Pythが来た日──Pentadが動かしたCardano「重要インテグレーション」最初の成果:価格オラクルを超え、世界の経済データと接続するブロックチェーンへ

第0章:Pentadが動いた──Critical Integrations最初の成果
エポックな日々600では、Cardanoの歴史の中でも、静かですが確実に意味を持つ転換点を取り上げたいと思います。
それが、Critical Cardano Integrations(重要インテグレーション)の最初の大きな成果として、
Pyth Lazer オラクルのCardano統合が正式に承認されたという出来事です。
今回のポイントは、「Pythが統合される」という事実そのもの以上に、
誰が、どの枠組みで、その判断を下したのかにあります。
この統合を承認したのは、
IOG、Cardano Foundation、EMURGO、Midnight Foundation、Intersect
という、Cardanoを支える五つの主要組織から成る**ステアリング委員会(通称:Pentad)**です。
Pentadは、これまでそれぞれの立場でCardanoを支えてきた組織が、
「Cardano全体として、どの方向へ進むのか」
を共同で判断するための枠組みです。
つまり今回の決定は、
特定の開発チームやプロジェクトの判断ではなく、
Cardanoというエコシステム全体の意思として下されたものだと言えます。
そして、ここで承認されたのが、
Pyth NetworkによるPyth Lazer オラクルの統合でした。
Critical Integrationsは、
「Cardanoが次の成長フェーズへ進むために、外部から何を取り込む必要があるのか」
を正面から問い直す取り組みです。
その第一弾として選ばれたのが、
- DAppでもなく
- 新機能でもなく
- マーケティング施策でもない
オラクルという基盤インフラだったことは、非常に象徴的です。
これは、
「何を作るか」より先に、
「何を前提に作れるようにするか」を整えにいく、
というCardanoの姿勢をはっきり示しています。
今回のPyth統合は、
DeFiを盛り上げるための単発の施策ではありません。
Cardanoが、
- ステーブルコイン
- 機関投資家
- 制度金融
- さらには国家レベルのデータ
といった、これまで距離のあった領域と向き合うために、
避けて通れない基盤整備に着手したという合図です。
Pentadが実際に動き、
その最初の成果としてPythが選ばれた。
この事実こそが、
今回のニュースの本質だと言えるでしょう。
参考記事:
第1章:Pyth LazerオラクルのCardano統合とは何か
第0章で触れたとおり、Pentadが最初の「重要インテグレーション」として承認したのが、
Pyth Lazer オラクルのCardano統合です。
ここではまず、
「Pyth Lazerとは何なのか」
「それがCardanoに統合されることで、何が変わるのか」
を、できるだけ噛み砕いて整理しておきます。
Pyth Lazerとは何か
Pyth Networkは、これまでもオンチェーンで利用できる価格データを提供してきましたが、
Pyth Lazer(レイザー)は、その中でも特に「低遅延」を重視したプロダクトです。
一般的なオラクルは、
- 分散性
- 検証可能性
- セキュリティ
を重視する設計になっており、その分、
価格更新の頻度や反映速度にはどうしても制約がありました。
Pyth Lazerは、そこに正面から向き合い、
「できるだけ現実の市場に近いスピードで価格を届ける」
ことを目的としています。
これは、
「完全にオンチェーンで完結すること」よりも、
金融用途として実用に耐えることを優先した設計だと言えます。
Cardano統合で何が起きるのか
Pyth LazerがCardanoに統合されることで、
Cardano上のスマートコントラクトは、
これまでよりも高頻度・低遅延な価格データを前提に設計できるようになります。
これによって、たとえば、
- より精密な清算条件を持つレンディング
- レバレッジを前提としたDeFiプロトコル
- 価格変動に即応するリスク管理ロジック
といった、
これまで慎重にならざるを得なかった設計が、現実的な選択肢になります。
重要なのは、
「Pythが使えるようになる」という話ではなく、
Cardanoで“できる設計の幅”そのものが広がるという点です。
なぜ「Lazer」なのか
ここでひとつ押さえておきたいのが、
今回承認されたのが単なるPyth統合ではなく、
Pyth Lazerであるという点です。
これは、Pentadが
「とりあえずオラクルがあればいい」
と考えたわけではなく、
- 将来の金融ユースケース
- 機関投資家や制度金融との接続
- ステーブルコインやデリバティブ
といった、より厳しい要求を見据えていることを示しています。
低遅延なデータは、
派手ではありませんが、
本気で金融をやるなら避けて通れない条件です。
Pyth Lazerの採用は、
Cardanoが**「研究段階」から「実運用を前提とした金融基盤」へ進もうとしている**
という意思表示のようにも見えます。
これはゴールではなく、スタート
最後に強調しておきたいのは、
このPyth Lazer統合が「完成形」ではないということです。
これは、
- ステーブルコイン
- ブリッジ
- カストディ
- 分析基盤
といった、
次に続く重要インテグレーションの前提条件を整えるものです。
つまり第1章で語ったPyth Lazer統合は、
Cardanoにとっての「最初のピース」であり、
ここから本格的な接続が始まります。
第2章:なぜ今、Pythなのか──Critical Integrationsの背景
Pyth LazerのCardano統合は、
「優れたオラクルを選んだ」という技術的判断に見えがちですが、
その背景には、Critical Cardano Integrationsという、もう一段大きな文脈があります。
ここを押さえておかないと、
今回の決定の重みは、少し伝わりにくいかもしれません。
Critical Integrationsとは何か
Critical Cardano Integrationsとは、
Cardanoが次の成長フェーズへ進むために、
外部の重要インフラを戦略的に統合していく取り組みです。
これまでのCardanoは、
- プロトコル設計
- セキュリティ
- 分散性 といった「内側の完成度」を高めることに力を注いできました。
一方で、
実際に世界の金融や経済と接続するためには、
Cardanoの外側にあるインフラが欠かせません。
Critical Integrationsは、
そのギャップを埋めるための取り組みだと言えます。
なぜ最初が「オラクル」なのか
Critical Integrationsの中では、
いくつかの領域が想定されています。
- オラクル
- ブリッジ
- ステーブルコイン
- 分析・データ基盤
- 機関向けカストディ
この中で、最初にオラクルが選ばれたのは、
極めて合理的です。
なぜなら、
価格データがなければ、ほとんど何も始まらないからです。
- ステーブルコインは、正確な参照価格なしには成立しません
- レンディングや清算ロジックも、価格が前提です
- 機関向け金融商品は、説明可能なデータを要求します
オラクルは、
すべての金融アプリケーションの「土台」にあたります。
この土台が弱ければ、
その上にどれだけ高度な仕組みを載せても、
現実の利用には耐えません。
数ある選択肢の中で、なぜPythだったのか
では、なぜPythが選ばれたのでしょうか。
理由は一つではありませんが、
大きく分けると、次の三点が挙げられます。
ひとつ目は、
一次データを重視する設計思想です。
Pythは、取引所やマーケットメーカーといった
価格形成の当事者から直接データを受け取るモデルを採用しています。
これは、
「どこから来た価格なのか」を説明しやすく、
制度金融との接続を考える上で大きな強みになります。
ふたつ目は、
低遅延という明確な方向性です。
Pyth Lazerは、
金融用途として現実的なスピードを正面から取りに行っています。
これは、
将来のステーブルコインやデリバティブを見据えたときに、
非常に重要な要素です。
みっつ目は、
マルチチェーンでの実績と拡張性です。
Pythはすでに多くのチェーンで使われており、
「実際に運用されている」という事実があります。
Critical Integrationsは、
実験ではなく、実装と運用を前提とした取り組みです。
その意味でも、Pythは現実的な選択でした。
Pentadによる合意という意味
そして何より重要なのが、
この選択がPentadによる合意で行われた点です。
IOG、Cardano Foundation、EMURGO、Midnight Foundation、Intersect
それぞれ立場も役割も異なる組織が、
「Pythを最初の重要統合とする」ことで一致した。
これは、
Cardanoが今後、
どの方向を向いて外部と接続していくのか
について、共通認識ができたことを意味します。
Pythは、
Critical Integrationsの“答え”ではありません。
しかし、
「Cardanoが次に進むために、まず何が必要か」
という問いに対する、
最初の明確な回答であることは間違いありません。
第3章:Pyth Networkとは何か?
ここまでで、
Pyth Lazerが「なぜ選ばれたのか」「どんな文脈にあるのか」は見えてきました。
では改めて、Pyth Networkそのものは何者なのかを整理しておきましょう。
Pyth Networkは、一般的に「オラクル」と呼ばれますが、
実態はもう少し踏み込んだ存在です。
一言で言うと、Pythは何か
Pyth Networkを一言で表すなら、
現実世界で生まれている市場データを、スマートコントラクトが直接使える形で届けるデータネットワークです。
重要なのは、
「価格を計算する」ことよりも、
“どこから来たデータなのか”を重視している点です。
Pythは、
取引所、マーケットメーカー、流動性提供者、金融機関など、
実際に価格を作っている当事者をデータ提供者(パブリッシャー)としています。
つまり、
Pythは「誰かがまとめた価格」ではなく、
市場の最前線にいる主体の声を、直接オンチェーンへ運ぶ
という思想で設計されています。
「一次データ」を重視する理由
この一次データ重視の設計は、
単なる技術的な好みではありません。
制度金融や機関投資家の世界では、
- データの出所
- 取得方法
- 更新頻度
- 異常値への対応
といった点が、非常に厳しく問われます。
「この価格は、誰が、どんな条件で出したものなのか」
という説明ができなければ、
金融商品として使うことが難しいからです。
Pythは最初から、
その説明責任を果たせる構造を意識して設計されています。
これは、
将来的にCardanoが
制度金融や公的領域と接続していく際にも、
大きな意味を持ちます。
暗号資産だけではないデータ領域
もうひとつ、Pythの特徴として見逃せないのが、
扱うデータの範囲が暗号資産に限られていない点です。
Pythはすでに、
- 株式
- FX
- コモディティ
といった、伝統金融の市場データも取り扱っています。
これは、
Pythが「暗号資産エコシステムの内側」だけを見る存在ではなく、
金融市場全体を射程に入れていることを示しています。
CardanoがPythを統合するという判断は、
Cardano自身もまた、
暗号資産の枠を超えた金融インフラを見据えている、
というメッセージとして読むことができます。
マルチチェーンであることの意味
Pyth Networkは、
最初から特定のチェーン専用として設計されていません。
すでに複数のブロックチェーンで利用されており、
「どのチェーンでも使われうるデータレイヤー」
という立ち位置を取っています。
この点も、Critical Integrationsの文脈では重要です。
Cardanoが今後、
- 他チェーン
- 既存金融
- 公的データ
と接続していく際、
Pythは「共通言語」として機能する可能性があります。
Pythは“部品”ではなく“前提”になりつつある
ここまでをまとめると、
Pyth Networkは、
- 一次データ重視
- 暗号資産に限らない対象範囲
- マルチチェーンでの実運用
という特徴を持つ、
金融データの基盤レイヤーだと言えます。
だからこそ、
Pythは「あると便利な部品」ではなく、
将来のオンチェーン金融を成立させるための前提条件
として扱われ始めています。
次章では、
このPythがさらに一歩踏み込み、
米国政府の経済指標データをオンチェーンで扱う
という、非常に示唆的な取り組みに触れていきます。
第4章:価格だけではない──米国政府の経済指標をオンチェーンへ
Pyth Networkを「高性能な価格オラクル」として理解するだけでは、
その本質はまだ半分しか見えていません。
Pythが近年取り組んでいる、もう一段踏み込んだテーマがあります。
それが、米国政府・公的機関が公開している経済指標データを、オンチェーンで利用可能にするという試みです。
「政府がブロックチェーンを使う」という話ではない
まず、ここでよくある誤解を一つ整理しておきます。
これは、
「米国政府が公式にブロックチェーンを採用した」
という話ではありません。
そうではなく、
政府や公的機関がすでに公開している、信頼性の高い経済データを、スマートコントラクトが直接参照できる形にする
という取り組みです。
対象となるのは、たとえば、
- 雇用統計
- インフレ指標(CPIなど)
- 金利や国債に関するデータ
といった、
マクロ経済の根幹をなす公式データです。
これらは現在、
人間がニュースや統計サイトを通じて読み取り、
判断材料として使うのが前提になっています。
Pythは、その前提そのものを問い直しています。
なぜ経済指標をオンチェーンに載せるのか
では、
なぜこうした経済指標を、わざわざオンチェーンで扱う必要があるのでしょうか。
答えはシンプルで、
金融ロジックを「自動化」するためです。
将来的には、
- CPIが一定水準を超えたら、金利条件が自動的に変わる
- 雇用統計の結果に応じて、報酬や担保条件が調整される
- 政策金利の変更が、即座に金融契約へ反映される
といった仕組みが、
人の判断を介さずに動く世界が考えられます。
そのためには、
「誰もが信頼できる一次データ」が、
プログラム可能な形で存在していることが不可欠です。
Pythが扱おうとしているのは、
単なる市場価格ではなく、
現実世界で合意された“事実”そのものだと言えます。
価格オラクルから「事実オラクル」へ
この視点に立つと、
Pythの進化の方向性がはっきりしてきます。
Pythは、
- 価格を届けるオラクル から
- 事実を届けるオラクル
へと、役割を拡張しつつあります。
経済指標は、
個人の解釈や感情によって変わるものではありません。
それゆえに、
金融契約の条件として組み込みやすく、
制度金融や公共領域とも接続しやすいデータです。
Pythがこの領域に踏み込んでいることは、
「DeFiの便利ツール」に留まらず、
オンチェーン金融の基盤そのものを担おうとしている
という意思表示にも見えます。
Cardanoとの接点が持つ意味
ここで改めて、
この取り組みとCardanoとの関係を考えてみましょう。
Cardanoは、
- 形式的検証
- ガバナンス
- 説明可能性
といった点を重視してきたチェーンです。
そこに、
公式な経済指標を扱えるPythが統合されるというのは、
非常に相性が良い組み合わせです。
将来的には、
- マクロ経済指標を条件に動くスマートコントラクト
- ステーブルコインや金融商品への応用
- Midnightと組み合わせた、秘匿性と公的データの両立
といった設計も、
現実味を帯びてきます。
PythのCardano統合は、
単にDeFiを強化する話ではありません。
それは、
国家レベルの経済データとオンチェーン金融が交差する地点に、Cardanoが立つ可能性を示しています。
第5章:Pyth Networkの現在地と未来──「オラクル」から「金融データ基盤」へ
第4章で触れたように、Pyth Networkはすでに
「暗号資産の価格を届けるオラクル」という枠を超え始めています。
この章では、Pythが今どこに立っていて、どこへ向かおうとしているのかを整理します。
現在地:低遅延と一次データを武器にした明確な立ち位置
現在のPythの立ち位置は、かなりはっきりしています。
ひとつは、
一次データを重視する設計思想です。
Pythは、価格を「後から計算する」のではなく、
取引所やマーケットメーカーなど、
実際に市場で価格を形成している主体から直接データを受け取ることを重視しています。
これは、
- データの鮮度
- 出所の明確さ
- 説明可能性
という点で、大きな強みになります。
もうひとつが、
低遅延を正面から取りに行く姿勢です。
Pyth Lazerは、
オンチェーンで完結することよりも、
金融用途として使えるスピードと精度を優先した設計です。
この2点から見えてくるのは、
Pythが「実験的なDeFi」ではなく、
よりシビアな金融ユースケースを明確に意識している、ということです。
転換点:データは「無料の公共財」ではなくなる
Pythのもう一つの重要な変化は、
データの価値を正面から扱い始めている点にあります。
これまでのWeb3では、
オラクルは「無料で使えるインフラ」であるべき、
という暗黙の前提がありました。
しかし現実の金融の世界では、
- 高品質な市場データ
- 低遅延データ
- マクロ経済データ
はいずれも、非常に高価な商品です。
Pythはこの現実を踏まえ、
- 基本的なデータ提供は広く開放しつつ
- 高付加価値・低遅延の領域では、持続可能なモデルを模索する
という方向へ進み始めています。
これは、
Pythが「善意のオープンインフラ」から、
長期的に運用可能な金融データ事業者へ進化しようとしている
ことを意味します。
未来像:価格データの先にあるもの
Pythの未来像を一言で表すなら、
「世界で起きている事実を、スマートコントラクトが直接参照できる状態を作ること」
だと言えるでしょう。
価格は、その第一歩にすぎません。
- 株式・FX・コモディティ
- 金利
- 経済指標
- 将来的には、より広範なマクロデータ
こうした情報が、
人間の判断や解釈を介さず、
プログラムの条件として使われる世界を、Pythは見据えています。
これは、
オンチェーン金融が
「投機的なアプリケーション」から
社会の意思決定インフラの一部へ変わっていく過程とも重なります。
Cardanoと交わることで見える景色
このPythの現在地と未来像を踏まえると、
Cardanoとの接点が持つ意味は、より明確になります。
Cardanoは、
- 形式的検証
- ガバナンス
- 説明可能性
を重視してきたチェーンです。
そこに、
一次データ・低遅延・公的データまで視野に入れたPythが統合される。
これは偶然の一致ではなく、
向いている方向が近づいてきた結果だと見ることができます。
Pyth Networkは今、
「オラクル」という言葉では収まりきらない存在へと変わりつつあります。
そしてCardanoは、
その変化を受け止める準備が整いつつあるチェーンの一つだと言えるでしょう。
第6章:Pyth NetworkはCardanoに何をもたらすのか
ここまでで見てきたPyth Networkの性格と進化の方向性を踏まえると、
今回の統合がCardanoにもたらすものは、
「便利なオラクルが一つ増える」という話では終わりません。
むしろこれは、
Cardanoがどんな金融システムを実装できるチェーンになるのか
その前提条件を書き換える出来事だと言えます。
1. DeFiの「守りの設計」から「攻めの設計」へ
これまでのCardano DeFiは、
セキュリティや慎重さを最優先にした設計が多く見られました。
それはCardanoの文化として正しい一方で、
価格更新の遅さやデータ前提の制約から、
どうしても保守的な設計になりがちでした。
Pyth Lazerによって、
低遅延かつ高品質な価格データを前提にできるようになると、
- 清算条件をより細かく調整できる
- 不必要に広い安全マージンを取らずに済む
- 急変動時のリスク制御を自動化しやすくなる
といった変化が起こります。
これは、
Cardano DeFiが
「安全だから使われる」段階から、「合理的だから選ばれる」段階へ進む
ための重要な一歩です。
2. ステーブルコイン設計の現実性が一段上がる
Cardanoにおいて、
今後最も重要になるテーマの一つが、
本格的なステーブルコインの定着です。
ステーブルコインは、
単に価格を1ドルに保つ仕組みではありません。
- どの価格を参照するのか
- 異常時にどう振る舞うのか
- 誰に対して説明できるのか
といった点が、常に問われます。
Pythが提供する一次データや、
将来的にマクロ経済指標まで含むデータは、
制度金融とも対話可能なステーブルコイン設計を現実的なものにします。
これは、
「実験的なステーブルコイン」から、
社会インフラとして使われうる通貨への転換点でもあります。
3. 外部資本・機関プレイヤーとの接続条件が整う
Cardanoは長らく、
技術的完成度に比べて、
外部資本が入りにくいという評価を受けてきました。
その理由の多くは、
思想や文化ではなく、
前提インフラの違いにありました。
- データの出所が説明できるか
- 更新頻度や遅延は実務に耐えるか
- 異常時の挙動は定義されているか
Pythは、
まさにこの問いに正面から答えられる存在です。
Pyth統合は、
Cardanoが
「分散性の高さ」だけでなく、「金融実務に耐える条件」を揃え始めた
ことを示しています。
4. Midnightと組み合わさったときの意味
PythがCardanoにもたらす価値は、
メインチェーン単体に留まりません。
Midnightの存在を考えると、
その意味はさらに広がります。
- 個別の取引条件や属性は秘匿され
- 判断の基準となるマクロデータや価格は公開されている
こうした構成は、
プライバシーとコンプライアンスを同時に満たす金融設計を可能にします。
Pythが運ぶ「公的・市場データ」と、
Midnightが守る「個別情報」が組み合わさることで、
これまで難しかった領域に踏み込めるようになります。
5. 「Pentadが選んだ」という事実の重み
最後に改めて強調しておきたいのは、
このPyth統合が、
Pentadという5組織の合意によって選ばれた最初の重要統合
であるという点です。
これは、
Cardanoが今後、
- どの水準の金融を目指すのか
- どの世界と接続しようとしているのか
について、
エコシステム全体として方向性を共有したことを意味します。
Pyth Networkは、
その最初のパートナーとして、
Cardanoに「世界の事実」を運び込む役割を担います。
第7章:カルダノエコシステムの今後の展望──「内向きの完成」から「外と接続する基盤」へ

Pyth Networkの統合を起点に、Cardanoエコシステム全体を見渡すと、
いま起きている変化は、個別の技術アップデートではなく、
Cardanoというプロジェクトの性格そのものが変わり始めていることを示しています。
1. Cardanoは「内側」を作り切った
これまでのCardanoは、
- 形式的検証
- セキュリティ
- 分散性
- ガバナンス
といった、ブロックチェーンとしての「内側」を、
非常に時間をかけて作り込んできました。
このアプローチは、
短期的には「遅い」「慎重すぎる」と見られることもありましたが、
結果として、他に代えがたい基盤を形にしました。
Pyth統合は、
その「内向きの完成」を前提に、
次のフェーズへ進む合図だと捉えることができます。
2. Critical Integrationsが意味するもの
Critical Cardano Integrationsは、
単に外部ツールを追加する取り組みではありません。
それは、
「Cardanoが、どの世界と、どの水準で接続するのか」
を明示する戦略です。
Pythが第一弾として選ばれたという事実は、
Cardanoが、
- 実験的なDeFi
- 内輪向けの金融
ではなく、
説明可能で、実務に耐える金融基盤を目指していることを示しています。
今後、
- ブリッジ
- ステーブルコイン
- カストディ
- 分析基盤
といった統合が続けば、
Cardanoは「技術的に優れたチェーン」から、
使われる前提の金融インフラへと姿を変えていくでしょう。
3. Pythは「入口」であり、「基準」でもある
Pyth Networkは、
Cardanoにとって最初の重要統合であると同時に、
**今後の統合の“基準”**にもなります。
- 一次データを扱えるか
- 説明可能性があるか
- 実運用に耐えるか
これらの条件を満たす外部インフラが、
今後Cardanoに迎え入れられていくことになります。
その意味で、
Pythは単なる入口ではなく、
「どんな外部世界と接続するのか」を定義する存在です。
4. 2026年に向けた静かな転換点
今回のPyth統合は、
価格を動かす派手なニュースではありません。
しかし、
後から振り返ったときに、
「ここからCardanoの役割が変わった」と語られる可能性は、
十分にあります。
- 世界の市場価格
- 世界の経済指標
- 世界の制度
こうしたものを前提に、
オンチェーンでロジックを組めるようになる。
それは、
ブロックチェーンが「実験場」から
社会の意思決定インフラへ移行する過程そのものです。
5. Pythから始まる次の物語
Pyth Networkは、
Cardanoにとってのゴールではありません。
しかし、
「次の物語」を始めるには、
これ以上ふさわしい第一歩もなかったように思えます。
Pentadが動き、
Critical Integrationsが実際に形になった。
この事実こそが、
エポックな日々600で最も記録しておきたいポイントです。
エポックな日々600 編集後記

600回目のエポックな日々では、価格や話題性では測りにくいけれど、
後から振り返ったときに「ここが分岐点だった」と思い出される出来事を取り上げました。
Pyth Networkの統合は、
派手なローンチでも、即効性のある材料でもありません。
けれど、Pentadが実際に動き、
Critical Integrationsが「構想」から「実行」に移った最初の事例であるという点で、
Cardanoの歴史にしっかり刻まれる出来事だと思います。
今回の記事では、
オラクルという一見地味なテーマから、
制度金融、マクロ経済データ、そしてCardanoがどこへ向かおうとしているのか、
という少し大きな視点まで話を広げました。
それは、Cardanoがもはや
「内輪で完結するブロックチェーン」ではなく、
世界の価格、世界の経済、世界の制度と向き合う段階に入ったことを、
このPyth統合が静かに示しているように感じたからです。
600回という節目に、
こうした“静かな転換点”を書き残せたことは、
エポックな日々という連載にとっても、とても象徴的でした。
次の100回で何が起きるのかは分かりません。
けれど、今回のPyth統合が、
その後に続く物語の「最初の一行」だった、
そう振り返る日が来るかもしれませんね。
エポックな日々601も、
また一緒に、この変化の途中を記録していけたらと思います。
もしこの記事が気に入っていただけましたら、SIPO、SIPO2、SIPO3への委任をどうぞよろしくお願いいたします!10ADA以上の少量からでもステーキングが可能です。
シリーズ連載:進化するカルダノ・ベーシック
エポックな日々
ダイダロスマニュアル
ヨロイウォレット Chromeブラウザ機能拡張版マニュアル
Laceマニュアル
SIPOはDRepへの登録と活動もしております。もしSIPOの活動に興味がある方、DRepへの委任方法について知りたい方は以下の記事をご覧ください。また委任もぜひお願いいたします。
SIPOのDRepとしての目標と活動方針・投票方法
SIPOのDRep投票履歴:https://sipo.tokyo/?cat=307
ダイダロスの方は最新バージョン7.0.2で委任が可能になりました。
SIPOのDRep活動にご興味がある方は委任をご検討いただければ幸いです。
DRep ID:
drep1yffld2866p00cyg3ejjdewtvazgah7jjgk0s9m7m5ytmmdq33v3zh
二つのIDはダイダロス以外のウォレットではどちらも有効です。ADAホルダーがSIPOにガバナンス権を委任する際に使用できます。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
























