カルダノ分岐騒動の“全体像”と”堅牢性の証明”──何が起きて、どう直り、なぜ止まらなかったのか?知っておくべきブロックチェーンの仕組みをやさしく徹底解説

第1章 はじめに──なぜ今回の出来事を解説するのか
2025年11月22日、Cardanoはその歴史の中でも最大級の“緊急事態”に直面しました。
ネットワークの一部が分岐し、ウォレットや取引所の一部で表示がずれ、
SNSでは「Cardanoは落ちた」「ハッキングだ」「終わった」—そんな誤情報が一気に波のように広がりました。
しかし、実際に起きていたことはそのイメージとはまったく違っていました。
- ネットワークは一度も止まっていなかった
- ブロック生成も継続していた
- 資産も守られていた
- プロトコルは破られていない
- 設計どおり、“自然に元へ戻っていく”動きを続けていた
そして何より、この危機を通じて Cardano全体がひとつにまとまった瞬間 が生まれました。
これはただの“技術トラブル”ではありません。
これは、
Cardanoというプロジェクトがどれほど強く、しなやかで、そして深い結束を持っているか
それを世界中に示した出来事でした。
なぜ「事実の整理」が必要なのか?
SNSやニュースの世界では、ときに“もっとも刺激的な言葉”が最も速く広がります。
しかしブロックチェーンの世界では、正しい情報・丁寧な理解が何より重要です。
特に今回のような出来事では、
- なにが実際に起きたのか
- どこに問題があったのか
- どうやって復旧し
- なぜネットワークは止まらなかったのか
- そして、この事件で何が明らかになったのか
これを整理しないと、
誤解だけが“常識”として残ってしまう からです。
チャールズ・ホスキンソン氏が憤りをもって語ったように:
「誤ったナラティブは、事実より早く世界を歩き回る。
6ヶ月後には“ティーンのミスでCardanoが落ちた”が常識になる。」
だからこそ、本記事では「Cardanoに本当に起きたこと」を、
初心者の方でも理解できるように、丁寧にひとつひとつ説明していきます。
この事件は“弱さ”ではなく“強さ”を示すものだった
今回の出来事を詳細に追っていくと、
その本質は「攻撃」でも「バグ」でもありませんでした。
それは、
Cardanoが決して止まらないプロトコルであることの実証であり、
コミュニティが強靭であることの証明でした。
そして、
ホスキンソン氏が動画「Newfound Unity」で語ったように:
「今日は、長い間で一番“コミュニティがひとつになった日”だった。」
この“団結”は偶然ではありませんでした。
- 世界中のSPOがメンテナンスを連携しながらアップグレード
- Intersect・IOG・CF・Emurgoが即座に集結
- 開発者がウォールームで30時間以上の不眠対応
- コミュニティが誤情報を正し、事実を広め続けた
- そして、ネットワークは止まることなく走り続けた
Cardanoは倒れず、折れず、止まらず、戦車のように頑丈でした。
これは、単なる復旧ではありません。
「分散型プロトコルは、本当に攻撃に耐えられるのか?」
という問いへの明確な答えでもあります。
参考記事:
この記事で伝えること
この記事では、以下のすべてを“初心者にも分かりやすく”解説していきます。
- 何が起きたのか(時系列)
- どうしてチェーンが分岐したのか
- なぜCardanoは止まらなかったのか
- 復旧の裏側で何があったのか
- SPO・開発者・創設陣がどう動いたのか
- なぜ「10.1.4」やノード多様性が重要だったのか
- そして、この事件で見えた“Cardanoの真の姿”とは何か
さらに、
ホスキンソン氏が語った 「これからの90〜180日が決定的になる」 という未来への視点も共有します。
(Midnightのローンチ、Leios、DeFi拡張…すべてが繋がっています)
第2章 結論:Cardanoは壊れていないし、止まってもいない
まず最初に、今回の分岐騒動についてもっとも重要な事実をはっきり言い切ります。
■ Cardanoは壊れていません。
そして、一度も止まっていません。
SNS上では、
- 「Cardanoはダウンした」
- 「ネットワークが死んだ」
- 「ハッキングされた」
- 「PoSは脆弱だ」
といったFUDが大量に流れました。
しかし、ホスキンソン氏自身が強調したとおり:
「Cardano didn’t go down.(Cardanoは落ちていない)」
実際のネットワーク挙動は、こうです。
● ネットワークは起動し続けていた
ブロック生産も継続。
ネットワーク全体が停止する“落ちた状態”は一度もありません。
Cardanoの「止まらない設計(liveness優先)」が、そのまま発揮されました。
● 資産はすべて安全だった
ADAも、各種トークンも、UTxOも、損失は一切なし。
資金安全性(safety property)は完全に保たれていました。
● プロトコルは破られていない
今回利用されたのは、
「2022年から存在していたレアな暗号ライブラリのバグを利用した、特殊なdelegationトランザクション」
(=プロトコル破壊ではなく“実装の例外ケース”)
つまり Cardanoの根幹である:
- Ouroboros
- コンセンサス
- 暗号署名
- ネットワークセキュリティ
は まったく傷ついていません。
● チェーンは“自然なメカニズム”で元に戻った
CardanoのNakamoto(Ouroboros)型の特徴である
「短期的な揺らぎを許容しつつ、最終的に“正しいチェーンへ収束する」
という設計がそのまま機能しました。
- 健全なチェーンA
- 毒入りトランザクションを含むチェーンB
2つが並行して進んだものの、
多数派のSPOが採用した“健全なチェーンA”が自然と伸び、最終的に正統チェーンとして確立。
ネットワーク停止も、強制巻き戻しも一切なし。
これが、
“止まらないまま正しい状態に戻る”
というCardanoの設計思想そのものでした。
● Cardanoは、“悪意ある攻撃の最悪級シナリオ”に耐えた
ホスキンソン氏は今回の件をこう総括しています。
「これはPoSでほぼ不可能と言われてきたレベルの“傷のない復旧”だった」
そしてもう一つの言葉が象徴的です。
「Ouroborosは戦車のように頑丈だ」
実際、今回のようなケースは
“最悪級のエッジケース”としてプロトコルが想定していた範囲内でした。
にもかかわらず、
- ネットワークは一度も止まらない
- 資金は無傷
- コンセンサスは崩れない
- 自然収束で正しいチェーンへ戻る
これは プロトコルに根本的な欠陥がない ことの何よりの証拠です。
■ よく見る誤解(完全否定されます)
❌「Cardanoはダウンした」は誤り
→ ネットワークは動き続けていました。
❌「ハッキングされた」は誤り
→ 暗号・コンセンサスは無傷で、単なる実装例外ケース。
❌「Cardanoは止められた」は誤り
→ 一度も止まっていません。強制リセットもなし。
❌「巻き戻された」は誤り
→ SPOの自律判断+自然合意形成による“正常な収束”です。
Intersectも公式に発表しています:
「ネットワークはオンラインを維持した。これはダウンではない。」
(Myths vs Facts)
■ Cardanoは“耐えて、乗り越えて、成長した”
今回の騒動は、
Cardanoが “壊れた” のではなく “壊れなかったことを証明した” 出来事でした。
さらにホスキンソン氏はこう述べています。
「どれだけ殴られても、Cardanoは立ち上がる」
これはポジティブ誇張ではなく、
今回の事実そのものです。
- 止まらず
- 壊れず
- 資金安全性を保持し
- 設計思想どおり自然に収束し
- コミュニティが自律的に対応した
PoSネットワークでこのレベルの挙動ができるチェーンは、
ほとんど存在しません。
■ そして結論:Cardanoは大丈夫。むしろ想像以上に“強かった”。
この章で伝えたい結論はたったひとつです。
Cardanoは壊れていないし、止まってもいません。
そして、今回の出来事は、Cardanoの耐性・強さ・信頼性をはっきり示す1日になりました。
第3章 何が起きたのか?──やさしい時系列解説
今回の分岐騒動を理解するためには、
“どの順番でどんな出来事が起きたのか” を簡潔に理解することが大切です。
ここでは、技術用語をできるだけ使わずに、
「ストーリーとして何が起きたのか」 を時系列で解説していきます。
チャールズ・ホスキンソン氏が「Update」動画で明かした裏側の出来事 と
「Newfound Unity」で語った臨場感のある舞台裏 をもとに、
初心者でもスルッと頭に入る形でまとめています。
参考記事:
① 事件の発端:テストネットで“奇妙なトランザクション”が報告される
まず事件の前日に、テストネットで
“毒入り(malformed)delegationトランザクション”
が発生しました。
- 2022年から存在していた古い暗号ライブラリのレアバグを利用
- きわめて特殊な形式
- 正常ノードと不正ノードで判定が割れる危険性あり
エンジニアたちは即座に異常を認識し、
夜通しでホットフィックスの準備に取りかかります。
(ウォールーム稼働、30時間以上の徹夜)
「明日メインネットに来る前に間に合わせるぞ」という緊迫した状況でした。
② 翌朝、最悪のタイミングで“そのトランザクション”がメインネットに送られる
そして翌朝、最悪の形でそれは起きました。
テストネットで問題を起こしたのと同じ種類の“毒入りトランザクション”が、
メインネットにも送信されたのです。
しかも宛先はホスキンソン氏のプール(Rat’s Pool)。
これは明らかに“個人的な意図を持った行為”でした。
ホスキンソン氏は正直な心境をこう語りました:
「よし、今夜はウイスキーを飲むことにしよう。楽しい一日になりそうだ。」
暗いユーモアですが、それほど重大事だったわけです。
③ ノードの判断が割れ、チェーンが二手に分かれる(分岐)
毒入りトランザクションが流れると、
ノード(SPOのサーバー)によって次のように“判断が割れました”。
- A:旧バージョンのノード(10.1.4など) → トランザクションを拒否(=安全側)
- B:最新系統の一部ノード(10.5.xなど) → トランザクションを受け入れる(=誤チェーン側)
その結果、Cardanoチェーンはまるで“道路が二手に分かれる”ように、
チェーンA(健全) と チェーンB(毒入り) の2本が同時進行する状態へ。
ネットワークは止まっていません。
ただし「2本の道を同時に進んでいる」状態になりました。
④ 取引所・ウォレットの一部が“どちらのチェーンを見ているか”で混乱が発生
- あるウォレットはチェーンAの最新ブロックを表示
- 別のウォレットはチェーンBを表示
- 取引所は安全のため入出金を緊急停止
これが、ユーザーが体験した「ブロック時間が止まって見える」「同期が合わない」という現象につながりました。
しかし重要なのは:
どちらのチェーンでもブロックは作り続けられていた(=Cardanoは止まっていない)。
⑤ 世界中のSPOが異常を即時検知し、チャネルで共有が始まる
この時点で最初に動いたのが SPO(ステークプール運営者) でした。
- ブロックの遅延
- 表示の不一致
- フォークの兆候
これをいち早く察知し、SPO同士で警告し合う形で情報が広がりました。
Charlesはこれを「家族のような結束だった」と語っています。
⑥ IOG・CF・Emurgo・Intersectが緊急集合し、対策と透明化が始まる
Charlesはすぐに創設3団体(IOG/CF/Emurgo)を招集し、
ウォールーム(司令室)がフル稼働開始。
- 状況のライブ分析
- トランザクションの検証
- 原因の特定
- ノード更新の調整
- 取引所/ウォレットとの連携
- SNSでの透明な発信
これらが同時進行で行われました。
The Cardano Timesいわく:
「創設期以来、もっとも結束した1日だった。」
⑦ 修正版ノード(10.5.3)が公開され、SPOが一斉にアップデート
異常トランザクションを“拒否する”ための修正版ノード 10.5.3 が即日リリースされ、
世界中のSPOが次々にアップデート。
さらに驚くべきことに、
10.1.4(旧安定版)が安全側のチェーンを維持していたため、
そこで待ち構えていた大量のSPOが“復旧の土台”になった。
これは、
- SPOが多様なバージョンを運用している文化
- 最新版だけで運用しない慎重さ
が生んだ“分散型ネットワーク特有の強さ”でもあります。
⑧ 多数派のSPOが正しいチェーンに合流 → 誤チェーンを追い越す
CardanoのOuroborosでは、
「より多くのステークが参加するチェーンが自然に勝つ」
という性質があります。
修正版ノード+安全な10.1.4勢が揃った“健全チェーンA”は、
誤チェーンBをどんどん追い抜き、最終的に優位チェーンとして統一されました。
ここで重要なのは:
- 中央のスイッチで戻したのではなく
- SPOの自主判断で自然に正しいチェーンへ合流した
という点です。
これは 「強制ハードフォークせずに復旧できた」
きわめてレアで高度な成功例です。
⑨ チェーンは完全に1本へ収束し、復旧が完了
最終的にチェーンは一本化し、
- ブロック同期は正常化
- 取引所の入出金も再開
- 孤立チェーンの取引データの再送準備開始
- FBI含む公式調査が進行(攻撃者の責任追及フェーズへ)
Charlesはその夜、深夜3時過ぎにこう語っています。
「疲れ切っている。でも、今日ほどコミュニティがひとつになった日はなかった。」
■ まとめ:Cardanoは“揺れたけれど、止まらなかった”。そして、“人の力”で元へ戻った。
今回の時系列を見ると、
- 攻撃を受けた
- 分岐した
- しかしネットワークは止まらず
- 自律的に動いたSPOが正しい方向へ導き
- 透明性の高いコミュニティが情報を共有し
- 創設団体が迅速に集結し
- 最後は自然に一本へ戻っていく
という、
「設計 × 人間 × 分散型ネットワーク」の奇跡的な連携が見えてきます。
第4章 Myths vs Facts──広がった誤解とその事実(Intersect)
今回の分岐騒動では、
SNS・ニュース・まとめサイトなどで “誤解” が瞬間的に拡散しました。
Intersect はそれを受けて、冷静で客観的な「Myths vs Facts(誤解と事実)」をまとめ、
コミュニティに正しい理解を戻す役割を果たしました。
ここでは、この内容を 初心者向けに読みやすく再構成しています。
Myth (誤解)1:Cardanoは“ダウン”した
SNSで最も拡散された言葉がこれでした。
- ブロックが止まった
- エクスプローラーが動かない
- ウォレット表示が止まる
- 取引所が入出金停止
こうした体験だけを見て「ネットワークがダウンした」と誤解した人が多かったのです。
Fact(事実):Cardanoは一度も停止していません。
Charlesが動画で明確に述べたように:
「Cardano didn’t go down.(Cardanoは落ちていない)」
実際には、
- ネットワークは稼働継続
- ブロック生産も継続
- 資金も安全
- チェーンは2本に分岐したが、どちらも生成は継続
つまり、“止まって見えた”のはサービス側で参照するチェーンが揃っていなかっただけです。
Myth (誤解)2:Cardanoはハッキングされた
この誤解も非常に広まりました。
しかし、これは“印象”だけが独り歩きした典型例でした。
Fact(事実):暗号・プロトコル・コンセンサスは無傷です。
今回の原因は:
- 古い暗号ライブラリに潜んでいたごくレアなエッジケース
- ノード実装差による受け入れ判断のズレ
であり、
Cardanoの核心である Ouroboros や暗号基盤は何ひとつ破られていません。
チャールズも強く断言しています:
「プロトコルは想定どおり最悪ケースにも耐えた」
今回の騒動は“ハッキング”ではなく、
・実装の例外ケース ×
・意図的に発火された特殊トランザクション
が引き起こした“人為的な攻撃”です。
Myth(誤解) 3:誰も使っていないから気づかなかった
「過疎チェーンだから気づくのが遅れた」
— こうしたFUDも拡散しました。
Fact(事実):最初に気づいたのは世界中のSPO。反応は超高速だった。
実際には、
- フォーク検知はSPOたちが最速で共有
- Discord/SNSで“数分以内”に警告が走る
- IOG・Intersect・CFが即座にウォールーム形成
- 取引所は安全のため“自動反応的”に入出金停止
- 開発者は30時間以上ノンストップで対応
Charles もこう語っています:
「今日は、長い間で一番コミュニティがひとつになって動いた日だった」
つまり、「誰も使ってない」どころか、
誰よりも早く動いたのはコミュニティ(SPO)でした。
Myth (誤解)4:AIを使ったティーンが間違えて落とした
この誤解は、攻撃者本人(Homer J)が
「AIに言われてやった」「悪意はなかった」と投稿したことでさらに拡散しました。
ただし、これは 事実を装った“責任逃れのストーリー” である可能性が高いと
Charles とコミュニティ分析は見ています。
Fact(事実):“高度な知識を持つ人物”による意図的クラフト。FBIも動いている。
Charles ははっきりこう言いました:
「It was absolutely personal.
とても個人的な攻撃だった。」
そして:
「FBIはすでに関与している。」
さらに「Update」動画では、
- 攻撃に使われたウォレットはITN時代の古い参加者のもの
- 委任先がCharlesのプールである(強い意図の存在)
- メッセージ性のある“挑発”として送られた
- AIに責任を押し付けている可能性が高い
と説明されています。
つまり、“ミス”でも“無知”でもなく、
技術を理解した人物の意図的な行為でした。
Myth (誤解)5:IOG(またはCardano財団)が中央集権的に巻き戻した
これはCardanoを批判したい人たちが好むFUDですが、
今回これも完全に否定されました。
Fact:SPOの自主判断+Ouroborosの自然合意形成による“自走的復旧”です。
ポイントはここです:
- IOGは「アップデートして」と呼びかけただけ
- “どちらのチェーンを選ぶか”はSPOが自分で判断
- 多数派のステークが健全チェーンに集まり自然に収束
- ネットワーク停止や強制巻き戻しは一切なし
- 中央のスイッチではなく“分散の力”で戻った
Charlesもこう述べています:
「誰もネットワークを止めなかった。止める必要がなかった。」
これは、
「分散型ネットワークが“本当に”自律復旧できるのか?」
という問いに対する、歴史的な実証だったとも言えます。
■まとめ:誤解が広がったのは“不安”ではなく“情報の偏り”が原因
誤解と事実を整理すると、次の構図が浮かび上がります:
◆ 誤解:
刺激的でセンセーショナル(ダウン・ハック・中央集権)
→ SNSで一気に広がる
◆ 事実:
地味だけど確かな事実(停止なし・資金安全・自然収束)
→ 正確さゆえに広がる速度が遅い
だからこそ、Intersect の「Myths vs Facts」が大きな役割を果たしました。
そして、それを支えたのが
- Charlesの透明な説明
- SPOの迅速な共有
- 翻訳者・解説者・ユーザーの草の根情報発信
でした。
(コラム)「Poison Piggy」事後報告が教えてくれる“冷静な全体像”
今回の分岐騒動について、
技術的・客観的な視点からじっくり整理してくれたのが、Sundae Labs の Pi Lanningham氏 による
「Poison Piggy – After Action Report」 です。
ホスキンソン氏はこのブログ全文を動画で読み上げ、自身のコメントも交えながら解説しました。
ここでは、本記事とのつながりが深いポイントだけを、コンパクトに紹介します。
● 14時間の「サービス劣化」の実像──止まってはいなかったが“ひどく遅かった”
Pi氏のレポートはまず、感情論ではなく 事実と影響 から始まります。
- 発生日時:2025年11月21日
- 影響:およそ 14 時間にわたり、明確なサービス劣化
- しかし:
- チェーンはブロック生成を継続
- トランザクションも流れていたが、最大約 400 秒(6〜7分)の遅延
- 最悪時はブロック間隔が 16 分 まで伸びた
分岐期間中のトランザクションは次のような内訳でした:
- pig chain(誤フォーク側):6,847 tx
- chicken chain(最終的勝者側):13,094 tx
- 両方に含まれた tx:8,168
- pig のみに含まれ、最終的なチェーンに載らなかった tx:479件(全体の約3.3%)
IOG はこれら 479件を再送しようとしましたが、
- 多くは有効期限切れ
- 一部はすでに別トランザクションで消費済み
という理由で、最終的にどれも有効にはならなかったことが報告されています。
Pi氏が示した実像はこうです:
ネットワークは「止まってはいない」。
ただしユーザー体験としては「かなりひどい遅延」が発生し、
一部のアプリ(取引所・ブリッジなど)は再送・リプレイリスクに晒された。
感情的な「死んだ/生きてる」ではなく、
「どれくらい遅くなり、どれくらいの tx が影響を受けたか」 という具体的な粒度で語っているのが特徴です。
● pig chain vs chicken chain──“どちらの歴史を選ぶか”の14時間レース
Pi氏は、2つのチェーンを
- 緩いルールを採用してしまった側:pig chain
- 厳格なルールを守っていた側:chicken chain
とニックネームで呼び分けています。
理屈だけ見れば、「多数派ステークがいた pig 側を採用してしまったほうが、フォーク解消は早かったかもしれない」という見方もできます。
しかし、ウォールームの判断は “エコシステム全体への影響” を優先しました。
もし pig 側を採用していれば:
- ほぼすべてのウォレットがリセットを強いられる
- エクスプローラーは壊れ、ユーザーはチェーンの状態を「長期間見えない」
- DApps / DeFi / 取引所すべてが深刻な混乱に陥る
こうしたシナリオを避けるため、
テストネット段階からパッチ前提で動いていた“厳格な側(chicken)” を正史として選ぶことが、
長期的にはもっとも被害が少ないと判断されました。
● Ouroboros の“自己修復”が数学ではなく「現実」で証明された瞬間
Pi氏のレポートと Charles のコメントで何度も強調されているのが、
Ouroboros の収束性(自己修復能力)です。
- Kパラメータ ≒ 約12時間で “ロールバック可能範囲” が終わるルール
- しかしフォーク中は、チェーン密度に応じてブロック間隔が伸び縮みする
- pig 側(誤ったチェーン)ではブロックが遅くなり
- chicken 側(正しいチェーン)ではアップデートが進むほど速くなる
結果として、
「不正トランザクションがイミュータブルになるまでの時間」より
「chicken chain が pig chain を追い越すまでの時間」の方が短くなる
という “時間の逆転” が起きました。
ウォールームでは、この2つのチェーンの高さと差分をリアルタイムで監視しながら、
「あと何時間で追い越せるか」
をかなり正確に見積もっていたといいます。
Pi氏はこれを:
「チェーンがいつ回復するかを、数時間前の時点で予測できる。
こういうふうに自己修復するナカモト型PoSは他にはない。」
と評価しています。
● このインシデントは“どのレベルの事故”だったのか?
Pi氏は独自の インシデント分類(タクソノミー) を用いて、
今回の出来事を冷静に位置づけています。
ざっくりいうと:
- ソブリンティ侵害(鍵偽造・資産奪取レベル)
- レジャー侵害(Bitcoinの1844億BTCバグ級)
- コンセンサス侵害ハードフォーク(DAOハック後のEthereumなど)
- 大規模チェーン再編ソフトフォーク(今回のCardano)
- スマコンのエクスプロイト
- フルコンセンサス停止(止まって人間が再起動するタイプ)
- サービス劣化
この中で今回のカードanoは、
「大規模チェーン再編ソフトフォーク」+「サービス劣化」
に分類されます。
つまり、
- 深刻ではある
- しかし「主権侵害」や「レジャー破壊」ではなく
- ネットワークは進み続け、自己修復で戻ってきた
という位置づけです。
Pi氏の結論はシンプルです:
「チェーンは進み続けていたか? → はい
サービスは劣化したか? → はい
資金が危険に晒された可能性はあったか? → 一部にとっては Yes
“ほぼ最悪に近い条件”から回復できたか? → Yes
そのうえで、自分のビジネスをこのインフラの上に乗せるか? → Absolutely Yes」
第5章 なぜ復旧できたのか?──専門用語なしで説明する堅牢性

今回の件をもっとも正しく説明するなら、
それは “Cardanoが想定どおりの挙動で回復した” ということです。
止まらず
壊れず
戻り
自律的に収束し
資金はすべて安全で
中央指示なしで自然復旧した。
これは“奇跡”ではなく、
Ouroboros(カルダノのコンセンサス)が持っている本来の力そのものです。
ここでは難しい専門用語は使わずに、
Cardanoがなぜ今回の危機に耐え、復旧できたのかをやさしく説明していきます。
① Cardanoは「止まらないこと」を最優先に設計されている
ホスキンソン氏も強調するように:
「Cardano didn’t go down(止まっていない)」
Cardanoは“何があってもネットワークが止まらない”ように設計されています。
その理由はシンプルで、
● ブロックチェーンにとって最大のリスクは「停止」だから
チェーンが止まると:
- 送金もDAppsも止まる
- 取引所も止まる
- システムが1秒でも“無効”になる
- Trustless(信頼に依存しない)ではなくなる
だからCardanoは「止まらないこと(liveness)」を最優先し、
多少の揺らぎや分岐があっても 前に進み続ける設計になっています。
今回のようにチェーンが二手に分かれても、
ネットワーク全体が停止しなかった理由はまさにここにあります。
② 分岐(フォーク)しても、自然に“ひとつに戻る”仕組みがある
今回の騒動で特に重要だったのが、
Cardanoは「分岐=終わり」ではなく、「分岐=自然収束」する仕組みを持っていることです。
これを車の交通に例えると、
● 道が一瞬だけ2本に分岐してしまっても
● 交通量が多い“本線”の方に車が自然と集まり
● 最後には“本線だけ”が残る
そんなイメージです。
実際に今回のケースでも:
- 毒入りトランザクションを拒否した安全チェーン(A)
- 受け入れてしまった誤チェーン(B)
の2本ができましたが、
● Aチェーンの方が明らかに多数派(SPOのステーク)が集まった
● ブロック生成スピードもAが優勢
● その結果、Cardanoは設計通りA側へ自然に収束した
これが、ホスキンソン氏の言う
「Cardanoは戦車のように頑丈だ」
の意味です。
③ SPO(ステークプール運営者)の自律分散行動が“復旧の中心”になった
Cardanoで最も重要な存在は、
実はIOGでもCFでもEmurgoでもありません。
それは SPO(ステークプール運営者) です。
今回の復旧の中心は彼らでした。
● 異常を最初に検知したのはSPO
● 互いに警告を発し、情報を共有
● 正しいチェーンへ向かう判断を自律的に行い
● 修正ノードへ夜通しアップデート
● 世界中のSPOが同じ方向へ揃った
これは“中央指示”ではなく、
完全に分散した参加者の判断でネットワークを救ったということです。
Charlesも感動した様子で語っています:
「今日は、長い間で一番コミュニティが一つになった日だった」
④ 「ネットワーク停止ゼロ」で復旧できた──PoSでは極めて珍しい
通常、PoSチェーンがこの規模の攻撃を受けた場合、
- ネットワーク停止
- 強制リセット
- 中央集権的な巻き戻し
- チェックポイント方式で強制復元
などが必要になります。
しかしCardanoは違いました。
● 停止なし
● 巻き戻しなし
● 中央操作なし
にもかかわらず、
完全に自然な収束(自然回復)だけで復旧した。
ホスキンソン氏の言葉を借りると:
「PoSでここまで“傷のない復旧”ができるのは非常に珍しい」
これは、地味に見えるかもしれませんが、
L1としての信頼性を左右する非常に大きな成果です。
⑤ 修正ノード(10.5.3)と“旧安定版10.1.4”が復旧の二本柱になった
今回の復旧には、修正ノード10.5.3だけでなく
10.1.4(旧安定版)の存在が大きな役割を果たしました。
詳細は第5章の特別セクションで説明しますが、要点は以下です。
- 最新10.5系の一部に例外バグが残っていた
- 一方、10.1.4はその影響を受けず安全側の挙動
- 結果として10.1.4が“健全チェーン側の支柱”に
- SPOがバージョン多様性を持っていたことで、 ネットワークが片側に偏ることなく復旧できた
これは“分散型ネットワークは多様性によって守られる”ことの証明でもありました。
Charlesはこう述べています:
「Cardanoは冗長性(redundancy)によって守られた」
⑥ 透明性の高い情報発信が“パニック抑止剤”となった
Cardanoは今回、
- 状況報告
- 技術分析
- チェーン状態
- 原因人物の情報
- 進行中の修復状況
すべてを“リアルタイムで公開”しました。
この“透明性”が、
誤解を抑え、ユーザーの不安を軽減し、コミュニティの冷静さを保つ大きな力になりました。
これはCardano文化の大きな強みであり、
ホスキンソン氏が誇りを持って語った部分でもあります。
■まとめ:Cardanoは“止まらず、生き残り、自然に元へ戻った”。
これは偶然ではなく、設計と文化が生んだ成果です。
今回の復旧のポイントは、次の3点に集約されます。
① 設計の強さ(Ouroboros
- 止まらない
- 自然収束
- 分岐しても破綻しない
② コミュニティの強さ(SPOの自律行動)
- 異常検知
- 迅速共有
- 自主アップデート
- 正しいチェーンへ合流
③ 多様性と透明性(Cardano文化)
- バージョン多様性が安全性を高めた
- 透明性の高い情報発信で信頼が維持された
これらすべてが作用し、
Cardanoは 「止まらずに危機を乗り越えた」 のです。
第5章・特別セクション10.1.4 が果たした“安全弁”としての役割──多様性がネットワークを救った
今回の分岐騒動で最も興味深い点のひとつが、
Cardano node 10.1.4(旧安定版)が復旧の“要(かなめ)”になった
という事実です。
一見すると、
「最新バージョンの方が安全なのでは?」
と思いがちですが、今回はその逆でした。
この出来事は、
分散型ネットワークにおける“バージョンの多様性”がもつ安全性
を象徴する、とても重要なケースです。
ここではその全容をわかりやすく整理します。
① 10.1.4 は“毒入りトランザクション”を拒否する側に立った
今回の分岐の引き金は、
2022年から存在していた古い暗号ライブラリのレアバグを突いた“特殊な delegaton トランザクション”でした。
このトランザクションに対し、
ノードのバージョンによって「受け入れる・拒否する」が分かれたのです。
結果はこうです:
- 10.1.4 = トランザクションを“拒否”した(安全側)
- 10.2 / 10.3 / 10.5 系の一部 = “受け入れてしまった”(誤側)
つまり、
10.1.4 は“意図せず安全側に固定されたバージョン”だったわけです。
この一点だけでも、10.1.4 がチェーンA(健全チェーン)の支柱として機能したことが分かります。
② “最新版だけ”を運用していなかったことが、危機回避につながった
今回、ネットワーク全体には複数のノードバージョンが混在していました。
概略の分布イメージ:
- 10.5.x(最新系)
- 10.3.x
- 10.2.x
- 10.1.4(旧安定版)
これが結果として 大きな安全弁(セーフガード) になりました。
もし仮に:
「全SPOが最新版だけを使っていた」
という状態だった場合、
毒入りトランザクションを受け入れる方向へ一気に偏り、
復旧ははるかに困難だった可能性があります。
しかし実際には、
SPOは運用方針や安定性のために 複数バージョンを分散して使っていました。
その結果:
- 10.1.4 にいた28%ほどのノード群が、
- 最初から“正しいチェーン(A側)”を形成し続けた

これは分散型ネットワーク特有の
“バージョンの多様性=リスクの分散”
が見事に機能した瞬間でした。
③ 10.1.4 グループが“健全チェーンの母体(シード)”になった
多くのSPOが10.1.4を使っていたことで、
ネットワークは次のような動きを見せました:
故障チェーンB(毒入り)
➡ 一部の10.5.x系ノードが進行
➡ しかしステーク割合が低く、伸びが弱い
健全チェーンA(拒否側)
➡ 10.1.4勢が28%で最初からブロックを積み続ける
➡ 修正ノード(10.5.3)へアップデートしたSPOが合流
➡ 多数派となり、安定性と伸長率が一気に上がる
つまり、
10.1.4 グループが「健全チェーンAの足場」になったため、
修正ノードを適用したSPOが“合流しやすい状態”が作られたのです。
Charlesが「Cardanoは冗長性で守られた」と語った理由はここにあります。
④ “多様性”こそ分散型ネットワークの強さの源泉である
一般的なITの考えでは:
- 「最新版へ統一しよう」
- 「古いバージョンは捨てよう」
というのが常識です。
しかし分散型ネットワークでは、
“多様性” が重大リスクの際にネットワークを救うことがあります。
今回の事例はその象徴です。
◆ 最新版のみ → 単一障害点(Single Point of Failure)
◆ 多様なバージョン → どれかが安全側に残ってくれる
CardanoのSPO文化は、
セキュリティ・安定性・運用性を重視し、
必ずしも最新に飛びつくのではなく、
慎重に“安定版”を保持する傾向があります。
その姿勢が、今回の危機回避に直接つながりました。
⑤ 10.1.4 の存在が“自然収束”を加速した
Ouroborosでは“より強いチェーン(多数派・高速チェーン)”が自然と勝ちます。
そして、健全チェーンA側の伸びが加速した理由の一つが
10.1.4 ノードの存在でした。
- 10.1.4がA側の基盤を維持
- 修正ノード(10.5.3)が多数A側へ合流
- Aチェーンのブロック伸長率が爆発的に向上
- Bチェーンは自然に孤立(orphan)へ追い込まれる
この「自然収束のスピード感」を支えたのが、
古い安定版 10.1.4 のノード群 だったのです。
⑥ これは「Cardanoが最新技術だけで動いているわけではない」ことの証明
Cardanoは最新技術を追うだけではなく、
「安定性」「冗長性」「慎重な運用」が文化として根付いているL1です。
- バージョンが多様
- 運用スタイルが多様
- 地域も時間帯も多様
- SPOが“独自判断”を行う文化
これらが混ざり合って、
今回のような攻撃に対して“生態系としての強さ(ecosystem resilience)”を発揮しました。
ホスキンソン氏もそれを強調しています:
「多くの人が“自分の判断で”正しい対応をした。
Cardanoは家族のようだ。」
■ まとめ:10.1.4 は今回の“陰のヒーロー”だった
- 新系統10.5.xには例外バグが残っていた
- 10.1.4は古いが安全挙動だった
- バージョン多様性がネットワークを守った
- 10.1.4グループが健全チェーンの母体となり、復旧を加速した
- 分散性(バージョンの分散)が復旧の鍵となった
つまり、
10.1.4 が存在していたから、
Cardanoは“止まらず、自律的に、正しい方向へ戻れた”。
これは分散型ネットワークとしての Cardano の強靭さを示す
象徴的な成功例だったと言えます。
第6章 創設陣の迅速な連携(The Cardano Times)
今回の騒動の本質は、
単なる「技術トラブル」でも「個人による暴走」でもありませんでした。
それは、
- Cardanoの創設エンティティ(IOG/CF/Emurgo)
- Intersect
- SPOや技術者コミュニティ
が、“これまでで最も迅速かつ一体的に”動いた1日でもあります。
The Cardano Times はこの点を非常に強調しており、
さらにホスキンソン氏の「Newfound Unity」動画は、この裏側にあった
「本物の団結」 を鮮烈に描いています。
この章では、その舞台裏を丁寧に追っていきます。
参考記事:
① ホスキンソン氏が創設3団体を即時招集──“ウォールーム”が立ち上がる
“毒入りトランザクション”がメインネットに流れ、
チェーンが二手に分かれたことが確認された瞬間、
Charles は創設3団体に“即時連絡”しました。
- IOG(Input Output Global)
- Cardano Foundation(CF)
- Emurgo
そして、対応チームによる
ウォールーム(緊急司令室)が即座に稼働開始。
Charles は「Update」動画でこう語っています:
「今日は、久しぶりにウォールーム体制に戻った。
J、Agalos、CFのMarcusも一緒に作業してくれた。」
普段は立場が違ったり意見がぶつかることもある3団体ですが、
この日は完全に“ひとつのチーム”として動きました。
The Cardano Times はこれを
「創設期以来、最も結束した瞬間」
と表現していました。
② 完全な透明性のもとでの情報共有──判断の速度が段違いに速かった
この日、Cardanoの創設陣は
- 内部情報
- 分岐状況
- エラーの詳細
- ノードごとの挙動
- 攻撃者のウォレット分析
- 取引所の反応状況
- ノード修正版の差分
これらを “一切隠さず”、
リアルタイムで共有しあっていました。
ホスキンソン氏はこれを
「今日はプロフェッショナリズムが極めて高かった」
と強調しています。
そして、この透明性こそが、
- 判断の速さ
- 行動の統一
- パニック抑止
- 正しいナラティブの維持
につながっていったのです。
③ 原因人物の特定──個人の“意図”が明らかになった
The Cardano Timesは、今回の犯人について次のように述べています:
- テストネットで報告されていた問題を参照していた可能性
- そのうえで“メインネットで”毒入りトランザクションを作成
- 宛先が Charles のプール(Rat’s Pool)であることからも“個人的動機”が強い
- 発覚後に「AIに従った」「悪意はなかった」と釈明
- しかし Charles は「完全に個人的攻撃だった」と断言
ホスキンソン氏はこう語りました:
「これは absolutely personal(完全に個人的な攻撃)だった。」
FBIはすでに動いている。
つまり、攻撃者の弁明とは裏腹に、
かなり明確な意図があったことが確定しています。
④ “止めずに直す”という方針で、創設陣が全力で技術対応
The Cardano Times のまとめによると、
創設陣が共有した最大の方針は:
「ネットワークを絶対に止めない」
というもの。
実際、Cardanoは一度も止まっていません。
ホスキンソン氏の説明では:
- 分岐状態でもブロックは作り続ける
- 正しいチェーンが誤ったチェーンを追い抜く設計
- 強制停止も巻き戻しも不要
- 想定された“最悪クラスの攻撃”でも耐える
これらが Cardanoの“止まらない強さ” を裏で支えていたことがわかります。
ホスキンソン氏は言いました:
「Nobody had to shut the network off(誰もネットワークを止める必要がなかった)」
これは他のPoS L1ではほぼ不可能な結果です
⑤ 取引所・ウォレットとの連携──ユーザー資産を絶対に守る
創設陣は、技術修正と同時に取引所・ウォレットとも連携し、
- 入出金の一時停止
- 誤チェーンの排除
- トランザクションの再送スケジュール
- 安全なチェーンの識別
を並行して進めました。
このときの判断の速さが、
「ユーザー資金が一切危険にさらされなかった」
という最も重要な結果を生みました。
これはブロックチェーン業界でも極めて珍しい成功例です。
⑥ 30時間以上続いた“真夜中の戦い”──Newfound Unity の背景
Charlesの「Newfound Unity」動画には、
その日の空気がそのまま閉じ込められています。
- ロンドンの深夜3時
- 30時間以上の徹夜作業
- ウォールームの緊張感
- IOG、CF、Emurgo、Intersectが同じ部屋にいる
- SPOが世界中で同時に作業
- 誰も文句を言わず、ただ問題解決に集中
そしてCharlesはこう語りました:
「今日は、ここ数年で最もコミュニティがひとつになった日だった。」
The Cardano Timesも次のように総括しています:
- “創設期以来の結束だった”
- “技術・人・文化が一体になった日”
- “この連携が最悪のシナリオを避けた最大の理由”
⑦ “団結(Unity)”というキーワードが象徴した一日
この日、Charles は “Unity(団結)” という言葉を何度も繰り返しました。
そしてその理由は、
単に一緒に作業したからではありません。
・立場の違い
・意見の違い
・組織間の過去の摩擦
・数年来の不満
それらすべてを一度横に置いて、
“Cardanoを守る”というたったひとつの目的のために力を合わせたからです。
ホスキンソン氏の言葉を借りれば:
「今日、僕たちは“昔のCardano”を取り戻した。」
これは単なるトラブル対応ではなく、
明確な「転換点」となった瞬間でした。
■まとめ:創設陣の迅速な連携こそ、今回の最大の勝因だった
- IOG/CF/Emurgo/Intersect が“即座に結束”
- ウォールームが30時間以上稼働
- 完全な透明性で情報共有
- 原因人物を特定
- ネットワークを止めないという強い意志
- 取引所・ウォレットとの迅速連携
- コミュニティ全体がひとつになった
- Charles が語る “Newfound Unity” が現実に生まれた
今回の騒動を乗り越えられたのは、
技術だけではなく、“組織と人の力”が最大限に機能したからでした。
第7章 コミュニティ(SPO・開発者・ユーザー)の強さ
今回のCardano分岐騒動は、技術面の強さだけでなく、
“人の強さ”がネットワークを救った事件でした。
SPO、開発者、翻訳者、ウォレット開発チーム、取引所、そして一般ユーザー。
彼らの自律的な行動と、驚くべき連帯が、
Cardanoが“止まらずに復旧する”過程そのものを支えました。
ホスキンソン氏が語った言葉
「今日は、ここ数年でコミュニティが一番ひとつになった日だった」
は決して誇張ではありません。
むしろ、事実でした。
ここでは、その人間ドラマを丁寧に描きます。
① 最初の異常を検知したのは開発者でもIOGでもない──SPO だった
事件の最初の「揺らぎ」を察知したのは、
どこかの中央運営ではなく、
世界中のSPO(ステークプール運営者) でした。
- ブロックの伸びが突然おかしい
- 一部のノードが同期を外す
- エクスプローラーの表示が分裂
- 取引所の動きが不自然
SPOたちはそれを数分以内に共有し合い、
Slack / Telegram / Discord 上で
「何か起きている。すぐ確認してくれ」
というメッセージを飛ばし始めます。
これが世界規模の“早期警報システム”として機能しました。
Cardanoは分散型ネットワークですが、
分散しているからこそ、異常の早期検知ができるのです。
② 開発者は30時間以上の不眠対応──ウォールームの集中作業
異常検知が広がると同時に、
開発者コミュニティとIOGのエンジニアは
ウォールーム(緊急対応部屋)に集結し、
30時間以上、不眠不休で分析・修正・検証を続けました。
- トランザクションの性質分析
- ノードの挙動比較
- 正常チェーンの識別
- 修正版10.5.3の開発と検証
- SPO向けドキュメントの整備
- 異常ブロックの解析
- 孤立チェーンのデータ洗い出し
- 取引所への連絡と調整
ホスキンソン氏は、その集中力についてこう言いました:
「今日はまるで昔のCardanoに戻ったかのようだった。」
ネットワークの裏側で、
まさに“人間がCardanoを守った”瞬間でした。
③ SPOの迅速なアップデートが“復旧のエンジン”になった
今回の復旧は、
「誰かが中央でスイッチを押して行われた」
わけではありません。
SPOが自律的に、
- 何が起きているか理解し
- 修正版ノード(10.5.3)を受け入れ
- 正しいチェーンへ寄せていき
- 世界中のSPOが、一斉に同じ方向へ歩き出した
ことで自然収束が実現しました。
しかも、タイムゾーンが違う世界のSPOが、
深夜・早朝を問わず即座に行動した のが大きい。
ホスキンソン氏は
「SPOがこんなにも迅速に動いたのは本当に誇りだ」
と感謝の気持ちを述べています。
Cardanoが復旧できたのは
分散した“人間の判断力”が機能したからです。
④ ウォレット開発者・取引所も迅速にユーザー保護へ動いた
ネットワークが揺れている間、ウォレットと取引所は
- Yoroi
- Lace
- Typhon
- Eternl
- Binance
- Coinbase
- MEXC
などが連携し、
ユーザーの資産が誤チェーン側へ流れないよう、入出金停止を即決。
取引所は“混乱の瞬間にユーザー保護を最優先する”という、
プロフェッショナルな判断を取りました。
これにより、
ユーザーが誤ったチェーンに取引を送ってしまうリスクがゼロに抑えられました。
⑤ 翻訳者・コミュニティメンバーによる“正しい情報拡散”がFUDを抑えた
SNSでは、最初に広がるのはいつも
- 刺激的
- 不安をあおる
- 誤解を誘う
ような投稿です。
今回も例外ではなく、
- 「Cardanoは死んだ」
- 「AIティーンが落とした」
- 「中央集権で巻き戻した」
などのFUDが跳梁しました。
しかし、これを食い止めたのが コミュニティの草の根の力 です。
- 翻訳者がCharlesの最新情報を即座に解説
- 技術者が事実を噛み砕いて投稿
- SPOが現場状況を報告
- 誤情報に根拠を添えて反論
- 日本語・英語・各言語へ迅速に要約が広がる
これが、
正しい情報が正しく伝わるエコシステム
を生み、パニックを抑える効果が大きかったのです。
⑥ 一般ユーザーが“冷静だった”という事実も大きい
Cardanoコミュニティは、通常のL1と比べると
DIY精神・自律性が高いユーザーが多いため、
今回のような揺らぎにも、極めて冷静に対応していました。
- 「SPOのアップデート待つから大丈夫」
- 「資産は safe と言われてるから問題ない」
- 「落ち着いて事実を見よう」
こうしたユーザーの声が広がり、
不必要なパニック売りを避けることができました。
この点も Cardano コミュニティの強みです。
⑦ホスキンソン氏の言葉:“Cardanoは家族だ”
ホスキンソン氏は「Newfound Unity」動画の中で、今回の出来事をこう総括しました:
「Cardanoは家族だ。
良い日もあれば悪い日もある。
でも今日、僕たちはひとつになった。」
そして、
「どれだけ殴られても、Cardanoは立ち上がる。」
という言葉が象徴するように、
今回の騒動は“ネットワークの強さ”ではなく、
コミュニティの強さを世界に見せた一日でもありました。
■ まとめ:Cardanoは“技術”ではなく“人”によって支えられている
今回の分岐騒動では、
Cardanoの復旧の主役はプロトコルでもIOGでもありませんでした。
それは、
● 異常を誰より早く察知した SPO
● 不眠で分析し続けた 開発者
● 資産を守った 取引所・ウォレット
● 正しい情報を広めた コミュニティ
● 冷静に状況を見守った 世界中のユーザー
そして最後に、
「この日ひとつになったCardano」でした。
ホスキンソン氏が深夜3時に語ったあの言葉が、すべてを物語っています。
「今日、僕たちは“昔のCardano”を取り戻した。」
第8章 今回の出来事が示した “Cardano の本当の姿”
今回の分岐騒動は、多くの人にとって衝撃的なニュースでした。
ネットワークが分岐し、
ウォレットの表示が揺らぎ、
取引所が一時停止し、
SNSでは大規模なFUDが巻き起こる。
しかし、実際に裏で起きていたことをすべて並べてみると、
この出来事は、Cardanoにとって “痛みを伴うトラブル” であると同時に、
その本質的な強さを世界に示す機会になったことがわかります。
では、その「強さ」とは何だったのでしょうか?
6つの観点から整理します。
① Cardanoは “止まらないL1” であると証明された
今回、Cardanoは一度も停止しませんでした。
- ブロックは作り続けられ
- ネットワークは生き続け
- 資産は完全に安全で
- 強制停止も、ロールバックも必要なかった
これは、Ouroboros の「停止より継続を優先する」という設計思想が
現実の攻撃で完全に機能したことを意味します。
Charlesは強調しています:
「Cardano didn’t go down.(Cardanoは落ちていない)」
ブロックチェーンにとって“止まらない”ことは、
最も重要な性質のひとつです。
今回、Cardanoはその性質を強烈に示しました。
② 分岐しても “自然に元へ戻る” 本質的な強さ
通常、PoSチェーンが今回レベルの攻撃を受けた場合、
しばしば次のような処置が必要になります。
- ネットワーク停止
- 緊急ハードフォーク
- チェックポイント方式で巻き戻し
- 管理者が中央から強制復元
しかしCardanoは違いました。
❌ 停止なし
❌ 強制リセットなし
❌ 中央介入なし
⭕ 自然な合意形成で、正しいチェーンだけが生き残った
Charlesの言葉:
「Ouroboros は戦車のように頑丈だ。」
これは比喩ではなく、今回の挙動そのものです。
Cardanoは
分岐しながらも自律的に“自己修復”した
と言えます。
③ 分散したSPOたちの判断が “中央の指示より速かった”
今回の復旧の主役は、IOGでもCFでもなく、
世界中のSPO(ステークプール運営者)でした。
- 異常を世界中のSPOが最初に検知し
- 自主的に情報共有し
- 正しいバージョンへアップデートし
- 自律分散的に1つのチェーンへ寄せていった
ここに中央の命令はありません。
Charlesは言いました:
「今日は、コミュニティが1つになった日だった。」
つまり、Cardanoは コミュニティの意思で復旧した のです。
これほどの規模の攻撃に対し
“分散型の判断が中央制御より速い”
という例は、暗号資産の歴史でも極めて珍しいケースです。
④ 技術の多様性(10.1.4)がネットワークを救った──“分散の真価”
最新バージョン(10.5.x系)の一部には例外バグが残っていました。
一方で、旧安定版10.1.4は毒入りトランザクションを自然に拒否。
その結果:
- 10.1.4 のノード群が健全チェーンの土台になり
- 修正版ノード(10.5.3)がそこへ合流し
- 自然なチェーン選択が一気に正しい方向へ加速した
この出来事は明確に示しています:
多様性(バージョンの分散)=単一障害点の消滅
Cardanoの文化は“最新に全員が飛びつく”ものではなく、
安定性と分散性を尊重した運用が定着しています。
この文化こそが、今回 Cardano を救った1つの柱でした。
⑤ 「透明性」がコミュニティのパニックを防ぎ、“信頼”を積み上げた
Cardanoの強みは技術だけではありません。
今回は、
- Charles
- Intersect
- IOG
- CF
- Emurgo
- SPO
- 技術者
が、すべての情報を リアルタイムで完全透明化 しました。
- 原因
- 攻撃者の情報
- ノード挙動
- チェーンの進行状況
- トランザクション再送計画
- リスク
- 今後の手順
すべてが包み隠さず公開されました。
この透明性は、
“最も恐ろしいFUD(不安・憶測)”を抑える決定的な役割を果たします。
なぜなら、
透明性は不安より強い武器だからです。
Cardanoはこの日、
技術だけではなく「誠実さ」でも復旧したと言えます。
⑥ “団結(Unity)”──Cardanoが本来持っていた文化が復活した
今回の騒動で、もっとも象徴的だったのは
Charlesが深夜3時過ぎの動画で語ったこの言葉です:
「今日、僕たちは“昔のCardano”を取り戻した。」
「長い間で一番、コミュニティがひとつになった。」
それは単なる感情的な言葉ではなく、
実際の行動がそれを裏付けていました。
- どの立場の人も私情を横に置き
- 技術・調整・広報・翻訳が一斉に動き
- 世界中がCardanoを守った
The Cardano Times が言うように:
「これは創設期の再来だった」
そして Charles が強調した “Newfound Unity(新たに見つけた団結)” は、
単なるスローガンではなく、
Cardano が未来へ進むための本質的な基盤だと言えます。
■ 結論:今回の騒動は“壊れた事件”ではなく、“強さが見えた事件”だった
今回の出来事が示したのは、次の 6つの真実です。
① Cardanoは止まらない(liveness)
② 分岐しても自然に戻る設計(self-healing)
③ 中央ではなくSPOが復旧を主導した(true decentralization)
④ バージョン多様性がネットワークを救った(distributed resilience)
⑤ 透明性がコミュニティを守った(trust through openness)
⑥ 新たな団結が生まれた(Newfound Unity)
Cardanoは今回、
“最悪級の攻撃にも耐え、止まらず、自律的に復旧した”
という極めて重要な実績を手にしました。
そして何より、
コミュニティが再びひとつになった。
これは今後90〜180日の“Cardanoの勝負期間”に向けて、
最高のスタートラインになるはずです。
コラム:「Code is Law」ではなく「憲法が法」──今回の事件が浮き彫りにしたCardanoのスタンス
今回の分岐騒動を受けて、チャールズは別動画「Code is Law」の中で、
「カルダノにおける“法”はコードではなく“憲法”である」という強いメッセージを出しています。
ここで言うカルダノ憲法は、オンチェーンに公開され、
コミュニティの合意によって成立した“ネットワークの意図された使い方”を定めた最高規範です。
コードはその意図を実現するための手段であって、決して絶対ではありません。
参考記事:
● バグを突く行為は「公共インフラを壊す」のと同じ
チャールズは、今回のようなエクスプロイトについて:
壊れたコードを悪用してネットワークを混乱させる行為は、
電力網・水道・航空管制をハックして破壊するのと哲学的には同じである。
とまで表現しています。
カルダノ上で動いているのは、
ユーザーの資産やDeFiだけでなく、将来的にはID・医療・公共サービスを含む“社会インフラ”です。
そのインフラを、憲法が意図していない形で破壊する行為は、
単なる「自己責任」ではなく、現実世界の法体系に照らしても“犯罪”という立場です。
● 「Code is Law」幻想と、“保護なき服従”という危険
一部のクリプト界隈には、
- 「バグを突かれても、それはコード通りだから仕方ない」
- 「政府や法執行機関に頼るのはサイファーパンク精神に反する」
といった言説があります。
しかしチャールズはこれを、
「弱者を食い物にする詭弁であり、文明社会として成り立たない」と一蹴します。
現実には、私たちはどこかの国に住み、その司法管轄に属しています。
家や車や給与に対して法的保護を求めるのと同じように、
オンチェーンの資産に対しても 生命・自由・財産を守る権利を持っているはずです。
それにもかかわらず、
「税金や規制は受け入れろ。でも被害を受けても救済は求めるな」
というダブルスタンダードは、
チャールズの言葉を借りれば “代表なき課税” に近い構図です。
● 無法地帯ではなく、“公正な社会基盤”を目指す
チャールズが繰り返し訴えているのは、
カルダノが目指すのは「無法の島」ではなく、
透明性・改ざん耐性・分散性を持った“公正な社会基盤” だという点です。
- 憲法(意図)
- コード(実装)
- 法・司法(現実世界の権利保護)
この3つを切り離さずに統合していくことこそが、
第四世代ブロックチェーンとして成熟するための条件だとチャールズは語ります。
今回の分岐騒動に対して、
カルダノが「ネットワークは自力で復旧しつつ、攻撃者には現実の法執行機関が対応する」という姿勢を取ったのは、
まさにこの「憲法が法である」というスタンスの表れだと言えるでしょう。
(コラム)将来の問題を防ぐために──“防ぐ・気づく・直す”という3つの視点が示したカルダノの未来
今回の分岐騒動を受けて、ホスキンソン氏が長尺動画で語ったのが
「Prevent(防ぐ)」「Detect(気づく)」「Fix(直す)」
という3本柱でした。
これは単なるトラブルの振り返りではなく、
「この事件をどう未来に活かすか」
というカルダノの根本的な改善戦略です。
この記事のテーマと深く関係する部分だけ、コンパクトに紹介します。
1. Prevent(防ぐ)──形式手法の強さと“2022年から潜んでいた影”
カルダノは他チェーンに比べて開発が“遅い”と言われがちですが、
その背景には以下のプロセスがあります:
- 論文(科学・理論)
- 形式手法によるブループリント
- 実装
- テスト & デプロイ
いわば“ウォーターフォール型 + 形式手法”であり、
多くのチェーンのような「作って壊して直す」高速スパイラル開発とは対照的です。
メリット:安全性・堅牢性が異常に高い。
デメリット:時間がかかる。
今回8年間の安定を保てたのはこの手法のおかげですが、
同時に 2022年から潜んでいたバグに3年間気づけなかった という弱点も浮き彫りに。
ホスキンソン氏はこう言います:
「Prevent の部分は、もっと改善できる。
どこでチェックがすり抜けたか、冷静に見直す必要がある。」
2. Detect(気づく)──“運が良かった”では済まされない。カナリアネットワークとPub/Subが必須へ
今回の分岐は、実は “偶然早期に発見できた” ものでした。
- Leios の事前監視でたまたまシミュレーションが走っていた
- 独立ノード実装者たちが偶然タイミング良くネットワーク観測をしていた
しかし、本来あるべき姿は
「異常が起きた瞬間に自動で全アクターに警報が届く」
ことです。
そこでホスキンソン氏が強調するのが:
● カナリアネットワーク(Canary Network)
- 経済価値を扱わない“観測専用ネットワーク”
- 全大陸に超高速ノード
- AIによる異常検知
- 拡張ミンプールで履歴を長期保存
- 複数の独立実装でメインネットを常時“外側から監視”
● Pub/Sub(パブサブ)プロトコル
- 異常発生時に、ブリッジ・取引所・DeFi・ウォレットへ一斉通知
- 「一時停止」「保留」など安全モードへ即切替
- 手作業で30時間電話し続ける必要がなくなる
ホスキンソン氏は明言しています:
「Pub/Subは“あれば便利”ではなく、“生存に必須”だ。」
3. Fix(直す)──Ouroborosの自己修復能力が“本物”だと証明された
この分岐騒動が示した最も重要なポイントはここです。
● Cardanoは「一度も止まらなかった」
● 強制ロールバックも不要だった
● 中央のスイッチもない
● 正しいチェーンが自然に勝ち残った
ホスキンソン氏自身が語っているように:
「これはPoSではほとんど不可能な“傷のない復旧”だった」
「ビットコインは3,000回起きた現象を、Cardanoは初めて実戦でやり遂げた」
加えて、
Mithril や チェックポイント を使って
“最悪時の手動復元”に備える構想も語られています。
4. 「整合性(Integrity)」こそすべて──Cardanoが未来を勝ち取る条件
動画のメインテーマは、実は技術だけではありません。
ホスキンソン氏はこう結論づけます:
● 整合性(Integrity)は技術 + 社会制度の両方で守られる
● Prevent / Detect / Fix はその整合性を高める3本柱である
● 整合性が保たれて初めて、社会はCardanoを“インフラ”として採用できる
“自己修復した”という事実は Cardano の 客観的整合性 を高めましたが、
一方で誤情報やFUDにより 主観的整合性 は傷つく可能性があります。
だからこそ、この動画は、
技術の改良と同時に「正しい理解を広める努力」も欠かせない
と力強く訴えているのです。
■ このコラムのまとめ
今回の分岐騒動は、
Cardanoにとって「壊れた日」ではなく、
“自律的に回復できるL1”であることを証明した日でした。
しかしホスキンソン氏は次のように警告しています:
- Prevent(予防)は不十分だった
- Detect(検知)はほぼ運任せだった
- Fix(修復)は成功したが、仕組みの面で改善すべき点が多い
そして2026年に向けて、
カルダノは「高整合性システム」から、
“より高度に成熟した公共基盤”へ進化する必要がある
と語っています。
このコラムは、記事全体の文脈──
「何が起き、どう乗り越え、なぜ止まらなかったのか」
というテーマに対し、
「次はどうすれば、同じ問題を“未然に防げるのか?”」
という“未来への視点”を補完する役割を持ちます。
参考記事:
第9章(最終章)おわりに──この経験をどう未来に活かすのか

2025年11月22日。
Cardanoはその歴史の中で最大級の試練に直面しましたが、
その日の終わり、チャールズ・ホスキンソン氏はロンドンの深夜3時にこう語っています。
「今日、僕たちは“昔のCardano”を取り戻した。」
技術と組織、そしてコミュニティの行動が完全に一体となり、
“止まらず、壊れず、自然に復旧したCardano” は、
最大の危機を最大の「成長点」に変えました。
ここでは、この経験を未来に活かすためのポイントを整理します。
① ノード実装の改善と監査の強化──脆弱性は“次の強さ”になる
今回のトラブルは、
2022年から存在していた超レアな暗号ライブラリのエッジケース
が引き金でした。
この事例は、Cardano開発プロセスにとって貴重な学びです。
- ノード実装間の挙動差分の重要性
- 古いライブラリの継続的監査
- テストネットでの異常検知強化
- 過去バグの再検証プロセスの再構築
- Intersect主導の事後分析(after-action review)
Charlesは「もっとできることがある」と明言しました。
この経験は、Cardanoの“アップグレード精度”をさらに高めるための土台になります。
② バージョン多様性(10.1.4)の価値を正式に評価すべき
今回の事件を支えた陰のヒーローは、
10.1.4(旧安定版) でした。
最新バージョン群(10.2/10.3/10.5系)の例外バグが露呈するなか、
10.1.4が安全側に立ち、
健全チェーンの“土台”として機能したのはカードano文化の強い象徴でした。
- 最新版を盲信しない
- 安定重視の運用を尊重する
- バージョン多様性を維持する
- 多様性=冗長性=安全性
これは今後のCardano運営にとって重要な指標になります。
分散型ネットワークは、
多様性によって倒れにくくなる
という事実を、Cardano自身が証明したのです。
③ 情報透明性と説明責任──“FUDに勝つ文化”が成熟した
この事件を通じて、
Cardano はこれまで以上に「透明性の文化」が強化されました。
- 逐次の技術情報公開
- 分岐状態のリアルタイム説明
- 攻撃者情報の開示
- IntersectのMyths vs Facts発信
- 翻訳者・解説者・ユーザーによる迅速な拡散
これにより、FUDが完全ではないにせよ、
数時間ごとに“事実の側”が勝つ構造が形成されました。
Charlesも強調していたように:
「誤ったナラティブは簡単に“常識”になる。
だからこそ迅速に正す必要がある。」
Cardanoは今回、
“説明する力”という武器 を手に入れました。
④ ネットワークは“分散したコミュニティ”によって守られる
今回もっとも重要な真実は、
Cardanoは人によって守られた
ということです。
- 異常検知の最初の反応はSPO
- 30時間の不眠対応は開発者たち
- 透明な報告を続けた創設エンティティ
- 誤情報を正し続けた翻訳者・コミュニティ
- 冷静に状況を見守ったユーザー
- 取引所の迅速な入出金停止による資産保護
Cardanoは今回、
“つながりの構造” がどれほど強いかを世界に示しました。
これは既存金融システムには持ち得ない、
Web3ならではの「連帯の強さ」です。
⑤ そして──この日の“団結(Newfound Unity)”は、今後180日を支える土台になる
Charlesは深夜の動画でこう語っています:
「今日ほどエコシステムがまとまった日はなかった。
これを維持できれば、Cardanoが負ける未来は存在しない。」
そして、これからの90〜180日が“決定的な期間”になる理由として、
- Midnight のローンチ準備
- Cardano DeFi エコシステムの統合
- Realy / TVL本格流入
- L1 60倍高速化をもたらす Leios
- Hydra の実用化
- 完整備されたDeFi基盤(ブリッジ・オラクル・DA・PubSub・イベントソーシング)
- RealFiの100万件規模の実績と移管
を挙げています。
つまり、今回の団結は単なる「美しい話」ではなく、
Cardanoが次のステージへ進むために不可欠な“準備運動”だったのです。
⑥ 最後に──この事件は“壊れた日”ではなく、“立ち上がった日”だった
私たちが今回見たのは、
トラブルの連続ではなく
Cardanoが本来持つ生命力・回復力・団結力
の証明でした。
- 止まらないプロトコル
- 自然収束する設計
- 自律分散で動くSPO
- 多様性で耐えるネットワーク
- 透明性で信頼を守る文化
- 団結を取り戻したコミュニティ
そしてホスキンソン氏が語った結びの言葉。
「僕は疲れ切っている。でも明日も働く。
そしていつの日か、僕たちは“世界で一番”になる。」
この言葉は、
技術でも、価格でもなく、
Cardanoという“生きたエコシステム”の未来そのものを象徴しているように感じます。
■ ここから始まる、“次のCardano”
2025年11月22日は、
Cardanoが“壊れなかった日”ではなく、
Cardanoが“強さを証明した日”であり、
Cardanoが“再び団結した日”であり、
Cardanoが“未来へ歩き出した日”でした。
この経験は、必ずCardanoの未来を強くする力になります。
そして私たちは、その「未来の証人」になることができます。
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