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中間地帯に立つ我々へ──崩壊と創造の狭間で読むホスキンソン思想とカルダノの未来が楽しみで仕方ない未来地図:ニュース動向 & ステーキング状況 in エポック568

中間地帯に立つ我々へ──崩壊と創造の狭間で読むホスキンソン思想とカルダノの未来が楽しみで仕方ない未来地図

指数関数文明の羅針盤──ホスキンソンが語るAI×ブロックチェーン×民主主義の設計原理と文明転換期を生き抜く思想のアップグレード

序章|「中間地帯」に立つ我々──崩壊と創造の交差点で

2025年7月、私たちは今まさに、歴史の転換点に立っています。

それは単なる年号の移り変わりではありません。国際秩序の動揺、金融システムの崩壊兆候、そしてテクノロジーの爆発的進化が同時多発的に進行する中で、私たちは「旧きものが壊れ、新しきものが生まれる」その瞬間に、確かに立ち会っているのです。

この時代を特徴づける言葉を一つ挙げるとするならば、それは「中間地帯」──中庸ではなく、確かな境界の喪失と、新たな原理の胎動のあいだに広がる、未定義の空間です。

既存の国家モデル、金融モデル、情報モデルが次々と限界を迎える一方で、AI、ブロックチェーン、量子コンピューティング、そして新しい民主主義の形が、これまで不可能とされていた未来の可能性を指し示しています。

このような転換期において最も重要になるのは、正しい歴史認識です。

もしその歴史理解が誤っていれば、AIが誤ったデータを学習して誤答を導き出すように、私たちもまた未来を誤認し、選択を誤ることになります。

つまり、いま問われているのは、「未来をどう見通すか」という“洞察力”そのものなのです。


このような時代背景の中で、私たちが注目すべき人物がいます。それが、チャールズ・ホスキンソン氏です。

ビットコインの黎明期から教育者として活動し、イーサリアムの共同創設者の一人として暗号資産の歴史に名を刻み、現在はカルダノ(Cardano)およびプライバシー重視型の新レイヤー1「Midnight」の開発を主導しています。

しかしホスキンソン氏の特異性は、単にブロックチェーンの技術者であるということにとどまりません。彼は数学、AI、ナノテクノロジー、合成生物学、量子コンピューティング、さらにはポスト国家的な制度設計に至るまで、幅広く深い知見を有し、それらを現実のビジネスと制度の設計に落とし込む“思想する投資家”でもあるのです。


本特集では、ホスキンソン氏の発言と思想、そしてそれを体現するカルダノやMidnightといったプロジェクトを通じて、今まさに再編されつつある世界秩序と私たちの未来戦略を読み解いていきます。

特に取り上げるのは、ホスキンソン氏が出演したSRSポッドキャスト第215回

Charles Hoskinson – Cardano Founder on the Secret DARPA AI Project That Became Siri

です。

このインタビューは、彼の過去・現在・未来、そして人類社会に対する壮大な構想を“もっとも濃密に、もっとも明瞭に”語った記録として、多くの識者から「ホスキンソン思想の決定版」とも評されています。

この回を読み解くことは、単なる一人の技術者の考えに触れるという意味を超えて、私たち自身がどのような思想と制度のもとでこれからの世界を生きていくのか──その指針を獲得する試みに他なりません。


『中間地帯に立つ我々へ』──この特集を通じて、読者の皆様が「新しい秩序の入り口」に光を見出し、“未来が楽しみで仕方ない”という希望を取り戻すことができれば、これ以上に嬉しいことはありません。


第1章|チャールズ・ホスキンソンという存在の射程

チャールズ・ホスキンソン氏は、単なるブロックチェーン開発者ではありません。その存在は、思想家であり、制度設計者であり、哲学的実践者であり、そして歴史の分岐点に立つ“語るべき男”でもあります。

ビットコインの初期段階で教育者として活動を始めた彼は、2013年に暗号資産の啓蒙活動を始め、世界中の大学やカンファレンスで講演を行いました。イーサリアムの共同創設者として知られるようになったのもこの頃であり、同プロジェクトの黎明期において“制度と哲学”の両面から構想を形作ったキーパーソンの一人です。

しかし、その後、イーサリアムの組織構造や意思決定プロセスに対する哲学的な不一致から離脱し、独自のビジョンを掲げてカルダノ(Cardano)プロジェクトを立ち上げました。

この「離脱」という出来事自体に、ホスキンソン氏の本質が表れています。彼にとって、ブロックチェーンとは単なる“アプリケーションプラットフォーム”でも“資産管理の枠組み”でもなく、“人類が未来をどう設計し直すか”を問う、極めて政治的かつ文明的な問いなのです。


その思想は、カルダノの設計思想にも色濃く表れています。

たとえばカルダノは、学術的に査読された数々の論文を基礎とし、数学的厳密性を第一義としています。これは、ブロックチェーンという技術が国家・制度・社会基盤を担う“公共インフラ”になることを前提に設計されているからです。

また、カルダノの構造は、「将来的に自己進化できる制度」であることを志向しています。Voltaireと呼ばれるガバナンス機構、Catalystと呼ばれる資金分配システム、そしてMidnightに代表されるプライバシー層やアイデンティティ管理──それらはすべて「制度の土台として再構築可能な、流動性を備えた基盤」の構想に基づいています。


加えて、ホスキンソン氏はCardanoの枠を越えて、様々な先端分野に関与しています。

量子コンピューティングでは、MicrosoftのMajoranaプロジェクトに深く関与し、合成生物学では「光る植物」プロジェクトをベン・ラム氏らと共同で立ち上げ、Colossal社とともに絶滅種の復活に取り組んでいます。

また、ナノテクノロジーや抗老化医療、先住民社会での分散型ID実装プロジェクト、パプアニューギニア沖の隕石回収チームへの出資、バイソン牧場と自前の建設会社の運営まで、活動のフィールドは極めて多岐にわたります。

一見するとバラバラなこれらの活動は、実はひとつの問いに収束していきます。

──それは、「人間という存在が、次の文明期においていかに生き、組織され、意思決定し、調和していくべきか」という問いです。


ホスキンソン氏は、ブロックチェーンをその問いに対する“実践的な答え”として位置づけています。

そしてカルダノは、その答えを具体的に実装するための「社会制度のOS(オペレーティング・システム)」なのです。

だからこそ、カルダノは他のL1チェーンとは明確に異なります。単なるトランザクションのスピードやDeFiの規模ではなく、「制度としての設計思想」において、際立った個性を持っているのです。


本章では、その思想と実践を体現する存在としてのチャールズ・ホスキンソン氏の「射程」を概観しました。

次章では、2025年に公開されたポッドキャスト「SRS #215」にて語られた彼の“核心的思想”を解き明かします。このインタビューは、技術・制度・文明を語るうえで、もっとも包括的かつ深度のある内容となっています。

それは単なる対話ではなく、“未来からやってきた人間の声”として、私たちに問いかけるものです。


第2章|SRS #215 完全読解:文明と制度の設計者としてのホスキンソン

2025年春、チャールズ・ホスキンソン氏が出演したポッドキャスト番組「SRS(Sean Ryan Show)」の第215回が公開されました。タイトルは──

「Charles Hoskinson – Cardano Founder on the Secret DARPA AI Project That Became Siri」

本章ではこの回を「ホスキンソン思想の集大成」として位置づけ、彼が語った一連のテーマを紐解きながら、そこに通底する「制度設計者としての視座」に注目していきたいと思います。


このエピソードの中で、ホスキンソン氏はこう語っています。

「暗号資産とは、“制度”を再設計する運動なんだ。単なる価値の移転やトークン経済ではなく、“文明の再構築”の話なんだよ。」

この発言に象徴されるように、彼の視点は終始“制度そのものの再定義”に向けられていました。しかもその制度とは、国家、経済、金融、投票、プライバシー、さらには信頼構造そのものを含む、広義の社会OSを意味しています。


たとえば、ホスキンソン氏は現在の民主主義の限界についてこう指摘します。

「スターリンはこう言った──『重要なのは誰が投票するかではなく、誰が票を数えるかだ』と。でも、僕はこう言いたい。“誰に投票できるか”こそが重要だ。」

この言葉の背景には、現代の政治制度における“候補者選定のバイアス”や“票の可視性の不在”に対する批判があります。そしてその解決策として、彼はブロックチェーンによる「分散型かつ検証可能な投票システム」を提案します。


ホスキンソン氏が描く投票の未来とは、次のようなものです。

  • ブロックチェーンで投票が透明化され、票の改ざんが不可能になる
  • 有権者は自分の票が“正しく記録されたか”を確認できる(inclusive accountability)
  • 書き込み式(write-in)やランキング投票(順位制)、流動的民主主義(liquid democracy)など、多様な投票形式が選択可能になる
  • 投票権の重みを保有資産や信頼スコアに連動させた“動的ガバナンス”も実現できる

このように、ブロックチェーンは単なる技術ではなく、「民主主義そのものの再定義」を可能にする設計言語であるというわけです。


さらに、番組中盤では“信頼の崩壊”についての話が展開されます。

「制度はすべて“信頼”の上に成り立っている。でも今、その信頼は崩れかけている。だから、制度を“人”ではなく“数学”に委ねなければならない。」

この考え方は、まさにブロックチェーンの根幹をなす「ゼロトラスト設計」そのものです。中央の仲介者を信頼するのではなく、暗号技術によって「信頼しなくても正しい状態が保たれる」仕組みを設計する──これこそが、現代の制度に欠けていた視点であり、カルダノの核心でもあります。


また、番組の後半では、彼の活動領域がAI、合成生物学、量子コンピューティング、ナノテクノロジーなどへと広がっていることも語られました。彼にとって、制度とはソフトウェアであり、社会はプログラム可能な対象であり、人間の信頼は暗号的に設計し直せるものなのです。

それはつまり、かつて“国家”が担っていたすべてを「オープンソース・分散型・検証可能な原理」で再実装できるという意味でもあります。


SRS #215の中で語られたホスキンソン氏の思想は、単なる知識の集積ではなく、「制度設計のための設計原理」として体系化されています。

  • 信頼は検証可能でなければならない
  • 政治はプログラマブルであるべきである
  • 投票は不可逆的・タイムスタンプ付きであるべきである
  • アイデンティティは本人のものでなければならない

このような原理は、カルダノのVoltaire、Catalyst、Midnightといったサブプロジェクトにおいても着実に実装が進められています。


そして最後に、ホスキンソン氏はこう語ります。

「制度というのは、時代が変われば変わらなければならない。でも、多くの制度は“変更できない設計”になっている。だから、僕たちは“最初から変更可能な制度”を作っているんだ。」

この言葉は、まさに未来のOSとしてのCardano、そしてその思想を支える“可変性=流動性民主主義”の核心を突いているのではないでしょうか。


次章では、こうした思想の具現化としての「制度進化装置=ブロックチェーン」が、どのような影響を社会と経済にもたらし、そしてホスキンソン氏が語る“スマートカウ効果”がどのように指数関数的な制度変革を生んでいるかに迫っていきます。


第3章|制度進化としてのブロックチェーン──スマートカウ効果の本質

「制度」とは、私たちが無意識に従っている社会の操作体系です。法律、選挙、教育、金融、所有権──これらはすべて“仕組み”であり、“構造”であり、“記録の仕方”です。

それゆえ、制度は“変更可能”なはずなのですが、現実の社会ではその多くが“変更しづらく設計されている”のが実情です。改憲一つとっても、現行の手続きは極めて複雑で、民意の反映とはほど遠いのが現実でしょう。

この制度の硬直性こそが、現代社会のあらゆる混乱の根底にあります。


その硬直性に風穴を開ける存在こそが、ブロックチェーンです。

ブロックチェーンは、誰が何をしたかを“時系列に沿って改ざん不可能な状態で記録”できる技術です。これは、制度が本質的に持つ「記録性」「不可逆性」「透明性」を、すべてソフトウェアで再現可能にすることを意味します。

そして一度それが“設計可能な構造”になった瞬間、制度は“オープンソースのレイヤー”として再定義されることになります。


ホスキンソン氏はこの変化を、“スマートカウ効果(Smart Cow Effect)”と呼んでいます。

これは、ある賢い一頭の牛が柵の開け方を覚えると、他の牛たちもそれを真似し、全体の行動が変わってしまう──という現象に由来します。

つまり、たった一つの制度的イノベーションが、“一斉模倣”を通じて急速に普及していくという指数関数的な拡張モデルです。


たとえば、ゼロ知識証明(ZKP)という暗号技術は、かつては学術界の片隅で扱われていたマニアックな理論にすぎませんでした。

しかし、暗号資産空間において「匿名性」や「選択的開示」の必要性が急激に高まると、ZKPはたちまち現場の技術として実装され、2020年代後半には数百のプロジェクトで採用されるまでに成長しました。

これは制度進化のプロセスそのものであり、「誰かがやったら皆が追随する」構造において、ブロックチェーン空間が極めて優れた実験場となっていることを示しています。


カルダノもまた、そうした制度進化の実践例です。

たとえば、Catalystというプロジェクトでは、毎回数十万票規模の分散型予算投票が行われており、提案、投票、資金配分の全プロセスがオンチェーンで可視化されています。

このような事例が一度構築され、成功を収めれば、それは他のチェーン、他の国、他の制度にも“無料でコピー”され、再利用されることになります。

制度の進化が「独占知」ではなく「共有知」になる──この構造こそが、スマートカウ効果の本質です。


そして重要なのは、この制度進化の速度が“かつての政府・大学・企業のスピード”とは比較にならないほど速いという点です。

かつて制度改革には数十年単位の議論と政争が必要でした。しかし今、カルダノのようなプロジェクトでは、“毎週のように新しい提案が投票にかけられ”、次の週にはそれが実行されています。

このスピード感、開放性、検証可能性がそろった実験場は、人類史上ほとんど前例がありません。


また、制度をコード化することで、「制度の合成」すら可能になります。

たとえば、ある国の投票制度と、別の国の予算制度と、第三国の市民参画制度を“スマートコントラクトで融合”することで、“かつて存在しなかったガバナンスモデル”が即座に誕生するのです。

これは、制度そのものを“モジュール化”し、“再構成可能”にするという意味であり、ブロックチェーンが「社会制度におけるレゴブロック」を提供しているとも言えるでしょう。


制度をデジタル的に合成し、実装し、再利用する。

──このようなプロセスが当たり前になる社会において、「国家」「政党」「議会」といった旧来の枠組みは、次第にその優位性を失っていくことになります。

そして、制度そのものが「誰のものでもない公共財」として設計されるならば、それは真にグローバルで中立的なインフラへと進化するのです。


次章では、そうした制度進化の先に現れる「制度間競争」、すなわち“アメリカの政治動向”や“トランプ政権下で進む法案”が、いかにこの暗号的社会制度と交差し、相互作用しているのかを読み解いていきます。


第4章|トランプ政権下のアメリカと、AI・ブロックチェーン時代の制度競争

2025年、トランプ大統領が再びホワイトハウスに返り咲いたことは、単なる政権交代ではなく、“制度原理の大転換”を意味する象徴的な出来事でした。

この政権のもとで加速しているのは、アメリカ国内における「制度的実験」と「規制再構築」です。特に暗号資産やAI、貿易・通貨政策に関する法案群は、もはや単なるテクノロジー規制ではなく、“制度競争をめぐる地政学”として機能しています。


たとえば「One Big Beautiful Bill(OBBB)」と呼ばれる大型包括法案は、その中に暗号資産、CBDC(中央銀行デジタル通貨)、ステーブルコイン、国際送金、KYC・AMLの再定義、さらにはデジタルアイデンティティに関する枠組みまでを包含しており、法制度としては前例のない包括性を持っています。

この法案が目指しているのは、アメリカを“Web3に対応した制度国家”へと移行させること──言い換えれば、「フィンテック大国から制度大国へのアップグレード」です。


こうした背景には、他国の制度的先行を牽制する意図があります。

たとえばUAE(アブダビ)は、すでに複数のステーブルコインを法的に認可しており、アフリカ諸国とのブロックチェーン決済ルートを実稼働させています。

中国はデジタル人民元の国際実証を進めており、BRICS通貨構想とリンクさせながら、「ドル基軸」に依存しない決済網を整備しようとしています。

それに対して、アメリカが“分散化×制度化”を急速に進めているのは、こうした制度覇権争いにおける主導権を確保するために他なりません。


ここで特筆すべきなのは、ホスキンソン氏がこのような「制度競争の構図」を極めて早い段階から指摘していたという点です。

彼はSRS #215の中でこう述べています。

「制度というのは“選べる”ようになった。もしアメリカの制度が信頼されなくなれば、誰かが自分たちで“コードベースの制度”を作って、それをコミュニティで採用すればいい。もう“国家が制度を独占する時代”ではない。」

この見解は、まさに国家とプロトコルの「制度間競争」の時代に突入していることを示唆しています。


そして、このような制度競争において重要になるのが、“合意形成プロトコルの信頼性”です。

AIが制度決定に介入しはじめ、量子コンピュータが暗号を脅かし、ナショナル・アイデンティティとプライバシーの境界が揺らぐ中で、制度とは「透明で、検証可能で、変更可能な設計」でなければ生き残れません。

そうでなければ、市民の信頼も、グローバルな互換性も得られないのです。


こうした構造に対して、カルダノは極めて戦略的な立ち位置をとっています。

  • 「Midnight」はプライバシー保護を中核に置いたレイヤー1プロジェクトであり、制度的な耐監視性を提供します。
  • 「Voltaire」はガバナンスと制度設計における市民参加の枠組みを設計します。
  • 「Catalyst」は国家の予算配分に匹敵する「資金の意思決定プロトコル」として機能します。

それぞれが、「国家よりも制度的に優れている」と主張するわけではありませんが、「国家以外の制度のあり方」を現実的に提示する設計なのです。


トランプ政権が示唆しているのは、アメリカ自身が「規制当局としての国家」から「制度プラットフォームとしての国家」への転換を本気で検討し始めた、という事実です。

そしてその先にあるのは、「国家 vs プロトコル」ではなく、「国家 × プロトコル」の連携モデル──すなわち「国家のプロトコル化」や「プロトコルによる国家的機能の代替」のような構図です。


次章では、まさにその最前線に位置するプロジェクト──Midnight、AI、量子暗号、ポスト国家的ID設計──が、いかにして“新たな主権の形”を描き出そうとしているのかを探ってまいります。


第5章|Midnight、AI、量子技術、ポスト国家──新しい主権のデザイン

「主権」とは、本来“国家にのみ宿るもの”として定義されてきました。

しかし、2020年代後半の現在、その主権の概念は大きく揺らいでいます。国家よりも信頼できるネットワーク、政府よりも正確な合意形成アルゴリズム、そして憲法よりも柔軟なプロトコル──そうした構造が、現実として機能し始めているからです。

このような流れの中で登場したのが、カルダノの新たなレイヤー1ブロックチェーン「Midnight(ミッドナイト)」です。


Midnightの特徴は、その設計思想の根幹に「機密性」と「主権性」を据えていることです。

ブロックチェーンは一般に「すべてが透明」であることを前提としていますが、それは時に「すべてが監視可能である」ことと表裏一体でもあります。

Midnightはこのジレンマを乗り越えるために、「選択的開示(selective disclosure)」と「ゼロ知識証明(ZKP)」を活用した“プライバシー・バイ・デフォルト”なネットワークを構築しています。


その上で、Midnightは単なるプライバシー層ではなく、明確に「制度構築のためのチェーン」として位置づけられています。

  • 個人が自分のアイデンティティを自律的に管理し、必要に応じて開示できる
  • データが“本人に帰属する”ことを前提としたスマートコントラクト設計
  • 法令や社会規範と整合的に設計された「コンフィデンシャル・コントラクト」の導入
  • 量子暗号やポスト量子署名を想定した耐久性の高い署名機構の設計

こうした仕組みは、まさに“次世代の社会制度”を支える基盤インフラと言えるでしょう。


ホスキンソン氏はMidnightを「AI時代と量子時代における制度のベースレイヤー」として位置づけています。

実際、Midnightの構想はAI・合成生物学・量子計算・スマート都市といった次世代インフラとの親和性を前提に設計されており、これまで“国家の専売特許”だった以下のような機能のプロトコル化が目指されています。

  • 選挙と投票
  • 登録と認証(ID)
  • 租税徴収(課金メカニズム)
  • 法規範の実行(スマート契約)
  • 外交的な合意(相互運用性とブリッジ)

このような設計によって、Midnightは従来の法制度では実現が難しかった「透明性のある非公開」「プライバシーを担保した合意形成」といった矛盾したニーズを同時に満たす設計を実現しようとしています。


そしてこのMidnightの基盤には、IOG(Input Output Global)が研究・実装を進めてきた耐量子暗号技術があります。

すでに2024年には、IOGとエディンバラ大学が主催したQSig(Quantum Signature)会議で、Post-Quantum署名における「ワンショット署名」「自己破壊型秘密鍵」などが発表されており、Midnightはそれらの研究成果を実装に取り入れる設計となっています。

このように、Midnightは“未来に対応する制度OS”として、すでに次の社会に備え始めているのです。


注目すべきは、Midnightが「制度の主権」を個人やコミュニティに“委ね直す”という原理に基づいている点です。

これは「国家に主権を預ける」のではなく、「制度を自ら選択・更新・退去できるようにする」という考え方──いわば「ポスト国家的制度主権」の始まりです。

この思想は、単なる技術的なブレイクスルーにとどまらず、私たちが「どこに所属し、どう生きるか」を再定義する倫理的・政治的問いかけでもあります。


次章では、そうした変化のなかで、「私たち市民はいかに新たな制度と向き合い、どの未来を選ぶのか」という問題に迫っていきます。

「暗号市民」「カルダノ市民」「制度を選び直す主体」として、私たちに求められる視座とは何か──それが問われているのです。


第6章|暗号市民たちへ──私たちはどの未来を選ぶのか

制度が選べる時代において、主権者とは誰でしょうか。

国民であること、それは依然として強い法的基盤を持ちます。しかし今、もう一つの“市民権”が登場しつつあります──それが「暗号市民(Crypto Citizen)」という新しい概念です。

この市民権は、特定の国家ではなく、特定のプロトコルに帰属するというものです。あなたがCardanoにステークし、Catalystに投票し、Midnightのネットワークに参加しているとしたら、あなたはその制度を構成する“実質的な市民”であると言えるでしょう。


ここで重要なのは、“制度を選ぶ”という行為は、“未来を選ぶ”という意思表示でもあるということです。

民主主義、独裁制、監視型資本主義、プライバシー志向の分散型プロトコル──どの制度の下で暮らすかは、もはや生まれた国によって自動的に決まるものではなくなりました。

むしろ、自らの行動、選択、参加によって、制度の側が形成されていくのです。


たとえば、あなたがCatalystで投票するとき、その1票は単なるプロジェクトへの賛否ではなく、「分散型予算配分という制度への信任表明」でもあります。

Midnightで選択的開示を用いたアプリを使うことは、「プライバシーを自己管理可能な社会構造」への支持です。

つまり、日々の行動一つひとつが、「どの制度を支持するか」「どの未来を選ぶか」という“暗号市民としての政治的行為”なのです。


そして、こうした市民行動には「責任」が伴います。

ホスキンソン氏がSRS #215で語ったように、「制度とはただ与えられるものではなく、自分たちで設計し、育て、進化させるもの」であり、それを支えるのは市民の理解と参加です。

従来型の“投票して終わり”の民主主義ではなく、“制度そのものに日々関与する”というプロトコル的参加が、これからの市民像になっていくでしょう。


それは、もはや「どこに住んでいるか」「どこの国籍か」ではなく、「どのプロトコルを信頼しているか」「どの制度を使っているか」によって決まる、新しい意味での「所属」です。

つまり、「あなたの制度的アイデンティティ」は、あなた自身の選択と行動によって構成される──これが、暗号市民社会における主権の再定義なのです。


私たちは今、制度に対して「選ばれる側」ではなく、「選ぶ側」になろうとしています。

そしてそれは、同時に「制度に責任を持つ」ということでもあります。制度が腐敗すれば、それは“制度の設計に参加しなかった私たちの責任”でもあるのです。

だからこそ、カルダノやMidnightに代表される分散型プロジェクトは、単にテクノロジーとしてではなく、“市民的空間としての制度実験場”として存在しているのです。


次章では、このような「新たな主権者としての私たち」が、どのように希望と設計を携えて未来へ進むのか──ホスキンソン氏の思想を通じて導き出される“文明的メッセージ”を受け取ることにします。

それは、混沌の時代にあって「未来が楽しみで仕方ない」と語るために必要な、思想の地図です

終章|希望という羅針盤──チャールズ・ホスキンソンからの手紙

私たちはいま、“未来が見えにくい時代”を生きています。

地政学は揺れ、経済秩序は変わり、情報は過剰に流通しながらも誰が本当のことを語っているのかが分からなくなっています。信頼は喪失し、制度は疑われ、そして多くの人々が「何を信じていいのか」「何を指針に生きればいいのか」に迷いを抱えています。

そうした時代に、チャールズ・ホスキンソン氏が繰り返し語ったのは、次のような言葉でした。

「制度は、変えられるものだ。

そして、未来は“設計できる”ものだ。

──だからこそ、未来が楽しみで仕方ないんだ。」


この言葉には、単なる楽観主義でも、テクノロジー万能論でもない、“主体性への呼びかけ”が込められています。

制度に文句を言うのではなく、自ら制度をつくる側に立つこと。

世界を変えると宣言するのではなく、自分が選ぶプロトコルによって、その一部を動かしていくこと。

それは、どこまでも小さく見える一票、あるいは一つの参加が、制度の内部から社会を更新する力を持っていると信じる姿勢です。


ブロックチェーンは、社会を数学によって再設計する技術です。

AIは、人間の知性と判断の限界を補完する技術です。

量子コンピューティングは、現実の複雑性そのものに挑む道具です。

そして、ホスキンソン氏はこうしたすべてを一つに束ね、「人類文明そのものをどう再構成するか」という問いを現実的なプロジェクトとして提示しています。

それは、破壊の思想ではなく、構築の思想です。

それは、政治家の言葉ではなく、開発者の言葉です。

そしてそれは、未来から逆算された倫理であり、設計原理でもあるのです。


私たち一人ひとりに問われているのは、この時代の変化を傍観者としてやり過ごすのか、それとも「参加者」「構成者」「設計者」として関わっていくのかという選択です。

制度は書き換え可能であり、主権は共有可能であり、未来は選び直せる──それが分散型社会の出発点です。


この特集『中間地帯に立つ我々へ』が、混迷の時代における一つの羅針盤となり、カルダノという“制度のOS”とともに、新しい可能性を模索するすべての人にとっての希望の地図になることを、心から願っています。

そしてなによりも──

「未来が楽しみで仕方ない」と語れる日常を、自らの手で作り出すために。

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