『迫る金融再起動』通貨の崩壊と価値の再定義──ドルの終焉とともに訪れる分散型金融の時代へ

はじめに:金融再起動とは何か?
2025年、私たちはある種の「文明の境目」に立たされているのかもしれません。
それは単なる景気後退や金利の話ではなく、「通貨そのものに対する信頼」が揺らいでいるという、もっと根源的なレベルでの問題です。
世界ではいま、「通貨」「信用」「国家」といった土台が再定義されようとしています。これは私たちが長年当たり前のものとして受け入れてきた「金融システムのOS」が書き換えられつつあることを意味します。
そしてその書き換えの兆しを、米国、日本、そしてグローバル市場のあちこちで目撃し始めているのです。
たとえばアメリカ。世界最大の経済大国にして、基軸通貨ドルを発行する国家が、いまや債務の山を抱え、利払いだけで年間1.2兆ドル──防衛費すら上回る水準に達しています。
「通貨発行で時間を稼ぎ、利下げで延命し、でも結局は破綻を先送りしているだけじゃないのか?」──そんな疑念が、マーケットの奥底で静かに広がり始めています。
一方、日本では「金利がない国」と言われてきた時代が終わりを迎え、長期金利はついに3%を突破。保険会社の資産モデルが崩れ、国債市場には“買い手不在”の警告灯が灯り始めています。
こうした「通貨システムの綻び」の先に、私たちはどんな金融の未来を描けるのでしょうか?
そのヒントとなるのが、“コードが信頼を担保する通貨”──すなわちビットコイン、そしてイーサリアムやカルダノに代表されるような分散型金融(DeFi)の世界です。
通貨や価値の信頼を「国家」や「中央銀行」ではなく、「ネットワークとプログラム」に託す世界。
そこでは、信頼は刷られるものではなく、設計され、実行され、検証されるものへと変わります。
この特集『エポックな日々579』では、「迫る金融再起動」というテーマのもと、通貨と国家の関係の崩壊、そしてそこから生まれる分散型金融の夜明けをめぐって、国内外の経済・制度・技術の最前線を分析していきます。
次の章では、まず最も象徴的な崩壊の現場──アメリカと日本の「サウンドマネー喪失」について見ていきます。
第1章:サウンドマネーの死と信用通貨の限界
かつて「お金」は、それ自体が価値を持ち、時間を超えて信頼されるものでした。金(ゴールド)を中心とするサウンドマネーの時代──そこでは通貨が信用を生み出すのではなく、通貨自体が信用そのものであったのです。
しかし、現代の通貨──特に米ドルや日本円のような「信用貨幣(fiat money)」は、もはやその役割を失いつつあるように見えます。
米国:ドル帝国の終わりが始まっている
2025年、アメリカの国家債務は37兆ドルを突破し、GDP比で123%という歴史的水準に達しました 。
この数字だけでも十分に衝撃的ですが、より深刻なのは利払いです。年間利払いは1.1兆ドル超──これはすでに国防費を上回っており、「利子のために国家が働いている」状態だとも言えます。
つまり、国家そのものが「借金で借金を回す」ような構造になってしまっているのです。
これでは、通貨に対する信頼を保てるはずがありません
「静かな盗難」としてのインフレ
カルダノの創設者であるチャールズ・ホスキンソン氏が語るように、インフレは“静かな盗難”です 。
私たちは、給与が上がらず、預金の価値が目減りしていくことに、いつの間にか慣れてしまいました。
たとえば、1988年に始まったアニメ『シンプソンズ』では、ホーマーは工場勤務の中年男性ながら、郊外に家を持ち、車を2台所有し、専業主婦の妻と3人の子どもを養っていました。
ところが、2025年の現代において、こうした生活はもはや“中流”とは呼べません。
通貨の信用と購買力が蝕まれた結果、普通の生活が「贅沢品」になってしまったのです。
サウンドマネーとは何か?
ここで改めて、サウンドマネー(健全な貨幣)とは何かを考えてみましょう。
- 希少性がある:無制限に刷ることができない
- 価値を保存できる:インフレで目減りしない
- 信頼を持って長期保有できる:時間を超えて資産として機能する
- 政治的に中立である:政府の都合で供給が操作されない
金(Gold)やビットコイン(BTC)は、この要件を満たす「現代のサウンドマネー」として再評価されています。
一方、米ドルをはじめとする法定通貨は、「中央銀行の裁量に依存した信用供貨」になり果て、もはやサウンドではなくなっています。
信用の時代から“コードの時代”へ
通貨の信用が「政府」や「中央銀行」ではなく、コードと分散ネットワークに移り始めているのが今の現実です 。
- 「政府が信頼できないなら、通貨をプログラムに委ねよう」
- 「中央銀行が無限に刷るなら、希少性あるアルゴリズム通貨を使おう」
このような思考が、個人、企業、そして国家のレベルにまで浸透しつつあります。
実際、BlackRockやMicroStrategyのような機関投資家がビットコインを大量保有し始めている現状は、資本市場がこの変化を敏感に察知している証拠と言えるでしょう。
次章では、こうした“信用貨幣”の限界の先に現れた選択肢──ブロックチェーンと分散型金融が再定義する国家と通貨の形について見ていきます。
第2章:ブロックチェーンが再定義する“国家”
「国家とは何か?」という問いは、これまで政治や軍事、法制度といった文脈で語られてきました。
しかし2025年、世界の通貨と金融インフラが揺らぐ今、その問いはまったく新しい形で投げかけられています。
国家とは、通貨を発行し、信頼を流通させる装置だったのではないか?
そしてもしその通貨がもはや信頼されなくなったとしたら──国家の根本的な正当性もまた、問い直されることになります。
通貨の信頼が「政府」から「コード」へ移るとき
かつて、通貨の価値は「国家が保証している」ことで成立していました。
しかし今やその国家が巨額の債務を抱え、通貨を無制限に発行し、制御不能なインフレを引き起こす存在になりつつある中、
人々は「信頼の基盤」を政府から移し始めています。
- 「政府が守ってくれる通貨」ではなく
- 「誰も壊せない仕組みが守る通貨」へ
その象徴が、ブロックチェーン技術によって支えられた暗号資産の台頭です。
この変化は、国家にとって脅威であると同時に、社会構造そのものを再構成するきっかけでもあります。
制度が“分散型金融”を受け入れ始めた現実
2025年、米国議会は以下の歴史的三法案を可決しました 。
- CLARITY法:暗号資産を「証券」か「商品」と明確に分類し、SECの過剰規制を抑制
- GENIUS法:ドル連動型ステーブルコインの制度化
- CBDC禁止法:中央集権的なデジタル通貨の導入を法的に制限
これは、国家が一部の通貨機能を「プロトコル」や「分散型インフラ」に委ねることを認めたに等しい出来事でした。
つまり、“法によって分散が認められた瞬間”だったのです。
プロトコルが国家になる日
もし「通貨を発行し、管理し、送金と資産保有を保証する」インフラが分散型ネットワークで構築可能なのであれば──
もはや通貨の信頼に「国家」は必須ではない、という話になります。
- 通貨の発行量はコードで定義され
- 会計処理はスマートコントラクトが担い
- 通貨の信認はネットワークの透明性に支えられる
それは、国家の役割が“機能の集合”として分散されていく未来を示唆しています。
通貨と国家の関係が再定義される構造転換
この再定義の過程にはいくつかの重要な構造要素があります。
- 信頼の源泉が「人」から「コード」へ移動する
- 国境を超える経済圏が“通貨”によって再編される
- ガバナンスが合意形成として“プログラム化”される
これらの動きは、単なる「通貨の進化」ではなく、「国家の権限の解体と再構築」そのものです。
かつて帝国が通貨と共に拡張していったように、これからはプロトコルが通貨を持ち、経済圏を形成する時代が訪れます。
そして今、問われているのは「信頼とは何か」
国家が発行する通貨が信頼されないとき、私たちは何を拠り所にして経済活動を行うべきか。
- 政治的な意思決定に委ねるのか
- 市場の力に任せるのか
- それとも、改ざん不可能なコードに従うのか
その選択が、次の時代の「通貨」だけでなく、「国家」のあり方までを左右するのです。
次章では、その“国家の正当性”が最も揺らいでいる場所──アメリカと日本という二つの大国における信用貨幣の臨界点に目を向けます。
第3章:日本経済も金融崩壊の臨界点へ
これまで日本は、「世界最大の債権国」「ゼロ金利経済」「円の信認」といったラベルによって、グローバル金融の“安定装置”として機能してきました。
しかし2025年、その前提は静かに、しかし確実に崩れ始めています。
今、日本は“見えない金融危機”の臨界点に近づいているのです。
「債権大国ニッポン」の終焉
日本は1989年から続けていた「対外純資産世界一」の座を2025年に34年ぶりに喪失しました 。
これは単なる記録更新ではなく、国際金融における「円という通貨の信用」が後退しつつあることの表れです。
巨額の財政赤字と貿易赤字、加えて円安の継続が、外貨ベースの資産構築を難しくし、
国家としての「金融的信頼」を削り取っているのです。
国債市場から“買い手”が消えた
2025年、日本の30年物国債利回りはついに3.2%を突破し、過去最高を更新しました 。
この動きは、市場が日本国債に対してリスクプレミアムを要求し始めたことを意味します。
実際、以下のような現象が連動して起きています:
- 長期国債の価格急落(=利回り急騰)
- 20年債入札の不調、応札倍率の低下
- 外国人投資家の売り圧力増大
国債という“最も安全な資産”への信頼が揺らぎはじめているのです。
金利上昇が保険・年金システムを直撃
金利上昇による国債価格の下落は、金融機関のバランスシートに甚大な影響を与えています。
特に打撃を受けているのが、生命保険会社です。
- 2025年第1四半期だけで、主要4社の国債評価損は計8兆円超
- 最大手は単独で2.5兆円の含み損を抱える
日本の保険会社は「超長期国債=安全資産」という前提で資産構築をしてきました。
それが崩れるということは、保険料率・利回り・配当・さらには将来の支払能力までが、構造的に揺らぐことを意味します。
日本銀行の“動けなさ”が致命的に
円安の進行に対し、財務省や与党政治家からは利上げ圧力が強まっていますが、
日本銀行が簡単に利上げできないのは、国債利払いの爆発的増加と、金融機関のバランスシート破壊を招くからです。
動けなければ円安・インフレが進む
動けば債券市場と金融機関が崩れる
──この板挟みは、制度疲労の極致とも言えるでしょう。
日本の金融秩序は“静かに崩壊”している
この国では、突然の暴落やバブル崩壊のような“劇的な金融危機”ではなく、
制度そのものが“ゆっくりと使えなくなる”という形で、崩壊が進行していきます。
それは、まるで火山の下に圧力が溜まっていくように。
表面は静かでも、内部ではすでに限界に達している──そんな状態です。
日本経済は、いままさに「表面的な安定」の裏で、信用と制度が崩れていく音を立てているのです。
次章では、こうした国家主導の通貨信用構造が揺らぐ中で、
世界の資本がどこへ逃げ、何を信頼しようとしているのか──
新たな通貨秩序の中核に浮上する“コードによる信頼”について見ていきます。
第4章:ビットコインと分散型通貨が開く「新・通貨秩序」
国家が発行する通貨に対する信頼が揺らぎ、従来の信用通貨モデルが制度疲労を起こしている中、
世界の個人・企業・政府レベルで、ある種の“避難先”として再評価されているものがあります。
それが、ビットコインをはじめとする分散型通貨です。
ここに、次の時代の通貨秩序の中心が見え始めています。
「通貨の第三極」としてのビットコイン
ドルやユーロのような国家発行通貨でもなく、金のような現物資産でもない。
その中間に位置しながら、コードによって統治され、分散ネットワークで支えられているのがビットコインです。
以下の4つの特徴が、いま世界中で再評価されているポイントです :
- 供給量に上限がある(=希少性):2100万枚で打ち止め
- 改ざんが困難:すべての取引はブロックチェーン上で記録・検証可能
- 価値の保存性が高い:長期的に購買力を維持する設計
- 自己保管が可能:誰にも没収・凍結されない
このように、ビットコインは「国家から切り離された通貨」としての役割を果たしはじめており、
それは単なる資産クラスではなく、新たな通貨の哲学的実装と言えるかもしれません。
米国の年金制度にも組み込まれる“価値保存手段”
Bitwiseの試算によれば、米国の401(k)(企業型確定拠出年金)制度において、
ビットコインが資産配分に組み込まれれば、最大で1220億ドル以上の新規資金流入が起こる可能性があるとされています 。
これはつまり、ビットコインが
- 「投資先」ではなく
- 「退職後の人生を支える通貨」
として、制度的に受け入れられつつあることを示しています。
分散型通貨圏が形成する“非国家的金融インフラ”
注目すべきは、ビットコインが単独で機能しているわけではないという点です。
- ウォレットによる自己保管
- 分散型取引所(DEX)による自由な流動性
- ステーブルコインとの組み合わせによる安定的取引手段
これらを含む分散型の通貨圏が、法定通貨に依存しない新たな金融エコシステムを築きつつあります。
この通貨圏は国境を持たず、プログラムによって運営され、
「信用」ではなく「検証」によって成り立っています。
通貨の未来は“選択制”になる
現代の変化を一言で言い表すならば、次のようになるでしょう。
通貨は「与えられるもの」から、「選ぶもの」へ。
これは極めて本質的な変化です。
通貨はもはや“唯一無二”のものではなくなり、用途や信念、地域やリスク許容度によって選ばれるようになります。
- 給与はステーブルコインで受け取り
- 資産保全はビットコインで行い
- 支払いは即時チェーンで済ませる
このようなマルチ通貨世界では、「何を通貨と呼ぶか」よりも、
「誰にとって信頼可能か」が決定的な基準になります。
信頼とは“数式と合意”によって設計される時代へ
従来の通貨が「国家という信用」で支えられていたとすれば、
新しい通貨は「数学的ルールとネットワーク合意」によって裏付けられます。
そしてそれこそが、“中央集権ではなく分散によって成立する信頼”──すなわち次の時代の通貨秩序の本質なのです。
次章では、この“コードによる信頼”が、なぜいまアメリカの政治・金融の核心を揺るがすテーマになっているのか──
「通貨主権」をめぐる国家の見えざる闘争に焦点を当てて掘り下げていきます。
第5章:通貨主権を巡るアメリカの“見えざる闘争”
ビットコインや分散型通貨が金融秩序の選択肢として浮上する中、最も根本的な問いがいまアメリカで突きつけられています。
「通貨を支配するのは、国家なのか?それとも民間か?」
この問いは決して新しいものではありません。
むしろ、アメリカという国家の歴史そのものが、この“通貨の主権”をめぐる暗闘の繰り返しであったと言っても過言ではありません。
中央銀行 vs. 大統領──繰り返されてきた通貨支配の綱引き
アメリカでは、歴代の改革派大統領が「国家による通貨発行権の奪還」を試みてきました 。
- リンカーン:南北戦争時に「グリーンバック(政府紙幣)」を発行
- ケネディ:FRBを経由せずに銀と連動する政府通貨を準備
- レーガン:金本位制復活の可能性を議論
- トランプ:中央銀行への強い不信とCBDC(中央銀行デジタル通貨)の禁止法支持
この闘争の根底には、「FRB=民間銀行連合体」が発行する通貨が利子付きの債務であるという構造的問題があります。
つまり、国民が使う通貨が、国家ではなく一部の金融勢力に依存しているという事実です。
2025年、再び通貨を「政府の手」に取り戻す動きが加速
現政権のもと、アメリカは通貨政策におけるパラダイムシフトを始めています。
- CBDCを明確に拒否
- ステーブルコインを制度的に受け入れ
- スマートコントラクトを政府支出管理に応用検討
- ビットコインの国家保有を“戦略資産”として検討
特に注目すべきは、大統領令14178(EO14178)によって策定された暗号資産国家戦略レポートです 。
この中では、「ビットコインを準備資産として保有する戦略」が正式に検討事項として記されており、
いよいよ暗号資産が「国家通貨戦略の中核」として浮上し始めています。
FRBの“独立神話”とその終焉
長年「政治から独立した存在」とされてきたFRB(連邦準備制度)は、いま強い批判に晒されています。
- 年間1000億ドル以上の赤字運営
- 豪華すぎる本部改装費用(当初予算を超えて31億ドル)
- 透明性欠如・責任回避体制への不満
これに対し、米財務長官や上院議員からは「内部監査が必要」「国民に責任を持たないテクノクラート体制は終わるべきだ」といった声が上がっています 。
もはや、中央銀行の「独立性」という建前は、民主的統制からの“逃避装置”に過ぎないという認識が広まりつつあるのです。
通貨を“国家から切り離す”ビットコインの思想
こうした流れの中で、ビットコインは単なる資産や通貨の枠を超え、
「通貨とは誰が支配すべきか?」という問いに対する思想的回答として位置付けられています。
- 国家や銀行に依存せず
- 利子も債務も存在せず
- 誰にも止められない通貨
それは、まさに中央銀行の支配を“プロトコル”に置き換える、貨幣の民主化運動でもあるのです。
通貨の支配を巡るこの闘争は、まだ終わっていない
歴史を振り返れば、中央銀行と闘った大統領たちはことごとく暗殺や失脚に見舞われてきました。
それは「通貨の支配権」が、表向きの政治権力よりもはるかに深く強い力によって握られていることを示しています。
2025年、暗号通貨という“コードの通貨”がここまで普及し、
国家戦略にまで組み込まれる今、この百年に及ぶ通貨主権の攻防は、新たなステージに突入しようとしています。
次章では、こうした国家の中央集権的通貨体制の限界を踏まえ、
それに対抗するように構築されつつある新しい制度的通貨モデル=ステーブルコインとトークン化インフラの台頭について取り上げていきます。
第6章:制度整備とステーブルコインによる分散型金融の台頭
通貨主権をめぐる見えざる闘争が続く中、中央銀行と国家による通貨支配モデルに対して、
明確な制度的・技術的カウンターとして立ち上がってきたのが、ステーブルコインを中核とする分散型金融(DeFi)インフラです。
これは単なる金融商品の進化ではなく、“制度設計の再起動”でもあります。
ステーブルコインとは何か、そしてなぜ重要なのか
ステーブルコインとは、ドルや円、ユーロなどの法定通貨と1:1で価値を連動させるよう設計された暗号資産です。
主に以下の3つの要素を備えています:
- 価格の安定性(ボラティリティが小さい)
- 即時決済性(銀行不要・24時間グローバル送金)
- プログラム可能性(スマートコントラクト連携)
つまり、法定通貨の安定性と暗号資産の機動性・透明性を融合させた存在であり、
今後のデジタル経済の土台となる通貨インフラとして、各国で法制度の整備が急ピッチで進められています。
アメリカ:GENIUS法の衝撃と金融秩序の再設計
2025年、米国議会はGENIUS法を可決し、ステーブルコインに法的な正当性を与えました 。
この法案により、ドル連動型のトークン(いわば「デジタル・ドル」)が政府公認のもと、民間から発行できる体制が整いました。
さらに、ステーブルコインの拡大は米国債市場の新たな買い手としても期待されています。
- ステーブルコインの裏付け資産として米短期国債が活用され
- これが2兆ドル規模の新しい資本流入を生み出す可能性がある
つまり、ステーブルコインは「通貨」であると同時に、金融政策と国家債務管理の手段としても機能し始めているのです。
日本・香港・中国でも法整備が加速
アメリカだけではありません。
2025年から2026年にかけて、ステーブルコインの法制度整備はアジア各国でも急進しています。
🇯🇵 日本
- JPYC社が資金移動業登録を完了し、日本初の公認円建てステーブルコインを今秋から発行へ
- 金融庁は暗号資産への分離課税やETF制度化も検討中
🇭🇰 香港
- Stablecoins Bill(ステーブルコイン法案)が可決され、2025年8月より施行
- 発行者に対しHKMAのライセンス義務と厳格なAML/KYCを課すなど、制度的な信用構築が進行
🇨🇳 中国
- 人民元建てのステーブルコインが初めて制度的に承認される可能性が浮上
このように、国家レベルでの「デジタル通貨ブロック」が形成されつつあります。
ステーブルコインは“橋渡し通貨”として機能する
中央集権と分散、自国通貨とグローバル経済、そして金融政策とブロックチェーン。
これらを結びつける“仲介通貨”として、ステーブルコインは次の役割を果たそうとしています。
- 企業決済(PayPalやStripeがステーブルコイン決済を導入)
- 証券口座との連携(Interactive Brokersが導入検討)
- オンチェーン経済指標との統合(米商務省がGDPをブロックチェーンで発信へ)
これらはすべて、中央銀行を経由しない経済活動の流れが、制度的に“合法”として受け入れられつつある兆候です。
ゼロから生まれた巨大市場──2800億ドルを超える規模へ
2025年8月時点で、ステーブルコインの市場時価総額は2800億ドルを突破し、過去最高を更新しています 。
この数字は、短期間でステーブルコインが「ニッチな実験」から「制度的主役」へと進化したことを意味します。
支えるのはただの流行ではなく──
法制度、ユーザー需要、国家戦略、そして危機感です。
次章では、この制度化された分散型インフラがどこへ向かうのか、
そして金融再起動のその先に何が“最終的な価値”として残るのかという問いに踏み込んでいきます。
第7章:“破壊と創造”の狭間で──コードが通貨を支配する世界へ

通貨の信頼が失われたとき、国家は存続できるのか。
そして国家の代替として機能するのは、誰なのか──。
2025年の世界で進行しているのは、単なる金融危機や制度疲労ではありません。
それは、価値の単位=通貨そのものを再設計するプロセスであり、
言い換えれば「金融という文明そのものの再起動」です。
「利下げで延命、されど終焉は不可避」
米国では、国債の年間利払いが1.2兆ドルを突破し、2026年には1.4兆ドルに達する見通しです 。
この水準は、もはや“金融政策”という言葉の枠では語れません。
- 平均金利を3.1%未満に下げなければ、利払いが制御不能
- FRBが利下げを決断しても、それは「存続のための対症療法」に過ぎない
この状況に対して、ある金融レポートは次のように述べています。
「これは政策ではなく、“旧世界の終焉を穏やかに迎える準備”である」
これはすなわち、ソフトデフォルトによる文明的金融リセットが始まったという宣告です。*まだハードデフォルトの可能性も否定できないが、現時点ではあえてこの表現にしておきます。
金融の終焉ではなく、新しい秩序の胎動
しかし、これは「終わり」ではありません。
既存の金融インフラが崩れることで、その下から新しい秩序が顔を出しているのです。
それが──コードによって統治される分散型通貨インフラです。
ブロックチェーン上のトランザクションは、すでに次のような存在になりつつあります:
- 価値の証明(オンチェーンの履歴=信用)
- 資産の保管・移動・交換の自動化
- 国際的な支払・投資の標準インフラ
つまり、コードで書かれたルールが“国家を介さずに通貨を機能させる”世界が現実になってきているのです。
最後に残るのは「数学的希少性」
法定通貨が無限に発行され、信用が薄まり、制度が破綻するとき──
最終的に価値を持つものは、操作不能な原理に基づく「希少性」だけです。
- ビットコインの2100万枚という上限
- 分散台帳による検証可能な供給管理
- トークン発行やスマートコントラクトによる資産設計の透明性
それは、かつて金(Gold)が持っていた“絶対的価値”を、数学とプログラムで再現しようとする試みとも言えます。
そしてこの“操作できない価値の設計”こそが、
金融再起動後の世界で生き残る通貨の条件になるのです。
トランザクションが価値になる世界
これからの時代、価値は“紙幣”に宿るのではなく、ネットワーク上のアクションと履歴に宿るようになります。
- 誰が、いつ、どこで、どんな合意をしたのか
- それが記録され、透明に検証できる
- 中央機関がいなくても「信頼」が成立する
この仕組みは、単なる“金融ツール”ではありません。
それは、契約、政治、経済、そして社会そのもののOSを入れ替える作業なのです。
終わりではなく、始まりへ
通貨と国家の物語は、いま大きく書き換えられようとしています。
それはドルの終焉であり、中央集権的信用通貨の退場であり、そして──
コードが支配する新しい通貨秩序の夜明け
この大きな過渡期に私たちが問うべきは、「どの通貨を持つか」ではなく、
「どの信頼モデルに身を委ねるか」という問いなのかもしれません。
終章:通貨を選ぶという未来──信頼の再構築へ

私たちは、いままさに「通貨」という概念が書き換えられる瞬間に立ち会っています。
それは、金利や物価、GDPといった数字の変化を超えた、文明のアップデートとも呼べる現象です。
この特集で見てきたのは、以下のような構造変化です:
- サウンドマネーの死と信用通貨の限界
- 国家による通貨支配の終焉と、ブロックチェーンによる信頼モデルの出現
- 日本やアメリカにおける制度疲労と金融システムの臨界点
- 分散型通貨とステーブルコインの台頭
- そして、“信頼”の新しい定義がコードへと移行していく過程
これらはバラバラのニュースではなく、ひとつの共通するテーマでつながっています。
それは、こうした問いです。
通貨の発行者が国家であるべき理由は、これからも存在するのか?
「通貨を選ぶ」という意志と責任
これまで私たちは、自国通貨を「選ぶ」ことはできませんでした。
生まれた国の法定通貨を使うことは、事実上の義務であり、不可避の選択でした。
しかし、いまやスマートフォンひとつでビットコインを持ち、
ステーブルコインで決済し、グローバルに資産を運用できる時代です。
通貨は「配られるもの」ではなく、「選ばれるもの」へと進化したのです。
これは、自由と責任の再定義でもあります。
- 何を信頼し、
- どんな価値を守り、
- どんな未来に賭けるか
それが通貨選択という行為に反映される。
通貨はただのインフラではなく、その人の世界観を表すシグナルになっていくのです。
金融再起動の先にある世界
「再起動(Reboot)」とは、壊すことではなく、新しい前提のもとで立ち上げ直すことです。
金融もまた、いま壊れつつあるのではなく、再定義されようとしているのだと思います。
その先にあるのは、国家がすべてを設計する世界ではなく、
個人、企業、ネットワーク、コミュニティが信頼の仕組みを自ら設計し、合意し、維持する世界です。
通貨もまた、その一部です。
🔚 そしてこれから:分散型未来に向けて
2025年という年は、後に振り返ったとき、
「金融が再びゼロから立ち上がった年」として記憶されるかもしれません。
それは恐怖と混乱の年ではなく、
創造と設計の年だったと。
私たちは、中央の力が退場する空白を、絶望ではなく希望で満たせるか。
それは一人ひとりが、「何を信じるか」を選び直すことから始まります。
そして次の通貨を選ぶということは、
次の社会のルールを一緒につくるということなのです。
そしてSIPOでは、こうした「金融再起動」や「分散型金融の時代」、
そして「カルダノの革命的現在地」について、
“今、世界で何が起きていて、次に何が来るのか?私たちはどうすればいいのか?”
という問いを深掘りするワークショップを開催しています。
参加費は無料、暗号資産やCardanoに興味がある方なら初心者でも大歓迎です。
過去回は即満席になるほどご好評をいただいており、
「気になっていたけど第1・2弾は参加できなかった…」という方、今回はぜひお見逃しなく!
📍日程:2025年9月9日(火)18:30〜20:00
📍場所:東京都中央区日本橋本町4-3-10
日本橋銀三ビル6階 サイモンズ会議室
📍詳細・参加申込はこちらをご覧ください。
👇
https://x.com/SIPO_Tokyo/status/1960891041898487871
なお、この日以外でもワークショップを開催する予定です。SIPOのツィートでお知らせいたしますので、フォロー、チェックをお願い致します。
もしこの記事が気に入っていただけましたら、SIPO、SIPO2、SIPO3への委任をどうぞよろしくお願いいたします!10ADA以上の少量からでもステーキングが可能です。
シリーズ連載:進化するカルダノ・ベーシック
エポックな日々
ダイダロスマニュアル
ヨロイウォレット Chromeブラウザ機能拡張版マニュアル
Laceマニュアル
SIPOはDRepへの登録と活動もしております。もしSIPOの活動に興味がある方、DRepへの委任方法について知りたい方は以下の記事をご覧ください。また委任もぜひお願いいたします。
SIPOのDRepとしての目標と活動方針・投票方法
SIPOのDRep投票履歴:https://sipo.tokyo/?cat=307
ダイダロスの方は最新バージョン7.0.2で委任が可能になりました。
SIPOのDRep活動にご興味がある方は委任をご検討いただければ幸いです。
DRep ID:
drep1yffld2866p00cyg3ejjdewtvazgah7jjgk0s9m7m5ytmmdq33v3zh
ダイダロス用👇
drep120m237kstm7pzywv5nwtjm8gj8dl55j9nupwlkapz77mgv7zu7l
二つのIDはダイダロス以外のウォレットではどちらも有効です。ADAホルダーがSIPOにガバナンス権を委任する際に使用できます。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
























