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分散化のその先へ──戦略なき分散化に未来はない、ラスベガスで描かれた「カルダノ成長の地図」とSIPOの視座:ニュース動向 & ステーキング状況 in エポック576

分散化のその先へ──戦略なき分散化に未来はない、ラスベガスで描かれた「カルダノ成長の地図」とSIPOの視座

序文|ガバナンスの節目から、次の進化へ

2025年8月、カルダノコミュニティにとって大きな意味を持つ「Cardano Las Vegas Governance Workshop」が開催されました。

SIPOはDRepとしてこのワークショップに参加し、2日間にわたってコミュニティの皆さんとともに、カルダノの分散型ガバナンスの現在地と未来について真剣に議論してきました。

今回のワークショップは、「分散化」という理想を追い求めるプロセスのひと区切りであり、同時に、その先にある“実装と実行”のフェーズへ進む第一歩でもありました。

私たちはこれまで、「どうやって分散化を実現するか?」をテーマに多くの時間と労力を費やしてきました。

しかし今、カルダノはすでに分散型ガバナンスの基盤を持つチェーンへと移行しています。

では、その分散化された仕組みを使って、何を成し遂げるのか?

これこそが、今回のワークショップで繰り返し浮かび上がった新しい問いです。

分散型であること自体がゴールではありません。

大切なのは、その分散性をどう活かしてカルダノを成長させ、世界に影響を与えるチェーンとして存在感を発揮できるかという視点です。

SIPOとしても、「誰が正しいか」ではなく「何を成すべきか」にフォーカスを当て、カルダノの進化と飛躍を支えるガバナンスのあり方を考え直す重要な機会となりました。


第1章|分散型ガバナンスはすでに実装された──次に問うべきは「使う」こと

今回のラスベガス・ガバナンスワークショップでは、興味深い転換点が見られました。

それは、議論の中心が「どう分散型ガバナンスを作るか?」から「その仕組みをどう活用するか?」へと明確にシフトしていたという点です。

カルダノではすでに、DRep制度、憲法委員会、オンチェーン投票、トレジャリー引き出しの仕組みなど、分散型ガバナンスを支える基本的なフレームワークが整いつつあります

もちろん課題は残されていますが、「仕組みを構築するフェーズ」は大きなマイルストーンを超えたと言えるのではないでしょうか。

だからこそ、今わたしたちが問うべきなのは──

この仕組みを使って、カルダノにどんな価値をもたらすのか?」という問いです。

たとえば、

  • どんなプロジェクトにトレジャリーを使うべきか?
  • その判断はどんな戦略にもとづくべきか?
  • 成果はどのように評価されるのか?

こうした問いに答えるには、誰が正しいか・誰が発言力を持つかといった議論だけでは不十分です。

むしろ、「どんな未来をつくりたいのか」「そこに到達するために今なにを選ぶのか」という、チェーンとしての主体性=意思決定のビジョンが求められていると感じました。

そしてその意思決定を、DRep・憲法委員会・コミュニティ全体が透明かつ協調的に行うことこそ、カルダノの分散型ガバナンスが真に機能している状態だと思います。

SIPOとしては、ガバナンスを「完成させること」が目的なのではなく、

ガバナンスを“使って”、カルダノの成長をどう加速させるか──この視点こそ、これからの時代に必要だと強く感じました。


第2章|北極星なき政治は迷走する──KPIとビジョンの設定が最優先

今回のワークショップで、参加者のあいだでほぼ共通認識となっていた課題があります。

それが、「カルダノにはKPI(重要業績評価指標)や明確な長期ビジョンが存在しない」という点です。

どんな組織でも、どんなプロジェクトでも、「何を目指しているのか」が明確でなければ、日々の意思決定はブレてしまいます。

ましてや、カルダノのような多様なステークホルダーが関わるエコシステムでは、方向性が共有されていないと、予算配分・提案評価・ロードマップの整合性がバラバラになってしまうのは当然のことです。

たとえば、「この提案にトレジャリーを出すべきか?」という問いに対して、

  • それがカルダノのどんな目標に貢献するのか?
  • どんなKPIと連動していて、いつどう評価されるのか?

そういった視点がないまま判断されることは、制度疲労やDRepの燃え尽きにもつながっていきます。

実際、今回の議論では「戦略的整合性の欠如」「提案評価基準の不明確さ」「KPIの設定不足」といった声が、各フェーズ(提案・予算・執行)で繰り返し挙がっていました。

カルダノがこの先、競争の激しいブロックチェーンの世界で存在感を発揮していくには、「北極星」──つまり、共通の目的地となるビジョンと、そこへ向かうための測定可能な指標が必要です。

SIPOは、このカルダノというプロジェクトが、ただの「分散型システム」ではなく、「金融の再定義」に挑む社会的インフラであると考えています。

だからこそ、「どこへ行くのか?」「何を持って成功とするのか?」を定義しなければ、分散型であることの意味も、ガバナンスの努力も曖昧なものになってしまいます。

分散化が整った今だからこそ──

「測るもの(KPI)」と「目指すもの(ビジョン)」を、カルダノ全体で共有するフェーズに入ったと、私たちは感じています。


第3章|エグゼクティブ・ファンクションの役割──分散を活かす戦略実行装置

今回のワークショップで、最も活発に議論されたテーマのひとつが「エグゼクティブ・ファンクション(実行機能)」の導入についてでした。

一見すると、「分散化」と「執行機能」は相反するように見えますが、実際には、分散型ガバナンスをより機能させるための“橋渡し”となる概念として、多くの参加者が可能性を感じていました。

カルダノでは、すでにDRepや憲法委員会といったオンチェーンの意思決定構造があります。

ただし、その仕組みだけでは、

  • 「戦略を立てる」
  • 「優先順位を定める」
  • 「全体を調整する」
  • 「提案や資金の執行状況を管理する」

といった、継続的かつ専門性の高い作業を効率的に回していくには限界があります。

そこで検討されているのが、DRepが任命し、必要に応じて解任もできる「透明性のある、任期制の執行機関」を設けることです。

これは政府における内閣のようなものではなく、DRepの意思決定をサポートし、実務面を加速させる補助的・調整的な役割に近いものとして構想されています。

具体的には、以下のような機能が期待されています:

  • KPIの設定と測定方法の提案
  • 中長期の戦略・ロードマップの整理と提示
  • 予算編成の補助とカテゴリの設計
  • エコシステム全体との情報連携と調整

重要なのは、このエグゼクティブ・ファンクションが「権力を持つ存在」になるのではなく、DRepとコミュニティが判断しやすいように整える“運営エンジン”になることです。

また、「無期限の常設組織」とするのではなく、

  • 役割は明確に限定する
  • 任期を定めて定期的に見直す
  • DRepが信任・不信任を表明できる仕組みを持たせる

といったセーフガード(安全策)もセットで議論されていました。

SIPOとしても、「ガバナンスを速くする」のではなく、「判断の質を上げ、実行との橋をかける」という視点で、

このエグゼクティブ・ファンクションの導入は、今後のカルダノにとって非常に重要な一歩になると考えています。

分散化された意思決定が迷走しないように──

そして「戦略なき分散化」に陥らないように──

この機能が、カルダノという巨大な船をひとつの北極星に向けて動かす“舵”になることを期待しています。


第4章|カルダノはなぜ今「競争戦略」を必要としているのか

カルダノのガバナンスについて話すとき、つい「分散性」や「仕組みの健全性」といった内側の話ばかりに意識が向きがちです。

もちろんそれらは非常に大事な価値ですが──今、私たちが見逃してはならないのは、外の世界が激しく動いているという現実です。

2025年、暗号資産・ブロックチェーン業界は再び大きな転換点を迎えています。

  • イーサリアムはL2を軸に新たな流動性戦略を打ち出し、
  • ソラナはスピードとUXでDeFi・NFT領域を攻め続け、
  • アヴァランチや他のチェーンも各国政府や大企業と手を組み、Web3のインフラ競争が本格化しています。

その中で、カルダノがやるべきことは、「理念を守る」だけではなく、「市場で存在感を発揮する」ことです。

分散型であること。フォーマルメソッドに基づいた設計。学術的で誠実な開発文化。

──これらは、カルダノの大きな強みです。

でも、それを“ただ持っているだけ”では、世界には届きません。

必要なのは、それらの価値を「競争力のある成果」につなげること

つまり、カルダノが他のチェーンと並び立ち、社会課題の解決・金融モデルの進化・価値の創出という“実用的な貢献”において、確かな成果を出すことです。

そのためには、ガバナンスも「守るための仕組み」から「動かすための仕組み」へと変わっていく必要があります。

予算は「維持のための資金」ではなく、「勝つための投資」に変わっていかなければなりません。

今回のラスベガスでの議論は、そのことをはっきりと示していました。

ガバナンスはカルダノの“武器”であり、同時に“舵”でもあります。

SIPOは、カルダノがこの時代の転換点を逃さず、競争戦略を持ったチェーンとして次のステージに進むべき時が来たと考えています。

理想を失うのではなく、理想を実現するために、戦略を持って動く──その決意が今、必要です。


第5章|DRep制度の強化と健全化──「偏り」をどう制御するか

カルダノの分散型ガバナンスを支える重要な要素のひとつがDRep(Delegated Representative)制度です。

この制度は、ADA保有者の委任によって意思決定の正統性を担保しつつ、ガバナンスの実行性を高めるという、カルダノらしいバランス設計と言えます。

しかし、今回のラスベガス・ワークショップでも繰り返し指摘されたのは、「偏り」の問題でした。

例えば──

  • ごく一部の“有力DRep”に大量の委任が集中していること
  • DRep間の情報格差・経験格差によって議論の方向が偏ること
  • 発言力の強さがそのまま判断の重みになってしまう構造

こうした傾向が進行すると、ガバナンス全体が「分散しているようで、実際には集中している」という状態に陥りかねません。

もちろん、DRep個人を責めるのではなく、制度としての設計と運用の見直しが求められています

SIPOが感じたのは、「DRep制度はまだ発展途中であり、今こそ健全化のためのアップデートが必要だ」ということです。

たとえば──

  • 委任の再活性化(長期間投票していないDRepへの委任解除条件の導入など)
  • DRepの評価指標の公開と共有(過去の投票行動・判断理由などを見える化)
  • 提案評価のための情報アクセス支援(要約・分析・比較ツールの整備)
  • DRep間の協調や勉強会の場をつくること

そして何より、「DRepは政治家ではなく、戦略家であるべき」という意識が、今後の制度設計には重要になると私たちは感じています。

カルダノは「誰のものでもない、みんなのもの」。

だからこそ、DRepもまた代表である前に、未来の可能性を広げる“触媒”でなければならないと考えています。

SIPOとしては、DRepの役割と責任を明確にしながら、健全な競争と協働が両立する制度へと進化させていくための議論と提案を、今後も積極的に行っていきます。


まとめ|判断と戦略がカルダノを動かす未来へ

今回のラスベガス・ガバナンスワークショップ2025は、カルダノのガバナンスが「分散化という構造の完成」から「戦略的実行のフェーズ」へと進んでいく転換点を強く示した場だったと、SIPOは実感しています。

単なる制度議論ではなく、カルダノを「どう動かすか」「どこへ導くか」という問いに、ガバナンスが応えるべき時代が来ています。

分散型であることは出発点にすぎません。そこからどう判断し、どんな戦略で未来を築いていくのかが問われています。

このワークショップを通じて見えてきたのは、課題も多い一方で、カルダノにはそれらを乗り越えられるだけの知恵・人材・仕組みがすでに存在しているということでした。

だからこそ、今後必要なのは──

  • 明確な北極星(ビジョン)
  • 測るためのKPI
  • 戦略を支える執行機能
  • そして、それらを透明に評価・判断していくコミュニティの成熟

SIPOはDRepとして、これからも「正しい議論」ではなく「正しく判断するための仕組み」をつくることに尽力していきたいと考えています。

カルダノという公共財を、皆で育てていく未来へ──。

ガバナンスは手段であり、未来は私たち自身の手でつくっていくものです。

ご意見・ご質問・ご提案など、ぜひいつでもお寄せください。

共に考え、動き、築いていきましょう。


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ダイダロス用👇
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