
現実を見据えた提案──チャールズ・ホスキンソンが語る、カルダノ成長戦略とコミュニティへのメッセージ、カルダノ成長戦略と「真の分散化」への道
はじめに──新たな選択の時
2025年4月、Cardano創設者チャールズ・ホスキンソン氏は、「Product Development and Commercial Success in Tough Markets(厳しい市場における製品開発と商業的成功)」と題した動画を公開しました。
はじめに──選ばれるのは、あなた自身
2025年4月、Cardano創設者チャールズ・ホスキンソン氏は、
「Product Development and Commercial Success in Tough Markets(厳しい市場における製品開発と商業的成功)」と題した動画を公開しました。
この中で彼は、
Cardanoの未来と、分散化を貫くために私たち一人ひとりが担う役割について、真摯に語りました。
単なる予算議論に留まらず、
「真の分散化とは何か」、
「主体的に選択し、責任を持つとは何か」
という、深いテーマを私たちに突きつけています。
勝つためのビジョン──エコシステムを育てる投資とは
ホスキンソン氏はまずこう語ります。
「予算とは、ただお金を使うためではない。勝利のためにビジョンを追い求めるためのものだ。」
Cardanoが競争する相手は、Sui、Aptos、Ethereum、Solana──
世界中のスマートコントラクトプラットフォームたちです。
これに勝つには:
- 未来を見据えたスケーラビリティ
- 誰もが使いやすいプラットフォーム
- 他チェーンとつながる相互運用性
この三本柱の強化が欠かせないと説きました。
製品ビジョンは「パッケージ」で考えよ
さらに彼は、
Cardanoの成長戦略は「バラバラではなく、パッケージとして捉えるべきだ」と訴えます。
スマートフォンを例に取り、
カメラやCPUだけを個別に選び直しても、まともな製品にはならないことを説明しました。
- Ouroboros Leios
- Mithril
- パートナーチェーン
- Midnight
- Babel Fees
- 新ノード群(REST / Go / TypeScript)
──これらすべてが一体となった「未来を作る設計図」です。
どれか一部だけ取って他を捨てるのでは、エコシステム全体が壊れてしまう。
これがホスキンソン氏の強い警告でした。
あなたに問われている──「本当の選択」
彼は今回の提案について明言します。
「これはInput Output(IOG)としての正式なビジョンと価格提示だ。受け入れるか、拒否するか。それだけだ。」
交渉ではない、値切りではない。
本当の意味で、未来を選び取る覚悟が求められているのです。
もし拒否すれば、彼らは去る。
新しい道を、コミュニティが自ら切り開かなければなりません。
Cardanoは「本物の分散化」を選んだ唯一のエコシステム
ここでホスキンソン氏が最も力を込めたのは、Cardanoの特異性です。
- ジェネシスキーはすでに廃止
- 財団や創業者の専横はない
- 本当の意味で、意思決定権がホルダーに渡されている
つまり、Cardanoでは──
- 誰かが勝手に決めるのではない。
- 私たち自身が、未来を選ぶ。
これこそが、
「真の分散化」
だと彼は訴えました。
成長か、停滞か──Midnightとパートナーチェーンの戦略
今回提示された戦略は、単なる理論ではありません。
- Midnightによるプライバシー領域進出
- パートナーチェーンによる拡張性強化
- 複数チェーンとの相互運用性
これらは、すでに具体的に動き出しており、
成功すればCardanoは暗号資産業界最大級のエコシステムに躍進できる可能性を秘めています。
そのために、
ホスキンソン氏は自身の資金まで投じて道を切り開いてきました。
結論──真の「大人の選択」を
最後に彼は、コミュニティにこう呼びかけました。
「今こそ、受け身ではなく、本当の主体性を持つときだ。
Cardanoの未来を選ぶのは、あなたたち自身だ。」
- 支払うべき対価を理解し、
- 求める未来に向かって投票する
- そして、その結果に責任を持つ
それこそが、
成熟した、真の分散型エコシステムの在り方だと締めくくりました。
【まとめ】
この動画は、単なる予算提案を超えた、
「Cardanoという実験が、世界で最も成熟した分散型社会になるかどうか」を問うメッセージです。
- 競争力のための投資を続けるか
- 完全な分散化を急ぎすぎて停滞を招くか
どちらを選ぶか──
今、すべてはコミュニティ自身に委ねられています。
以下はチャールズ・ホスキンソン氏動画「Product Development and Commercial Success in Tough Markets」を翻訳したものです。
チャールズ・ホスキンソン氏動画「Product Development and Commercial Success in Tough Markets」全翻訳
製品開発と厳しい市場での商業的成功
こんにちは。今日は少し体調が悪いですが、どうしても動画を作りたかったのでお話しします。
いま予算に関していろんな話題が飛び交っていますが、事実に基づき、現実に即した会話をすることが大切だと思います。
だからこそ、現在の立ち位置や起きていることについて、きちんと話をしたいと思います。
製品開発を行い、製品を作るとき、
「より広いエコシステムの中でどう競争していくか」を考えた上で意思決定をしなければなりません。
Cardanoというプロトコルを見ると、
CardanoはSuiやAptos、Ethereum、Solana、その他多数のスマートコントラクトシステムと競争しなければならない立場にあります。
我々には1つの大きな「流動性プール」「トークンフロー」「取引量」「DApp」「ユーザー」などがあり、
そこをめぐって競い合っています。
つまり、予算というのは単に「お金を使うために使う」のではなく、
「どうやって勝つかというビジョンを追いかけるために使う」ものなのです。
とてもシンプルです。
これはAppleがiPhoneを考えるとき、MicrosoftがWindowsを考えるとき、
GoogleがAndroidやGeminiを考えるとき、OpenAIがChatGPTを考えるときとまったく同じです。
- 顧客はどこから来るのか?
- 取引量はどこから来るのか?
- TVL(Total Value Locked)はどこから来るのか?
- DAppはどうやって増やすのか?
- どうやってエコシステムを成長させるのか?
こうした問いに答えるために、予算があるのです。
だから予算は、
「どんなコア機能が必要なのか」
「どんな哲学に従うのか」
「どこを目指して競争力を持つのか」
を反映するべきものなのです。
しかも、これは常に変化するターゲットです。
私が暗号資産業界に参入したばかりのころ、
競争力を持つために必要だったのは、単にビットコインをフォークして通貨政策を少し変えるだけでした。
それが「アルトコイン」というもので、LitecoinやFeathercoinなどがそれにあたります。
しかし2013年には状況が大きく変わりました。
独自のシステムを作り、独自のコード、独自のコンセンサスアルゴリズムを書き、
ビットコインの機能とは異なる新しい機能を加える動きが始まりました。
- 私がBitsharesでやったこと
- Dan Larimerがやったこと
- Ethereumでやったこと
- NXTコミュニティがやったこと
こうして時代は大きく変わってきました。
- 2017年はまた別の時代
- 2020年もまた別の時代
- 2021年はさらに劇的に変わった
- そして今、2025年。業界はまったく新しい地平にあります。
だから、プロダクトのロードマップや製品開発予算を考えるときには、
常に「その時点での業界全体像」を見て判断しなければならないのです。
この文書、つまりみんなが目にして、DRep(Delegated Representative)によって承認されたインフォアクションは、
Cardanoのロードマップです。
このロードマップでは、いくつかのカテゴリーを設定して、こう考えています。
「スケーラビリティに関して、やるべきことが山ほどある。」
「ハウスクリーニング(内部整理)もたくさん必要だ。」
ただしここで言うスケーラビリティとは、過去のスケーラビリティ問題を指しているわけではありません。
Cardanoはこれまで、存在してきた時点においては非常にパフォーマンスの高いプロトコルでした。
問題はこれからのスケーラビリティです。
- どうやって、毎日数十億件のトランザクションを処理するシステムを作れるか?
- どうやって、他のプロトコルが進化していくスピードについていくか?
このため、様々なアイディアがここに盛り込まれています。
なぜなら、どのアイディアが業界の主流(vogue)になるかは、まだ確実にはわからないからです。
たとえば、
- ステートチャネル
- ロールアップ
- Ouroboros Leios
- Mithrilエコシステムの継続的構築
こうしたものがあります。
同時に、Cardanoをより使いやすいエコシステムにするための整理整頓(ハウスクリーニング)も必要です。
次に、使いやすさ(Usability)と実用性(Utility)に目を向けましょう。
ここでの問いは、
「Cardanoを、できる限り簡単に開発できるプラットフォームにするにはどうすればいいか?」です。
そのために、
- Plutus
- Plinth
- Aiken
- アイデンティティ
- プライバシー
- インテント
- Babel fees(バベルフィー:異なる通貨で取引手数料を支払える仕組み)
こういったものに取り組んでいます。
特にバベルフィーは、業界全体が進もうとしている非常に重要な方向性における最初の一歩です。
次に、
「どうやってエコシステムにユーザーを呼び込むか?」
という問題があります。
ここでは、相互運用性(Interoperability)が基盤的に不可欠な要素となります。
- 他のブロックチェーンと対話できること
- 他のチェーンと取引できること
- 他のプロジェクトと連携できること
これが必要です。
そのため、パートナーチェーン(Partner Chains)の枠組みは極めて重要な役割を持ちます。
これにより、たとえばWorld Mobileのような大規模プロジェクトをCardanoのエコシステム内に留めることができます。
そうしなければ、彼らは離れてしまうかもしれません
この三本柱(スケーラビリティ・使いやすさ・相互運用性)は、
IO(Input Output)側の取り組みの基礎となっています。
さらに、研究(Research)においても、
「今後3〜5年で競争力を保つために必要な基盤的アイデア」をまとめるビジョンが掲げられています。
ここには次のような理解が織り込まれています。
- ガバナンスへの継続的な投資
- ワークショップなどの実施に対する継続的な投資
- リーダーの育成と登用
たとえば、ノード(Node)の多様化も重要です。
- RESTノードを必要なレベルまで仕上げること
- Goノードを必要なレベルまで仕上げること
- TypeScriptノードを必要なレベルまで仕上げること
これにより、さらに多様な考え方やエンジニアたちをエコシステムに呼び込むことができます。
ここで重要なことがあります。
Cardanoを殺す(つまり失敗させる)最大の要因──
それは、実際にはあらゆる企業やプロジェクトでも同じことですが、
ビジョンを理解しないままバラバラに切り刻むことです。
製品ビジョンというものは、
単一のアイデアではなく、多くの要素を組み合わせたものです。
それを理解せず、部分的に取り出して破壊していくと、
絶対に競争力のあるプロダクトは作れません。
ここで例としてスマートフォンを挙げましょう。
スマートフォンとは、多くの要素の集合体です。
- カメラ
- CPU
- メモリ
- 高度なネットワーク機器
- アンテナ
- 空間や時間における端末の向きや動きを感知するセンサー
- マルチタッチディスプレイ
- 割れにくい特殊なガラス
- 高速充電でも爆発しない高性能バッテリー
- スピーカー
- 防水機能を備えた筐体
これらすべてが組み合わさって、初めてスマートフォンは成り立っています。
もし仮に、委員会方式でスマホを作ろうとしたらどうなるでしょうか?
- 「タングステンは高いから、銅に変えましょう」と誰かが言う
- しかしなぜタングステンが必要かを理解していない
- 「このマイクは好きじゃないから別のものにしましょう」と言う
- でも筐体に収まらないサイズだったりする
こうして、知識も理解もない人々が議論を重ねたら、決して製品は完成しません。
そして、これは大企業でよく起こる問題でもあります。
- 役人主義(ビューロクラシー)
- 「何を作るか」「どう作るか」で永遠に議論して前に進まない
本当に競争力のある製品を作るには、
「設計思想の一貫性」を守る必要があるのです。
たとえば、
- ノード(Cardanoノード)を整理・最適化する話をするときは、 他の人々が競争できるように、別のノードを構築しやすくする話も含まれています。
- スケーラビリティを追求する話をするときは、 すべての人に共通して恩恵があるという意味でもあります。
- そして、これはCardanoを採用する理由(アダプションの理由)を強化するストーリーでもあります。
つまり、これは単なる「作業のための作業」ではありません。
プロダクトビジョンそのものです。
もし、単なる時間と材料(Time and Material)だけにお金を払いたいなら、
この提案は適していないでしょう。
今回の提案には、約150名のフルタイムエンジニア(FTE:Full Time Equivalents)、
そして科学者たちが含まれています。
私は、「失敗するかもしれないこと」に取り組みたいとは思いません。
そして、私が望まないのは、
人々が製品ビジョンを開き、バラバラにして、勝手に優先順位を入れ替えることです。
今回あなたたちが出資するのは、
- IO(Input Output)のビジョン
- 私たちが「これが必要だ」と考える内容
- Cardanoを競争力あるものにするために必要なこと
そしてその実行コストです。
価格は決まっています。
それが、これを実行するために必要な金額です。
一部は利益も含まれていますが、
実際は(もしADA価格がこのままだとすれば)損失が出る可能性もあります。
ADAが上がれば利益になりますが、下がれば私たちは損をします。
そのリスクも私たちが背負っています。
つまり、あなたたちが出資するのは、
- 私たちのビジョン
- 製品開発への考え方
- 必要な機能群 に対するものです。
もし「違うやり方をしたい」と思うなら、それはそれで構いません。
ただし、その場合はまったく別のメカニズムが必要です。
たとえば、「iPhoneをパブリックに開発する」みたいなものです。
できなくはありません。
- それが「Linux」の世界です。
- 30年かかって、ようやくそれなりの形になりました。
- しかも、今でも何千ものバリエーションやフォーク(派生版)が存在しています。
誰も「そのままのLinuxカーネル」なんて使っていません。
- Red Hat
- Ubuntu
- Arch Linux
- Qubes OS
など、必ずカスタマイズして使っています。
オープンソースで素晴らしいアイデアが生まれることはありますが、
進み方は「年単位」です。
- そこにはトークンもありません。
- 激しい競争もありません。
- 「超高速で動く」必要性もありません。
基本的には「保守的に動く」傾向があります。
しかし、もし競争的なプロトコル同士で勝ちたいなら、
「素早く動くアジャイルなロードマップ」が必要です。
そして、こう言われるかもしれません:
- 「分散化(Decentralization)はどうするんだ?」
その答えはシンプルです。
分散化にも投資すればいいのです。
- Pragmaの予算提案を全面承認する
- 多くの人々がプロトコルを深く理解できるように支援する
- ユーザーを呼び込むための製品ビジョンを持った人材に投資する
これらは二者択一ではありません。
だからこそ、NCL(Net Change Limit)を大きく取ったことには意味があるのです。
それにより、DRepたちは複数の賭けを打つことができるようになりました。
たとえば:
- IO(Input Output)への賭け
- Pragmaへの賭け
- 商業化(Commercialization)への賭け
そして、こうした賭けのあとで、
「今ある組織(インスティテューション)を続けたいか、変えたいか、閉鎖したいか、入れ替えたいか」を
冷静に話し合うことができるのです。
財務(Treasury)には17億ADAが存在します。
つまり、あなたたちには判断する権利があります。
ただし、できないことが1つあります。
それは、
「ある人が提示したパッケージ(提案全体)に対して、“全部はいらないから、好きな2〜3個だけ選んで買う”」
というやり方です。
なぜなら、
- 私たちにはエンジニアたちがいます。
- 仮に150人いるうち30人しか使わないなら、残りはどこか別のプロジェクトに再配置しなければなりません。
- そして一度移った人材は、戻ってきません。
なぜなら、
新しい製品、新しいプロジェクト、新しいインセンティブ体系に馴染んでしまうからです。
つまり、あなたたちは
- 世界でも屈指のクリプト技術者・研究者チームを、
- 単なる時給ベースの外注要員(Time and Materialチーム)に
- 落とし込んでしまうことになるのです。
それは、
単に「Ouroboros Leiosだけが欲しい」
という短絡的な理解によって、
Cardano全体のビジョンを破壊する行為でもあります。
だからこそ、私たちは最初からこう言っています。
「これはパッケージです。」
- 私たちは、意図を持ってこれを組み立てました。
- パッケージ全体に賛同できるなら、賛成票を。
- 賛同できないなら、反対票を。
- でも、パッケージを勝手に開けて一部だけ取るということは、 してはいけない。
あなたたちが購入するのは、
- 私(Charles Hoskinson)自身の時間
- 私の会社(Input Output Global)の時間
- 私たちのビジョン
- 私たちの戦略
それがこのパッケージに込められています。
私たちの人材を、
単なる「FTE(労働力)」としてモノ扱いし、
給与が高いか安いかを値切るようなことは、
絶対に受け入れません。
私ははっきり伝えています:
「IOGの参画に必要な価格はこれです。」
- もし「絞れ」と言うなら、それは単純に「私たちを選ばない」というだけです。
- それならそれで、問題ありません。
- ビジネスとして普通のことです。
私は建設会社も経営しています。
そこでは、同時にいくつものプロジェクトが存在しています。
- ある人は「病院を建ててほしい」と依頼してくる。
- 別の人は「家を建ててほしい」と依頼してくる。
- さらに別の人は「南ダコタ州の空軍基地でコンクリート作業をしてほしい」と依頼してくる。
これらはすべて、同じリソース(人材や設備)を取り合うことになります。
そこで私はこう考えます。
「どのプロジェクトが、経済的に最も良い投資先だろうか?」
そして、リソースを最適な場所に割り当てるのです。
誰も、「病院じゃなくて家を選んだじゃないか!」とは怒りません。
みんな、これはビジネスだと理解しているからです。
今回のCardanoにおいても、まったく同じです。
- エリートな人材たちが、Cardanoのために働こうとしている。
- しかも、これまでずっと無償で取り組んできた。
そんな彼らが今、
「これが必要です」と言っています。
もしあなたたちが資金提供すれば:
- スケーラビリティ
- 相互運用性
- エコシステム全体の競争力向上
- 戦略的な支援
- 成長に向けたプランニング
こうした恩恵を受けることができます。
それがこの提案の対価です。
そして、もしこの提案を拒否するなら、
それも問題ありません。
ただ、その場合、私たちは他のプロジェクトにリソースを割り当てるだけです。
これは、DRepたちが決めるべきことです。
そしてこれは、世界中すべてのビジネスで当たり前に行われていることです。
- AMDのリサ・スーCEOが、同社を25億ドルから2500億ドル企業に育てたときも
- AppleがNeXTを買収し、スティーブ・ジョブズを呼び戻し、破産寸前から1兆ドル企業にしたときも
- サティア・ナデラがMicrosoftを再建したときも
みんな、リーダーがビジョンを持ち、必要な資源を要求し、戦略を実行したのです。
私は、
- 5%のADA供給量を要求しているわけでもなければ、
- 10%を要求しているわけでもありません。
- イーロン・マスクのように500億ドルの報酬パッケージを求めているわけでもありません。
私はただ、
「エンジニアたちのコストを賄う資金と、少しばかりの利益」
それだけをお願いしているのです。
そしてその代わりに、私たちは引き続き全力でCardanoのために働くと約束しています。
多くの人が言います。
「ロードマップが完成していないじゃないか」と。
ですが、こう言わせてください。
「ロードマップは完成するものではありません。」
なぜなら、
2025年に求められるスケーラビリティの定義は、
2020年に求められていたスケーラビリティとはまったく違うからです。
私たちのCardano開発に関する契約は、2020年で終了しています。
それ以降は、ベストエフォート(最善努力)でコードを書き続けてきました。
つまり、
2020年以降、Cardanoのためにコードを書いても、1ドルの収入も得ていません。
これは事実です。
文句を言うつもりはありませんが、
これが現実です。
しかし、私たちも企業であり、
ビジネスとして考えなければならないタイミングが来ました。
だからこそ、
「これだけのコストが必要です」と、はっきり提示したのです。
そして、あなたたちは決めなければなりません。
- そのコストに見合う価値があると思うか?
- “ジュースは絞るだけの価値がある”(worth the squeeze)と思うか?
ただし、
私たちの会社を解体して、細かく値切ったり、交渉したりすることは許されません。
今回提示したのは、私たちの正式な入札(Bid)です。
- 受け入れるか
- 拒否するか
それだけです。
もし受け入れれば、
- エンジニアたちの力
- 製品チームの力
- 私たちが守ってきたプロトコル
これらすべてがあなたたちのために動きます。
私には、Cardanoを成功させたいという父性的な願望(paternal desire)があります。
なぜなら、これは私のレガシー(人生の足跡)の一部だからです。
だから、
仮に今回の入札に落ちたとしても、Ouroboros Leiosは実装します。
- これは、Basho時代をきれいに閉じるための素晴らしい方法だからです。
さらに、私たちはMidgardというプロジェクトにも戦略的投資を行っています。
これらの組み合わせにより、
Basho時代は十分に終結できると私は考えています。
もし今回の入札が通らなかった場合、
私たちは責任を持って撤退を始めます。
そして、これが最後のHaskellベースでの実装作業になります。
もし通った場合は──
私たちは引き続きこの部屋に残り、Cardanoの分散化(decentralization)に取り組みます。
ただし、
「分散化」というのは、“誰も意思決定をしない”という意味ではありません。
分散化とは、
- 誰か、あるいは機関に、一定期間の権限を委任すること を意味します。
そして、その権限を持った人や機関は、
- いつでも解任できる
- 方向転換できる
これが「本当の分散化」です。
私たちは本気で、
Intersectを通じて完全に分散化された製品開発機能(decentralized product function)を作ろうとしました。
そして、いくつかの成果もありました。
しかし、
今この予算について文句を言っている人たちの多くは、
かつてIntersectについても文句を言っていました。
彼らはこう言ったのです。
- 「Intersectは官僚主義だ」
- 「Intersectは何も達成していない」
つまり、
「両方いいとこ取り」はできないということです。
完全な分散化された製品機能を作り上げるには、
何年もかかります。
これはLinux Foundationのような組織を見るとよくわかります。
ただ、ここで希望を持てるのは、
いくつかの励みになる動きも起きているということです。
たとえば:
- Pragmaの台頭
- 多くのオープンソースインフラプロジェクトの形成
- 異なるプロジェクト同士が対話を始めたこと
私たち(IO)が推進してきたのは、
単なる「IOの予算とビジョン」を求めることだけではありませんでした。
同時に、
- CDC(Cardano DeFi Coalition)による資金提供
- 新たな担い手たちの育成
これを進めるための提案もしてきました。
この目的は、
これらの新たな担い手たちが、
- 製品の標準化(Standardization)
- Cardanoを特別なものにしている要素の管理(Custodianship)
に、段階的に関わるようになることです。
どんな予算も、すべての課題を一気に解決することはできません。
しかし、2025年のこの暫定予算は、私はかなり良いものだと考えています。
次に、「キャッシュグラブ(Cash Grab)」についての話になります。
最近よく耳にするのは、
「みんな財務(Treasury)からお金を取りたがっているだけだ!」
という批判です。
ですが、たとえそうだとしても──
DRepたち(Delegated Representatives)には「精査する責任」があります。
ここで言っておきます。
NCL(Net Change Limit)は規制メカニズムではありません。
DRepたちが、
すべての提案を一つひとつ見て、支持するもの・支持しないものを見極め、
最終的に絞り込んでいく。
これが本来の規制メカニズムです。
そして、コミュニティはすでに72%の賛成票によって、
「350百万ADAの枠内に収める」という方針を決定しました。
つまり、
- 350百万ADAという枠(ウィンドウ)を確保
- その中でDRepたちが選択を行う
というプロセスが、すでに民主的に承認されているのです。
にもかかわらず、
未だに文句を言い続け、議論を引きずろうとする人たちがいます。
ですが、それはもう終わった話です。
次にやるべきことは、こうです。
- DRepたちがすべての提案を見直し
- 取捨選択し
- 350百万ADA以内に収める
それだけです。
この作業をどう進めるか、どのプロセスを取るかは、DRepたち自身の裁量に任されています。
もちろん、私たちからも多くのアドバイスは提供しています。
ちなみに──
中には真面目とは言えない提案も存在します。
- たとえば、「Huskyコイン」のキャッシュグラブなどがその典型です。
こうした提案を持ち出して、
- 「これが全体像だ!」
- 「みんな金目当てだ!」
と決めつけるのは、不公平です。
むしろ、実態はこうです。
- 「新しいことを試みよう」
- 「分散化を推進しよう」
- 「代替オプションに戦略的投資をしよう」
- 「これまで実績を作ってきたビジョンを継続しよう」
と、様々な方向からの提案が集まっているのです。
最終的に、
- YesとNoを投票し、
- すべてが決まったら、
- 結果に従う。
これが健全なプロセスです。
私は現在、ベンダー(供給者)の立場にいます。
そして、
エコシステムに向けて、私たちが提供できるサービスとその対価を伝えようとしています。
私たちは、
- 単なる時間と材料(Time and Materials)で働くソフトウェア開発会社ではありません。
私たちは、
イノベーション企業(Innovation Company)です。
私たちは、
- 製品(Products)を開発し、
- エコシステム(Ecosystems)を構築し、
- 戦略的な整合性(Strategic Alignment)を提供します。
そして、
これまで素晴らしい実績を積み重ねてきました。
今回私たちは、
- イノベーションの継続
- プロダクト開発の推進
- Cardanoにおける戦略的成長の支援
これらのためにサービスを提供しようとしています。
そして、
それに必要な対価(コスト)を明示しました。
あなたたちは、
「そのコストを支払うかどうか」を決めるだけです。
- 支払うなら、私たちは全力でコミットし続けます。
- 支払わないなら、別の道を選ぶだけです。
そこに、
- ドラマはありません。
- 議論も必要ありません。
これは単なるビジネスなのです。
そして、
あなたたち(コミュニティ)が主導権を握っているのです。
これが、
分散型ガバナンス(Decentralized Governance)というものです。
- もう創設者(Founding Entity)は存在しません。
- ジェネシスキー(Genesis Keys)も存在しません。
Cardanoは、
完全に分散化された、自律的なエコシステムなのです。
そして、
「NO」と言える力があることこそ、
分散化されている証拠です。
ただし、
「本物の決断(Real Decision)」が必要です。
- 「いいとこ取り」はできません。
- 「ケーキを食べて、同時に持っておく」こともできません。
つまり、
- 「Input Output(IOG)を**公共機関(Public Institution)**のように扱い」
- 「彼らの事業運営やリーダーシップを勝手に引き裂き」
- 「好きなように対案を出してくる」
──そんなやり方はできません。
もし人を雇いたいなら、
その人が提示した条件を受け入れるか、受け入れないかを決めるだけです。
そして、
受け入れないなら──
その人は別の場所に行くだけです。
これが、
Cardanoエコシステムにおける大人の決断(The Great Adulting)です。
他のブロックチェーンエコシステムを見てみましょう。
そこには、
「恒久的な財団(Paternal Eternal Foundations)」が存在しています。
- 巨大な資金プールを持ち、
- 選挙によらない、あるいは見せかけの選挙で選ばれた理事たちが、
- みんなの代わりに意思決定を行っています。
その結果、あなたたち(一般のホルダー)はどうなるか?
- 単なる傍観者(Passive Speculator)
- 単なる観客(Passive Participant)
になってしまいます。
そして、
「あの決定には賛成だ」「あの決定は気に入らない」
と、
まるでサッカーの試合を観戦しているかのようにコメントするだけになります。
しかし、Cardanoは違います。
Cardanoでは、あなた自身が前列に座っています。
そして、
- あなたには声があります。
- あなたには意思決定の権利があります。
私たち(IOG)の義務は、
「何が必要か」をあなたたちに正直に伝えることです。
そして、
それを伝えた上で、
意思決定のプロセスに参加することです。
このプロセスは、
最初から非常に明確に設定されています。
つまり:
- まず上限(NCL)を設定する
- DRepたちが和解(Reconciliation)を行う
- 予算案に対してYes/Noの投票を行う
- それが正式な予算となる
もしそのプロセスが気に入らなければ──
来年、変えればいいのです。
- 違うやり方を作りたいなら、
- 憲法(Constitution)を書き換えたいなら、
それが可能です。
私たちはエコシステムとして、
常に改善を目指していけます。
私が考えるに、
Cardanoには驚くべき可能性が秘められています。
たとえば──
- Bitcoin DeFi(ビットコインDeFi): 私たちは、ビットコイン領域において最大のAVS(アクティブ・バリデーション・サービス)システムを築きつつあります。
- Midnight(ミッドナイト): これにより、数百万のユーザーがCardanoエコシステムに流れ込むでしょう。
- Partner Chains Framework(パートナーチェーンの枠組み): これは、Cardanoに膨大な価値を呼び込む新しい方法論です。
Midnightのおかげで、
私たちは初めて、
- 他の暗号資産と本格的につながる(インターオペラビリティ) ことができるようになりました。
そして、
このために──
- 数千万ドル(=何十億円)規模の私個人の資金を投じてきました。
- カルダノネイティブ資産(Cardano Native Assets)を、
- より広い暗号資産市場(Crypto Space)と接続するために、
- 本当に、莫大なリソースを投じてきたのです。
なぜなら、
他の創設組織たちは、これを完全に無視していたからです。
もし違うなら、こう聞きたい。
- 「Custodian(カストディアン)たちへの支払いを示す領収書を見せてほしい」
- 「取引所への上場支援活動を示す記録を見せてほしい」
- 「マーケットメイキング活動の証拠を見せてほしい」
見せられるなら、どうぞ見せてください。
でも、実際には存在しません。
つまり、
これらの取り組みは、私たち(IOG)が「ギフト」としてエコシステムに与えたのです。
Midnightが成功すれば、
Cardano全体に、
- 膨大な注目
- 厳しい精査(scrutiny)
- そして価値の上昇(value lift)
がもたらされるでしょう。
つまり、
私たちは優れた戦略を持っています。
そして、
今提示しているこの予算提案は、
- それらの取り組みを完成させ、
- しっかりした基盤を築き、
- 毎年その上に積み上げていくための エンジニアリングコストを示しているのです。
これによって、
- ユーザー数
- トランザクションボリューム
- TVL(Total Value Locked)
- 価格
──これらすべてを成長させるための道が開けます。
あなたたちも、
それを望んでいるのではないでしょうか?
これが、
私たちの戦略なのです。
そして、
これを実現するために必要なコストを提示しているだけなのです。
もしあなたたちが、
「違うやり方を選びたい」と思うなら──
それももちろん構いません。
その場合、
次の問いに答える必要があります。
「私たちは、どうやって競争していくのか?」
- 新しい開発者が入ってきたとき、なぜCardanoを選ぶのか?
- 他のブロックチェーンではなく、なぜここでビルドすべきだと説得できるのか?
- Cardanoの強み(USP:Unique Selling Propositions)は何なのか?
- それを誰が管理・育成していくのか?
完全に分散型で一から作りたいなら、
それも一つの道です。
でも、現実として──
今の段階では、
- TXPipe
- DC Spark
- Input Output(私たち)
といった企業に、
一部のUSP(強み)の管理を委託する必要があるのです。
つまり、
私たちは今、
- 暫定予算(Interim Budget)
- 暫定体制
のもとで運営しているということです。
そして、今後の選択肢は2つしかありません。
戦略的に投資し、さらに分散化を進める。
「今のままで十分だ」として、分散化のみに投資し、
プロダクト開発や技術開発は一時停止する。
ここで、
重要な問いが生まれます。
「その決断は、市場にどんなシグナルを送ることになるのか?」
- 新しい開発者にどう映るか?
- 新しいプロジェクトにどう映るか?
- 新しい投資家にどう映るか?
あなたたちは、
その決断の結果を引き受けることになります。
私はここで、
「Aが正しい」「Bが間違っている」と断定するつもりはありません。
私は、
私自身の意見をはっきり示しました。
そして、
その意見に基づいて、
具体的な提案とコストを提示しています。
最終的には──
あなたたち自身が決めることです。
そして、
その決断の結果を、
あなたたち自身が引き受けるのです。
今、多くの人々が──
無意識に、または意図的に──
「学習された無力感(Learned Helplessness)」の態度で行動しています。
これは、
多くの現代民主主義国家で見られる現象と同じです。
私たちは日常的に、
- 本当にリーダーを選べているわけではない。
- 外交政策・金融政策・財政政策・社会政策にも、実質的な影響力を持てていない。
- 選挙は、既に決められた方向性への「承認作業」になっているだけだ。
──そんな現実を感じています。
だから、
多くの人が皮肉屋(Cynical)になり、
批判的(Critical)になり、
リーダーたちを不正当だ(Illegitimate)と見なすのです。
これは、人間として自然な反応です。
しかし、
このCardanoの予算プロセスにおいて、
この態度を持ち込んでしまえば──
- 結果は非常に悪いものになるでしょう。
- 優れた人材たちが去ってしまうでしょう。
逆に、
「ここには本当の主体性(Real Agency)がある」
と理解することができれば──
- 素晴らしい成果を生み出すことができます。
つまり、
すべては──
- あなたたちがどう自分自身を表現し、
- どう人と協力し、
- どうコラボレーションしていくか
にかかっているのです。
私は、
今の状況に非常にフラストレーションを感じています。
なぜなら、
表面上は「支持している」と言いながら──
- 実際には「無償労働を強いる」ような構造提案をしてきたり、
- 大幅なスコープ削減を求めたりしている人たちがいるからです。
これは、
単に不誠実(Not Genuine)なのです。
- ナイーブなのではありません。
- 「ただの無知」でもありません。
意図的に、過去の恨みを清算しようとしているだけなのです。
私はもう、
こうした茶番に付き合う気はありません。
私は、
これまでの10年間で、すでに十分な実績を築きました。
そして、
これからも新しい素晴らしいものを生み出していきます。
- 私たちは製品を作ります。
- 私たちはエコシステムを作ります。
- 私たちは新しいことに挑戦します。
たとえば──
- ワイオミング州ジレット市に、7万平方フィートの医療施設を建設中です。
- 40人の医師が働き、13,000人の患者を受け入れます。
- アンチエイジング製品の開発
- グローイングプラント(光る植物)の研究
- ダイアウルフ(再生絶滅プロジェクト)
こうしたプロジェクトも、すべて並行して進めています。
つまり、
私たちには、
有限の時間しかないということです。
私は、
- Cardanoが大好きです。
- Cardanoコミュニティが大好きです。
- カンファレンスに行くのも大好きです。
でも、10年を投じたこのプロジェクトに対して──
無制限に、無償で、侮辱されながら働き続ける契約はしていません。
だからこそ、
今ここで必要なのは──
- 本音で話すこと
- 厳しい現実を直視すること
- 大人として行動すること
なのです。
私たちは、
このプロセス全体を通じて非常にフェアに、そして率直に対応してきたと自負しています。
私は、
今この瞬間(2025年4月25日)、
- 率直な意見
- 現実的な状況認識
- そして提案への誠実な意図
をあなたたちに伝えています。
そして、
次に来るのは和解プロセス(Reconciliation Process)です。
- ネットチェンジリミット(NCL)は可決されました。
- 72%以上の人が、「350百万ADA枠で進める」と決めました。
ですから、
これ以上その枠について再び議論する必要はありません。
これからやるべきことは──
- すべての提案を見直し、
- 取捨選択し、
- 予算としてまとめ、
- 投票で承認する
それだけです。
そして、2026年にはさらに良いプロセスを作りましょう。
- もっと良い憲法(Constitution)を作り、
- より強い制度(Institutions)を作り、
- DRepたちにも、より強いリソースと支援を提供しましょう。
これこそが、
前進の道なのです。
- これが確実性(Certainty)を作り、
- これが成熟(Maturity)を示し、
- これがCardanoを強くしていくのです。
そして忘れないでください。
- DRepたちは、あなたたち自身が選んだ代表者たちです。
- 彼らは、私が指名したわけでも、強制されたわけでもありません。
- あなたたちが投票で選んだのです。
だから、
もし今のDRepたちが気に入らないなら──
次の選挙で別の人を選べばいいのです。
それも、あなたたち自身の選択なのです。
さて──
私は心から、こう思っています。
「私は、Cardanoの成長と成功にこれからも関わり続けたい。」
- このプロジェクトを生涯の仕事(Life’s Work)として続けたい。
- エコシステムへの投資を続けたい。
- Cardanoを、より大きく、より成功したものにしたい。
そして今、私は──
ビジネスとして、
「これを実現するために必要なコストはこれだけです」
と、誠実に提示しています。
もしあなたたちがそれに同意するなら、
賛成票を投じてください。
もし同意しないなら、
反対票を投じてください。
ただし、
もし反対するなら──
- 別のリーダーを選び、
- Cardanoを次の段階へと進める責任を引き受けることになります。
それもまた、あなたたちの選択です。
私はどちらになっても受け入れる準備ができています。
しかし──
私はここに、はっきりと線を引かざるを得ません。
過去5年間、
私たちはほぼ無償で働き続けてきました。
そして、
今、私たちはこう宣言します。
「これ以上はできません。」
- 社員たちを守るため
- 会社の健全性を守るため
- 常識と自己尊重のため
線を引く必要があります。
これが、
私たちの立場(What We Are)です。
そして、
この条件で十分だと考えるかどうかを、あなたたちが決める番です。
ここまで、
私たちの話を聞いていただき、本当にありがとうございました。