30本規模の研究成果を継続的に生み出すことを前提にしている点にあります。
しかもそれは、
「論文を出すこと自体」が目的ではありません。
Cardanoではすでに、
50本以上の査読付き論文が、実際のプロトコルや機能として実装されてきた実績があります。
つまりこの研究計画は、
理論先行でも、絵に描いた餅でもなく、
「研究すれば、いずれ実装に届く」ことを前提に組まれた実績ベースの設計なのです。
短期的な市場の盛り上がりを追いかけるのではなく、
10年後・20年後にも耐えうるブロックチェーン基盤を作る。
Cardano VisionとWP2025は、
そのために「時間を味方につける」選択をした計画だと言えるでしょう。
次章では、
この5年計画のうち、初年度にどのような基礎研究が進んだのかを、
全体像が掴める形で整理していきます。
第2章|基礎研究レポートの読み解き(SRL1–2)― Cardanoが“学術的に異質”である理由
基礎研究レポートと聞くと、
「結局、論文の一覧でしょう?」
「専門家向けで、今の自分には関係なさそう」
と感じる方も多いかもしれません。
ですが、今回Input Output Researchが公開した
WP2025初年度の基礎研究レポートは、
そうした“よくある研究報告”とは少し性格が異なります。
ここで行われているのは、
個別テーマの寄せ集めではなく、
「Cardanoというシステム全体を、どの方向へ進化させるのか」
を示すための、いわば研究の地図作りです。
そのため本章では、
細かな技術内容をすべて追いかけるのではなく、
「今、どの領域にどんな研究が配置されているのか」を俯瞰することを目的にします。
基礎研究(SRL1–2)とは何をしている段階なのか
SRL1–2に位置づけられる基礎研究は、
すぐに実装される機能を作るフェーズではありません。
- 問題をどう定義するのか
- どこに理論的な限界があるのか
- どんな設計なら、安全性を数学的に保証できるのか
といった、すべての土台になる部分を固める段階です。
時間軸で言えば、
3〜5年先を見据えた研究が中心になります。
だからこそ、ここでの判断が甘いと、
後の検証や実装フェーズで大きな手戻りが発生してしまいます。
Cardanoが「学術的に異質」と言われる理由は、
この基礎研究を形式手法・査読・証明を前提に進めている点にあります。
今回の基礎研究レポートを貫く“整理軸”
WP2025の基礎研究は、
無秩序にテーマが並んでいるわけではありません。
いくつかの明確な軸に沿って配置されています。
ここでは代表的なものを挙げてみます。
- コンセンサス進化 Ouroboros Omega(Peras / Leios) ─ 高速決済と高スループットを、セキュリティを崩さずに両立する試み
- 公平性とMEV耐性 Fair Transaction Processing ─ フロントランニングや不公平な取引順序を、プロトコルレベルで抑制する研究
- 分散型インフラ Decentralized Storage / Interchains ─ ストレージ、ブリッジ、ライトクライアントを「信頼最小」で成立させる基盤研究
- 経済設計 Tokenomicon ─ ステーキング報酬、準備金、参加インセンティブを数理的に扱う研究領域
- ガバナンス Democracy 4.0 ─ DRepやCatalystを含む、分散型意思決定を長期的に成立させる設計
- 暗号基盤 Zero-Knowledge / ポスト量子暗号 ─ プライバシー、検証効率、将来の量子耐性を見据えた暗号研究
こうして見ると、
「特定の機能を強化する研究」というより、
Cardano全体を“OSのような基盤”として成立させるための研究が多いことが分かります。
数字が示す、研究の“量”と“姿勢”
今回のレポートで、特に強調しておきたい点があります。
それは、
2025年だけで、24本の研究成果が公表・採択・投稿されたという事実です。
これは、
WP2025で設定されていた契約上の目標(20本)を上回る成果です。
そしてもう一つ重要なのは、
これらの研究がすべて
「論文で終わらない前提」で設計されていることです。
- 次の技術検証(SRL3–5)へ進むもの
- CIPや仕様に落とし込まれることを想定しているもの
- すでにエンジニアリングチームと連携が始まっているもの
基礎研究でありながら、
最初から“次の工程”が意識されている。
この点こそが、Cardanoの研究体制を他と分ける最大の特徴だと言えるでしょう。
次章では、
この基礎研究がどのように技術検証(SRL3–5)へと橋渡しされているのかを、
より具体的に見ていきます。
第3章|技術検証レポート(SRL3–5)が示す“異常値”― 研究を“実装可能な形”へ落とす工程
前章までで見てきた基礎研究(SRL1–2)は、
Cardanoの「考え方」や「設計哲学」を形にするための土台でした。
では、その研究は本当に
「いつか誰かが実装してくれる理論」で終わらないのでしょうか。
その問いに対する答えが、
今回同時に公開された技術検証レポート(SRL3–5)にあります。
技術検証(SRL3–5)は“研究と実装のあいだ”を埋める層
多くのブロックチェーンでは、
研究(あるいはアイデア)と実装のあいだに、
大きな断絶があります。
- 論文は出たが、実装は未定
- 実装はしたが、安全性は「たぶん大丈夫」
- プロトタイプはあるが、本番では使えない
といった状態は、決して珍しくありません。
Cardanoでは、この断絶を避けるために、
SRL3–5(技術検証)という工程を明確に設けています。
ここでは、
- 実際に動くプロトタイプを作り
- シミュレーションや形式検証で限界を洗い出し
- 仕様書やCIPとして整理する
という、「実装直前」までの作業が行われます。
この層が体系的に存在している点自体が、
Cardanoが“研究好きなチェーン”ではないことの証明でもあります。
技術検証レポートに並ぶ“異常値”たち
今回の技術検証レポートでは、
複数のワークストリームが同時に進行しており、
その内容は、率直に言ってかなり“異常”です。
いくつか代表的なものを見てみましょう。
Leios
Ouroboros系コンセンサスのスケーラビリティを拡張するLeiosでは、
1000ノード規模のシミュレーションがすでに行われ、
SPOのコストモデルまで含めた検証が進んでいます。
単なる理論提案ではなく、
CIPが提出済みで、実装部門への引き渡しが完了している。
これは、SRL3–5が正しく機能している典型例です。
Phalanx
Phalanx(アンチ・グラインディング)は、
PoSにおけるランダムネス操作という、
長年知られていた弱点に正面から取り組む技術検証です。
結果として、
攻撃コストを約10¹¹倍に引き上げる設計が示され、
Praos互換の拡張としてCIPにまとめられています。
ここでは、「理論的に安全」ではなく、
「現実的に割に合わない」レベルまで攻撃を押し上げる
という工学的判断がなされています。
Jolteon
Jolteonは、パートナーチェーン向けの高速BFT系コンセンサスですが、
注目すべきはその検証方法です。
安全性(Safety)だけでなく、
ライブネス(止まらないこと)まで機械的に検証しようとしています。
これは、
「動いてみたら大丈夫だった」という世界から、
「証明されたから大丈夫」へ踏み込む試みであり、
他チェーンではほとんど見られないアプローチです。
RSnarks
RSnarksでは、
Halo2を用いた再帰的ZK証明のオンチェーン検証という、
一見すると「非常識」なことに挑戦しています。
結果として、
複数トランザクションに分割することで、
Cardano上で実際に検証できることを示しました。
これは、
「できるかどうか分からないZK」から、
「どうすれば制約内で動くかを詰める段階」へ進んだ
ことを意味します。
Minotaur
Minotaurは、
リステーキングを前提にした新しいコンセンサス設計です。
CardanoやEthereumの既存資産を再利用し、
新しいチェーンを安全に立ち上げるための設計が、
シミュレーションと仕様の形で検証されています。
ここでも、
「面白いアイデア」ではなく、
実際にどう選挙し、どう罰し、どう移行するか
という具体論まで踏み込んでいます。
Cavefish
Cavefishは、
Intent(意図)× Light Clientという組み合わせで、
ウォレットやdAppのUXそのものを再設計しようとする試みです。
フルノードや中央集権APIに依存せず、
「やりたいこと」を証明付きで実現する。
これは、
スケーラビリティやセキュリティとは別の意味で、
次世代のCardano体験を見据えた技術検証だと言えるでしょう。
この章の結論:Cardanoはもう“直前層”にいる
ここまで見てきた技術検証の共通点は明確です。
どれもが、
- 研究段階をすでに越えており
- 実装できるかどうかを真剣に確かめていて
- 次の工程(CIP・実装)を前提に動いている
という点にあります。
つまりCardanoはすでに、
「研究が実装へ降りてくる直前の層」を量産している段階にあります。
これは、
まだ何も実装されていない未来の話ではありません。
今まさに、現実のプロトコルへ落ちてこようとしている技術群の話です。
次章では、
こうした流れを可能にしている仕組み、
SRL(Software Readiness Level)そのものについて、
もう一段かみ砕いて整理していきます。
第4章|SRLという“翻訳装置”― なぜCardanoの研究は実装に繋がるのか
ここまで読み進めてきて、
「研究も検証もすごいのは分かったけれど、
結局それがいつ・どうやって実装されるのかが一番気になる」
と感じている方も多いのではないでしょうか。
その疑問に答える鍵が、
Cardanoで使われている SRL(Software Readiness Level) という考え方です。
SRLは、研究者向けの専門用語のように見えますが、
実はこれ、研究と実装をつなぐ“翻訳装置”のような役割を果たしています。
SRLとは「研究の成熟度を測る物差し」
SRLは、
「この研究は、今どの段階にいるのか」
「実装まで、あとどれくらい距離があるのか」
を共通言語で示すための指標です。
Cardanoでは、このSRLを使って、
研究・技術検証・実装の役割分担と時間軸を最初から整理しています。
一般読者向けに、ざっくり翻訳すると次のようになります。
SRL1–2:数理・証明の段階(3〜5年)
この段階では、
- 問題をどう定義するか
- どんな攻撃があり得るか
- 数学的に安全だと言える条件は何か
といった点を、証明可能な形で固めていきます。
まだコードを書く段階ではありません。
ですが、ここを曖昧にしたまま先へ進むと、
後になって「設計そのものが成立しない」ことが発覚します。
Cardanoがこの段階に時間をかけるのは、
後戻りを防ぐためでもあります。
SRL3–5:プロトタイプ・CIPの段階(1.5〜3年)
ここが、他の多くのチェーンでは
ほとんど明示されていない層です。
- 本当に動くのか
- 制約下でも成立するのか
- SPOやノード運用に無理はないか
といった点を、
実際に動かしながら検証します。
同時に、
仕様書やCIPとして整理し、
「実装する側が迷わない形」へ落とし込みます。
第3章で見てきたLeiosやPhalanx、RSnarksなどは、
まさにこの層に位置しています。
SRL5+:実装の段階(0〜18か月)
ここまで来ると、
「研究だから」「検証中だから」という言い訳は通用しません。
- 本番コードとして書く
- テストネット・メインネットへ載せる
- ハードフォークやアップグレードとして提供する
という、エンジニアリングの世界に完全に入ります。
重要なのは、
この段階に来た時点で、
安全性や設計の不安要素が、ほぼ出尽くしていることです。
最初から「いつ実装されるか」を設計している
SRLがもたらす最大の価値は、
「いつか実装されるかもしれない」という曖昧さを排除し、
最初から時間軸を含めて設計している点にあります。
- これは3〜5年スパンの研究
- これは次に検証フェーズへ進む
- これは実装部門に引き渡す
という判断が、
感覚や勢いではなく、工程として行われるのです。
この仕組みがあるからこそ、
Cardanoはしばしば「遅い」と言われながらも、
大きく壊れないチェーンであり続けています。
“遅い”のではなく、“壊れない”
新機能が次々と追加されるチェーンと比べると、
Cardanoの進化は、確かに派手ではありません。
ですがその代わりに、
- 設計の前提がひっくり返らない
- 後から致命的な欠陥が見つかりにくい
- 長期運用を前提に議論できる
という性質を手に入れています。
SRLという翻訳装置は、
研究者の言葉を、実装者の言葉へ変換する仕組みであり、
同時に、
未来のCardanoを「工程表」として管理するための道具でもあります。
次はいよいよ、
この仕組みをDRepの視点からどう評価するのか、
特別コラム①|DRep(SIPO)としての評価へ進みます。
特別コラム①|DRep(SIPO)としての評価― 何をもって“良い研究投資”と判断するか

ここからは少し視点を変えて、
DRep(Delegated Representative)として、今回のWP2025をどう評価するか
という話をしてみたいと思います。
DRepの役割は、
「Cardanoがどんな未来に資源を投じるのか」を、
責任をもって判断することです。
その意味で、研究予算や研究計画は、
単なる「学術支援」ではなく、
れっきとしたガバナンス上の投資判断だと言えます。
では、DRepとして
「これは良い研究投資だ」と判断するために、
何を見ればいいのでしょうか。
評価軸①|SRLが明示されているか
まず最初に見るべきなのは、
SRL(Software Readiness Level)が明示されているかどうかです。
- これは基礎研究なのか
- 技術検証まで進む見込みがあるのか
- 実装部門へ引き渡す前提なのか
こうした位置づけが曖昧な研究は、
評価のしようがありません。
WP2025では、
各ワークストリームが
SRL1–2なのか、SRL3–5なのか
はっきり整理されています。
これはDRepにとって、
「今すぐ成果を求めるべきもの」と
「時間をかけて育てるべきもの」を
切り分けて考えられる、非常に重要な情報です。
評価軸②|CIP・仕様・検証への導線があるか
次に重視しているのは、
研究がどこへ向かう設計になっているかです。
WP2025では多くの場合、
- 技術検証(SRL3–5)
- 仕様書
- CIP
- 実装部門との連携
といった次の工程への導線が、
最初から想定されています。
これは、
「研究が成功したら考えます」という話ではありません。
成功した場合、どのレーンを通って実装へ向かうのか
が、あらかじめ描かれているという点で、
ガバナンス投資としての安心感があります。
評価軸③|SPO・DRep・開発者に波及効果があるか
研究が優れていても、
それが一部の専門家だけに閉じていては、
Cardano全体の価値にはなりません。
その点、WP2025の研究テーマは、
- SPOの運用コストや役割
- DRepやガバナンスの制度設計
- 開発者が使う基盤技術
といったエコシステム全体に波及する設計が多く含まれています。
たとえば、
- LeiosはSPOの運用前提を再定義します
- TokenomiconやDemocracy 4.0は、DRep制度そのものに直結します
- CavefishやZK関連研究は、開発者体験を大きく変えます
これは、
「誰のための研究か」が明確だということでもあります。
評価軸④|5年後の“制度設計”に寄与しているか
DRepとして最後に見るのは、
5年後のCardanoに、どんな制度が残るのかという視点です。
短期的な機能追加は、
数年後には置き換えられるかもしれません。
しかし、
- コンセンサスの設計思想
- ガバナンスのルール
- 経済モデルの前提
といったものは、
一度定まると、長く影響を与え続けます。
WP2025の研究は、
まさにこの「制度の土台」を形作る領域に集中しています。
これはDRepにとって、
「今の便利さ」よりも
「将来の選択肢を狭めないか」
を判断できる材料が揃っている、ということです。
結論|WP2025は“ガバナンス投資”として極めて透明
以上を踏まえると、
WP2025は
ガバナンス投資として、極めて透明性が高い計画だと評価しています。
- 研究の位置づけが明確
- 次の工程が見える
- 波及範囲が広い
- 長期制度設計に直結している
そして何より、
DRepが「判断できる材料」を与えられている
という点が、非常に重要です。
研究投資の是非を、
雰囲気や信頼だけで決めるのではなく、
工程・時間軸・影響範囲を見ながら判断できる。
これは、
分散型ガバナンスにおいて、
決して当たり前のことではありません。
次の特別コラムでは、
こうした研究と検証の流れが、
なぜMidnightやプライバシー戦略と結びついているのかを、
チャールズの最近の発言も交えながら整理していきます。
特別コラム②|チャールズの最新インタビューとMidnight― なぜ今“30x”という言葉が出てくるのか

最近、Charles Hoskinson氏のインタビューの中で、
Midnightについて「30x」という強い表現が語られたことが、話題になりました。
この言葉だけを切り取ると、
「価格予測なのでは?」
「さすがに強気すぎるのでは?」
と感じる方もいるかもしれません。
ですが、この発言を
投資リターンの話として受け取ってしまうと、本質を見誤ると思います。
ここで語られているのは、
短期の値動きではなく、
これまで積み上げてきた研究が、どこへ収束しつつあるのか
という文脈です。
Midnightは「研究の実験場」として現れた
Midnightは、
単なる新しいチェーンやサイドプロジェクトではありません。
その役割は、
Cardano本体で長年研究されてきたテーマを、先行して実装・社会接続するための場
だと位置づける方が自然です。
特に重要なのが、次の組み合わせです。
- プライバシー
- 選択的開示(Selective Disclosure)
- 規制耐性・コンプライアンス
これらは、
どれか一つだけでは意味を成しません。
完全匿名では社会と接続できず、
完全透明ではプライバシーが成立しない。
このトレードオフに対して、
暗号理論・ZK・ガバナンス設計を総動員して解こうとしている
のがMidnightです。
Cardano本体の研究が、Midnightで先行実装される構図
ここまで本編で見てきた基礎研究・技術検証を振り返ると、
Midnightとの接続点が、いくつも浮かび上がります。
- Zero-Knowledge(ZK)研究
- フォーマル検証されたコンセンサス
- 公平性・MEV耐性
- ガバナンスと選択的開示の設計
これらはすべて、
Cardano本体で長期研究されてきたテーマです。
Midnightは、
それらを「いきなりメインチェーンに載せる」のではなく、
別レーンで先に社会実装へ近づける役割を担っています。
この構図を見ると、
チャールズの発言は、
「期待」や「夢」を語っているのではなく、
研究が向かう必然的な帰結を言語化している
と捉える方がしっくりきます。
“30x”という言葉の本当の意味
では、なぜ「30x」という言葉が出てくるのでしょうか。
それは、
Midnightが解こうとしている問題が、
これまで暗号資産が本格的に踏み込めていなかった領域だからです。
- 企業や行政が使えるプライバシー
- 規制と衝突しない設計
- 監査可能で、かつ秘匿性を保てる仕組み
この領域は、
技術的にも制度的にも難易度が高く、
中途半端な設計では成立しません。
だからこそ、
長年の研究蓄積を持つCardano系のスタックが、
ここで意味を持ち始めているのです。
“30x”という表現は、
市場規模やユースケースの広がりを含めた、
潜在的な非連続性を指していると理解するのが妥当でしょう。
示唆|Cardanoは「単体チェーン」では終わらない
この流れから見えてくる最大の示唆は、
IORの研究が、
「Cardano単体を強くするため」だけに行われているわけではない
という点です。
むしろその方向性は、
複数のチェーンが役割分担しながら機能する
“マルチチェーンOS”
へと向かっています。
- Cardanoは高保証な基盤として
- Midnightはプライバシーと社会接続の前線として
- パートナーチェーンやL2が用途特化で広がる
この構造の中で、
研究 → 検証 → 実装という流れが、
チェーンをまたいで展開されていく。
チャールズの発言は、
その全体像を前提にした上での言葉だと考えると、
今回のWP2025年末レポートとも、
自然につながって見えてくるのではないでしょうか。
次はいよいよ、
本記事のまとめとして、
今回の年末レポートが意味するものを
初心者向けにもう一度整理していきます。
おわりに― 今回の年末レポートが意味するもの

ここまで、
IORによる Cardano Vision & WP2025 初年度年末レポートを軸に、
- 基礎研究(SRL1–2)
- 技術検証(SRL3–5)
- SRLという工程設計
- DRepとしての評価軸
- そしてMidnightとの接続
を順に見てきました。
最後に、初心者の方にも分かる形で、
「結局、今回のレポートは何を意味しているのか」を整理してみます。
これは「未来予測」ではなく「進捗報告」
まず強調しておきたいのは、
今回の年末レポートが
将来の理想像を語る資料ではないという点です。
書かれているのは、
- どんな問題設定をしたのか
- どこまで研究が進んだのか
- どこからが検証フェーズなのか
- どれが実装レーンに乗りつつあるのか
という、非常に現実的な内容です。
つまりこれは、
「こうなったらいいですね」という話ではなく、
「ここまで来ました」「次はここです」
という進捗報告だと言えます。
Cardanoは“思想”と“工程”がつながっている
Cardanoが他と大きく違う点は、
理念や思想が、
そのまま研究計画や工程設計に落ちていることです。
- 研究は研究で終わらせない
- 検証を飛ばして実装しない
- ガバナンス判断に材料を提供する
この姿勢が、
SRLという仕組みを通じて、
実際に運用されています。
だからこそ、
外から見ると「遅い」と言われることがあっても、
中では一貫したレーン上で前に進んでいるのです。
「なぜCardanoは壊れにくいのか」の答え
よく聞かれる問いがあります。
なぜCardanoは、致命的に壊れないのか?
その答えは、
魔法のような技術があるからでも、
完璧な人がいるからでもありません。
壊れやすい工程を、最初から排除している
ただそれだけです。
- 研究段階で限界を洗い出す
- 検証段階で無理を確認する
- 実装段階では“想定外”を減らす
今回の年末レポートは、
このプロセスが机上の空論ではなく、実際に機能している
という証拠でもあります。
2026年以降を見るための「読み方」
このレポートを読んだあと、
今後Cardanoを見るときの視点は、
少し変わるかもしれません。
- それはSRLいくつの話なのか
- 次の工程は何か
- どのチェーン、どの文脈で先行実装されるのか
そうした視点で見ると、
一つひとつのニュースやアップデートが、
点ではなく線として見えてくるはずです。
最後に
今回のWP2025初年度年末レポートは、
Cardanoが
「どこへ向かっているのか」
だけでなく、
「どうやって、そこへ辿り着こうとしているのか」
を示してくれました。
研究・検証・実装・ガバナンスが、
分断されずに一つの流れとして設計されている。
それこそが、
Cardanoが業界の中で
独自の地位を築いてきた理由であり、
これからも注目され続ける理由なのだと思います。
(完)
もしこの記事が気に入っていただけましたら、SIPO、SIPO2、SIPO3への委任をどうぞよろしくお願いいたします!10ADA以上の少量からでもステーキングが可能です。
シリーズ連載:進化するカルダノ・ベーシック
エポックな日々
ダイダロスマニュアル
ヨロイウォレット Chromeブラウザ機能拡張版マニュアル
Laceマニュアル
SIPOはDRepへの登録と活動もしております。もしSIPOの活動に興味がある方、DRepへの委任方法について知りたい方は以下の記事をご覧ください。また委任もぜひお願いいたします。
SIPOのDRepとしての目標と活動方針・投票方法
SIPOのDRep投票履歴:https://sipo.tokyo/?cat=307
ダイダロスの方は最新バージョン7.0.2で委任が可能になりました。
SIPOのDRep活動にご興味がある方は委任をご検討いただければ幸いです。
DRep ID:
drep1yffld2866p00cyg3ejjdewtvazgah7jjgk0s9m7m5ytmmdq33v3zh
二つのIDはダイダロス以外のウォレットではどちらも有効です。ADAホルダーがSIPOにガバナンス権を委任する際に使用できます。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
























