カルダノの未来を資金面から切り拓く──Rare Evo Dev & Gov Day特別セッション・完全レポート
2025年のRare Evo Dev & Gov Dayにおいて、カルダノの資金調達とエコシステム成長戦略をテーマにした特別セッションが開催されました。
3人の登壇者がそれぞれ異なる視点から、持続可能なエコシステムを構築するためのビジョンと実践例を語りました。
1. Cardano Builder DAO──成長段階プロジェクトに特化した資金供給モデル
最初に登壇したのはローガン・パンショ氏(Logan Panshot)。
彼が代表する**Cardano Builder DAO(CBDO)**は、カルダノにおける資金エコシステムの空白を埋めるために設立されました。
- 背景 Catalystはアイデア段階のプロジェクトに有効だが、成長段階(ユーザーを持ち、スケーリング資金が必要なフェーズ)に特化した資金提供は不十分。 フォローオン資金がなければ、有望なプロジェクトも停滞する恐れがある。
- DAOの仕組み
- 提案はまずディスカッション段階→温度感チェック投票→オンチェーン投票の3段階で審査
- 資金配分は半年ごと、KPI達成度に基づき継続可否を判断
- メンバーシップは「Catalystでの実績」または「DAO投票による承認」で参加可能
- TapToolsと連携し、KPIを可視化するダッシュボードを構築
- ビジョン 「数百万〜数億トランザクションをカルダノにもたらす」という大胆な目標を掲げ、エコシステム全体のユーザー数・オンチェーン活動を増加させる。
2. Draper University──世界初のカルダノ・アクセラレーター
続いて登壇したのは、アリサ氏(Arisa)。
シリコンバレーに拠点を置くDraper Universityは、教育・アクセラレーション・ベンチャーキャピタルを一体化した起業家支援機関です。
- 設立者の背景 創設者ティム・ドレイパーはビットコイン初期の大口保有者であり、シリコンバレーVCの名門一族。 世界中で48以上の投資ファンドを運営し、50社以上のユニコーン企業を支援。
- カルダノとの取り組み 2024年、CatalystやCardano Foundationと連携し、世界初のカルダノ・アクセラレータープログラムを実施。 世界中から選ばれた20社が5週間にわたり、シリコンバレーで共同生活・開発・投資家向けピッチを行った。
- 成果
- サンフランシスコでカルダノの存在感を大きく高める
- 参加企業は外部ハッカソンで優勝、資金調達・助成金獲得にも成功
- 長期的にはカルダノの持続可能なエコシステム構築に貢献
3. Project Catalyst──5年で2,000プロジェクト、1億5,000万ドルの資金提供
最後に登壇したのは、ダニエル・ライバー氏(Daniel Rybar)。
Catalystはカルダノ最大の分散型イノベーション・エンジンとして、過去5年間で世界90か国・2,000件のプロジェクトに資金を提供してきました。
- Catalystの特徴
- 資金配分はすべてコミュニティ投票で決定
- 提案→レビュー→投票→マイルストーン承認のサイクルを採用
- 投票資格は25ADA以上の保有
- レビュアーやマイルストーンレビュアーとしての参加も可能
- 成果と影響
- Fortune 500企業や州政府との連携事例も誕生
- 資金提供額は累計1億5,000万ドル超
- プロジェクトはインタラクティブマップで地域別に確認可能
- 最新情報 現在Fund14が進行中で、予算は2,000万ADA。 提案締切は2025年8月18日 午前6時(UTC)。
総括
このセッションは、カルダノが「アイデア段階」から「成長段階」、さらに「グローバルエコシステム」へと進化するための資金戦略を立体的に示した内容でした。
Cardano Builder DAOの草の根資金供給モデル、Draper Universityの国際アクセラレーション、そしてCatalystの分散型資金エンジン──これらが組み合わさることで、カルダノは今後さらに多様で持続可能な成長を遂げていくことが期待されます。
以下はIOG動画「Funding Cardano’s Future | Rare Evo Dev & Gov Day」を翻訳したものです。
カルダノ予算&財務パネル | Rare Evo Dev & Gov Day:全翻訳
次のセッションは、カルダノの将来の資金調達についてです。
私たちは、エコシステム内のさまざまな組織や、皆さんが知っているかもしれない方々からの3つの素晴らしいプレゼンテーションをお届けします。
まず最初は、Builder DAO のローガン・パンショ氏です。
[拍手]
ローガン・パンショ氏
わあ、温かい歓迎をありがとうございます。
私を知らない方のために自己紹介しますと、私はローガンと申します。社会の基盤に分散型ガバナンスを組み込むことを使命としています。
今日は、カルダノ・エコシステムにおける40以上のビルダーを代表して、「Cardano Builder DAO」についてお話しできる機会をいただきました。
今日は、DAOの仕組み、ガバナンス構造、メンバーシップの流れなどを紹介します。最初にお伝えしたいのは、設立の経緯です。
多くの良い物語と同じように、このDAOもZoom通話から始まりました。
共同創設者と話しているとき、コミュニティのために財務資金が解放されるという機会が提示されました。
私たちはカルダノの生存と成長には、ユーザー数とオンチェーン活動の増加が不可欠だと理解していました。
しかし、これを実現するには何が必要か?
当時のカルダノには、プロジェクトの成長段階に特化した資金調達の仕組みが存在しなかったのです。
Catalystは素晴らしいツールであり、今後もそうであり続けますが、基本的にはアイデア段階のプロジェクト向けの助成金をマイルストーン形式で提供する仕組みです。
一方、私たちが注目したのは、**成長段階(Growth Stage)**のプロダクトです。
すでにプロダクトマーケットフィットに近く、動く製品やユーザーが存在するが、スケーリング資金を必要としているプロジェクト──。
こうしたプロジェクトは「コミュニティが通しそうなアイデア」を練る必要はなく、自らのKPIを高めるための資金が必要なのです。
もしこの「フォローオン資金」がなければ、有望なプロジェクトも停滞し、エコシステム全体の成長が鈍化するというリスクがありました。
他のブロックチェーンでは、その資金は財団やVC(ベンチャーキャピタル)から供給されますが、カルダノにはそのような資本がほぼ存在していませんでした。
そこで私たちは、カルダノ・ビルダーDAO(CBDO)のビジョンとして、カルダノ・エコシステムに自己持続可能でスケーラブルな資金供給エンジンを作ることを掲げました。
その結果、ビルダー同士が協力し、時には競争しながら、オンチェーンの指標とユーザー数を伸ばし、カルダノを持続可能にするための「調整レイヤー」が誕生したのです。
私たちは、完全に草の根的な動きとして、この活動を始めました。
友人やエコシステム内の起業家に声をかけたところ、皆が「これは必要だ、一緒にやろう」と賛同してくれました。
この3〜4か月で、Bodega、Dex Hunter、Fluid Tokens、Flux、Indigo、Minswap、Matera、Sundaylab、Snack、Vesper、WChain、InMaker、Liquid、Strike Finance、DripDropzといった多くのプロジェクトが集まり、共通の目標に向かうための共有トレジャリーを作ることになりました。
DAOの構造
今回の提案は1,200万ADAという大規模な資金要求です。
これらの資金は直接Agora DAOのトレジャリーに入ります。
Agora DAOは、共有資産を所有するためのPlutusスクリプトの監査済みオープンソースライブラリを使用しており、DAO内のすべてのビルダーが資金を共同管理します。
投票権は1メンバー=1票の平等構造です。
競合関係にあるプロジェクトも含め、約40のプロジェクトが集まっており、それぞれのドメインに精通したメンバーが意思決定に参加します。
メンバーシップの基準
DAOは「実績あるビルダーのための場」にしたい一方で、排他的にはしたくありません。
そこで、Project Catalystを「コミュニティ感知の仕組み」として利用しています。
- 条件1: Cardano上で稼働中のプロダクトを持ち、改善したいKPIがあること
- 条件2: Catalystで完了した提案を持つこと(マイルストーン完了を経て承認を得ている)
この条件を満たせば「投票メンバー」として参加できます。
Catalystのプロセスを経ることで、外部レビューの scrutiny に耐えながら成果を出せることが証明されます。
しかし、中にはCatalystを経ていない優れたビルダーもいます。
そこでDAOは、投票によって彼らを直接メンバーに迎える条項を設けました。
例として、Splash Labs、Farm、Tokyo Lab、Strike Finance、Local Cubertiva、Zerusなどがその枠で参加しています。
ガバナンスの流れ
- 資金を求めるプロジェクトは提案書を提出
- 提案はまず「ディスカッション段階」で議論・質問を受ける
- 次に「温度感チェック投票(Temperature Check)」に移行
- 1メンバー1票で賛否を投じ、賛成多数なら次の段階へ
- 最終的にオンチェーン投票で賛成多数なら、スマートコントラクトが自動的に資金を配分
サイクルとKPI重視の評価
- 資金提供は半年ごと(6か月サイクル) プロジェクトは6か月分の資金を受け取り、期間終了後にKPI達成度を報告し、継続資金の可否を判断されます。
- メンバーシップ更新も6か月ごとに実施(安定したコーラム確保のため)
- KPI例:
- 月間アクティブユーザー数
- 売上
- ダウンロード・インストール数
- 6か月後・12か月後の目標値
評価は「マイルストーン達成」ではなく「KPI目標の達成度」で行います。
さらにTapToolsと連携し、DAO全体と各プロジェクトのKPI成長を可視化するダッシュボードも構築しています。
フォローオン資金の考え方
このDAOは、プロジェクトが半永久的に資金を受け取り続ける「ハニーポット」ではありません。
目標は、プロジェクトが自立できるだけの収益を得るか、VC投資を受けられる規模まで成長することです。
6か月ごとにKPIを報告し、再評価を受ける仕組みです。
最後に──
私たちはカルダノの資金エコシステムに存在するギャップを見つけました。
もし取引量・ユーザー数・TVLが増加しなければ、カルダノは厳しい状況になります。
しかし、ここに集まったビルダーたちは「数百万〜数億トランザクションをカルダノに持ち込む」と本気で言っています。
現在、この提案は可決まで残り約2%の支持です。
まだ投票していない方はぜひ投票をお願いします。
そして、納得できない方は私を捕まえてください。必ず説得してみせます。
司会者
次は、Draper Universityでの素晴らしい取り組みをご紹介します。
登壇するのはアリサ(Arisa)氏です。発音はこれで合っていますね?
皆さん拍手でお迎えください。
カルダノ資金エコシステムにおける最も素晴らしい進展の1つについて、詳しくお話しいただきます。
アリサ氏
ありがとうございます。
普段からイベントは多く開催していますが、これほど大規模なものは久しぶりです。
この機会をいただき、本当に感謝しています。
私の名前はアリサ、Draper Universityで働いています。
「大学」という名前ですが、実態はアクセラレーター兼ベンチャーキャピタルです。
カリフォルニア州シリコンバレーの中心、サンフランシスコ空港から15分の場所に、私たちの大きなビルがあります。
8階建てで、教育・アクセラレーション・投資・レジデンスが一体化しており、35か国から集まった100名の創業者が24時間共に生活します。
Draper Universityは2012年に、**ティム・ドレイパー(Tim Draper)**が「起業家のための学校を作ろう」という大胆な発想から設立しました。
彼はビットコインの大口保有者としても知られていますが、今でも毎回プログラムに顔を出し、100人の創業者のピッチを聞き、質問します。
実績と背景
- これまで100か国以上から創業者を支援
- 卒業生は累計12億ドル以上を資金調達
- 「就職先を探す」のではなく「雇用を生み出す」起業家を育成
- VCとしてのDNA:ティム・ドレイパーの祖父がシリコンバレーで初めてVCの概念を作った人物
- ドレイパー家は70年以上VC業界に携わり、ティム本人も40年以上運営
この経験から、起業家が直面する数多くの課題を理解し、エコシステムづくりに力を注いでいます。
世界中に48以上の投資ファンドを運営し、ユニコーン企業は50社以上、さらにユニコーンの10倍規模の「ライノ企業」も10社以上支援しました。
Web3とカルダノへの関わり
- ティム・ドレイパーは2014年、米政府のオークションで3万BTCを落札
- 以来、Web3領域で多数の企業に投資
- 今年、世界初のカルダノ・アクセラレーターを実施
CatalystやCardano Foundation、VCチームの協力を得て、2年以上の準備を経て実現しました。
きっかけは、Draper University卒業生の創業者がジャマイカに戻り、「このモデルをカルダノ・エコシステムでやるべきだ」と提案したことです。
カルダノ・アクセラレータープログラムの概要
- 2024年4月に正式開始
- 世界中から20社を選出(前セッションのローガン氏も卒業生)
- 5週間の集中プログラム
- 条件ゼロからスタート(ネットワークなしの状態)だったが、多くの支援を得て構築
参加者は同じ場所に住み込みで、朝から深夜までアイデアを磨き、開発やコラボを続けました。
時には外部のハッカソンに参加して優勝し、賞金を得るなど、高い技術力を示しました。
投資家向けの支援
- 多くのVCはカルダノをよく知らないため、**「なぜカルダノか」**を説明するピッチ練習を実施
- サンフランシスコで20社のカルダノプロジェクトが集まるのは初めてで、多くのVCや創業者が注目
- ベイエリアにおけるカルダノの存在感を大幅に向上
私たちのゴールは短期支援ではなく、Draper Universityと同様に長期的なカルダノ・エコシステムを築くことです。
そのために、課題の把握と解決策の構築、継続的な協力関係が不可欠です。
実施内容と成果
- 16か国から40名の創業者が参加
- 35名の講師・メンターが指導
- 累計1,400万ドルの資金調達や助成金をサポート
- 400件の応募 → 250件の面接 → 20社を選出
- 3大陸でのカンファレンス出展、15のイベント参加
まとめ
カルダノは米国・特にサンフランシスコにおいて、私たちにとって大使的存在となっています。
今後も投資や支援を継続する予定で、現在も交渉中の案件があります。
本日、Rare Evo会場内にもブースを出しているので、ぜひ立ち寄って声をかけてください。
[拍手]
司会者
次は、Project Catalystからダニエル・ライバー(Daniel Rybar)氏です。
Catalystをご存知の方はいますか? 拍手をお願いします。
では、ダニエルさん、ステージへどうぞ。
ダニエル・ライバー氏
こんにちは、皆さん。
普段はZoom越しで話すことが多いので、こうして目の前に人がいるのは新鮮です。
まずはCBDOとDraper Universityに拍手を送りたいと思います。
エコシステムの潮位が上がれば、そこに浮かぶすべての船も上がる──まさに今、カルダノがそうなっているのを感じます。
自己紹介とCatalystの概要
私はProject Catalystの日々の運営を担当しています。
Catalystは、カルダノ・コミュニティが草の根レベルのイノベーションを支援するための仕組みとして、約5年前に始まりました。
これまでに13回の資金提供ラウンドを行い、90か国以上・2,000件のプロジェクトに、合計1億5,000万ドル相当(ADA建て)を分配・割当しています。
そして特筆すべきは、これらすべての資金配分がコミュニティ投票によって行われていることです。
これは企業の役員会議室ではなく、皆さんの手元のADAウォレットから投票で決まります。
Catalystの仕組み
- 課題設定
- 各資金ラウンドは、解決すべき課題やテーマの設定から始まります。
- 提案・投票
- 誰でも提案可能(過去5年間で約5,000人の提案者が参加)
- 投票資格は25ADA以上をウォレットに保有していること
- 審査・レビュー
- コミュニティレビュアーによるレビュー(累計32万件)
- 提案の明確化・改善に向けたフィードバック提供
- マイルストーン型資金提供
- 一括ではなく段階的に資金を配分
- 各段階でマイルストーンレビュアーが成果物を確認し、承認すれば次の資金を解放
参加の形
- 提案者(Proposer) アイデアを形にし、公開の場でプレゼンする勇気が必要です。
- 投票者(Voter) 25ADA以上保有すれば投票可能。累計投票数は310万票。
- レビュアー(Community Reviewer) 提案にフィードバックを与え、質を高める役割。優秀なレビュアーには報酬も。
- マイルストーンレビュアー 資金解放の最終確認役。全世界で約100人が活動中。
成果と影響
Catalystの資金提供は、プロダクトエコシステムにも大きな影響を与えています。
これまでに約300の製品系プロジェクトが支援を受け、その中にはFortune 500企業やTier1企業との提携に至ったもの、さらにはインドの州政府と連携したケースもあります。
また、Catalystの成果はインタラクティブマップで可視化されており、地域別・分野別にどのようなプロジェクトが存在するか確認できます。
Fund14について
現在、Fund14が進行中です。
提案受付締切は8月18日 午前6時(UTC)。
今回の予算は2,000万ADAで、Fund14〜16まで同様の予算規模で継続される予定です。
Fund14の詳細や提案カテゴリは、専用のQRコードや4ページのローンチガイドから確認できます。
アイデアを持っている方は、ぜひ期限までに提案してください。
ダニエル氏 結び
この場にいるCatalystチーム(私、ゼネラルマネージャーのクリス・ベイ、プロダクト責任者)を見かけたら、ぜひ声をかけてください。
X(旧Twitter)やLinkedInでも連絡を受け付けています。
それでは、残りのRare EvoとTop Golfを楽しんでください。
[拍手]
























