『カルダノ新章突入:第3の通貨・ブロックチェーンとしての覚醒へ──2025ロードマップ・予算・技術・コミュニティが導く分散型未来地図』

序章:エポック557──カルダノの現在地
カルダノは、いよいよ「第3の通貨・ブロックチェーン」としての地位を現実のものとしようとしています。
2025年、カルダノはVoltaire時代の本格的な幕開けを迎え、ガバナンス・予算・インフラ・ユースケースといったあらゆる分野において、「分散型の完成形」に向けた挑戦が加速しています。ADA保有者の意思決定、DRep(代表者)による投票、Intersectのファシリテーションのもと形成された「2025年ロードマップ」は、単なる技術計画ではなく、ブロックチェーン国家としての未来像を示すものです。
現在進行している2つの重要な局面は、カルダノの方向性を決定づける鍵となっています。
1つは、Intersectが公開した「2025 Vision & Roadmap」による技術・経済・社会構造の再設計です。
もう1つは、年間支出の上限「Net Change Limit(NCL)」と、それを土台にした2025年度予算の審議と採択プロセスです。
本記事では、これらの最新ガバナンス提案と技術開発の動向をもとに、カルダノの「現在地」と「これから」を整理し、なぜ今「第3の通貨」として再評価されているのかを考察いたします。SIPOとしてのDRep・SPOの視点から、コミュニティの皆様とともにカルダノの未来像を描いていきたいと思います。
第1章|カルダノ財政の核心「NCL」とその揺れ動き
NCLとは──カルダノ財政を律する“上限ルール”
Net Change Limit(NCL)は、カルダノ憲法に定められた「トレジャリーから一定期間内に引き出せる総額の上限」を意味し、Voltaire時代の財政運営の基盤となっています。予算提案はこのNCLの枠内で提出・審議・採択されることが求められています。
この「制限」は、一見すると単純な年間支出の上限と捉えがちですが、実はそれ以上に重要な“設計思想”が背後にあるように思います。
採択済みのNCL:350M ADA──最初の財政枠は広めに設定
2025年の予算に向け、すでにDRepの過半数により正式に採択されたNCLは350M ADAです。これは2024年の財務収入モデル(約336M ADA)を基準に設定されたもので、成長と実装の加速を重視する立場に立った決定でした 。
却下された保守案:300M/250M案
一方で、より慎重な財政運営を求めた「2025年=300M ADA/2026年=250M ADA」案は、DRepの投票によって却下されています。これは「Voltaire初年度におけるトレジャリーの急激な放出は避けるべきだ」とする観点からの提案でしたが、支出抑制の優先順位が下回る結果となりました 。
現在審議中のNCL:200M案と2026年向け300M案
現在、以下の2つのNCL関連提案が審議中です。
- 「2025 Cardano NCL」提案:支出上限を200M ADAに抑えることで、より堅実な予算運営を目指すもの
- 「Epoch 563〜635(2026年前半)に対する300M ADA」案:年度をまたぐ予算提案に対応し、予算の“空白期間”を避けるための設計
これらの多重提案は、Voltaire初年度ならではの制度運用の試練であり、今後のガバナンス整備の重要課題といえます。
Sebastien Guillemot氏の視点:NCLの本質は「支出+収入」である
こうした数字の攻防に対して、開発者のSebastien Guillemot氏が指摘したNCLに関する根本的な見解は、カルダノ財務を正しく理解するうえで非常に示唆に富んでいます。
氏によれば、NCLとは単なる「支出の上限」ではなく、「支出+収入(revenue)」の合計として設定されているとのことです 。
つまり、仮にNCLが350M ADAに設定されていたとしても、トレジャリーに収入が戻れば、その分だけ追加的な支出が可能になります。
たとえば、dcSparkは意図的に収益の一部をトレジャリーに返納することで、NCLの支出可能枠を増やすというアプローチをすでに実行しています。また、現時点で提出されているいくつかの提案にも、「収益の一部を財務に返す」という構造が組み込まれており、これらも“収入”としてNCLの枠計算に影響を与えます。
「NCL残高」の追跡と評価方法にも課題
このような構造を踏まえると、「今、NCLの残り枠がどれくらいあるのか?」を正確に判断するには、単に出金トランザクションを確認するだけでなく、収入との“ネット値”で見る必要があります。Guillemot氏は、このNCLのリアルタイム監視と追跡のために、専用のダッシュボードやエクスプローラーの整備が急務であると提案しています 。
また、彼は「貸付型予算(ローン)」についても言及しており、仮に未返済のローンがあれば、それもNCLの支出としてカウントすべきだと指摘しています。これは、財政の透明性とガバナンス責任を守るための根幹的な論点です。
SIPO DRepの判断軸──金額ではなく、設計思想と運用責任のバランスを
SIPOとしては、NCLの選択は単なる数字の問題ではなく、カルダノの財政哲学と成長ビジョンをどのように描くかという根幹的な問いであると捉えています。加えて、制度設計の柔軟性と、ガバナンスにおける運用責任とのバランスも極めて重要であると考えています。
現時点において、以下のような判断軸が考えられます:
- 🔍 支出制限による安定性を優先するなら「200M ADA」案が有力です。
- 🚀 実装と成長の加速を目指すなら「350M ADA」の維持が適切だと考えています。
- ⚖️ 制度整合性と予算の連続性を重視する立場からは、「300M ADA」への調整が現実的な着地点となり得ます。
さらに、今後の予算案審査においては、以下の観点から評価を行っていく方針です:
- 財務的リターン(利回り)が存在するか
- 執行体制の透明性と実行能力が確保されているか
- 分散型財政管理の“初の事例”として、制度的意義や前例性があるかどうか
NCLは単なる制限値ではなく、カルダノが「どこへ向かおうとしているのか」を示すコンパスのような存在です。設定される上限によって、採択される提案の「数」や「質」、そしてエコシステム全体の方向性が大きく左右されることになります。
加えて、今後は収益還元型の提案やローン返済の仕組みなど、より動的な財政構造を踏まえた評価基準も必要になると見ています。
NCLはもはや「静的な予算上限」ではありません。
それは、分散型財政における“動的な契約”と“責任”の象徴だと私たちは捉えています。
SIPOでは、これらの視点も踏まえつつ、各提案に対する評価軸と投票方針を順次明確化し、コミュニティの皆さまと共有していく予定です。
新たな転機:「275M ADA Intersect一括予算提案」の登場
2025年5月13日、新たに提出されたガバナンスアクション「Cardano Blockchain Ecosystem Budget – 275M ADA Administered by Intersect」は、39のプロジェクトを一括して承認する大規模な統合予算案となっています 。
この提案は、NCLの範囲内(350M ADA)に収まるよう設計されており、Intersectがすべての提案の管理者(Administrator)となることが前提です。これにより、以下のような制度的・運用的変化が生じます。
- 事実上の「年間予算案」として機能し始めた
- 予算執行にあたってのマイルストーン・審査・KYC/KYBがIntersectに一任
- 個別提案ではなく「パッケージ承認」型の制度運用が始動
この提案の登場により、NCLが単なる「予算上限」から、「年間執行計画の枠組み」として機能する段階に進んだといえるでしょう。
第2章|分配をめぐる選択──Intersect一括予算とコミュニティ主導提案の共存
3つの新たな財政提案の比較と戦略
2025年のカルダノ予算において、すでにNet Change Limit(NCL)が設定されている中、具体的な資金配分に関する複数の提案が提出され、審議が進行しています。本章では、現在進行中の中でも特に注目度の高い3つの予算提案──Amaru Node開発予算、DeFi流動性基金、7.5M ADAコミュニティ予算──について比較・分析し、それぞれの戦略的意義を紐解いてまいります。
① Amaru Node開発予算(1.5M ADA)──「ノードの多様性=分散性の強化」
Amaruは、PRAGMAが主導するRust製の新たなCardanoブロック生成ノードの開発プロジェクトです。既存のHaskellノードと異なる技術スタックを採用することで、ネットワーク全体のレジリエンス向上、性能最適化、将来的なマルチプラットフォーム展開を見据えたものとなっています 。
- 予算規模:1.5M ADA(後半半年分+25%の予備費含む)
- 提案主体:Blink Labs, dcSpark, Cardano Foundation, TxPipe などから構成されるPRAGMA
- 特徴:
- Rustによる軽量・高性能なノード開発
- スマートコントラクトによる資金管理と監査体制
- 定期的なデモと公開レポートによる進捗共有
Amaruは単なる技術開発に留まらず、「ノード単一依存からの脱却」というカルダノの基盤的分散性の確保にも資するものであり、長期的には国家レベルのインフラ構築における重要なピースとなり得ます。
② DeFi流動性基金(50M ADA)──「ステーブルコインのための公共資金運用」
こちらは、ステーブルコインの流動性確保を目的とした公共運用型DeFiファンドです。予算の一部をUSDC/USDT等の法定通貨建てステーブルコインに交換し、Cardano上のDEXやレンディングプロトコルへ提供することで、DeFi市場の活性化と安定的な流動性供給を狙います 。
- 予算規模:50M ADA(年間分・12回分割支出)
- 管理体制:7名からなるマルチシグコミッティ(うち少なくとも4名が非IOG系)
- 特徴:
- ステーブルコインへの転換・配分における裁量運用
- 収益の15%を毎月トレジャリーへ返納(NCLの支出枠を広げる構造)
- 法人化・透明性・ダッシュボード設計を想定したガバナンス構成
この提案は、カルダノのステーブルコインエコシステム拡張のための資金的インフラと捉えることができ、「財務が収益を生む」ことを明示した初の事例として制度設計上も先進的です。
③ 7.5M ADA コミュニティ予算案──「投票済プロジェクトの一括承認モデル」
この予算提案は、すでにオフチェーン段階で2.69B ADA以上の支持を得た複数のコミュニティ提案を1つのバンドルとして、まとめてオンチェーン承認にかける形式のものです。IntersectやIOGなどの「創業団体による提案」を除外し、「純粋なコミュニティ主導の提案」のみが対象となっています 。
- 予算規模:7.5M ADA(合計7件の提案を包含)
- 対象提案例:
- Midgard(Optimistic Rollups)
- Starstream(次世代VM)
- zkFold(ZK Rollup構造)
- Blockfrost Platform
- Ledger App再設計 など
- 特徴:
- オフチェーン投票閾値(2.69B ADA)を超えた提案のみを採用
- 民主的な原則に基づく「支持ベースの一括承認」モデル
- 提出者が100k ADAを持たずともオンチェーン化可能にする制度的救済
この提案は、Voltaire初年度における制度の実践と公平性の担保を図ったものであり、「閾値に達した提案は公平に採択されるべき」という民主主義的原則を反映した構造となっています。
SIPO DRepとしての分析と視座
SIPOとしては、これら三つの予算提案がそれぞれ異なるレイヤーでCardanoの未来像を支えていると捉えています。
提案 | 主な役割 | 収益還元性 | 制度的意義 | 長期インフラ性 |
---|---|---|---|---|
Amaru | 基盤層:ノード多様性 | なし(公共財) | 高 | 非常に高 |
DeFi基金 | 流動性インフラ+収益モデル | あり(15%返納) | 非常に高 | 高 |
コミュニティ予算 | 採択済提案の制度承認 | 間接的(多数が開発系) | 高 | 中〜高 |
これらの提案は単独で評価するのではなく、「NCL枠の中でのポートフォリオ設計」としての視点が必要です。特定分野に偏りすぎれば、分散型システム全体の進化バランスを欠く恐れもあるため、戦略的な資金配分が求められます。
新たな構造:Intersectパッケージ vs 独立系Info Action提案
区分 | 特徴 | 実行管理者 | 審査プロセス |
---|---|---|---|
Intersect統合予算(275M ADA) | 39件の提案を一括管理 | Intersect | DRepのYes投票後、スマートコントラクト+監査体制に基づき執行 |
独立Info Action提案 | 個別提出・個別投票 | 提案者本人 or 委託先 | DRepが個別評価・予算単位での投票 |
Intersect予算案には、IOGのコア開発(96.8M ADA)、Catalyst(69.4M ADA)、研究開発やグローバルイベント、マーケティング支出などが含まれ、まさに「エコシステム運営の基盤支出」が集約されています 。
一方で、AmaruやDeFi基金のような「コミュニティ起点の設計思想を持った提案」は、依然として独立Info Actionとして提出されています。
SIPOとしては、この「二軸構造」を理解したうえで、どの予算がどの価値観を代表しているのかを分析し、責任ある投票を行っていく方針です。
分配は未来を創る意思表示
私たちの投票は、「どの技術を支援するか」だけでなく、「Cardanoがどのような分散型未来を描くのか」を問うものです。今回の三提案は、公共インフラ、収益循環、制度民主主義という三つの柱にまたがっており、いずれも重要な意味を持ちます。
第3章|Voltaire時代の到来──ガバナンス制度の整合性と交差するIntersect予算の位置付け
2025年、カルダノは「Voltaire(ヴォルテール)」と呼ばれる分散型ガバナンス時代の本格始動を迎えました。
これは単なる技術的なフェーズ名ではなく、ADA保有者が憲法と予算を通じてネットワークの未来を共同で設計する時代を意味しています。
予算(トレジャリー)や技術開発の意思決定は、もはや一部の開発者や団体によって行われるものではなく、DRepやCC(憲法委員会)を通じたオンチェーン投票によって動かされています。本章では、こうした「Voltaire型ガバナンス」の根幹にある制度設計と今後の展望を整理します。
カルダノ憲法の骨格──「財政」「権限」「持続性」
カルダノの憲法は、技術仕様ではなく分散型社会の制度設計文書として機能しています。特に財政に関しては、以下のような重要原則が明文化されています:
- NCL(Net Change Limit):支出上限を定めることで、財政の持続可能性を守る
- 予算承認プロセス:DRepによる過半数投票、およびCCの合憲性審査が必要
- 監査と透明性の義務:四半期報告やオンチェーン記録による説明責任
このように、ガバナンスと財政運用の両輪が「法に基づく」設計となっている点が、他のL1チェーンと一線を画す特徴となっています。
初の大規模予算承認とその意味──制度の「初期テスト」が始まった
2025年の予算プロセスは、Voltaire制度下で初めてのフルスケール予算承認の実例となります。
これには以下の意義があります:
- DRepによるNCL提案と採択(例:350M ADA案)
- 数十件のInfo Actionによる予算提案の提出
- オフチェーンとオンチェーンの「2段階承認」
- CCによる憲法整合性審査と拒否権の発動可能性
つまり、今回の予算編成プロセスは、Voltaireガバナンスが「理念」から「制度」へと移行する転換点であると同時に、今後の改良点を見出す重要なフィールドテストでもあるのです。
DRep制度の成熟と課題──「数」から「責任」へ
現在、数百名のDRepが登録されていますが、実際の投票に参加しているアクティブDRepはごく一部にとどまっています。
そのため、重要提案が一部の票だけで通過・否決されてしまうケースも発生しています。
これに対し、コミュニティ内では以下の課題が指摘されています:
- DRepの説明責任(Vote Reasonの充実)
- 委任者へのフィードバックの透明化
- ステーク偏重と低参加率による“寡頭化”リスク
- DRep選定や解任の手続き整備の遅れ
このような背景から、Voltaireの「政治インフラ」としての完成には、今後さらに制度設計の強化とガバナンス教育の普及が求められます。
分散型制度の3つの展望──SIPOの視点から
SIPOでは、今回のVoltaire初年度の動きから、以下のような中長期的展望が見えてきたと考えています:
1. 財政運用の高度化──収益性と再分配モデルへ
これまでの「支出=開発費」から、「支出=投資+収益還元」への転換が始まっています。
DeFi流動性基金やローン型提案はその代表例であり、トレジャリーの“運用と拡張”を通じた持続可能な公共財ファイナンスの構築が求められています。
2. 憲法・委員会制度の成熟──「形式」から「実効」へ
CC(憲法委員会)は今後、単なる法解釈機関から、憲法改正の起草・ガイドライン策定・係争の仲裁といった実務面でも重要性が増すと予想されます。
これに伴い、裁定の正当性と説明責任の仕組み(ログ公開・公開討議等)も拡充が必要です。
3. 「政治と技術の統合」──Voltaire+Midnight+Leiosの共鳴
カルダノの本質は「技術と制度の融合」にあります。LeiosによるL1のスケーラビリティ強化、Midnightによるプライバシー強化、Voltaireによる意思決定の民主化が同時に進行することで、分散型国家モデル(DeGov+DeInfra+DeFi)の実装が現実味を帯びてきました。
分散型未来の実装は「制度化」と「可視化」から始まる
Voltaire時代の最大の課題は、制度を「合意と実行」の両面で支えることです。
そのためには、
- 予算・NCL・監査のリアルタイム可視化ツール
- DRepと委任者の信頼関係を築くUXの整備
- 透明性・責任・対話の3要素を支えるプロトコル
といった「政治のインフラ」が整っていることが不可欠です。
私たちSIPOは、これらの視点から制度設計を追い、必要に応じて提案を行い、そして委任者の皆様に「今なぜこの提案にYESを投じるのか」を明確に示す努力を続けてまいります。
「制度 vs 執行」の分離か?統合か?
Intersect統合予算の出現は、Voltaire制度の実装においてひとつの転機をもたらしました。制度(Cardano Constitution)はあくまで「予算はDRepが承認し、実行は分散化されたプロセスで行われるべき」としていますが、このIntersect型の運用は以下のような性質を帯びています:
- DRepは予算パッケージに対してYes/Noしか選べない(分割投票不可)
- 実行の裁量はIntersect(または委託先)に集中する
- 提案者はIntersectの審査・KYC・契約条件を満たす必要がある
この点で、「制度上の分散化」と「実行上の集中管理」の間に一定の緊張関係があることは否めません。
SIPOとしては、このプロセスを全面的に否定するのではなく、「制度的リスクの可視化」と「執行の透明性確保」を両立させるガバナンスの成長機会と捉えています。
制度整合性と今後の議論点
Intersect統合予算の登場によって、今後以下のような制度的議論が重要になると予想されます:
- 一括提案形式と「提案の可視化・説明責任」の分離
- DRepがどこまで中身を精査できるか?
- 選挙型ポータルと統合して議論できる場の整備が必要
- IntersectのAdministratorとしての権限とリスク
- 実行段階での拒否・解除可能性の制度的整理
- Smart Contract Escrow活用の標準化
- 独立提案との公平性と予算ポートフォリオ戦略
- Intersect案件に集中しすぎると、草の根提案が埋もれる可能性
制度の発展段階として、一時的に“準中央型管理”を受け入れる期間があることは、歴史的にも合理的です。しかしその先には、Intersectのような存在も、より多様な「管理者DAO群」に展開していくフェーズが必要でしょう。
以上を踏まえて、Voltaire時代の予算ガバナンスは「制度の安定」と「執行の信任」によって支えられるべきものであり、それは常に動的なバランスの上に成り立つという理解が重要です。
SIPOとしては、Intersect型統合予算の価値と限界の両方を見極めた上で、今後の改善点や代替モデルも視野に入れながら、バランスの取れた支援と投票を実行してまいります。
第4章|分散型技術の進撃──Midnight・Leios・Hydraが描くインフラ地図
Voltaireが制度の側面から「分散型国家」の基盤を築くものであるならば、それを実際に動かすエンジンこそがCardanoのコア技術群です。特に注目すべきは、2025年において実装が加速している3つの次世代基盤──Midnight、Leios、Hydraです。
本章では、それぞれの技術が担う役割と全体設計における位置付けを整理し、どのようにCardanoが「自由・安全・高速」のトリレンマを克服しつつあるのかを解説いたします。
Midnight──機密性と規制適合性を両立する「秘密の層」
Midnightは、CardanoのL1上に構築されるプライバシー特化型サイドチェーンであり、ZK(ゼロ知識証明)をベースとしたコンフィデンシャル・スマートコントラクト環境を提供します。
🔹 2025年最新動向
- Midnight Foundationが正式発足し、技術・資金・人材支援を統括
- Testnet-02の大規模アップグレード(v1.5.0)が実施され、スケーラビリティと互換性が大幅向上
- BLS12-381ベースのzkSNARK対応により、ZKP処理速度の最適化
- NFTによる無料トランザクション枠モデルなど、Web2的UXの導入構想も発表
Midnightは、今後医療、金融、法人コンプライアンス分野など、「匿名性と証明の両立」が求められる領域において、他チェーンにない競争優位を発揮すると見られています。
Midnightは「自由と規律の接点をつくる」技術であり、Voltaireの制度的自由と最も高い親和性を持つと考えています。
Leios──スケーラビリティの終着点へ
Leiosは、Ouroborosプロトコルの進化系であり、レイヤー1におけるスケーラビリティを抜本的に改革する新しいブロック生成アーキテクチャです。
🔹 技術概要
- Input Block / Endorsement Block / Ranking Block の三層構造による並列ブロック生成を実現
- SPOが同時多発的にInput Blockを生成・承認することで、L1の処理性能を飛躍的に向上
- 最終的な整合性はRanking Blockで確定し、UTXOとZKPの両立が可能
🔹 開発進捗(2025年時点)
- Charles Hoskinson氏が「2028年 → 2026年へ前倒し」を明言
- Face Melting Net(FMN)と呼ばれるテストネット環境で、数千体のAIエージェントを使ったパフォーマンス検証が進行中
- Ouroboros Leiosの研究進捗はすでに公開論文の段階に入りつつあり、仕様策定が間近に迫っています
Leiosは、Cardanoが今後あらゆるdApps、金融取引、国家規模のシステムを支える「公共レイヤーL1」として成長していく上で、最も中核に位置する進化エンジンです。
Hydra──超高速レイヤー2としての地方分散化の鍵
Hydraは、カルダノのステートチャネル型L2ソリューションであり、局所的な高速・低コストトランザクション処理を実現する仕組みです。特に「Hydra Head」という構造により、小規模参加者間での即時決済やゲーム処理、地域通貨の処理などに最適化されています。
🔹 現在の活用と進展
- Hydra Doom(リアルタイムゲームデモ)によって並列処理能力が証明済
- 日本のSPOや地方プロジェクトでは、Hydraベースの地域トークン流通実験が複数進行中
- ガバナンス機能との統合も模索されており、L1の投票制限を補完する手段となる可能性も
HydraはL1では間に合わない“日常的な処理”を高速に捌く専用レーンとして位置付けられ、今後の地方活性化・ゲーム・教育・交通などの現場での実装が期待されます。
SIPOとしての視座──三層で支える「分散型国家の実装計画」
SIPOでは、Midnight、Leios、Hydraの関係を以下のように位置づけています:
レイヤー | 技術名 | 主な役割 | ガバナンスとの関係 |
---|---|---|---|
L1 | Leios | 高速な公共基盤の整備 | Voltaire投票処理の土台 |
L2 | Hydra | 分散型サービスの即時決済 | 地域投票・dApps処理 |
サイドチェーン | Midnight | プライバシー+ZKP実行 | 機密投票・匿名資産管理 |
この3層構造は、「国のインフラ」「地方のシステム」「市民の自由」を支えるために不可欠なトリレンマ解決フレームです。
Intersectが提出した275M ADAの統合予算により「予算として公式に優先された」段階に突入
2025年、Cardanoの技術インフラは制度ガバナンス(Voltaire)と連動しながら、進化のピークを迎えようとしています。Midnight・Leios・Hydraという三大技術は、それぞれ異なる課題(プライバシー・スケーラビリティ・即時決済)を解決するために開発されてきました。
そして今回、Intersectが提出した275M ADAの統合予算の中に、Midgard(Hydra Rollup)、zkFold(ZK Rollup)、Blockfrost(開発者API)、RWAトークン化、不動産関連技術、ZK Bridgeなどの支援項目が含まれたことで、これらの技術群が「予算として公式に優先された」段階に突入したことが明らかになりました 。
Intersect予算が描く「実装フェーズへの加速」
以下のような技術提案がIntersect統合予算に含まれています:
技術領域 | 採択提案例 | 予算規模(概算) |
---|---|---|
L1強化(Leios準備) | IO開発予算、TWEAGのHaskell改修 | 約96M ADA+α |
L2(Hydra系) | Midgard – Optimistic Rollups | 約2.1M ADA |
プライバシー系 | zkFold、ZK Bridge | 約1.9M ADA(合算) |
開発者インフラ | Blockfrost、Lucid、PyCardano、MLabs系 | 約2M ADA |
分散型ノード | Amaru、Dolos、Pallas | 約600k ADA(合算) |
この構成を見る限り、Intersectは「Cardano L1+L2+Privacy Stackの包括的育成」にコミットしており、Voltaire制度のもとで技術実装を“国家戦略レベル”で整備する意図が読み取れます。
特に、Midnight系ZK技術とHydra系Rollupの併存・展開は、将来的な「ユースケース別L2の分権的展開」を視野に入れた布石といえるでしょう。
Voltaire+技術=制度駆動型インフラ国家の原型
Intersect統合予算が与える最大の意味は、以下のような制度と技術が融合した公共インフラモデルの現出にあります:
- 憲法に準拠した予算決定(Voltaire)
- スマートコントラクトとマルチシグを通じた分散管理(Hydra)
- ZKとデータ最小化によるプライバシー社会設計(Midnight)
- Leiosによる公共交通レベルの取引処理性能(L1)
このように、Intersect予算は単なる資金支出ではなく、“国家機能を支える技術ロードマップ”の執行計画と解釈できます。
テクノロジーは制度と融合して初めて“国家”になる
Voltaire(制度)とMidnight/Leios/Hydra(技術)が交差することで、カルダノはもはや「暗号資産のプラットフォーム」ではなく、持続可能なデジタル国家インフラへと進化しつつあります。
この視座から見たとき、私たちが今支援する予算提案や技術開発は、「単なるコード」ではなく、「未来の国家構造を支える部品」にほかなりません。
SIPOでは、今後も技術と制度の交点を見極め、必要なところに適切なリソースが届くよう、責任ある投票を行ってまいります。
第5章|ユースケースの地平──Cardanoが開く分散経済の現場

Cardanoは、技術と制度を兼ね備えた「分散型インフラの統合体」として進化を続けています。しかし、その価値が真に立証されるのは、実際に社会や経済の現場で活用され、恩恵をもたらすときです。
本章では、2025年現在、Cardanoが直面している3つの重要なユースケース領域──地域通貨、ステーブルコイン、グローバルRWA(実世界資産)──について、すでに動き出している実例や提案とともにご紹介いたします。
1. 地域通貨・ポイント経済──Hydra活用による「日常決済のブロックチェーン化」
日本をはじめとする多くの国では、地域通貨やポイント経済による地域循環モデルが注目されています。
CardanoのHydraは、高速・安価・簡易な決済処理を実現できるため、こうしたスキームと非常に親和性が高く、以下のような利活用が期待されています。
✅ 進行中の具体例
- 日本の地方自治体との実証実験:Hydraを使ったクーポン流通や地域ポイント
- 教育・交通との統合:学生IDと結びついたバス利用、学食割引など
- AIRA提案:Hydra L2上での地域ポイント経済と行政・商工連携の統合モデル(SIPO提案)
これらは、Voltaireの制度ガバナンスと連携することで、地域経済圏ごとの自律的な通貨運用と予算管理を実現する未来を描いています。
Hydra × 地域経済は、「自治と経済の分散化」を現実の制度と結びつけるカギとなります。
参考記事:
*こちらの提案はProjcet Catalyst Fund14で予算提案を提出する予定です。
2. ステーブルコイン──プライバシー・規制適合・自律性の三位一体へ
Cardano上では、法定通貨連動型のステーブルコイン(USDM、iUSD、USDAなど)がすでに流通しています。
さらに、2025年にはチャールズ・ホスキンソン氏が「プライバシー重視の新たなステーブルコイン構想」を公表し、注目を集めています 。
✅ 構想のポイント
- すべての取引が追跡可能なステーブルコインへの疑問
- Midnightをベースにしたプライバシー保護型ステーブルコインエコシステム
- ZK証明とオンチェーンID(Atala PRISMなど)との連携
- 収益の一部をトレジャリーに返納するDeFi型設計
これにより、「個人の自由」と「国家の規制」を両立させる次世代金融インフラの実現が視野に入りつつあります。特に、政治的監視が強まる世界において、“選べる透明性”を持った金融ツールはカルダノ独自の価値となる可能性があります。
3. RWA(実世界資産)のトークン化──分散金融の信用革命
Cardanoでは、実世界の資産(不動産、債券、国債、レジリエンスファンドなど)をオンチェーン化する取り組みが進行しています。RWAは、グローバルな資本移動・利回り投資を可能にする一方、信用とガバナンスの設計が必要不可欠です。
✅ 参考プロジェクト
- Haus提案:ミズーリ州での不動産トークン化+キャピタルゲイン免税制度の活用
- Sandsphere提案:UN SDGs連携によるインパクト不動産・脱炭素資産のブロックチェーン移行
- Cardano Treasury DeFi Liquidity Budget:トレジャリー資金をステーブルコイン化し、収益の15%を返納する構造
これらは単なる「金融商品」ではなく、公共性と分散化、国際的な政策アライメントを内包した“ポリティカル・ファイナンス”とも呼べる新領域です。
Voltaireによる制度、Leiosによる処理性能、Midnightによるプライバシー保証が、RWAの信用設計を技術的に支える土台となります。
ユースケースの鍵は「ガバナンスとの接続性」
これらの事例に共通しているのは、「技術と制度がつながって初めて、実装されうる」という点です。
- 地域通貨は「予算」と「投票」の制度と連動することで、行政と市民による共創型経済が可能になります
- ステーブルコインは、憲法上の財政ルールと接続することで、中央集権的な発行モデルを回避できます
- RWAは、公共的価値のある資産を透明に管理・評価する仕組みと共に設計される必要があります
つまり、カルダノのユースケースは単なる「使える技術」ではなく、“制度が許可する技術”として初めて機能します。
Intersect統合予算とユースケース支援の制度的基盤
これまで本章では、地域通貨・ステーブルコイン・RWAトークン化などの実例を取り上げてきました。そこにIntersect統合予算が加わることで、ユースケース支援の制度的基盤が大きく拡張されたことになります。
Intersect予算内には、以下のような「現実接続型ユースケース」を支えるプロジェクトが含まれています :
ユースケース領域 | 提案名 | 支援の性質 |
---|---|---|
地域経済/マーケティング | Global Event Strategy、Cardano Pavilions | 商業的可視化と地域連携支援 |
RWA(不動産) | Tokenized Real Estate | 高利回り不動産をDeFi資産に変換 |
Stablecoin/DeFi | Native Asset Support、Liquidity Pools | 安定資産の発行・流通基盤の支援 |
開発者環境 | CDN for Assets、Web3スタック for BTC | 利用者拡大と統合性向上 |
このような提案が一括予算で進行することで、ユースケースは「提案ベース」から「制度実装ベース」へと進化し始めたと言えます。
Intersect予算がもたらす「公共性」の次元
これまでユースケースの多くは、単独のコミュニティによる提案で動いていましたが、Intersectによる予算化によって、次のような変化が生じています:
- 「公的に承認された提案」として、制度上のレガリティが付与される
- 予算が1年分確保されることで、持続性・中期的計画性が担保される
- 実装者がIntersectのレビューやKYCを通ることで、ステークホルダーとの信頼性が増す
この変化により、Cardanoのユースケースは単なる実験段階を脱し、制度に根差した「新しい公共サービス」として認識され始めています。
これまで本章では、地域通貨・ステーブルコイン・RWAトークン化などの実例を取り上げてきました。そこにIntersect統合予算が加わることで、ユースケース支援の制度的基盤が大きく拡張されたことになります。
Intersect予算内には、以下のような「現実接続型ユースケース」を支えるプロジェクトが含まれています :
ユースケース領域 | 提案名 | 支援の性質 |
---|---|---|
地域経済/マーケティング | Global Event Strategy、Cardano Pavilions | 商業的可視化と地域連携支援 |
RWA(不動産) | Tokenized Real Estate | 高利回り不動産をDeFi資産に変換 |
Stablecoin/DeFi | Native Asset Support、Liquidity Pools | 安定資産の発行・流通基盤の支援 |
開発者環境 | CDN for Assets、Web3スタック for BTC | 利用者拡大と統合性向上 |
このような提案が一括予算で進行することで、ユースケースは「提案ベース」から「制度実装ベース」へと進化し始めたと言えます。
Intersect予算がもたらす「公共性」の次元
これまでユースケースの多くは、単独のコミュニティによる提案で動いていましたが、Intersectによる予算化によって、次のような変化が生じています:
- 「公的に承認された提案」として、制度上のレガリティが付与される
- 予算が1年分確保されることで、持続性・中期的計画性が担保される
- 実装者がIntersectのレビューやKYCを通ることで、ステークホルダーとの信頼性が増す
この変化により、Cardanoのユースケースは単なる実験段階を脱し、制度に根差した「新しい公共サービス」として認識され始めています。
SIPOの判断軸──個別支援から予算ポートフォリオ評価へ
ユースケース支援において、SIPOは今後以下のような視点を重視して投票戦略を調整していきます:
- Intersect支援下にあるか否かではなく、構造的価値の有無
- 短期ROIよりも、中長期の制度的・経済的持続可能性
- 提案者が制度設計(返納モデル、KPI、オープン管理)に意識的かどうか
- ガバナンス制度と技術実装の接続性(例:Midnightとの整合性)
Intersect統合予算は、あくまでVoltaire制度下のひとつの試行形態であり、SIPOとしてはこれを全肯定・全否定するのではなく、その成果・限界を冷静に観察し、評価・提言する立場で関与してまいります。
第6章|カルダノという文明設計──分散型社会に向けた歴史的航路

カルダノは単なるブロックチェーンプラットフォームではありません。
それは、制度・技術・経済・倫理を一体として設計し直す「文明レベルの挑戦」であると考えています。
Voltaireによってガバナンスの枠組みが整備され、LeiosによってL1性能の限界を超え、Midnightがプライバシーの本質を問い直し、Hydraが地域経済や実生活の中にブロックチェーンを浸透させる──このすべてが交差する場所に、「Cardanoという文明モデル」が浮かび上がります。
制度・技術・倫理を統合するプロジェクトとしてのCardano
これまでのテクノロジー史において、制度と技術が同時に設計された事例は極めて稀でした。
- インターネットはオープンでしたが、制度が追いつかず中央集権へ傾斜しました
- ビットコインは制度を拒否しましたが、統治不能性が暴走する側面も持ちました
- Web3は自由を掲げながらも、しばしば寡頭的設計と不可視のルールに支配されがちです
その中でCardanoは、「制度から始めるテクノロジー」として独自の道を歩んでいます。
Cardano憲法は、単にコンセンサスルールを定める文書ではなく、トレジャリー、代表制、透明性、分配の原則を明記する、社会契約に近い性格を持ちます。これはまさに「ブロックチェーンによる社会の再定義」です。
人類の制度進化とCardanoの系譜
Cardanoが試みているのは、ルネサンスや近代民主主義といった歴史的転換の流れの延長線に位置しています。以下のように整理することができます。
時代 | キーワード | 制度の特徴 |
---|---|---|
古代 | 王政・信託 | 統治の集中、不可視の権威 |
近代 | 市民社会 | 権利と法による制度設計 |
現代 | デジタル民主主義 | 分散、透明、参加による制度の再設計 |
Cardano | 分散型憲法・財政 | 自律的・オープン・ガバナンスの文明モデル |
このようにCardanoは、単なるL1プロトコルではなく、「制度をオープンソース化する」という文明的挑戦」と捉えるべきです。
「誰が未来を設計するのか」という問いへの回答
Voltaireは問いかけます。
未来の制度は、誰が設計するのか?
未来の公共財は、誰が責任を持つのか?
未来の投票は、どんな価値を生むのか?
その答えは、「我々自身である」ということです。
Cardanoにおいては、DRep制度を通じて、誰もが提案に意見を述べ、投票し、予算の決定に参加できます。
それは「国家」に委ねるのでも、「企業」に任せるのでもなく、「私たちが自らの手で未来をつくる」という意思表示の連続です。
この構造は、単にADAを保有しているからという理由だけではなく、「責任と選択肢が結びついた経済民主主義」を形成する基盤となります。
Cardanoが示す新しい公共のかたち
Cardanoは、政府でも企業でもNGOでもありません。
それでも、公共財を作り、制度を作り、人と人とをつなげるネットワークを自律的に維持しようとしています。
このようなモデルは、過去には「国家」という枠組みでしか実現不可能だったはずです。
しかし、今や分散型台帳技術・憲法ガバナンス・財政制度・スマートコントラクトという要素が揃ったことで、「新しい公共性」が出現しようとしています。
私たちは、Cardanoというプロジェクトの中に「ポスト国家的な文明の核」を見出しています。
それは決して空想的なユートピアではなく、実際の提案、投票、技術実装、地域通貨、インフラ設計、教育支援など──現場の実践によって日々形作られている現実です。
未来へ向けて──私たちは今、「設計に加わる権利」を手にした
2025年、Cardanoは第3の通貨として台頭し、ブロックチェーンの可能性を制度面から切り拓いています。
Voltaireは始まりました。LeiosとHydraはインフラを支え、Midnightは自由と規律を接続し、数多くのプロジェクトが今、リアルな経済や社会の中で動き出しています。
今後の課題は明確です──
- よりわかりやすく、参加しやすい制度の構築
- 提案の品質向上と評価指標の整備
- トレジャリー財政の持続可能な戦略設計
- 分散化の中での「責任の可視化」
これらを乗り越えることができたならば、Cardanoは世界初の「参加型・分散型・持続可能な文明モデル」となる可能性を持っています。
そして私たちは、DRepとして、SPOとして、保有者として、参加者として、
この航路に加わる権利と責任を同時に持っているのです。
Intersectによる275M ADA統合予算の提出と可決プロセスは「誰がどのように公共インフラを設計・管理するか」という文明的問いへの制度的回答
カルダノは、単なる暗号資産プラットフォームを超えて、制度・技術・経済を一体化させた「新しい文明のOS」を構築しようとしています。2025年、このプロジェクトは明確に「公共財の制度化フェーズ」に突入しました。
その象徴こそが、Intersectによる275M ADA統合予算の提出と可決プロセスです 。これは単なる資金配分ではなく、「誰がどのように公共インフラを設計・管理するか」という文明的問いへの制度的回答となりつつあります。
Intersect予算が意味する「制度化された公共財」の始まり
Intersect予算は、技術開発・マーケティング・研究・イベント・ユースケース・ノード多様化など、多岐にわたる領域にまたがっています。しかし、これらすべてに共通するのは「Cardanoという分散型社会を支えるための共通インフラ」であるという点です。
この一括予算が示したのは、次のような構造です。
- 資金調達:Voltaire制度下でDRepによる正式な投票承認
- 実行管理:Intersectがスマートコントラクトと監査機能により分散管理
- 公共性担保:ガバナンス参加者とKYC基準を通じた責任あるプロセス
- 可視性:IPFSとEkklesiaを通じて全ての審議記録・投票結果が公開
これらを通じてCardanoは、「国家が行ってきたこと」を、制度とコードによって再構築しているのです。
制度 × 技術 × 公共性──Cardanoが描く文明設計の三層構造
これまで、文明は以下のような三層の構造で動いてきました:
層 | 歴史的モデル | Cardanoでの対応 |
---|---|---|
制度(Governance) | 憲法・議会・税制 | Voltaire(DRep、NCL、CC) |
技術(Infrastructure) | 道路・電気・インターネット | Leios、Hydra、Midnight、Smart Contract |
公共性(Public Goods) | 上水道、教育、医療 | Treasury、Intersect Budget、OSS支援 |
Intersect統合予算は、この3層構造すべてにまたがる機能を持ち、分散型公共財の統合モデルとしてCardanoの文明性を高めています。
文明の分岐点に立つ:誰が未来のインフラを設計するのか
Voltaireの問いは、単に「投票できるかどうか」ではありません。それは「誰が未来の制度と技術と財政の設計に責任を持つのか」という問いでもあります。
今回のIntersect予算は、次のようなステップで文明設計に具体的な形を与えました:
- ビジョン(2025ロードマップ)を公開
- 公募・投票・評価というプロセスで透明な資金分配を実現
- 技術・経済・コミュニティの各層が連携した運用体制を構築
これによってCardanoは、「自由を守る制度設計」と「持続可能な資源管理」が両立可能であることを、現実のガバナンスとテクノロジーによって証明しつつあります。
SIPOの視座──Cardano文明の成熟に向けて
SIPOは、Cardanoを未来の市民社会インフラの試験場であると捉えています。そしてIntersect予算のような制度的設計は、文明の成熟段階において次のことを実現すると信じています。
- 投票とは「分配の倫理」を問うものであること
- 財政とは「共通の未来への投資」であること
- 技術とは「社会契約を自動実行する手段」であること
Intersectの登場は、単に「大きな管理主体の誕生」ではなく、「制度が成熟した文明に必要な実務機構が生まれた」と解釈すべきです。
結語──私たちが描く、分散型文明という未来
Cardanoの文明設計は、理想でも思想でもなく、選ばれた提案、書かれたコード、可視化された制度、そして日々の投票行動によって現実に近づいています。
Intersect予算は、私たちに問いを投げかけました。
公共財は誰が守るのか?
ガバナンスは誰のためにあるのか?
財政は誰の意思を映すのか?
その答えは明白です。
我々全員が「設計する当事者」であるということ。
Voltaireは制度を、Leiosは基盤を、Hydraは速度を、Midnightは自由を、Intersectは公共性の管理を、そしてコミュニティは未来への意思を、それぞれ分担しながら、一つの文明を築いています。
それが、私たちがCardanoと呼ぶ、分散型の社会実験であり、設計図であり、未来です。
私たちは今、歴史的航路の中にいます。
地図はすでに描かれつつあり、その続きを描くペンは、あなたの投票と提案と対話の中にあるのです。
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ダイダロスマニュアル
ヨロイウォレット Chromeブラウザ機能拡張版マニュアル
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SIPOのDRep投票履歴:https://sipo.tokyo/?cat=307
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